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British Journal of Ophthalmology

2023
107巻

手術室や手順の変化と術後眼内炎の頻度

British Journal of Ophthalmology 107巻 (6号) 2023

Changing operation room practices: the effect on postoperative endophthalmitis rates following cataract surgery.
Haripriya A, Chang DF et al(India)
Brit J Ophthalmol 107(6): 780-785, 2023
・COVID-19の理由で手術室の手順をかえた前後の術後眼内炎の頻度を調べた。
・2020/1-2020/5にAravind Eye Hospitalで行ったGroup-1の56,551例と、2020/5-2020/8に行ったGroup-2の29,011群で比較した。
・G1では患者はガウンを着ず、術者のグローブは患者毎に交換せずに消毒しただけで、手術室の床は患者毎に清掃せず、同じ部屋で多数の患者の術前処置と手術を行った。
・G2では患者はガウンを着て、各症例ごとに術者のグローブを交換し、手術室の床やカウンターは患者毎に清掃し、手術室には一人の患者だけが入って術前処置と手術を行った。
・術後眼内炎発症はG1ではPEAの1/27,454例(0.003%)、M-SICS(manual small-incision cat.surg.)の2/29,097例(0.006%)、G2ではPEAの0/15,061(0.0%)、M-SICSの2/13,950(0.014%)、全体ではG1の3例(0.005%)、G2の2例(0.006%)であり、有意差はなかった。
・G2で行った4つの手順は、費用が高く、無駄な手順だと思われた。(TY)

2023
107巻

10代と成人での近視の進行

British Journal of Ophthalmology 107巻 (4号) 2023

Progression of myopia in teenagers and adults: a nationwide longitudinal study of a prevalent cohort
Alexandre Ducloux, et al. (France)
Br J Ophthalmol 2023(4);107:644–649
・目的:ヨーロッパでは近視の有病率はそれほど高くないが、イギリスで行われた研究では、この数十年の間に10代の近視有病率がほぼ2倍になったという報告もある。今回、ヨーロッパの10代と成人における近視の進行を評価する。
・対象と方法: 2013年1月から2019年1月にかけて、近視の成人および10代の若者630,487人(平均年齢43.4歳±18.2歳、女性59.8%、平均SE-2.8±2.3D)を追跡調査した。データは、フランスのさまざまな地域にある696店の眼鏡店から収集された。近視は等価球面が-0.50 D 以上、高度近視は -6.00 D以上とした。
・近視の進行は、ベースライン時の眼鏡処方から12~26 か月後の再処方までの期間に、平均進行率が年間 –0.50 D以上と定義された。
・結果:平均追跡期間3.1年。近視が進行した割合は7.8%であった。
・若い年齢層(14~29歳)で割合が高く、14~15歳で18.2%、18~19歳の間で13.0%だった。
・その他、65-69歳、70-74歳、75-79歳、80-84歳、85-100歳の各年齢層で、それぞれ11.1%、12.7%、12.6%、10.6%、12.9%と高かった。
・高度近視の発症は、ベースライン時の年齢が若いことと、近視が強いことを組み合わせると、5年間の累積発症リスクは76%に達した。
・19~23歳の年齢層では58%、24~29歳では45%だった。
・結論:若い年齢層で近視が進行する割合が高いこと、近視進行の最も重要な危険因子は、近視の度数よりもむしろ若年層であることが示された。
・65歳以降になると、近視進行の割合が高くなることが観察されたが、これは核白内障の発生により、水晶体の屈折率が近視化したと考えられる。(CH)

2023
107巻

緑内障患者の黄斑部マイクロチスト

British Journal of Ophthalmology 107巻 (4号) 2023

Risk factors for microcystic macular oedema in glaucoma.
Mahmoudinezhad G et al(CA USA)
Brit J Ophthalmol 107(4): 505-510, 2023
・POAGにおけるmicrocystic macular edema(MME)について、315名のPOAG患者において検討した。
・網膜前膜ERM以外の網膜疾患のある患者は除外し、MMEと緑内障性視野進行との関連について調査した。
・315名中25名(7.9%)にはMMEが見られ、殊に下方に多かった(84%)。
・過去にはMMEはPOAGの3.6%程度という報告もある。
・年齢と視野のMDはMME者と非MME者では57.2±8.7:62.0±9.9才(p=0.02)、-9.8±5.7:-4.9±5.3dB(p<0.001)であった。
・ベースラインでMDが悪い事(p=0.001)、年齢が若い事(0.02)がMMEの存在と相関していたが、MMEの存在とERMは相関がなく(p=0.84)、視野のMD値やVFIndex値の悪化とも相関がなかった(p>0.49)。
・Hasegawa T ProS One 2015:e0130175(TY)

