眼科JOURNALトップ > Ophthalmology

Ophthalmology

2023
130巻

原発隅角閉塞症に対するレーザー虹彩切開の効果

Ophthalmology 130巻 (8号) 2023

Fourteen-year outcome of angle-closure prevention with laser iridotomy in the Zhonghan Angle-Closure Prevention Study. Extended follow-up of a randomized controlled trial.
Yuan Y et al(China)
Ophthalmology 130(8): 786-794, 2023
・原発隅角閉塞症疑い(PACS)に対するレーザー周辺虹彩切除(LPI)の効果を14年間観察し、原発閉塞隅角症(PAC)に移行するリスク因子を検討した。
・50歳から70歳の889名の両眼のPACSを対象とし、ランダムに片眼にLPIを行ない、他眼をCtrlとした。
・周辺隅角癒着、眼圧が24mmを越える、あるいは急性隅角閉塞(AAC)が発生した場合をPACと判定した。
・14年間でLPI眼の480眼(390+90)とCtrl眼の462眼(388+74)が脱落したが、LPI眼では409眼(889-480)中33眼(8.1%)、Ctrl眼では427眼(889-462)中105眼(24.6%)がPACに移行し(p<0.01)、PACへ移行する率はCtrl眼と比較するとLPI眼ではHR=0.31(95%CI=0.21-0.46)であった。
・その中で、LPI眼では1眼、Ctrl眼では5眼がAACを発症し、LPI眼では2眼、Ctrl眼では4眼が原発隅角閉塞緑内障(PACG)に移行した。
・14年間観察すると、Ctrl眼と比較してLPI眼では核白内障がより強く、眼圧が高く、隅角が広く、周辺部前房深度がより深かった。
・PACへ移行するリスクが高いものは、Ctrl眼では高眼圧(HR=1.11)、周辺部前房深度が浅い(10%深いとHR=0.70)、中心部前房深度が浅い(0.1mm深いとHR=0.88)ことであり、LPI眼では高眼圧(HR=1.14)、周辺部前房深度が浅い(10%深いとHR=0.45)、暗室うつ伏せテストでの眼圧上昇が少ない(1mmHg上昇するとHR=0.87)ことであった。(TY)

2023
130巻

多分割眼鏡( DIMS)と近視進行の予防

Ophthalmology 130巻 (5号) 2023

The efficacy of defocus incorporated Multiple Segments Lenses in slowing myopia progression. Results from diverse clinical circumstances.
Liu J et al(China)
Ophthalmology 130(5): 542-550, 2023
・焦点をぼかす多分割眼鏡(Defocus incorporated multiple segments(DIMS)眼鏡が近視進行を予防できるかを検討した。
・DIMSはHOYAビジョンケア部門と香港理工大学が共同開発したものである。
・DIMSを使用した3639例と、単焦点SV眼鏡を使用した6838例とで比較した。
・主観的な屈折での球面等価量で評価した。
・症例の年齢は6-16歳(11.02±2.53歳)で、基準時の屈折度は0.00~-10.0D(ー2.78±1.74D)。
・1年経過と2年経過を調査した。DIMS群とSV群は、1年後は-0.50±0.43D:-0.77±0.58D(p<0.001)、2年後は-0.88±0.62D:ー1.23±0.76D(p<0.001)で、DIMS群の近視進行が遅かった。
・近視進行が0.25D以下だった例は1年後は40%と19%(p<0.001)、2年後は33%と20%、1.0D以上進行した例は1年後は9%と22%(p<0.001)、1.5D以上の進行例は2年後は12%と29%(p<0.001)であった。(TY)

2023
130巻

硝子体注射を繰り返すとドライアイが改善する?

