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American Journal of Ophthalmology

2023
251巻

焦点深度拡大(EDOF)眼内レンズと三焦点眼内レンズの比較

American Journal of Ophthalmology 251巻 (67号) 2023

Extended Depth of Focus Versus Trifocal for Intraocular Lens Implantation: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis.
Karam M, Alkhowaiter N, Alkhabbaz A, Aldubaikhi A, Alsaif A, Shareef E, Alazaz R, Alotaibi A, Koaik M, Jabbour S. (Saudi Arabia)
Am J Ophthalmol. 2023 Jul;251:52-70. doi: 10.1016/j.ajo.2023.01.024. Epub 2023 Feb 1. PMID: 36736751.
【目的】
焦点深度拡大(EDOF)眼内レンズと三焦点眼内レンズを比較
【対象と方法】
PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)ガイドラインに従い、EDOF眼内レンズと三焦点眼内レンズを比較した研究をレビュー
【結果】
2,200眼が参加した22の研究が同定
三焦点眼内レンズはEDOF眼内レンズと比較して、
球面(平均差[MD]=-0.23、P = 0.001)と等価球面度(MD = -0.11、P = 0.0001)で有意な改善
円柱度数(MD = -0.03、P = 0.25)や乱視度数には差が認められなかった
三焦点眼内レンズは、
無矯正近方視力(MD = 0.12、P < .00001)および遠方矯正下の近方視力(MD = 0.12、P = .002)に優れていた
術後の矯正遠方視力(MD=-0.01、P=0.01)はEDOF群で有意に改善したが、
術後の非矯正遠方視力(MD=0.00、P=0.84)、非矯正中間視力(MD=0.01、P=0.68)、遠方矯正下の中間視力(MD=-0.01、P=0.39)には差が認められなかった。
デフォーカス曲線は、
近方視力では三焦点眼内レンズが、中間視力ではEDOF眼内レンズが有利であった
眼球収差、CS、ハロー(オッズ比=0.64、P=0.10)、グレア、患者満足度は、
両群に有意差はみられなかった
三焦点眼内レンズは、
QoV質問票スコアの改善(MD = 1.24, P = 0.03)および眼鏡からの自立(オッズ比 = 0.26, P = 0.02)と関連していた
【結論】
三焦点眼内レンズはEDOF眼内レンズと比較して非矯正近用視力を改善した。
非矯正遠用視力、中間視力、ハロー、グレアは両群間で統計学的な差はなかった。(MK)

2023
249巻

視神経乳頭陥凹と脳容積との関連

American Journal of Ophthalmology 249巻 (5号) 2023

An association between large optic cupping and total and regional brain volume: The Women’s Health Initiative.
Wang C et al(IL USA)
Amer J Ophthalmol 249(5): 21-28, 2023
・視神経乳頭陥凹と脳容積との関連を検討した。
・Women’s Health Initiative (WHI) Sight Examination研究で、cup-to-disc ratio(CDR)測定を行ない、WIH Memory研究でMRI検査で脳容積を測定した65~79歳の緑内障を持たない471名の女性(69.2±3.6歳、92.8%が白人)を対象とした。
・CDR値は両眼の立体写真をとり、縦のCDR値を求めた。
・どちらかの眼で、CDR値が0.6以上のものを大きなCDRと規定して解析した。
・471名の女性のうち、34名(7.2%)が大きなCDRであった。
・MRIでの側脳室の大きさは、大きなCDRの人はそれ以下のCDRの人と比較して、3.01cc大きかった(95%CI=0.02~5.99 p=0.048)。
・また、大きなCDRの人は、前頭葉の大きさが4.78cc小さく(95%CI=-8.71~0.84 p=0.02)、後頭葉の大きさが1.86cc小さかった(95%CI=-3.39~-0.3 p=0.02)。
・大きなCDRの人は視神経や脳の加齢を示している可能性がある。(TY)

2023
247巻

HAL眼鏡は近視の進行を抑えるか?