2023
107巻

高脂血症治療薬と緑内障発症との関連

British Journal of Ophthalmology 107巻 (1号) 2023

Association between statin use and the risks of glaucoma in Australia: a 10-year cohort study.
Yuan Y et al(Australia)
Brit J Ophthalmol 107(1): 66-71, 2023
・45歳以上のオーストラリア人で、長期間のスタチン使用が緑内障発症に影響するかどうかを検討した。
・スタチンの使用については、2009-2016年の薬剤領収書から同定し、緑内障の発症については、少なくとも3回抗緑内障薬の領収書から同定した。
・以下の症例は緑内障発症群から除外した。①2009年以前から緑内障薬の処方があったもの、②2004~2016の間に1枚あるいは2枚の緑内障薬の処方があったもの(緑内障疑い者)、③3枚以上の緑内障薬の処方があったものでも、Ctrl群が取れなかったもの。
・年齢、性、心血管疾患をマッチさせた緑内障薬の未使用者をCtrlとした。
・緑内障発症は、経過観察期間中に緑内障薬が処方された時とした。
・スタチン内服者の率は緑内障発症群ではCtrl群より多く(40.5%:38.4% p<0.001)、高血圧治療薬内服率も緑内障発症群ではCtrl群より多かった(46.9%:45.5 % p=0.04)。
・スタチンの使用と緑内障の発症との関連はなかった(OR=1.04 95%CI= 0.97-1.11)。
・しかし、スタチン服用が3年を越す群と1年未満群とを比較すると、長期間群での発症率は有意に高かった(OR=1.12 95%CI= 1.04-1.21)。
・スタチンの種類ではロスバスタチン(クレストール)服用者がCtrl群よりも緑内障発症率が高かったが(OR=1.11 95%CI= 1.01-1.22)、他のスタチンでは有意差はなかった。
・スタチンと緑内障発症との関連は不明だが、神経保護作用をもつCoenzyme Q10の濃度低下が影響している可能性なども考えられる。
・ロスバスタチンについては、このCoenzyme Q10濃度低下に対する効果が強いことや、ロスバスタチン内服者は元来、血中コレステロール値が高いことなども考えられるが、詳細は不明である(TY)

2022
106巻

黄斑円孔の自然治癒例の解析

British Journal of Ophthalmology 106巻 (10号) 2022

Clinical characteristics of full thickness macular holes that closed without surgery.
Uwaydat SH et al(Lebanon)
Brit J Ophthalmol 106(10): 1463-1468, 2022
・黄斑円孔の自然治癒78例(平均57.9才)について検討した。
・眼球鈍的外傷の18例、点眼や硝子体内治療18例、特発性黄斑円孔42例である。
・点眼や硝子体内治療18例の中には、POAG、DMR、網膜剥離バックル手術1例、1年以上前の硝子体手術5例などが含まれている。
・logMARは初診時の0.65±0.54(小数点0.22)から、平均33.8±37.1か月後に、0.34±0.45(小数点0.46)に改善したが(p<0.001)、7眼(9.0%)では平均8.6か月後に黄斑円孔が再発した。
・硝子体黄斑牽引は12眼(15.8%)、傍中心窩のPVDは42眼(53.8%)、中心窩の網膜前膜は10例(12.8%)、CMEが49例(62.8%)、網膜下液が20例(25.6%)にみられた。
・多変量解析では初診時視力は円孔縁の高さhight(p<0.001)、最狭部の円孔径(p<0.001)と相関していたが、最終視力は円孔底径(p<0.001)と相関していた。
・円孔閉鎖までの期間(中間値2.8ヶ月)は最狭部の円孔径(p<0.001)と網膜下液の存在(p<0.001)と相関がみられた。
・閉鎖までの平均期間は外傷では1.6ヶ月、外傷なくCME治療を行った眼では4.3ヶ月、未処置眼では円孔径が200μm未満例では4.4ヶ月、200μm以上では24.7ヶ月であった(TY)

2022
106巻

高山病と視神経鞘直径

British Journal of Ophthalmology 106巻 (5号) 2022

Optic nerve sheath diameter changes at high altitude and in acute mountain sickness: meta-regression analyses.
Tsai TY et al(Taiwan)
Brit J Ophthalmol 106(5): 731-735, 2022
・標高の高い所、高山病の時の視神経鞘の直径(ONSD)について、文献調査を行った。
・標高とONSDについての8文献、248例と、高山病の有無ついて調べた5文献454例について調査した。
・ONSDは標高1000m毎に0.14mm増加(95%CI=0.10-0.18 p<0.01)。ONSDは高山病の人でより大きくなっていた。(TY)