Ophthalmology 130巻 (5号) 2023

Associations between Serial Intravitreal Injections and Dry Eye.
Malmin A, Thomseth VM, Førland PT, Khan AZ, Hetland HB, Chen X, Haugen IK, Utheim TP, Forsaa VA. (Norway)
Ophthalmology. 2023;130(5):509-515. doi: 10.1016/j.ophtha.2023.01.009. Epub 2023 Jan 21. PMID: 36693594.
【目的】
nAMDに対して抗VEGF治療を受けた患者において、連続する硝子体内注射(IVI)が眼表面およびマイボーム腺(MG)に及ぼす影響を検討
【対象と方法】
抗VEGF薬による片眼IVI投与を受けているnAMD患者
僚眼を対照とした
涙液検査と眼表面検査は、IVIの最低4週間後に1回ずつ施行
*注射時の麻酔・消毒プロトコルは下記
【主要評価項目】
以下をレトロスペクティブに評価;
上下のMG消失、涙液メニスカスの高さ(TMH)、球結膜充血(BR)スコア、
非侵襲的涙液崩壊時間(NIBUT)、涙液浸透圧(TOsm)、シルマーテスト、角膜染色、
フルオレセイン涙液崩壊時間(TBUT)、マイボーム腺発現率(ME)、マイバムの質
【結果】
54-95(平均77.5)歳の患者90名
治療眼におけるIVIの数は2-132(中央値19.5)回
上眼瞼の平均MG喪失率は、
治療眼で19.1%(SD、11.3)、
対照眼で25.5%(SD、14.6)であった(P = 0.001)
下眼瞼では、MG損失の中央値は、
治療眼で17.4%(四分位範囲[IQR]、9.4-29.9)、
対照眼で24.5%(IQR、14.2-35.2)であった(P < 0.001)
球結膜充血(BR)スコアの平均は、
治療眼では1.32(SD、0.46)であったのに対し、
対照眼では1.44(SD、0.45)であった(P = 0.017)
涙液メニスカスの高さ(TMH)の中央値は、
治療眼で0.36mm(IQR、0.28-0.52)、
対照眼で0.32mm(IQR、0.24-0.49)であった(P = 0.02)
以下は治療眼と対照眼で差はみられず;
非侵襲的涙液崩壊時間(NIBUT)、涙液浸透圧(TOsm)、シルマーテスト、角膜染色、
フルオレセインTBUT、マイボーム腺発現率(ME)、マイバムの質
【結論】
nAMD患者において、術前にPVP-Iを塗布した上で抗VEGF薬による静脈内注射を繰り返すと、非治療群と比較して、MGロスの減少、涙液量の増加、炎症徴候の減少がみられた。
この殺菌方法は、眼表面に有益な効果をもたらす可能性がある。

【注射時の麻酔・消毒プロトコル】
防腐剤非含有の塩酸テトラカイン1%点眼液(Minims, Bausch & Lomb)を1滴点眼
PVP-I 5%点眼液(Betadine; Alcon)を1滴点眼
眼瞼縁、睫毛、眼周囲の皮膚をPVP-I 5%で洗浄
開瞼器の後、IVI投与前に再びPVP-Iを点眼
注射後の生理食塩水による消毒洗浄なし
抗生物質や眼軟膏の使用など、注射後の局所治療もルーチンに行わず(MK)

2023
130巻

緑内障と角膜ヒステレシス

Ophthalmology 130巻 (4号) 2023

Corneal hysteresis for the diagnosis of glaucoma and assessment of progression risk.
Sit AJ et al(MN USA)
Ophthalmology 130(4): 433-442, 2023
・緑内障の診断や緑内障の進行の判断に対する角膜ヒステレシス(CH)の有用性について文献をレビューした。
・2022/7迄にPubMedに掲載された論文423件から13件を厳選して調査した。
・CHは弾性と粘性の両方を反映している。
・弾性は持続力に対する変形の大きさを決定し、粘性は組織の変形や回復の速度を決定する。
・POAG、PACG、PE緑内障、偽落屑症候群ではCHの値は正常者よりも低かった。
・高眼圧者や緑内障点眼薬治療者での低いCHの解釈は複雑である。
・しかし、未治療のNTG者のCHは、同じ眼圧の正常者よりも低い。
・また、POAG者でCHが低い場合、眼圧が十分にコントロールされていても、緑内障の進行リスクは高いだろう。(TY)