American Journal of Ophthalmology 247巻 (3号) 2023

Spectacle lenses with highly aspherical lenslets for slowing myopia: a randomized, double-blind, cross-over clinical trial.
Sankaridurg P et al(Australia)
Amer J Ophthalmol 247(3): 18-24, 2023
・高度に非球面化した小型レンズ眼鏡(HAL)と通常の単一視眼鏡(SV)とで、近視の進行度を調査した。
・対象は119名の7ー13歳の球面等価度数-0.75~-4.75Dのベトナムの小児である。
・HALかSVをランダムに割り当て、6か月後(Stage1)にレンズを交換し、6か月後(Stage2)に今度は両群にHALを割り当て、それぞれ、Group1(HAL-SV-HAL:HSH)、Group2(SV-HAL-HAL:SHH)として調査した。
・HSH群:SHH群は全て初期値との比較であるが、Stage1では度数変化は-0.21:-0.27D p=0.317、眼軸は0.07:0.14mm p=0.004であり、Stage2では度数変化は-0.32:-0.05D p<0.001、眼軸は0.16:-0.04mm p<0.001、Stage3では度数変化は-0.18:-0.27D p=0.203、眼軸は0.07:0.08mm p=0.65であった。
・このことからHALは近視の進行度をゆっくりにすると考えらえた。(TY)

2023
246巻

Saggig Eye症候群の顔貌の特徴

American Journal of Ophthalmology 246巻 (2号) 2023

Analysis of facial features of patients with sagging eye syndrome and intermittent exotropia compared to controls.
Kunimi K et al(静岡)
Amer J Ophthalmol 246(2): 51-57, 2023
・Sagging Eye症候群(SES)と他の疾患との顔貌を比較した。
・60歳以上の23名のSES、28名の間欠性外斜視(IXT)と35名の正常者の顔貌を3名の眼科医が評価した。
・平均年齢は72.7±7.4才である。
・評価内容は上眼瞼の沈み具合、眼瞼下垂、下眼瞼の弛みについてスコアをつけた。
・緑内障、視力が悪い人、6△以上の上下斜視、正位状態を保てないIXT、眼筋麻痺の既往者、眼手術既往者やプロスタグランディン使用者などは除外した。
・上眼瞼の沈み具合はSESではCtrl群やIXT群より有意に高かったが(p<0.001)、下眼瞼の弛みはIXT群でCtrl群より有意に高かった(p<0.05)。
・加齢性の眼窩結合織の退化はSESでは上眼瞼で、IXTでは下眼瞼で強いことがわかった(TY)

2023
246巻

眼内レンズ眼での角膜内皮移植術後の眼内レンズ石灰化

American Journal of Ophthalmology 246巻 (2号) 2023

Intraocular Lens Calcification After Pseudophakic Endothelial Keratoplasty
Benjamin Memmi, et al. (France)
Am J Ophthalmol 2023(2);246: 86– 95.
・目的:最近報告されている角膜内皮移植(EK)の合併症は眼内レンズ(IOL)の石灰化である。その発生率や危険因子を調査する。
・対象と方法:1992 年 12 月から 2022 年 6 月の間に施行された 2,700 例の連続した角膜移植術症例を対象とした。
・全てのEK症例では、術後の瞳孔ブロックを回避するために、6 時に虹彩切開術を施行し、前房内に100%空気または空気 80% + SF6ガス 20% を注入した。
・手術後 24 時間は厳密な仰臥位を維持するように指示した。
・結果:2700 例の角膜移植手術のうち、全層角膜移植術(PK)1772例、 EK588例、表層移植術(LKP)340例だった。
・IOL 石灰化は14 例で認められた。13 例はEK後、1 例PK後に発生した。
・EK後の IOL 石灰化の発生率は、術後12か月で 0.4%±0.3%、36か月で 3.1%±0.9%、60か月で 4.5%±1.3% だった。
・IOL 石灰化の発生は、IOLの材質と有意に関連していた。
・13 例のうち 11例 (84.6%) が親水性アクリル IOL 、 1例 ( 0.3%) 疎水性アクリル IOL、1 例 (0.6%) の材質不明の IOLだった。
・DSAEK 眼と比較して DMEK眼で石灰化率が有意に高かった (P < .001)。
・ DMEK後12か月で 0.0±0.0%、36か月で 15.6±5.9% 、 DSAEK後12か月で 0.6%±0.4%、36か月で 0.9%±0.5%。
・また、前房タンポナーデで 80% 空気 + 20% SF6ガスを注入した症例の方が、100% 空気の症例と比較して有意に高かった (P < .001)。
・前房内空気、20% SF6ガス再注入症例では有意差を認めなかった。
・結論:前房内の空気またはSF6ガスは、IOL の表面を変化させるか、IOL 表面の近くでミネラルの過飽和を引き起こすことにより、石灰化を促進する可能性があると仮定されている。
・また空気注入や再注入は血液 – 房水関門の破壊する可能性も考えられる。
・DMEK後の IOL 石灰化が多いことが判明したが、これはDMEK眼の前房内に SF6ガス注入をより頻繁に使用することに関連していると思われる。
・角膜内皮障害のある患者に親水性アクリル IOL を使用しないように注意する。
・患者がすでに親水性の IOLを使用している場合は、SF6ガスを避け、100% 空気を使用する必要がある。(CH)

