色覚の特性:色覚多様性

さまざまな目の病気について、
その内容や治療方法などをご紹介します。

色覚特性の異常(色覚多様性)とは?

人間の持つ色の感覚は非常に豊かなもので、網膜にある3種類の視細胞(錐体)によってもたらされています。光は粒子ですが、波としての性質も持っています。ひとつの波の長さは長いものから短いものまであり、その長さ(波長)によって光の色が決まります。
網膜にある視細胞(錐体)には役割分担があり、長い波長の光を受け取るものがL錐体(赤錐体)、まん中あたりの波長の光を受け取るのがM錐体(緑錐体)、短い波長の光を受け取るものがS錐体(青錐体)です。光が目に入ると、光はこれらの錐体内にある色素にキャッチされ、複雑な経路をたどって電気信号として脳に運ばれ、色を感じます。
色覚特性に関与している錐体はL錐体とM錐体ですが、これらの錐体が十分に機能していなかったり欠損していたりすると、時に、色まちがいをします。あの有名な画家のゴッホも色覚特性が異常だったといわれています。奇抜な色使いもみられますが、個性豊かなすばらしい色感覚の絵画を描いています。色覚特性も人の持つ多くの能力のうちのひとつです。個性として尊重することが大切です。

色に対する3種類の錐体の役割分担

どんな「色まちがい」をするのか

色覚特性に異常があると時に色まちがいをします。小さなお子さんでは、お絵かきで顔を緑色に塗ったり、緑の木の葉を茶色に塗ってしまったりする場合もあります。色覚特性の異常はそのタイプにより、一型色覚(赤色覚異常)と二型色覚(緑色覚異常)に分けられています。どんな色を間違いやすいかは両者で少し違います。二型色覚の人の見え方の例からわかるように(表1)(図1)、色覚特性に異常のある人では認識できる色の種類が少なくなっており、色まちがいをします。
赤色に対する感度が落ちている一型色覚では、大人になってからも、雨降りや夕暮れ時など、条件が悪い時には前の車のテールランプを見落としたりすることがあります。危険信号として使用されることが多い「赤」が見にくいことを常に意識しながら生活していくことが大切です。
また、一型色覚、二型色覚を問わず、色覚特性に異常のある人は、多数のネオンサインやぎらぎらした照明が点灯した街中では、信号灯を見落とす場合もありますので、細心の注意が必要です。
お子さんの色覚特性に異常があった場合、周りの人がそのことを知らないと対応にとまどうことがありますので、色覚検査を受けることをお勧めします。

表1 一型色覚と二型色覚の違い

タイプ 原因 頻度・特徴
一型色覚 L錐体の機能不全、
あるいは欠損
日本人男性の1%強。
一型色覚の特徴に加え、ピンクと水色も混同しやすい。赤が薄暗く見える
二型色覚 M錐体の機能不全、
あるいは欠損
日本人男性の4%弱。
黄緑と橙、緑と茶や灰色、青と紫、ピンクと灰色などを混同しやすい。緑は普通の明るさに見え、薄暗くはならない。

図1 色覚特性に異常がある人の見え方の例

表示した色

二型色覚者の
見え方の一例

(カラーユニバーサルデザイン機構の

資料を基に作成)

夕暮れ時の街中の風景

車両用が「青」で、

2方向性の歩行者用が「赤」の信号灯

同じ風景を二型色覚者が見た時の一例

それほど珍しくない色覚特性の異常(色覚多様性)

日本人では男性の20人に1人、女性では500人に1人の割合で色覚特性に異常のある人がいます。女性で少ない理由は、色覚特性の遺伝子は人間の持つ性染色体のうちのX染色体の上にあって、潜性遺伝(劣性遺伝)の形をとるからです。
男性は性染色体としてX染色体とY染色体をそれぞれひとつづつ持っていますので、そのひとつのX染色体が異常な色覚特性の遺伝子を持っているとその特性がすぐに表に出ますが、X染色体を2つ持っている女性では、そのうちのひとつが異常な色覚特性の遺伝子を持っていたとしても、もう一方のX染色体によって隠されてしまい、表にはでません。
このような女性が保因者と言われており、女性の10人に1人の割合になります。例えば、男女半々の40人のクラスだと、色覚特性に異常のある男子が1人、保因者の女子が2人いることになります。色覚特性の異常は、それほどまれなことではなく、人のもつ遺伝的多様性のひとつの表現型ですので、色覚特性の異常を「色覚多様性」と表現しようという提案もあります。

色覚特性に異常のある人の方が優れている場合もあります

緑豊かな森の中では、保護色に身を包んだ小鳥や虫などを探し出すのは大変です。色覚が正常な人は色の感覚が最優先され「明るい緑」、「深い緑」、「黄緑」、「青緑」など、全体を「緑色の群れ」として知覚するからです。
それに対し、色覚特性に異常のある人には「青みがかった緑」と「黄みがかった緑」とはかなり違った色として知覚されますので、全体の「緑」の感覚に惑わされず、ときには小鳥や虫などを、色覚正常な人よりも素早く見つけ出すこともできます。

参考資料

日本眼科医会 「目についての健康情報」
色覚異常といわれたら
http://www.gankaikai.or.jp/health/50/

名古屋市医師会 市民健康広報誌「ヘルシー名古屋」
色覚検査を受けましょう
http://www.nagoya.aichi.med.or.jp/health/pdf/57.pdf

愛知県眼科医会 目に関する健康情報
色覚の手引 「色覚異常 その特性と課題」
http://www.a-gankai.com/docs/dr/colorvision/sikikakutebiki2016.pdf

 

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