2023
130巻

コロナワクチン接種と副作用について

Ophthalmology 130巻 (3号) 2023

Ocular adverse events after coronavirus disease 2019 mRNA vaccination. Matched cohort and self-controlled case series studies using a large database.
Hashimoto Y et al(東大)
Ophthalmology 130(3): 256-264, 2023
・COVID-19のmRNAワクチン接種後の眼副作用について検討した。
・2021/2~2021/9にCOVID19ワクチン(Pfizer-BioNTech製)を初回接種後21日間、2回目接種後84日間について、self-controlled case series(SCCS) studyで、各99,718人について解析検討した。
・イベントは、ぶどう膜炎、強膜炎、網膜静脈閉塞症、視神経炎を取り上げた。
・初回接種後、副作用イベント件数はワクチン接種者:Ctrlでは29件:21件、2回目接種後では79件:28件であった。
・接種者とCtrl者での積算副作用発症件数の差は、人口10万人あたり、初回接種後は2.9件(95%CI=-14.5~19.1)、1.1倍(0.6~2)、2回目接種後は51.3件(16.2~84.3)、1.8倍(1.2~2.9)接種者が多かった。
・2回目接種後は、RVOだけでは29.4件(8.3~48.7)、3.3倍(1.3~16.1)接種者が多かった。
・ただし、SCCS法でこの期間内で発症する率を、それ以降の期間内で発症する率とで比較すると、初回接種後と2回目接種後の期間での発症率は、0.89(0.62~1.28)と0.89(0.71~1.11)であり、ワクチンが眼副作用の発症リスクを増やすとは言えないことが分かった。(TY)

2023
130巻

黄斑円孔の手術までの期間と術後視機能

Ophthalmology 130巻 (2号) 2023

The effect of macular hole duration on surgical outcomes. An  individual participant data study of randomized controlled trials.
Murphy DC et al(UK)
Ophthalmology 130(2): 152-163, 2023
・特発性全層黄斑円孔(iFTMH)手術後の視力改善に対する術前迄の症状持続時間について検討した。
・2000~2022年の文献を調査した。
・適合した12文献940眼の結果で、症状の持続の中間値は6か月(4分位値は3-10ヶ月)である。
・初回治療での閉鎖率は81.5%であり、閉鎖可能性と症状の持続時間には相関がみられた。
・ロジスティック回帰分析では、手術が1か月遅れる毎に閉鎖率は0.965倍(95%CI=0.935-0.996 p=0.026)であった。
・ILM剥離、ILM片移植、術前の良いBCVA、術後うつ伏せ姿勢、iFTMHが小さいことが、初回閉鎖率に相関していた。
・閉鎖が得られた症例の術後最高視力の中間値はlogMARで0.48(20/60)であったが、ロジスティック回帰分析では、手術が1か月遅れる毎にlogMARで0.008悪くなっていた(95%CI=0.005-0.011 p<0.001)。
・手術までの期間は解剖学的にも視機能的にも影響があり、できるだけ早期の手術が望まれる。(TY)