2023
245巻

黄斑円孔術後視機能の予測

American Journal of Ophthalmology 245巻 (1号) 2023

Full-thickness macular hole: Are supra-RPE granular deposits remnants of photoreceptors outer segments? Clinical implications.
Govetto A et al(Italy)
Amer J Ophthalmol 245(1): 86-101, 2023
・連続する143例149眼の黄斑全層円孔の最低12か月後の術後視力について、形態から検討した。
・RPE上の顆粒状の沈着物は149眼中121眼(81.2%)で見られた。
・円孔縁がスムーズなものは58眼(38.9%)で、凸凹なものは91眼(61.1%)であった。
・また、手術前の経過観察中にスムーズな辺縁から凸凹の辺縁に変化したものは8%にみられた。
・単相関分析では、RPE上の顆粒状沈着物の存在が術後視力の不良に関連していた(p<0.001)。
・単相関と多変量解析で、凸凹の辺縁が術後視力不良に有意に関連していた(p<0.001)。
・また、辺縁の凸凹の症例では術後の形態の回復が有意に不良であった(p<0.001)。
・RPE上の顆粒状沈着物や辺縁の凸凹は黄斑円孔での視細胞の破壊の指標であり、辺縁の凸凹は深層の視細胞の不可逆的な障害を意味しているだろう(TY)

2022
235巻

電子タバコと視力障害

American Journal of Ophthalmology 235巻 (51号) 2022

Association Between E-Cigarette Use and Visual Impairment in the United States,
Abhinav Golla, Angela Chen, Victoria L. Tseng, Samuel Y. Lee, Deyu Pan, Fei Yu, Anne L. Coleman(US-CA)
Am J Ophthalmol 2022; 235:229-240
DOI https://doi.org/10.1016/j.ajo.2021.09.014.

【目的】
米国の成人集団において、電子タバコの使用と視覚障害との間に関連があるかどうかを明らかにする
【対象と方法】
・米国疾病対策予防センターの行動危険因子サーベイランスシステム(BRFSS)
・2016-2018年次の電話調査に回答した、米国50州および3準州の18歳以上の成人1,173,646人
・下記の質問によって電子タバコの使用(現在、以前、または一度もない)を調査
“これまでの人生で、1回でも電子タバコを使用したことがありますか?”
“現在、電子タバコをどう使用していますか?“ ⇒ ”毎日・数日に1回・全く使用しない”
・主要アウトカムは視覚障害
“あなたは目が見えないか、メガネをかけていても目が見えにくいか?” という質問に対する
 ”はい “または “いいえ ” で定義
【結果】
・電子タバコを使用したことがない人と比較して、
現在の電子タバコ使用者の視覚障害の調整オッズ比:1.34(95%CI 1.20-1.48)
以前の電子タバコ使用者:1.14(95%CI 1.06-1.22)
・紙タバコの使用経験がない662,033人のサブグループでは、電子タバコの使用経験がない人と比較して、
現在の電子タバコ使用者の視覚障害の調整オッズ比:1.96(95%CI 1.48-2.61)、
以前の電子タバコ使用者:1.02(95%CI 0.89-1.18)
【結論】
BRFSS 2016-2018集団において、電子タバコの使用経験がない場合と比較した現在の電子タバコ使用者は、紙タバコの喫煙状況とは無関係に、視覚障害の高いオッズと関連していた。(MK)

