Three-Year Change in Subfoveal Choroidal Thickness and Area With Multifocal Contact Lens Wear in the Bifocal Lenses in Nearsighted Kids (BLINK) Study
Maria K Walker et al.
Invest Ophthalmol Vis Sci 66(5): 2025 doi:https://doi.org/10.1167/iovs.66.5.5
・近視の治療のためにマルチフォーカルCL(MFCLs)を着用した子供の脈絡膜厚と断面積変化を画角26度のOCT画像を用いて評価した。
・7~11歳の近視の子供281人(—0.75~-5.0D)を、単焦点CL(SVCLs)、+1.50 D加入MFCL、+2.50 D加入MFCL群にランダムに割り当て、着用後2週間、その後3年間毎年測定した。
・MFCLは、CooperVisionの中心遠見、周辺加入のBiofinity Multifocal Dであり、装用時間はいずれも1日、10から11時間である
・着用開始2週間後、SVCL群に対して+2.50 D MFCL群では、脈絡膜厚は8±3 µm増加(P = 0.003)、脈絡膜断面積は0.07±0.02 mm2増加した(P = 0.002)。
・3年後でも+2.5D MFCL群では、脈絡膜厚は7±3μm(p=0.01)、脈絡膜断面積は0.06±0.02mm2増加していた。
・+1.50D MFCL群では、装着2週間後の脈絡膜厚も断面積も、SVCL群との間に有意差はなかったし(いずれもp>0.25)、3年後も有意差はなかった(p=0.09とp=0.11)。
・ただし、+1.50D MFCLと+2.50D MFCLとの間には脈絡膜厚(p=0.13)も脈絡膜断面積(p=0.07)にも有意差はなかった。
・+2.50 MFCL群で脈絡膜面積の増加が大きかった者では、3年間で眼軸の延長が少なかった(TY)
鳥居(慶応大)
あたらしい眼科 42(4): 459-460, 2025
・強度近視眼では成人以後も眼軸長が伸び続けている。
・20歳以上の成人の近視の進行程度は0.04~0.4D/年程度。
・強度近視眼(SE-6D以下)の年齢別の眼軸長伸長を調べた報告では、7歳~18歳未満では0,46mm/年。18歳~40歳未満では0.07mm/年。40歳~70歳未満では0.13mm/年。
・50~70歳でも中等度~急速に眼軸長が伸長する症例がある。
・幼少期において屋外活動が近視進行を抑制するが、20~28歳の成人でも屋外活動は近視進行抑制効果があることが報告されている。
・屋外環境に存在するバイオレットライト(360~400nm)が関与している可能性。
・IOL手術時に短波長カットのIOLを挿入した群(VLカット群)と、一部カットするIOL挿入群で、白内障手術後5年間の近視進行を比較した報告によると、VLカット群でIOL術後も有意に近視が進行した。
・短波長に感受性がある内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)が関与し、長時間の屋外活動でのVL受光により、脈絡膜厚が有意に厚くなり、近視抑制につながっているだろう。(TY)
眼臨紀 17(11): 811-815, 2024
牧山由希子他(京都府)
・急性原発閉塞隅角緑内障に対する白内障手術後に網膜斑状出血を生じ、約3か月後に吸収された。
・眼球減圧網膜症ODRは、緑内障濾過手術後の急激な眼圧下降に伴う網膜出血斑を特徴として、1992年に報告された。(TY)
眼科臨床紀要17(10):2024
高橋翔吾 他(富山大)
<症例>75歳女性
既往症:右眼中心性漿液性網脈絡膜症
右眼PCVの診断でファリシマブ硝子体内投与開始。導入期3回目の注射より18日後に右眼中心視野障害と視力低下を自覚した。
網膜静脈炎と視神経乳頭炎の併発を疑う所見を確認した。
トリアムシノロンアセトニド20mgテノン嚢下投与、ベタメタゾン点眼、ブロムフェナクナトリウム点眼を開始し改善した。
<考案>抗VEGF薬投与後に自覚症状が悪化した場合には速やかな診察が必要である。 (AM)
COVID-19罹患後にacute macular outer retinopathy (AMOR)を発症した2例