2022
106巻

重度のドライアイ疾患の治療のための小唾液腺自家移植における唾液流量

British Journal of Ophthalmology 106巻 (5号) 2022

Use of saliva flow rate measurement in minor salivary glands autotransplantation for treatment of severe dry eye disease
Jia-Zeng Su,et al.(China)
Br J Ophthalmol 2022(5);106:902–907

・目的:重度のドライアイ疾患 (DED) の治療のための小唾液腺 (MSG) 自家移植の小唾液腺の流量 (MSGFR) を測定し、治療効果を検討する。
・対象と方法:重度のDED18眼(17人)。DED の病因は、スティーブンス-ジョンソン症候群15 眼と移植片対宿主病3 眼だった。平均病歴は6年。
・手術前にMSGFRを測定し、より多いMSGFRがある上唇または下唇がドナー部位として選択された。(頬粘膜は、唇のMSGFRが著しく減少している場合のバックアップ)粘膜で覆われた唾液小葉を含む移植片を 2 片採取し、上眼瞼と下眼瞼の両方に用意したレシピエント ベッドに移植した。ドナー片の大きさはレシピエント床の約 1.5 倍のサイズにした。
・口唇の傷は、異種無細胞真皮マトリックスまたは局所粘膜回転フラップ法で修復された。
・レシピエントの上下眼球結膜から円蓋部まで解放し、可能な限りベッドを大きくし、移植片を8-0吸収糸で縫合した。
・患者は 術後3 ヶ月、1 年、その後は毎年追跡調査され、眼科検査とアンケートが再評価された。
・結果:ドナー部位は、下唇12眼、上唇5眼、頬粘膜1眼、ドナー片の平均サイズは 8.1 cm2 (6.8–10.4 cm2) だった。
・移植片の平均術前 MSGFR は 1.7 (範囲: 0.9–3.3) µL/min/cm2で平均涙液流量 0.6 ~ 1.4 µL/minと同等だった。術前 MSGFR >1.785 µL/min/cm2 の症例は、MSGFR ≤1.785 µL/min/cm2 の症例よりも手術後のシルマー試験値の大幅な改善を示した (p<0.05)。
・DED 症状のアンケートで、症状軽減率は 58.8%、シルマー テスト値は 術前0 mm から 術後3ヶ月4 mm に増加した (p<0.05)。平均蛍光染色スコアは、術前12 から術後3ヶ月10 に減少し、その後は安定していた。 TBUT スコアと BCVA は、手術前後で有意差を示さなかった。
・ドナー部位は、結果に影響しなかった。
・合併症 移植片の部分的な壊死が術後5 日目に 1 眼、下唇の局所的な一過性知覚低下が7眼、下眼瞼の移植片の一部が見えてしまう美容上の問題2眼。
・結論:MSG 移植は、重度の DED の治療に有用であることが証明された。術後の治療効果は、術前のMSGFRと正の相関があった。 MSGFR の測定とドナー移植片の部位の選択は重要である。(CH)

2022
106巻

両眼角膜神経変化に対する単純ヘルペス角膜炎瘢痕位置の影響

British Journal of Ophthalmology 106巻 (3号) 2022

Effect of herpes simplex keratitis scar location on bilateral corneal nerve alterations: an in vivo confocal microscopy study
Chareenun Chirapapaisan,et al.( Thailand)
Br J Ophthalmol. 2022 Mar;106(3):319-325.