2022
234巻

ブルーライトカットIOLとAMD発症率

American Journal of Ophthalmology 234巻 (50号) 2022

Effect of Blue Light-Filtering Intraocular Lenses on Age-Related Macular Degeneration:
A Nationwide Cohort Study With 10-Year Follow-up
Jiahn-Shing Lee, Pei-Ru Li, Chiun-Ho Hou, Ken-Kuo Lin, Chang-Fu Kuo, Lai-Chu See(Taiwan)
Am J Ophthalmol 2022;234: 138-146
DOI https://doi.org/10.1016/j.ajo.2021.08.002.

【目的】
白内障手術後の加齢黄斑変性症(AMD)の発症率を明らかにし、ブルーライトフィルター付き眼内レンズ(BF-IOL)と非BF-IOLを使用したAMD発症率を比較
【対象と方法】
・台湾国民健康保険研究データベースを用いて実施した、全国規模のコホート研究
・2008年~2013年に両眼の白内障手術を受けた患者186,591人
・最初の白内障手術日から、AMD発症・死亡・追跡不能・2017/12/31に達する、のいずれか先に発生するまで追跡調査
・BF-IOL群と非BF-IOL群間のベースラインのバランスをとるために、傾向スコア・マッチング(propensity score matching、PSM)を使用
【結果】
・BF-IOLは21,126人(11.3%)、非BF-IOLは165,465人(88.7%)の患者に移植
・BF-IOL群の患者は、非BF-IOL群と比較して、
若年層が多く、男性が少なく、白内障手術年数が異なり、
高収入、非肉体労働者が多く、都市部や郊外の患者が多く、慢性疾患が少ない傾向がみられた
・白内障手術後の平均追跡期間が6.1年(範囲:1~10年)で、
非滲出型AMDと滲出型AMDをそれぞれ12,533人と1655人で発症
・非滲出型AMDと滲出型AMDの発症率(1000人年当たり)は、
BF-IOL群でそれぞれ9.95と1.22
非BF-IOL群で11.13と1.44
・PSM後もAMDの発生率はBF-IOL群と非BF-IOL群の間で統計的差異は観察されず
非滲出型AMD(ハザード比、0.95;95%CI、0.88-1.03)
滲出型AMD(ハザード比、0.96;95%CI、0.77-1.18)
【結論】
台湾では、白内障手術後のAMDの発生率は1000人年あたり11.59人であった。BF-IOLを10年まで使用しても、AMDの発生率において非BF-IOLに対する明らかな利点はなかった。(MK)

2022
243巻

Negative Dysphotopsiaと眼内レンズ挿入方向との関係

American Journal of Ophthalmology 243巻 (11号) 2022

Randomized controlled trial of intraocular lens orientation for dysphotopsia.
Pamulapati SV et al(IL USA)
Amer J Ophthalmol 243(11): 28-33, 2022
・IOLのoptic-haptic接合部の方向について、Positive とNegative dysphotopsia(PDとND)の発症頻度を163例326眼で調査した。
・使用したIOLはTecnis単焦点IOL(ZCB00)で、接合部を垂直82眼、水平72眼、上鼻側94眼、下鼻側78眼に挿入した。
・視野欠損のある患者や最高視力が20/80未満の患者は除外し、術後1週間と4-6週間後に調査した。
・術後1週目と4-6週目のdysphotopsiaの全体の頻度は、Positive Dが20.8%と20.8%、Negative Dが14.4%と10.4%であった。
・接合部の挿入方向別でみると、NDについては、上鼻側挿入群は1週(22.3%)、4-6週後(17.0%)のいずれでも発症率が高く、水平挿入群は1週(13.9%)であったが、4-6週では2.8%であり、有意に発症が少なかった。
・PDについては、有意差はみられなかった(TY)