眼科 Vol.66 (10) 2024
竹内一彦 他 (日本大学)
・COVID-19罹患後に急性に若年女性に発症する報告がある
・一般的な症状は視力低下、傍中心暗点、光視症
・網膜外層に病変が起こる
・検眼鏡で病巣を検出しにくい
<症例1>
28歳女性
主訴:左眼中心視野異常
発熱し近医で COVID-19罹患の診断。その2日後に視野異常を自覚し12日後に眼科受診。
COVID-19ワクチン接種は2回受けていた。
視力:右0.8(1.0)
左0.7(1.0)
(画像供覧)
(経過)・両眼AMORの診断で0.1%ベタメタゾン点眼4回/日開始漸減し3か月施行した。
・5か月後に近赤外線画像の低反射領域軽快
OCTではIZラインの不整が残存した。
自覚症状は消失した。
<症例2>
28歳女性
主訴:左眼視野異常
発熱し近医でCOVID-19罹患の診断4日後に楕円形の残像が見えることに気づき7日後に眼科受診した。
COVID-19ワクチン接種は2回受けていた。
視力:右0.7(1.0)
左0.9(1.0)
(経過)無治療で経過観察を行った。
初診から74日後、IZラインの不整は残った。自覚症状は残存した。
・ COVID-19罹患後に傍中心暗点を発症した場合AMORを疑う。診断にはマルチカラー画像,近赤外光画像,OCT,OCTAが有用である。(AM)
山田他(慈恵医大)
眼臨紀 17(10): 729-734, 2024
・2015~2019にRRD病名での手術患者706例を対象として、患者住所(各市)の人口数から年間発生率を計算した。
・34市に分類され、発生率の少ない市は除外し、4市の553眼から発生率を計算した所、発生率は10万人当たり12.5人であり、55~59歳に単一ピークがあった。
・30年前の発生率は10万人当たり10.4人であり、ピークは60~69歳、次ピークは20~29歳の2峰性であった。
・発生率増加の原因は近視の有病率の上昇であろう。(TY)
Early Outcomes of an Artificial Endothelial Replacement Membrane Implantation After Failed Repeat Endothelial Keratoplasty
Luigi Fontana, et al. (Italy)
Cornea 2024(9);43:1088–1094
目的:繰り返す角膜内皮移植術(EK)の移植片不全に対する人工角膜内皮(EndoArt、EyeYon Medical社、イスラエル)移植術の成績を報告する。
EndoArtは、厚さ50μm、直径6.5mmのヒドロキシエチルメタクリレートとメチルメタクリレートの柔軟な材料で構成され、角膜後面の曲率に合わせて成形され、人工的な流体バリアとして機能し、病的な角膜内皮の機能を代替する。デバイスが角膜内皮面に接着すると、角膜実質への水分の浸透が妨げられ、その結果、実質の浮腫が減少し角膜の透明度が改善する。
対象と方法:過去に2回以上EK後に移植片不全となった患者5例。逆シンスキーフック(Moria SA, Nanterre, France)を用いてEKグラフトを角膜後面から剥離し、2.0mmの角膜トンネルから取り出した。その後、EndoArtを角膜表面に置き、端に見える「F」マークに従って、正しい方向を確認した。先端が鈍いスパチュラ(Janach Srl, Como, Italy)を使用し、角膜トンネルを通して前房内にEndoArtを押し込んだ。前房内に挿入されると自然に展開し、角膜中央に配置された。10%C3F8を前房内に注入し、角膜後面に密着させた。10-0のナイロンで角膜に1針縫合、3ヵ月に抜糸した。
結果:4例はEndoArt移植前に2回、1例は3回のEKを受けていた。最後のEKからEndoArt移植までの平均期間は3±1年であった。手術の6ヵ月後、角膜後面に完全に接着し、すべての患者で角膜中心部は透明であった。術前の平均CDVAは1.26 ± 0.25 logMAR、術後最終平均CDVAは0.74 ± 0.44 logMARであった(P = 0.062)。術後、視力は2例で11 line改善、2例で2~5 line改善、1例で3 line低下した。平均CCTは、術前805 ± 135 mmから術後6ヵ月で588 ± 60 mm、全例で顕著なCCT低下がみられた(P = 0.015)。重大な合併症は認められなかったが、5人中4人は、術後2~8週間でEndoArtの解離が生じたため、1回以上の10%C3F8再注入を必要とした。