・目的:生体レーザー共焦点顕微鏡法 (IVCM) を使用して、単純ヘルペスウイルスが原因の瘢痕位置が両側角膜上皮下神経叢に及ぼす影響を評価すること。
・対象と方法:片側単純ヘルペスウイルスが原因の角膜瘢痕がある39人39眼(研究グループ)と、年齢と性別が一致した24人24眼の健康なボランティア(コントロールグループ)。
・研究グループ (39眼) は、角膜瘢痕の位置に基づいてさらに 2 つのサブグループに分けられた。角膜瘢痕の位置が角膜の中央 5 mm ゾーン内にある場合は中央瘢痕 (CS 21眼)、それより外側は周辺瘢痕とした(PS 18眼)。複数の瘢痕のある患者は除外された。
・結果:研究グループの神経密度は、中心角膜 および周辺角膜 (9.13±0.98 and 6.26±0.53 mm/mm2, p<0.001) で、コントロールグループ(22.60±0.77 and 9.88±0.49 mm/mm2)より有意に減少していた。同様に、研究グループの健眼もコントロールグループと比較して、中心部 (17.63±0.91 mm/mm2、p=0.002) および周辺部 (8.36±0.45 mm/mm2、p=0.016) で有意な神経損失を示した。
・CS 眼では中心角膜 (8.09±1.30 mm/mm2)および角膜周辺全体(5.15±0.62 mm/mm2)の両方でコントロールグループと比較し有意に神経密度が減少していた。 (p<0.001)。
・PS眼では中心角膜 (10.34±1.48 mm/mm2, p<0.001)および周辺角膜の瘢痕が認められた側のみ(4.22±0.77 mm/mm2, p<0.001) 神経密度が減少していた。
・研究グループの健眼の神経密度は、CS 眼では中心角膜で減少したが(16.88 ±1.27 mm/mm2、p=0.004)が減少したが、周辺は減少しなかった。PS 眼では患側の瘢痕場所を反映する部分のみ減少が認められたが(7.20±0.87 mm/mm2、p=0.032)、中央は減少しなかった。
・角膜知覚は患眼の角膜全体で低下していた。健眼は低下していなかった。
・結論: HSV が原因の角膜瘢痕を有する患者は、両側角膜上皮下神経密度の減少を示した。そのため、両眼の神経栄養性角膜症が発生する可能性が高くなり、注意する必要がある。
・両眼に影響するのは、第一に神経系の中枢調節が健眼の神経ダウンレギュレーションを開始する可能性、第二に三叉神経脊髄路は一度脊髄まで下降して左右交差してから再度上行することから、HSV が罹患した眼から対側の眼に直接拡散する可能性考えられる。(CH)

2021
105巻

円錐角膜の急性水腫に対する前房内空気注入の有効性

British Journal of Ophthalmology 105巻 (12号) 2021

Compression sutures combined with intracameral air injection versus thermokeratoplasty for acute corneal hydrops: a prospective-randomised trial.
Zhao Z et al(China)
Brit J Ophthalmol 105(12): 1645-1650, 2021
・円錐角膜の急性水腫に対して、角膜圧迫縫合+前房内空気注入(CSAI)と角膜熱形成(TKP)の結果を20例20眼の症例で、6ヶ月の経過を観察した。
・両群とも2週間後には浮腫は軽減した。
・角膜瘢痕の最大厚みは両群に有意差はなかった。
・6か月後の最高視力のlogMARはCSAIは0.52(0.37-0.85)、TKPは0.96(0.70-1.34)で、CSAIの方が有意に良かった(p=0.042)。
・また、角膜内皮密度はCSAIが2677.8±326.7、TKPが1955.3±298.1cells/mmで、有意にCSAIが良かった(p<0.001)。
・角膜曲率でもCSAIの方がより平坦になっていた(52.13±4.92:63.51±5.83D p<0.001)。(TY)

2021
105巻

緑内障外来でのOcular Response Analyzerの活用

British Journal of Ophthalmology 105巻 (1号) 2021

When gold standards change: time to move on from Goldmann tonometry?
Gazzard G et al(UK)
Brit J Ophthalmol 105(1): 1-2, 2021
・眼圧測定にはGoldmann applanation tonometry(GAT)が標準になっている。
・GATは角膜頂点を平坦にする力から眼圧を推定しているため、角膜厚について重大な仮定をしており、角膜厚が薄い場合には低く、厚い場合には高い眼圧となるし、角膜の硬さによって値は変化し、また再測定時の測定誤差が±2mmHg程度ある。
・Ocular Response Analyzer(ORA)は空気で角膜を変形させることによって角膜hysteresisを測定する。
・この角膜hysteresisは緑内障の視野進行と関連があるとの報告が多くある。
・この予測にはORAの方がGATよりも良いという報告も多い。
・緑内障の進行測定にはGATからORAに移行することも良いのではないか(TY)