2022
242巻

正常眼圧緑内障眼の角膜硬度

American Journal of Ophthalmology 242巻 (10号) 2022

Corneal stifness and modulus of normal-tension glaucoma in Chinese.
Xu Y et al(China)
Amer J Ophthalmol 242(10): 131-138, 2022
・正常眼圧緑内障(NTG)108眼、高眼圧の緑内障(HTG)113眼、正常者113眼で角膜の生体力学的解析を行ない、中心角膜厚(CCT)、視野、網膜神経線維層厚(RNFL厚)も同時に評価した。
・角膜解析は開発したCorneal indentation device(CID)とCorvis STを用いた。
・CIDは角膜に接触させた器具で、1mm間隔に角膜をindentして解析するものである。
・角膜硬はNTGでは71.0±10.9N/mで、HTGの77.3±15.6(p=0.001)、正常者の75.6±11.0(p=0.023)より有意に低かった。
・NTGでは角膜硬とCCTは正の相関がみられた(p=0.028)が、HTGでは相関がなかった(p=0.5)。(TY)

2022
242巻

ピロカルピン使用眼での網膜剥離発症

American Journal of Ophthalmology 242巻 (10号) 2022

Retinal detachments associated with topical pilocarpine use for presbyopia.
Al-Khrsan H et al(FL USA)
Amer J Ophthalmol 242(10): 52-55, 2022
・老視に対してピロカルピン点眼を使用していた2例3眼の網膜剥離について検討した。
・第1例は47歳男性で、老眼に対して1.25%ピロカルピン点眼を両眼に使用し始めた3日後から閃光と飛蚊症が発生しており、1か月後に右眼の下耳側の網膜裂孔と網膜剥離が発見された。
・左眼も上方の網膜裂孔と網膜剥離が見つかった。
・第2例は46歳男性で、1.25%ピロカルピン点眼開始5週間後に左眼の視野欠損を自覚し上方の網膜剥離が見つかった。
・ピロカルピンは網膜剥離のリスクが高くなることが知られているので、老眼に対して処方する前にその旨を話をし、殊に近視がある人では散瞳検査をすべきである。(TY)

2022
242巻

角膜内皮移植術後の再移植の危険因子

American Journal of Ophthalmology 242巻 (10号) 2022

Risk Factors for Repeat Keratoplasty After Endothelial Keratoplasty
HYECK-SOO SON, et al. (MD USA)
Am J Ophthalmol 2022(10);242: 77-87.

・目的: 角膜内皮移植術(EK) 後の再手術の危険因子を評価すること。
・対象と方法:IRIS レジストリ (Intelligent Research in Sight) で2013 年から 2018 年の間にEKを受けた18歳以上の患者59,344人が特定され、そのうち 30,600眼(平均年齢72.8±10.5歳)が EK 手術基準を満たしていた。
・フックス角膜内皮変性症(FECD)が最も一般的な疾患(n=14,305; 46.8%) で、その他は水疱性角膜症(BK)、他の原因による角膜浮腫 (n=6714; 21.9%)、再移植 (n=2086; 6.8%) だった。最も多い合併疾患は緑内障 (n=6349; 20.7%)、その他黄斑変性症 (n=2955; 9.7%) 、糖尿病性網膜症 (n=1080; 3.5%)だった。
・結果:再移植の確率は、術後1 年目で8.7%、5 年で 17.4% だった。
・5 年後の移植片の生存率は FECDで 89.0% であったのに対し、BK 72.2%、以前の角膜移植片不全63.4%と低かった。
・最も多い合併症は前房内空気再注入だった。
・再移植の危険因子はBK およびその他の角膜浮腫 (HR 1.4 7.95% CI 1.33-1.61) 、以前の角膜移植片不全 (HR 2.07、95% CI 1.84-2.32)、黒人 (HR 1.25、95% CI 1.11-1.40)、喫煙(HR 1.16、95% CI 1.05-1.27)、保険加入者 (HR 1.29、95% CI 1.03-1.60)、術後の前房内空気再注入(HR 2.24、95% CI 2.05-2.45)、眼内炎 (HR 1.35、95% CI 1.05-1.75)、感染性角膜炎 (HR 1.60、95% CI 1.39-1.84)、嚢胞様黄斑浮腫 (HR 1.39、95% CI 1.21-1.59)、緑内障の既往(HR 1.24、95% CI 1.14-1.35)、移植前または同時の緑内障手術(HR 1.23、95% CI 1.11-1.36)、移植後の緑内障手術(HR 1.53、95% CI 1.39-1.69)だった。
・結論:水疱性角膜症、緑内障の病歴、緑内障手術、以前の角膜移植片不全、黒人、保険プラン、喫煙などが再移植に関連する危険因子として特定された。
・以前の研究で報告されていた性差(男性が多い)は認められなかった。
・4、1型糖尿病は2型糖尿病よりも角膜内皮細胞密度とパキメトリーに大きな影響を与える(CH)