緑内障点眼剤を使用している患者3例と緑内障手術歴のある患者1例での眼圧上昇は認められなかった。全例でNRS(Numerical Rating Scale)が1.5〜5ポイント減少し、自覚的な痛みが軽減した。
結論:この研究期間中にEndoArtの抜去を必要とした患者は一人もいなかったことから、短期的な安全性は良好であることが示唆された。また、患者の視機能を改善する能力を実証した。(CH)
臨眼 78(9):1073-1081.2024
後藤浩 他(東京医科大)
・本邦では梅毒患者が年々増加している
昨年は約1万5千件の報告
・20~50歳代男性、20歳代女性に多い
・多彩な眼所見を呈する
<眼所見の内訳>
前眼部炎症 67%
硝子体混濁 58%
視神経乳頭発赤 36%
網膜静脈炎88%・網膜動脈炎 73%
黄斑浮腫 19%
斑状網膜病変 17%→非HIV感染例では 梅毒を疑う重要な所見
視神経炎 8%
<症例提示>
①42歳女性
ぶどう膜炎の診断で紹介受診
右眼)硝子体混濁・網膜血管炎
②53歳男性
プレドニゾロン内服無効のため紹介
両眼)網脈絡膜炎
左眼)硝子体混濁・視神経炎
③36歳男性
急性網膜壊死疑いで紹介受診
左眼)硝子体混濁・網膜滲出病変
網膜血管炎
*全症例で血清梅毒反応陽性
FAG施行
<考案>
非定型的な中間部および後眼部ぶどう膜炎症例には積極的に血清梅毒検査を行う (AM)
臨眼 78(7)817-822 2024
村瀬裕香 他(東京医科歯科大)
・40代男性に多かった
<炎症の局在分類>
汎ぶどう膜炎 57.9%
後部ぶどう膜炎 31.6%
前部強膜炎 10.5%
↳後眼部炎症の症例が多かった
<眼所見の内訳>
網膜血管炎 73.7%
角膜後面沈着物および硝子体混濁47.4%
視神経乳頭炎 42.1%
・特徴的とされるASPPC(acute syphilitic posterior placoid chorioretinitis)所見が1 例にみられた
・治療開始が遅れると網膜外層萎縮や黄斑浮腫などにより視力予後不良となる
→血清学的検査の実施による診断と早期治療による後眼部炎症の鎮静化が重要 (AM)
眼科.66(6)2024
松本大蔵 他(自治医科大)
症例報告数が特に少なく、治療法の確立していない小児の外傷性黄斑円孔網膜剥離の報告
<症例>
13歳男児
サッカーボールによる左眼打撲
診断:左眼)外傷性黄斑円孔網膜剝離 網膜振盪症
両眼)高度近視
経過:円孔の自然閉鎖は見られず受傷後3週間で硝子体手術を施行した。
術中にPVDが生じていることが確認された。
術前の左眼視力: 0.03(矯正不能)
術後の左眼視力:(0.2)
<考案>
・過去の報告では約30~50%の症例の円孔が自然閉鎖した。
小さい円孔、円孔周囲に網膜内嚢胞が無い、後部硝子体剥離が無い症例に多かった。
受傷後1~2週で所見の改善が始まった。
・本症例は強度近視のため硝子体が既に液化していたか、受傷時にPVDが発生した可能性がある。
・外傷性黄斑円孔網膜剥離では受傷後1~2週間で所見の改善がなければ硝子体手術も選択肢になる。 (AM)
Retinal vasculitis after intravitreal aflibercept 8mg for neovascular age-related macular degeneration
Japanese Journal of Ophthalmology 68(5):531-537, 2024
Hideaki Matsumoto et al
アフリベルセプト8mgの臨床試験で報告のなかった網膜血管炎が発症したことに関する臨床報告
<症例>35眼34人:男23眼23人 女12眼11人
18眼(51.4%)…未治療
17眼(48.6%)…他剤より切り替え
内訳: 7眼 アフリベルセプト2mg
2眼 ブロルシズマブ
8眼 ファリシマブ
ブロルシズマブ関連眼内炎 5眼
ファリシマブ関連眼内炎 1眼
<症例提示>82歳男性 未治療 Type1.2.混合型 網膜血管炎と硝子体炎を発症した
<結果>
・アフリベルセプト8mg投与4週間後の検査で3眼(8.6%)に網膜血管炎を確認した。
・トリアムシノロンアセトニド(30mg/0.75 mL)のテノン嚢下注射で改善がみられた。 (AM)