2020
104巻

倒立による脈絡膜厚変化と隅角底の変化

British Journal of Ophthalmology 104巻 (6号) 2020

Upside-down position leads to choroidal expansion and anterior chamber shallowing: OCT study.
Li F et al(China)
Brit J Ophthalmol 104(6): 790-794, 2020
・脈絡膜厚の変化が前房深度に影響するかどうかを検討した。
・34例68眼の健常者で、脈絡膜厚の変化を調査する指標として1.5分間の倒立検査を行ない、15分間後の変化をみた。
・倒立で脈絡膜厚は226.39±52.44から238.34±54.84μに増加し(p<0.001)、複雑な計算式で求めた脈絡膜循環指数は0.3357±0.0251から0.3004±0.0190に減った(p<0.001)
・前房深度は3.21±0.22から3.13±0.21mmに減少した(p=0.075)。
・強膜岬から500μの部位の隅角の広さは0.65±0.24から0.58±0.20に狭くなった(p=0.007)。
・倒立による眼圧上昇は上強膜静脈圧の上昇だけでは説明できない。脈絡膜厚の増大が隅角閉塞のメカニズムのひとつであろう。(TY)

2020
104巻

正常眼圧緑内障での濾過手術の有用性

British Journal of Ophthalmology 104巻 (5号) 2020

Changes in intraocular pressure during reading or writing on smartphones in patients with normal-tension glaucoma.
Ha A et al(Korea)
Brit J Ophthalmol 104(5): 623-628, 2020
・正常眼圧緑内障患者でスマートフォンを読んだり書いたりすると眼圧が上がるのか、濾過手術既往眼ではどうかについて検討した。
・40例40眼のNTG眼と、38例38眼の濾過手術後のNTG眼で検討した。
・100ルックスの照明下でスマートフォンでの仕事を5、15,25分行い、仕事後の5、15分で検査した。
・Baseline眼圧は点眼群は13.9±1.6、濾過群は13.6±1.7mmHgであったが、仕事5分後は点眼群は15.5±1.8と11.5%の眼圧上昇(p<0.001)、25分後は17.5±2.2と25.9%の眼圧上昇があった(p<0.001)。
・仕事の中止後5分でBaseline以下に戻った(13.1±1.7)。
・濾過群では5分後に14.9±1.7と9.4%上昇(p<0.001)したが、25分後も15.0±1.6と10.3%にとどまり、仕事終了後5分後は14.0±1.9と2.8%であった。
・スマートフォンで眼圧は上昇するが濾過群でその変動は小さかった。(TY)

2020
104巻

レーザー虹彩切開後のPACGへの移行について

British Journal of Ophthalmology 104巻 (3号) 2020

Appositional angle closure and conversion of primary angle closure into glaucoma after laser peripheral iridotomy.
Qiu L et al(China)
Brit J Ophthalmology 104(3): 386-391, 2020
・レーザー虹彩切開LPI後の隅角接触(appositional angle closure:AppAC)とPACが原発閉塞隅角緑内障PACGへ移行する関連を調べた。
・中国人のLPI後のPACの約25%が5年以内にPACGになると言われている。
・5年以上で5回以上の視野結果のあるLPIを受けた患者について検討した。
・AppACの診断は超音波検査で、線維柱帯と虹彩が同位置にあった場合とした。
・PACのPACGへの移行の診断は、緑内障性視神経症の発症と対応した視野欠損の発生があった場合とした。
・58例80眼の平均経過観察期間は6.67±1.33年であり、PACへの移行は20眼で見られ、その頻度はAppACが2象限を越えたものでは7/12(58.3%)で、2象限以下であったもの13/68(19.1%)より有意に多かった(p<0.005)。
・移行しなかった群と比較して移行群では年齢(67.0±8.63:61.15±8.24)と垂直C/D比(0.52±0.16:0.39±0.13)がいずれも有意に高かった(p<0.05)。
・以上から、高齢で、垂直C/D比が大きく、AppACが広く、眼圧変動の大きい方がPACGに移行しやすいことが分かった。(TY)

2020
104巻

後部硝子体剥離と傍乳頭RNFL厚

British Journal of Ophthalmology 104巻 (11号) 2020

Effect of partial posterior vitreous detachment on spectral-domain optical coherence tomography retinal nerve fibre layer thickness measurements.
Liu Y et al(WI USA)
Brit J Ophthalmol 104(11): 1524-1527, 2020
・部分的な後部硝子体剥離(partial PVD:pPVD)がSD-OCTでの傍乳頭網膜神経線維層RNFL厚測定に影響があるかどうかを検討した。
・101例101眼の緑内障疑い者を55眼のpPVD(+)眼と46眼のpPVD(-)眼に分けて検討した。
・pPVD(-)眼には後部硝子体が完全に接着しているものと、後部硝子体が完全に剥離した両者が含まれる。
・RNFL厚はpPDV(+)群では96.7±9.9であり、pPVD(-)群の90.7±14.6μよりも有意に厚かった(p=0.02)。
・殊に下方ではp=0.004、上方ではp=0.008と有意差が強かったが、鼻側(p=0.10)、耳側(p=0.25)では有意差がなかった。
・加齢による変化を考慮しても有意差があった(p=0.05)。
・この理由は一つには硝子体の牽引力が外境界膜に伝わり、RNFLを厚くしているためであろう。
・また、硝子体乳頭牽引症候群では視神経乳頭への牽引力が視神経乳頭の腫脹を来し、網膜へも影響している可能性もある。
・OCTでRNFL厚を検査する場合、pPVDについても考慮する必要があるだろう。(TY)

