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British Journal of Ophthalmology

2014
98巻

蒸発亢進型ドライアイのある閉経後患者の、性ホルモンと涙液異常の関係

British Journal of Ophthalmology 98巻(3号)2014

Low levels of 17-β-oestradiol, oestrone and testosterone correlate with severe evaporative dysfunctional tear syndrome in postmenopausal women: a case-control study
Caterina Gagliano et al, (Italy)
Br J Ophthalmol  98(3):371-376, 2014
ドライアイ(DES)は男性よりも女性に多くみられ、特に妊娠中・授乳中・避妊薬内服中・閉経後により多く認めるため、性ホルモンとの関係が示唆される。
マイボーム腺(MG)が油層を産生するが、涙腺やMGにアンドロゲン、エストロゲン、プロゲステロンやプロラクチンのレセプターが存在している
涙腺の正常な働きにはアンドロゲンレベルが重要で、プロラクチンやエストロゲンも涙液産生に重要な役割を果たしている。
また、閉経後の女性にMGDが多くみられる。
アンドロゲン欠乏や抗アンドロゲンの点眼治療をすると、油層の状態が有意に悪化し、アンドロゲンを刺激する治療を行うと、MGから油分の産生が高まり、BUTの延長が見られる
エストロゲンの絶対量は体重、性別、年齢によって影響される
目的:性ホルモンと蒸発亢進型ドライアイとの関係を調査する
方法:1年以上無月経、血清FSH値12mIU/mL以上、エストラジオール値15pg/mL以下の女性44例。MGDのある蒸発亢進型ドライアイを有する22例(グループA)とMGDを認めない22例(グループB)。
排尿後体重(0.1kg単位)、朝8時の空腹時ホルモン値、血糖、脂質(TG,TC,HDL)、144項目の食物摂取状況、角膜を染色してスリットランプの検査、涙液の浸透圧、シルマーテスト、BUTを検査、自己評価の症状をスコア化
結果:患者背景に有意差なし 体重は標準範囲BMI 22.5kg/m2(20.0-25.0)
性ホルモン濃度と浸透圧、シルマー値、BUTは有意に相関
グループAとBでは浸透圧、シルマー値、BUT、自覚症状のスコアは有意差あり
結論:閉経後の女性ではドライアイになるリスクがあり、アンドロゲン・エストロゲンが低いことが蒸発亢進型の発症に関与していると考えられる。これらの結果より今後蒸発亢進型のドライアイに対して、ホルモン治療が有用となるかもしれない。(MM)

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