2023
130巻

アルコール摂取と落屑緑内障との関連について

Ophthalmology 130巻 (2号) 2023

Long-term alcohol consumption and risk of exfoliation glaucoma or glaucoma suspect status among United States Health Professionals.
Hanyuda A et al(慶応大)
Ophthalmology 130(2): 187-197, 2023
・総アルコール摂取量(ビール、ワイン、蒸留酒)と落屑緑内障あるいは落屑緑内障疑者(XFG/SFGS)との関連を調査した。
・Nurse Helth Study(1980-2018)、Health professionals Follow-up Study(1986-2018)、Nurses’ Health Study II(1991-2019)に載った195,408名について2年毎に調査した。
・40歳以上で、食事や眼科所見が確認され、XFG/XFGSではない人を対象とした。
・積年で6,877,823眼の経過観察中に705眼でXFG/XFGSが判明した。
・全アルコール摂取量が多いほど、有意にXFG/XFGSのリスクが増えていた。
・推定多変量調整比較リスク(MVRR)を求めると、1日15g以上のアルコール摂取者では非摂取者の1.55倍(95%CI=1.17-2.07 p=0.02)であった。15gのアルコール量:5%ビール=300cc、15%日本酒=100cc。
・この値は緑内障の家族歴のある人では1.17倍(95%CI=0.56-2.44 p=0.34)であったが、家族歴のない人では1.64倍(95%CI=1.16-2.33 p=0.01)であった。
・XFG/XFGSと診断される前4年間の1日平均15g以上の摂取者は非摂取者の1.65倍(95%CI=1.25-2.18 p=0.002)であった。(TY)

2022
7巻

ECPの既往はその後のレクトミーの成績に影響を与えるか

Ophthalmology 7巻 (260号) 2022

Does prior endoscopic cyclophotocoagulation (ECP) affect subsequent trabeculectomy outcomes?
Abhijit Anand Mohite, et al. Graefe’s Archive for Clinical and Wxperimental Ophthalmology 7(260): 1975-1982, 2022 

・Retrospective case-controlled comparative study
・ECP後にTLEを行なったGroup1
・初回手術としてTLEを行なったGroup2
・ECPもしくはPhaco -ECPを行なった62眼のうち12眼(19.4%)が追加手術を行ない、9眼がGroup1に組み入れられた。(2眼は観察期間が2年以内、1眼はバルベルトインプラントを実施)
・ECPから追加手術までの平均期間:22.7(3.2-76.8) month、 66.7%は6ヶ月以降
・Group2は同時期に実施し、緑内障の病期、人種、年齢、執刀医、眼圧下降薬、過去のレーザー手術についてGroup1にマッチした9眼を対象とした。
・最低2年間術後フォロー 4年以上経過観察したのは 55.6% (5/9) vs 66.7% (6/9)
・ベースライン
・眼圧 23.7±7.7 mmHg vs 26.0±6.7 mmHg  (p=0.452)  
・点眼 3.4±0.9 vs 2.8±1.4 (p=0.274)
・2年後の結果
・眼圧 10.6±5.2 mmHg vs 12.9±4.0 mmHg  (p=0.285)  
・点眼 0.1±0.3 vs 0.1±0.4 (p=0.931)
・Complete success (IOP<16mmHg w/o med.) rate 77.8 % vs 88.9 % (p=0.527)
・Qualified success (IOP<16mmHg w/ med.)は両群とも11.1%
・Combined success rate (IOP<16mmHg) 88.9%(8/9) vs 100%(9/9) (p=0.318) 
・両群とも内服は無い
・Failure (追加濾過手術、光覚喪失)  11.1% vs 0% (p=0.318)
・Group1 で光覚喪失 Group2では36ヶ月後にBGI実施している
・低眼圧、ニードリング、CME、遷延性のぶどう膜炎、再手術の割合に有意差なし
・結論
・ECP既往があってもレクトミーの手術成績に影響はないが、ECPは初回手術として安全でその後のレクトミーの必要を減らす可能性がある。(MM)

2022
129巻

喫煙と緑内障性視野障害の進行度

Ophthalmology 129巻 (11号) 2022

Impact of smoking on visual field progression in a log-term clinical follow-up.
Mahmoudinezhad G et al(CA USA)
Ophthalmology 129(11): 1235-1244, 2022
・最低3年以上の経過があり(中間値12.5年)、5回以上の視野測定のある354名(年齢の中間値64.8才)のPOAGを対象として、喫煙が24-2のMDに影響しているかについて検討した。
・対象者の35%(124/354名)が黒人で、42.1%(149名)が喫煙歴があり、59.8%(168名)が飲酒者である。
・多変量解析では喫煙強度が高いほど、視野障害の進展が早かった(-0.05dB/年/10pack-years、95%CI=-0.08~-0.01/dB/年/10 pack-years p=0.010)。
・視野の進行は少なくとも3か所で-1.0dB/年の感度低下があった場合とした。
・pack-years(たばこの箱年)とは、たばこ消費量の尺度で、1日1箱(20本)、1年間吸い続けた消費量を1単位としている。
・大量喫煙者(20 pack-years以上)では視野の進行は非喫煙者の2.2倍の進行度であった(OR=2.21 95%CI= 1.02~-4.76 p=0.044)。(TY)