2020
104巻

視神経乳頭ピット黄斑症に対する手術方法の検討

British Journal of Ophthalmology 104巻 (11号) 2020

Comparison of various surgical techniques for optic disc pit maculopathy: vitrectomy with internal limiting membran (ILM) peeling alone versus inverted ILM flap ‘plug’ versus autologous scleral ‘plug’.
Babu N et al(India)
Brit J Ophthalmol 104(11): 1567-1572, 2020
・23例の視神経乳頭ピット黄斑症(ODP-M)に対して、内境界膜剥離のみのGrp1(8例)、翻転内境界膜で蓋をしたGrp2(7例)、自己強膜で蓋をしたGrp3(8例)の3群に分け、手術結果を検討した。
・手術前の状況には3群に差はなかった。
・術後、全ての群で中心窩厚と網膜下液SRFは減少した(p<0.05)。
・完全な解剖学的復位はGrp1,2,3で、25.0%、85.7%、87.5%、視機能改善は12.5%、28.6%、12.5%であった。
・Grp2の1眼は術後1ヶ月目に全層黄斑円孔となった。
・翻転内境界膜であっても強膜であっても、ピットに蓋をすることは有効であった。
・手術方法は全例でSF6ガス置換を行い、1週間のうつ伏せ姿勢をとった。
・Grp2では乳頭耳側のILMをdiamond-dust membrane scraper(DDMS)を使用して翻転させた。
・Grp3では1x1mmの強膜表層を25Gトロカールを23Gに変えて硝子体内へ移動させ、DDMSを用いてピット部に蓋をした。(TY)

2020
104巻

網膜剥離手術時のILM剥離の功罪

British Journal of Ophthalmology 104巻 (9号) 2020

Role of internal limiting membrane peeling in the prevention of epiretinal membrane formation following vitrectomy for retinal detachment: a randomised trial.
Kumar V et al(India)
Brit J Ophthalmol 104(9): 1271-1276, 2020
・裂孔原性網膜剥離に対する硝子体手術時のILM剥離と黄斑前膜ERM形成について検討した。
・症例は黄斑剥離期間が3ヶ月以内、proliferative vitreoretionpathy gradeがC1以下、黄斑症の既往がない患者60眼である。
・PPVのみ行ったGroup1(30眼)、ILM剥離を行ったGroup2(30眼)に分けて検討した。
・剥離は全例治癒したが、黄斑部ERMはGrp1では6眼20%、Grp2では0眼であった(p=0.002)。
・最終的なCDVAは両群間で有意差はなかった(p=0.43)。
・神経線維層障害はGrp1では0眼、Grp2では12眼40%で発生したが(p<0.001)、最終視力には影響していなかった(p=0.84)。
・最終CMTはGrp1では266.0±37.5μ、Grp2では270.0±73.7であり、有意差はなかった(p=0.62)。(TY)