2022
242巻

白内障術後長期の角膜乱視変化

American Journal of Ophthalmology 242巻 (10号) 2022

Comparison of Long-Term Corneal Astigmatic Changes After Cataract Surgery in Eyes With Superior or Horizontal Clear Corneal Incisions
Sunsuke Hayashi. et al, Am J Ophthalmol 242(10), 221-227: 2022
・2.4mm上方及び水平角膜切開白内障手術後(各群43名43眼)の角膜乱視の長期変化を調べた。
・術前、術後SIAが安定した時点(ベースライン:術後約6か月後で2回測定し円柱度数の差が0.5D以内、軸±15°以内)、ベースラインから7年以上経過した時点で調査。垂直/水平(Rx)成分と斜乱視(Ry)に分解して比較
結果
・ベースラインからの平均期間8.90±1.25年。
・直乱視→上方切開、倒乱視→水平切開
・手術からベースライン
・上方切開:0.26D±0.50D倒乱視化
・水平切開:0.26D±0.77D直乱視化 両群で有意差あり (P<0.001)
・斜乱視成分は両眼とも有意差なし
・ベースラインから術後7年以上経過後
・上方切開:0.20D±0.48D倒乱視化
・水平切開:0.262±0.66D倒乱視化 両群で有意差なし (P=0.314) 
・斜乱視成分は両眼とも有意差なし
・本研究で約9年で0.22D倒乱視が進み、手術切開部位によらなかった。
・既報で白内障手術後20年で0.5-0.65Dの倒乱視化が生じる
・直乱視から倒乱視への移行は50歳以上の男性と60歳以上の女性で発症
・上記から
・60歳以上の男性、70歳以上の女性では手術時に倒乱視は水平切開で完全矯正し、0.5D以上の直乱視は垂直切開で矯正を提唱する(MM)

2022
241巻

LASIK とSMILEを比較した前向き無作為対側眼試験における角膜感度と患者から報告されたドライアイ症状

American Journal of Ophthalmology 241巻 (9号) 2022

Corneal Sensitivity and Patient-Reported Dry Eye Symptoms in a Prospective Randomized Contralateral-Eye Trial Comparing Laser In Situ Keratomileusis and Small Incision Lenticule Extraction
KEVIN K. MA, et al. (CA USA)
Am J Ophthalmol 2022(9);241: 248-253

・目的: LASIKおよびSMILE(Small incision femtosecond lenticule extraction) の角膜感度とドライアイの自覚症状を比較する。
・対象と方法:近視患者40人80眼(平均年齢34±8年、24-54歳))を無作為に割り当てて、片眼にLASIK、もう片眼に SMILE を施行した。Cochet-Bonnet角膜知覚計を使用し、術前および術後 1、3、6、および 12 か月の角膜感度を評価した。また、ドライアイ疾患特異的問診票であるOcular Surface Disease Index (OSDI)を受診毎に行った。
・結果:角膜知覚は術後1か月 LASIK vs SMILE (平均 2.1 vs 3.6 cm、P < .001)、3か月 (3.5 vs 5.4 cm、P < .001)、、6か月 (4.7 vs 5.7cm、P < .001) で有意差なく、12か月目の受診時に、両グループともベースラインの角膜知覚に戻っていた (5.9 vs 5.9 cm、P = .908)。
・OSDIは LASIK vs SMILEで術前 (15.3 対 15.1、P = .974)、術後1か月 (14.4 対 15.7、P = .974)、3か月 (10.9 対 13.2、P = .934)、6か月 (9.1 対 10.6、P = .974)、12か月 (8.6 対 9.4、P = .974)。 平均 OSDI は、LASIK (15.3 から 8.6、P = .020) と SMILE (15.1 から 9.5、P = .029)で、術前よりも術後 12 か月で改善した。
・結論: LASIK は SMILE と比較して術後早期の角膜神経切除範囲が大きいものの、自己申告によるドライアイ症状に差はなかった。(CH)