2022
129巻

戸外活動による近視予防効果

Ophthalmology 129巻 (11号) 2022

Time outdoors in reducing myopia. A school-based cluster randomized trial with objective monitoring of outdoor time and light intensity.
He X et al(China)
Ophthalmology 129(11): 1245-1254, 2022
・上海の24校で、6歳から9歳の-0.5D以下の生徒6295名の右眼を対象として戸外活動が近視進行に与える影響について検討した。
・戸外活動時間は、1群2329名ではCtrl群より+40分、2群1929名では+80分として2年間調査した。
・戸外時間と戸外の光量は腕に付けた器具で測定した。
・2年間の-0.5D以上の近視化はCtrlでは24.9%、1群では20.6%、2群では23.8%に起こったが、Ctrl群で補正すると、1群では16%、2群では11%に発生していた。
・1群では-0.84Dの近視化と0.55mm眼軸長延長、2群では-0.91D、0.57mm、Ctrl群では-1.04D、0.65mmであった。
・戸外活動時間と光量は1群では127±30分/日と3557±970lux/分、2群では127±26分/日と3662±803lux/分、Ctrl群では106±27分/日と2984±806lux/分であり、1群、2群間には差はなかったが、Ctrl群より有意に多かった。
・5000 luxでの120-150分の戸外活動あるいは、蓄積光量が60万-75万luxでは、近視化の発生リスク比(IRR)を15%~24%減らす事ができた。(TY)

2022
129巻

クロロキン網膜症と黄斑部厚 

Ophthalmology 129巻 (9号) 2022

Rapid macular thinning is an early indicator of hydroxychloroquine retinal toxicity.
Melles RB et al(CA USA)
Ophthalmology 129(9): 1004-1013, 2022
・黄斑部厚がクロロキン網膜症の早期で客観的な指標になるかどうかを検討した。
・301名のクロロキンの長期服用者を対象として、最低4年間、最低4回のETDRSリング内のOCT検査を行い、通常のOCTやHPの10-2プログラムでのデータと比較した。
・219名のほぼ安定した長期服用者の網膜菲薄化は0.62±0.45μm/年であったが、82名では比較的急速に網膜菲薄化の時期があり、3.75±1.34μm/年であった。
・この中の38名では通常のOCTや10-2プログラムでも異常が認められ、総菲薄化量は25.1±6.2であり、通常の方法では異常がみられなかった患者での15.7±4.0μmとは有意差があった(p<0.01)。
・クロロキンによる網膜菲薄化はある時期に急速に起こる。
・ETDRSリング内の内層、外層の黄斑厚測定は通常の方法での異常がみつかる数年前に検出することができた。(TY)

2022
129巻

習慣的なコーヒー摂取はPOAGのリスクを上げる

Ophthalmology 129巻 (9号) 2022

Habitual Coffee Consumption Increases Risk of Primary Open-Angle Glaucoma
A Mendelian Randomization Study
Xi Li et al. Ophthalmology 129(9):1014-1021, 2022