2020
104巻

日本における治療歴のない糖尿病性黄斑浮腫の実際の管理:STREAT-DME研究における抗VEGF療法の有無による2年間の視力結果

British Journal of Ophthalmology 104巻 (9号) 2020

Real-world management of treatment-naïve diabetic macular oedema in Japan: two-year visual outcomes with and without anti-VEGF therapy in the STREAT-DME study
Masahiko Shimura, et al. (東京医科大学)
Br J Ophthalmol. 2020;104 (9):1209-1215.
目的:治療歴のない糖尿病黄斑浮腫(DME)に対する2年間の治療後の最高矯正視力(BCVA)の結果を調査すること。
対象と方法:2010年から2015年の間、2年間治療、経過観察できた治療歴のないDMEの合計2049眼(27施設)。治療パターンによって、抗VEGF単剤療法グループ(グループA)、抗VEGF療法+薬剤および他の治療の併用療法グループ(グループB)、抗VEGF療法なしのグループ(グループC)に分類された。
DMEの治療は次のように分類:(1)抗VEGF剤(硝子体内ベバシズマブ(IVB:1.25 mg / 0.05 mL)、ラニビズマブ(IVR:0.5 mg / 0.05 mL)またはアフリベルセプト(IVA:2.0 mg / 0.05 mL)) 、(2)コルチコステロイド療法(TA療法(硝子体内TA(IVTA:4 mg / 0.1 mL)またはテノン嚢下TA療法(STTA:20 mg / 0.5 mL)))、(3)黄斑領域のレーザー光凝固術(4)硝子体切除術。
BCVAが0.3 logMAR(15文字)増加した場合「改善された」と定義され、0.3logMAR(15文字)減少した場合「悪化した」と定義。
結果:A群427眼(20.9%)、B群807眼(39.4%)、C群815眼(39.8%)のtotal 2049眼。
全体では、ベースラインBCVAは0.44±0.37logMARで、最終BCVAは0.40±0.42logMARに有意に改善した(p <0.001)。平均改善は-0.04±0.40logMAR。20/40以上の最終BCVAが46.3%で得られた。
ベースラインCMTは443.8±154.8µmで、最終CMT 335.6±154.8 µm(p <0.001)と大幅に減少し、CMTの改善は-108.2±186.8 µmだった。合計451眼(22.0%)が「改善」され、289眼(14.1%)が「悪化」した。
1234眼(60.2%)が2年間に抗VEGF剤を投与され、平均投与回数は3.8±3.3回。さらに、1077眼(52.6%)はTA 2.0±1.3回を受け、746眼(36.4%)は黄斑光凝固術1.9±1.4回を受け、597眼(29.1%)は硝子体切除術1.1±0.3回を受けた。
治療パターンに応じた2年間の結果
グループA(427眼)では、ベースラインBCVAは0.45±0.35で、最終BCVA 0.37±0.42と大幅に改善した(p <0.001)。ベースラインCMTは446.4±144.1µm、最終CMT 329.0±126.5 µmと大幅に減少した(p <0.001)。
105眼(24.6%)が「改善」し、51眼(11.9%)が「悪化」した。
最終的なBCVAは211眼(49.4%)で20/40よりも良好だった。427眼すべてに抗VEGF剤を投与し、2年間で平均4.3±3.6回。IVB 191眼(2.0±1.4回)、IVR 224眼(3.7±3.0回)、IVA 138眼(4.7±3.3回)だった。
グループB(806眼)では、ベースラインBCVAは0.48±0.36で、最終BCVAは0.46±0.40と有意な変化はなかった(p = 0.2253)。ただし、CMTは472.8±160.1 µmから348.6±151.1 µmに大幅に減少した(p <0.001)。
188眼(23.3%)が「改善」し、141眼(17.5%)が「悪化」した。
最終的なBCVAは314眼(38.9%)で20/40よりも良好だった。
806眼すべてに抗VEGF剤が投与され、2年間で平均3.6±3.1回。IVB 444眼(2.4±2.2回)、IVR 354眼(3.1±2.6回)、IVA 198眼(3.7±2.8回)だった。
他の治療法は、524眼(64.9%)がTA療法を受け(2年間で2.1±1.4回、IVTA 101眼(1.8±1.2回)とSTTA 458眼(2.0±1.3回)を含む)、361眼(44.7%)が黄斑光凝固術、295眼(36.6%)が硝子体切除術を受けた(表3)。
グループC(815眼)では、ベースラインBCVAは0.40±0.38であり、最終BCVA 0.35±0.44(p <0.001)と大幅に改善した。CMTは413.7±149.2 µmから326.2±133.5 µm(p <0.001)に大幅に減少した。
158眼(19.4%)が「改善」し、97眼(11.9%)が「悪化」した。
最終的なBCVAは424眼(52.0%)で20/40よりも良好だった。
553眼(67.9%)が2年間にわたってTA療法(1.9±1.2回)を受け、そのうち61眼がIVTA 61眼(1.7±1.0回)、508眼がSTTA 508眼(1.9±1.2回)、385眼(47.2%)が黄斑光凝固術、302眼(37.1%)が硝子体切除術を受けた。
BCVAの改善は、グループ間で有意差を示し、グループAよりもグループBで悪化した(p = 0.020)。ベースラインBCVAは他のグループよりもグループCで有意に良かった(p <0.001)が、最終的なBCVAは他のグループよりもグループBで有意に悪かった(p <0.001)。
結論:ベースラインBCVAが20/40以上の症例の68.0%が最終BCVA20/40より良好だったが、ベースラインBCVAが20/40以下の症例だと31.5%だった。BCVAが悪化する前に、DMEの治療を開始する必要がある。
DMEの治療の最終目標は20/40を超える社会的に有用なBCVAを維持することであるが今回の調査ではわずか46.3%だった。 (CH)