 

2022
240巻

青色光に対する誤解

American Journal of Ophthalmology 240巻 (8号) 2022

The blue light hazard versus blue light hype.
Mainster MA et al(KS USA)
Amer J Ophthalmol 240(8): 51-57, 2022
・青色光による網膜障害は実験室的な結果で、太陽を見つめたとか、硝子体手術時の強い照明等、短時間の異常に強い光によるものであるが、われわれの周囲の環境での光暴露が網膜に障害を及ぼし、AMDなどを発症すると誤解されやすい。
・疫学調査では、短波長カットのIOLはAMDの発症リスクや進行を抑制できないことが分かっている。
・短波長カットレンズでもグレアを抑制することはできない。
・また、白内障や縮瞳、杆体や網膜神経節細胞の変性によって、最適な杆体や神経節細胞の光受容の為の青色光要素は減少する。
・健康的な毎日の生活での青色光暴露は、年とともに、特に女性で減少する。
・青色光は薄暗い環境では転倒のリスクを下げてくれる。
・青色光は短波長カットIOL眼では永久にカットされてしまっている。
・青色光の危険性が、環境光暴露や白内障手術がAMDを起こしやすいという事実がないままに誇大に広報されている。
・青色光を抑制することによって精神的、肉体的な健康や、薄明視あるいは暗所視を抑制することを認識すべき。(TY)

2022
240巻

角膜ヒステレシスと緑内障性の中心視野障害

American Journal of Ophthalmology 240巻 (8号) 2022

A prospective longitudinal study to investigate corneal hysteresis as a risk factor of central visual field progression in glaucoma.
Kamalipour A et al(CA USA)
Amer J Ophthalmol 240(8): 159-169, 2022
・角膜ヒステレシス(CH)が緑内障疑い者や緑内障患者の中心視野障害の進行に影響するかどうかを143例248眼(平均4.8年経過観察)で検討した。
・CHは10-2や24/2の視野進行と有意に相関がみられた。
・CHが低いと、10-2のMDの低下が早かったが(0.07dB/y per 1mmHg p<0.001)、24-2のMDとは関連がなかった。

   Corneal hysteresis and beyond: Does it involve the sclera? 
    Roberts CJ et al(OH USA) J Cat Refract Surg 47(4): 427-429, 2021
    ・強膜が柔らかいと大きく変形するため、角膜の変形も大きく、角膜が柔らかいと誤解されやすい。
    ・強膜の状態が、CHと緑内障性の視神経障害の両者に係っていると考えられる。(TY)

2022
239巻

ヨガ呼吸の眼圧下降効果

American Journal of Ophthalmology 239巻 (7号) 2022

Effect of mindfulness-based stress reduction on intraocular pressure in patients with ocular hypertension: a randomized control trial.
Dada T et al(India)
Amer J Ophthalmol 239(7): 66-73, 2022
・ヨガ呼吸法によるストレス軽減が高眼圧症の眼圧下降に影響するかどうかを検討した。
・眼圧が21を越え30未満の高眼圧症者を対象とした。
・毎日1時間のヨガセッションを6週間行なったGroup1の30名と、コントロールの30名で比較した。
・G1では眼圧の有意な下降が得られたが(23.05±1.17→19.15±1.45 p=0.001)、Ctrlでは変化がなかった(22.55±0.98→22.37±1.07 p=0.107)。
・眼圧の日内変動はG1では4.87±1.13→2.73±0.98(p=0.001)であったが、Ctrlでは4.50±0.86→4.30±0.83(p=0.227)であった。(TY)