・カフェイン摂取は糖尿病、いくつかの癌、パーキンソン病、アルツハイマー病と逆相関の報告があるが、眼圧に関してはさまざまな報告がある。
・既報では、コーヒー摂取者の方が眼圧が高く、緑内障のリスクが高くなるという報告が多いが、
・Blue Mountains Eye Study: 健常被険者を対象として習慣的なコーヒー摂取と眼圧には関係性がない
・日本のスタディ:コーヒー摂取者の方が眼圧が低い
・というものもある。
・UK Biobankのスタディでは遺伝的素因が強い場合、コーヒー摂取量が多いほど眼圧上昇、緑内障の頻度が高いと報告されているが、人口レベルでは相関は見られなかった。(昨年11月の勉強会で紹介 Ophthalmology 128(6),2021)・メンデルランダム化を用いて、ヨーロッパ人を対象として、コーヒー摂取と関連する遺伝子を同定 POAGのリスクを評価
・結果
・独立した遺伝子多型とPOAGとの関係
・コーヒー摂取(カップ/日)と関連する遺伝子多型        6  OR 1.241
・コーヒー摂取(多いvs 少ない/なしと関連する遺伝子多型    3   OR 1.155
・UK Biobankのコーヒー摂取量と関連する遺伝子多型       35  OR 1.727
・いずれにおいてもコーヒー摂取とPOAGが関連していた(MM)

2022
129巻

アルコールと眼圧とPOAG

Ophthalmology 129巻 (9号) 2022

Alcohol, Intraocular Pressure, and Open-Angle Glaucoma
A Systematic Review and Meta-analysis
Kelsey V. Stuart et al. Ophthalmology 129(9): 637-452, 2022

・アルコールの眼に対する急性の効果としては、一過性で一見容量依存的な眼圧低下があり、視神経乳頭血流の増加があり、理論的には緑内障に対する保護的な作用がある。しかし慢性的なアルコール摂取は神経変性疾患、新血管障害、内分泌疾患、全身の生化学および生理学的障害と関係し、これらの緑内障に対する長期的あるいは間接的な影響は不明である。・PubMed, Embase, Scopus 3つのデータベースから2人のレビューワーが調査
・34件のスタディ(アウトカム:眼圧 8件、OAG 24件、眼圧とOAG 2件)があり、10のスタディで絶対的な習慣的なeffect sizeは小さいもののアルコール摂取と21mmHg以上の高眼圧との関連を示唆していた。
・173058名の参加者を含む26件のスタディのうち11件がOAGとの関連を調査しており、meta-analysisの基準を満たしていた。
・アルコールと眼圧:わずかな正の関連あるいは全く関連性がなかった。
・アルコールとOAG:それぞれの研究のほとんどで関連性がないとの結果だが、メタアナライシスを行った場合には正の相関が示唆された(1.18;95%CI 1.02-1.36;P=0.03)
・OAGの有病率と発生率において同様の推定が示された。
・ただし各研究の方法論的な不均一、バイアスリスクなどから全体的なエビデンスの確実性は非常に低かった。
・アルコールの直接的なOAGリスクのメカニズムは不明だが、慢性的なアルコール摂取は末梢神経障害を引き起こす可能性があり、フリーラジカルによる酸化ストレス、交感神経系や視床下部-下垂体-副腎系への影響、直接的な毒性や炎症誘発物質が影響している可能性があるので、アルコール消費は緑内障発症に関する潜在的な修正可能な危険因子と考えるべきである。(MM)

2022
129巻

黄斑円孔手術後の硝子体内へのILM増殖 

Ophthalmology 129巻 (7号) 2022

Vertical internal limiting membrane stalk after macular hole surgery.
Stopa M et al(Poland)
Ophthalmology 129(7): 751-751, 2022
・62歳黄斑円孔の女性の症例報告。
・ILMフラップ移植を行った黄斑円孔女性で、6か月後には視力は20/80に上昇したが、視野中央部に暗い影が出てきたと訴えた。
・OCTで中心窩から1.19mm長のILMの柄のようなものがみられた。
・ILMの再編成であったが、再手術は行なわれなかった。
参照:臨眼 72(1): 14-23, 2018 Müller cell cone(TY)