2020
104巻

視神経乳頭周囲神経線維層(cpRNFL)による緑内障進行の評価

British Journal of Ophthalmology 104巻 (8号) 2020

Thinning rates of retinal nerve layer and ganglion cell-inter plexiform layer in various stages of normal tension glaucoma.
Inuzuka H et al(岐大)
Brit J Ophthalmol 104(8): 1131-1136, 2020
・黄斑部の網膜神経線維(mRNFL)、黄斑部の節細胞内網状層(mGCIPL)、視神経乳頭周囲神経線維層(cpRNFL)を218眼の正常眼圧緑内障NTGで調べた。
・NGTの218眼をMDが軽度(MD>-6dB)、中等度(-6dB≧MD≧-12dB)、高度(-12dB>MD>-20dB)に分け、mRNFL、mGCIPL、cpRNFL厚の年間変化量を解析した。
・この3群間で、この3つの厚みの初期値には、上鼻側のmRNFLを除き、全ての象限で有意差があった(p<0.0001)。
・mRNFL、mGCIPL、cpRNFL厚の変化量は-0.38±0.32μm/y、-0.62±0.46μm/y、-0.86±0.83μm/yであった。
・mRNFLとmGCIPLの年間変化量はどの象限でも3群間に有意差はなく同じ様に菲薄化が進んでいたが、cpRNFL厚の年間変化量は全ての象限で3群間に有意差がみられ(全てp<0.0001)、進行した群程、菲薄化の進行度が遅くなっていた。(TY)

2020
104巻

高度近視眼の白内障手術後の眼圧上昇

British Journal of Ophthalmology 104巻 (8号) 2020

Early transient intraocular pressure spike after cataract surgery in highly myopic cataract eyes and associated risk factors.
Zhu X et al(China)
Brit J Ophthalmol 104(8): 1137-1141, 2020
・高度近視を伴う白内障(HMC)で白内障手術後の一過性眼圧上昇について検討した。
・眼圧測定は術前、1日後、3日後、1W後、3M後であり、眼軸ALや前房深度ACD、乳頭偏位、β帯萎縮(β-PPA)なども術1週間後に写真撮影して計測した。
・94例94眼のHMCと、67例67眼の加齢白内障のCtrl群で調査した。
・術1日目の一過性眼圧上昇はCtrl群で10%、HMC群で28%で有意差があった(OR=3.277 p<0.05)。
・一過性眼圧上昇のあったHMC群はスパイクのなかったHMC群に比較して、男性が多く、ALが長く、ACDが浅く、乳頭tiltが大きく、β-PPAが大きかった(いずれもp<0.05)。
・多変量解析でも同様であった(p<0.05)。(TY)

2020
104巻

逆立ち姿勢で脈絡膜は拡張し、前房は浅くなる

British Journal of Ophthalmology 104巻 (5号) 2020

Upside-down position leads to choroidal expansion and anterior chamber shallowing: OCT study
Li F, Li H, Yang J, et al(China)
British J Ophthalmol 104(5):790-794, 2020
【背景】
脈絡膜厚(CT)の動的変化が浅前房化を引き起こすかどうかを調べる
【方法】
健常ボランティア34名
脈絡膜厚(CT)の動的変化を調べるため、被験者は1.5分間、上下逆さまの姿勢をとった
眼圧(iCareで測定)、脈絡膜・前房のOCT画像を、ベースライン時・逆さま姿勢後・15分間安静にした後に取得
眼圧・前房深度・脈絡膜血流の変化を比較
【結果】
34名の被験者の68眼を解析
1.5分間逆さにした後、CTは226.39±52.44μmから238.34±54.84μmへと有意に増加(p<0.001)。
脈絡膜Flow indexは逆さ姿勢で0.3357±0.0251から0.3004±0.0190に減少し、前房深度(3.21±0.22mm→3.13±0.21mm、p<0.001)と強膜岬から500μmでの隅角開口距離(0.65±0.24mm→0.58±0.20mm、p=0.007)の減少が認められた
Pearson相関分析では、ベースライン時のCTとCT増加が正の関係にあることが示された(p=0.001)。
【結論】
座位から逆立ち姿勢に体位を変化させると、脈絡膜肥厚、浅前房化、脈絡膜血流低下を伴う眼圧上昇が認められた。今回のデータは脈絡膜肥厚と前室浅化の関係のエビデンスを示すものであり、隅角閉鎖の病態との関連性を示唆するものである(MK)

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