2022
238巻

角膜浮腫と角膜移植術:緑内障チューブシャント手術眼での危険因子

American Journal of Ophthalmology 238巻 (6号) 2022

Corneal Edema and Keratoplasty: Risk Factors in Eyes With Previous Glaucoma Drainage Devices
BRADLEY BEATSON, et al. (US MA)
Am J Ophthalmol 2022(6);238: 27–35.
・目的: 緑内障チューブシャント手術 (GDD)術後の角膜不全に関係する危険因子を評価すること。
・対象と方法:GDDを受けた 1610 眼のうち79 眼 (5%) が術後角膜不全を発症し(角膜不全群)、46 眼が角膜移植術を受けた。DSAEK 39眼、全層角膜移植5 眼、人工角膜移植2眼。
・角膜不全にならなかった220眼を対照群とした。
・結果: GDD手術から角膜不全発症までの平均期間は 32 ヶ月で。術後3 年、6 年、9 年で角膜不全の発症率は、それぞれ 4.7%、9.2%、14.8% だった。
・対照群の平均視力 1.11±1.36 logMAR 角膜不全群の最終平均視力は 1.96±1.25 logMARだった (P < .001)。
・角膜代償不全の有意な危険因子は、手術時の年齢(高齢)、フックス角膜ジストロフィーまたはICE症候群の既往、低眼圧、チューブの角膜への接触だった。
・結論: GDD 術後の角膜生存率は経過とともに直線的に減少し、9 年で 85.1% だった。角膜不全は、GDD術後の視力低下を起こす合併症であり、チューブの配置など、このリスクを軽減する可能性のある方法についてさらに調査する必要がある。(CH)

2022
238巻

GDD術後の角膜代償不全リスク

American Journal of Ophthalmology 238巻 (6号) 2022

Corneal Edema and Keratoplasty: Risk Factors in Eyes With Previous Glaucoma Drainage Devices
Bradley B et al. Am J of Ophthalmol 238(6), 27-35: 2022 (USA)
・2009.6.1-2020.4.1までにJohns Hopkins Univ. Wilmer Eye InstituteでGDDを受けた1610眼をレビュー
・症例群:18歳以上の非若年性緑内障でGDDを受け、改善しない角膜代償不全が連続3か月以上持続する症例。 79眼(5%)が角膜代償不全となりうち46眼が角膜移植を受けた。そのうち23眼はチューブのトリミング、位置替えを実施していた。
・対照群:79眼にマッチさせた角膜代償不全をきたさなかった220名220眼をコントロールとした。
・対照群は術者、手術日、十分な経過観察期間(最低6か月以上もしくは一致するケースのフォローアップ期間の長い方)をマッチさせた。対照眼の手術日が症例眼の2年以内にない場合は、他の術者の症例を用いて一致させた(7/220眼)
結果
・平均観察期間 症例群:3年9か月、 対照群:5年3か月
・GDD手術から角膜代償不全まで:平均32(3-98)か月 
・手術から角膜移植まで:41か月(4-109)
・3年,6年,9年での代償不全発症累積確率は4.7%、9.2%、14.8%。
・最終的な視力±SD(LogMAR):症例群 1.96±1.25、 対照群 1.11±1.36(P<0.001)
Risk Factor:
・年齢増加:調整ハザード比(AHR) 1.39
・術後低眼圧:AHR 3.25
・Fuchs dystrophy or ICE syndrome: AHR 9.18
・チューブの角膜接触: AHR 6.37
結論
・GDD後の角膜代償不全のリスクは時間とともに持続する。高齢や、角膜疾患のある者、術後合併症のある場合には角膜代償不全についてのカウンセリングを行うべき(MM)

2022
235巻

高度近視眼ではIOL偏位が起きやすいか

American Journal of Ophthalmology 235巻 (3号) 2022

Clinically significant intraocular lens decetration and tilt in highly myopic eyes: a swept-source optical coherence tomography study.
Wang L et al(China): Amer J Ophthalmol 235(3): 46-55, 2022
・眼軸長が26mm以上の高度近視眼334例334眼についてIOL偏位を調査した。
・IOL偏位は0.4mm以上の中心ずれで7°以上の傾斜ずれをAS-OCTで調べた。
・334眼中、IOLの中心ずれは71眼(21.3%)、傾斜ずれは26眼(7.78%)で発生していた。
・眼軸長が30mm以上と未満とでは、IOL中心ずれは37.1%:14.0%(p<0.001)、odds比は1.65(p-0.002)、傾斜ずれは16.2%:3.90%(p<0.001)、odds比は2.09(p=0.001)であり、有意差があった。(TY)

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