2022
5巻

緑内障と女性の生殖因子

Ophthalmology 5巻 (5号) 2022

The Association of Female Reproductive Factors with Glaucoma and Related Traits
A Systematic Review
Kian M.M. et al, Ophthalmology glaucoma 5,628-647: 2022
・女性の生殖因子 (初経年齢、出産回数、経口避妊薬 (OC) 使用、閉経時年齢、および閉経後ホルモン (PMH) 使用) と眼圧 (IOP) または開放隅角緑内障 (OAG) との関連をまとめた。
既報
・エストロゲンは緑内障において神経保護的な役割を果たしている可能性があり、エストロゲン欠乏は機械的、血管メカニズム両方を介して緑内障ダメージに寄与すると考えられている。
・房水産生・流出経路に影響・調節、高眼圧の動物モデルでエストロゲン補充によりRGCロスの予防、一酸化窒素活性を上げ血管の緊張を介して視神経の血液還流を増加させる。
結論
・含まれる研究のバイアスリスクは高いものの、
・・OCの使用期間が長いほどOAGのリスクが高くなる可能性あり
・・自然閉経の年齢が若いほど、OAGのリスクが高くなる可能性あり
・・PMHの使用はIOPの低下と関連している可能性あり。とくにエストロゲンのみのタイプのPMHはOAGリスクの低下と関連している可能性あり。(MM)

2022
11巻

調光コンタクトレンズ装用が室内での視機能と患者満足度に及ぼす影響

Ophthalmology 11巻 (5号) 2022

Effect of Photochromic Contact Lens Wear on Indoor Visual Performance and Patient Satisfaction
Kazutaka Kamiya, et al. (北里大学)
Ophthalmol Ther. 2022 Oct;11(5):1847-1855. 
・目的:屋内での調光コンタクトレンズ(CL)装用時の視機能と患者の満足度を評価する。
・対象と方法:41 人82眼の健康な被験者 (平均年齢21.7 ± 0.7 歳) に調光CLと非調光CLをそれぞれ1〜2週間毎日装用させ屋内環境の明所条件 (600 lx)での視力や動体視力(KVA)、実用視力計(AS-28、興和)を使用して時間平均視力(FVA)、視力維持率(VMR)、応答時間を測定した。
・さらにコントラスト感度(CS)、高次収差(HOAs)、見え方の満足度(0;不満から5;満足)を調査した。
・データ分析のために、各被験者の片眼をランダムに測定した。
・結果:調光CL群と非調光CL群で通常視力では有意差を認めなかった。
・調光CL群での30km/hおよび60km/hでの動体視力は非調光CL群と比較して有意に向上していた。
・また、時間平均視力は有意に良好、応答時間も有意に短縮され、見え方の満足度も良好であった。
・視力維持率、コントラスト感度、高次収差には有意差を認めなかった。
・結論:調光CL装用で室内環境でも動体視力、時間平均視力、応答時間は有意に向上することが明らかになった。
・日常生活やインドアスポーツ時での良好な視力獲得に役立つ可能性がある。(CH)

2022
129巻

Medicare受給者の白内障術後眼内炎の頻度

Ophthalmology 129巻 (3号) 2022

Endophthalmitis rates among Medicare beneficiaries undergoing cataract surgery between 2011 and 2019.
Zafar S et al(MD USA)
Ophthalmology 129(3): 250-257, 2022
・2011-2019に米国の65歳以上のMedicare受給者で、白内障手術を受けた14,396,438眼で90日以内に眼内炎を発症した人を調査した。
・結果、1.36眼/1000眼で発症しており、白内障単独手術では1.30眼/1000眼であったが、この9年間で減少傾向にあった。
・眼内炎発症のリスクは、75歳以上(OR=1.14 95%CI=1.11-1.18)、黒人(OR=1.13 95%CI=1.07-1.20)、アメリカ先住民(OR=1.43 95%CI=1.13-1.73)、緑内障手術既往眼(OR=1.40 95%CI=1.18-1.65)、網膜同時手術(OR=2.60 95%CI=2.15-3.16)であったが、女性では少なかった(OR=0.89 95%CI=0.86-0.92)。(TY)

2022
129巻

小児近視に対するアトロピン治療の効果

Ophthalmology 129巻 (3号) 2022

Efficacy and safety of 8 atropine concentrations for myopia control in children. A entwork meta-analysis.
Ha A et al(Korea): Ophthalmology 129(3): 322-333, 2022
・PubMed、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trialsなどのデータベースから、最低1年以上アトロピン治療を行った報告を調査した。
・アトロピン濃度は0.01%-1.0%までの8種類で、最高の治療の予測スコアをPスコアとして計算した。
・主要転帰は屈折度(Diopter/年)と眼軸長(mm/年)であり、安全性の指標として、瞳孔径、調節力、遠見と近見視力も求めた。
・アトロピン濃度を3種類1%、0.5%、0.05%で求めると、1%アトロピンでは屈折度はCtrlと比較して0.81 (95%CI=0.58-1.04)、眼軸は-0.35(-0.46~-0.25)、0.5%アトロピンでは屈折度は0.70(0.40-1.0)、眼軸は-0.23(-0.38~-0.07)、0.05%アトロピンでは屈折は0.62(0.17-1.07)、眼軸は-0.25(-0.44~-0.06)であり、0.05%アトロピンが最良であった。
・安全性は視力以外では濃度依存性であった。(TY)

2022
129巻

全身血圧のレベルは緑内障進行に影響するか

Ophthalmology 129巻 (2号) 2022

Blood pressure and glaucomatous progression in a large clinical population.
Jammal AA et al(NC USA)
Ophthalmology 129(2): 161-170, 2022
・緑内障による進行性の構造変化に対する平均動脈血圧MAP、収縮期動脈圧SAP、拡張期動脈圧DAPの影響を、3976例7501眼の緑内障あるいは緑内障疑い者について検討した。
・網膜神経線維層RNFL欠損のスピードをSD-OCTで測定した。
・RNFL変化の平均スピードはー0.70μm/年(95%CI=-0.72~-0.67)であった。
・単変量モデルでは、MAP、SAP、DAPはいずれもRNFL欠損スピードと関連はなかったが、観察期間中の平均眼圧で調整すると、10mmHgの平均MAPの低下(-0.06μm/年 p=0.007)、平均DAPの低下(-0.08μm/年 p<0.001)はRNFL厚の減少スピードが早くなっていること有意に相関していたが、平均SAPの低下は関連がなかった(-0.01μm/年 p=0.355)。
・このことから、全身血圧のレベルは緑内障進行に有意に影響していることが分かった(TY)

2022
0巻

Computer Vision Syndromeのマネジメントに関するシステマティックレビュー&メタアナライシス

Ophthalmology 0巻 2022

Interventions for the Management of Computer Vision Syndrome
A Systematic Review and Meta-analysis
Sumeer S. et al,Ophthalmology May ,2022 Online ahead of print.

・コンピューターによる眼精疲労(CVS)への治療介入について有効性と安全性を比較した。
・CVSの確立したリスクファクター
・一日4時間以上のコンピューターの使用、コンピューター画面の反射やグレア、40%未満の湿度、使用中の不適切な姿勢
・その他、瞬目の減少、屈折矯正不良、調節障害などの関与が示唆
・結果
・Ovid Medline, Embase, Cochrane Central Register of Controlled Trials, and trial registriesから4497名の被険者を含む45のRCTを抽出
・多焦点眼鏡は単焦点眼鏡と比較して眼精疲労の改善は有意差なし(3 RCTs, P=0.38)
・ルーライトカット眼鏡は眼精疲労の改善に効果なし(3 RCTs)
・プラセボと比較してベリー抽出物サプリメントの内服は眼精疲労改善効果なし(7 RCTs, p=0.22)、ドライアイ症状の改善無し(4 RCTs, p=0.65)、CFFや調節力についても効果無し
・45日から3ヶ月間のオメガ3脂肪酸のサプリメントはドライアイ症状に伴う眼精疲労の改善効果あり(2 RCCTs, p<0.00001)(MM)

過去のアーカイブ