福岡佐知子、中村友昭
IOL&RS 38(4): 560-583, 2024
・エンドトキシン(内毒素)はグラム陰性細菌の細胞壁成分であり、Toxic anterior segment syndrome(TASS)を引き起こすことがある。
・手術用滅菌手袋のエンドトキシン汚染について調査した所、4種類の手袋のうち3種類の手袋表面からエンドトキシンが検出されたが、手袋をエンドトキシンフリーの水で洗浄することにより、エンドトキシン量を減らすことができる。
・いったんエンドトキシン汚染が起こると、たとえ菌を死滅させてもエンドトキシンそのものは残存し、除去もしくは失活させることが困難である。
・失活させるためには250℃ 以上で30分以上の乾熱減菌が必要であり、通常の高圧蒸気減菌法ではエンドトキシン不活化率は89%であるとの報告もある。
・高圧蒸気減菌において、純水の使用は減菌プロセスの効率化と機器の保護において重要である。
・一般的な水に含まれるミネラル(例:CaやMg)は、蒸気生成時にオートクレーブ内部に蓄積すると、加熱効率が低下し、均一な滅菌を困難にし、TASSの要因となり得る。
・滅菌前の洗浄によって対象物の汚れが除去されることで、蒸気やガスが均―に浸透しやすくなり、減菌の効率が向上する。(TY)
Long-Term Risk of Steroid-Induced Ocular Hypertension/ Glaucoma With Topical Prednisolone Acetate 1% After Descemet Stripping Endothelial Keratoplasty
Marianne O. Price, et al. (IN USA)
Cornea 2024(3);43:323–326
目的:緑内障の既往のない患者において、酢酸プレドニゾロン1%点眼液の長期使用によるステロイド誘発性の眼圧上昇の長期リスクと緑内障治療の必要性を評価する。
対象と方法: DSEKを受け、移植片の拒絶反応を防ぐために酢酸プレドニゾロン1%点眼液を長期使用した緑内障の既往がない患者211人。
術後、酢酸プレドニゾロン1%点眼液を1日4回4ヵ月間点眼するよう指示し、その後1ヵ月ごとに1回ずつ漸減して1日1回点眼とし、眼圧が上昇しない限り無期限に継続した。主な転帰は眼圧上昇(眼圧24mmHg以上またはベースラインより10mmHg上昇と定義)と緑内障治療の開始であった。
眼圧をコントロールするために必要に応じて行われた方法は、緑内障点眼薬の投与開始、酢酸プレドニゾロン1%点眼液の中止、緑内障濾過手術(トラベクレクトミーまたはチューブシャント手術)。
結果:患者の平均年齢70歳(範囲:34~94歳)、平均経過観察期間7年(範囲、1~17年)。
術後1年、5年、10年の時点でのステロイド誘発眼圧上昇の累積リスクはそれぞれ29%、41%、49%だった。リスクは1日2~4回点眼していた最初の6ヵ月間で最も高く、その後は1日1回点眼が継続されるにつれて低下した。ステロイド誘発性の眼圧上昇は、拒絶反応エピソードを経験した眼でやや早く現れる傾向があった。緑内障治療を必要とするリスクは術後1年、5年、10年の時点でそれぞれ11%、17%、25%。緑内障の治療を受けた35眼のうち、28眼(80%)が点眼加療、7眼(20%)が濾過手術だった。
結論:酢酸プレドニゾロン1%点眼液を長期間使用した、緑内障の既往のないDSEKレシピエントの半数がステロイド誘発性の眼圧上昇を発症し、25%が緑内障治療を必要とした。1日1回点眼になっても、眼圧のモニタリングが必要である。角膜移植が必要な患者に対しては、長期的なステロイドの副作用を軽減するために、可能な限り拒絶反応のリスクの少ない移植方法を用いることが望ましい。(CH)
Fundus examination using a wide-angle viewing system and intraocular illumination through the corneal incision during cataract surgery: a case series.
Saito S et al(愛知医大)
Jpn J Ophthalmol 68(2): 112-116, 2024
・広角眼底観察システムと硝子体経由でない眼内照明を用いた新しい眼底観察方法を報告する。
・アトピー性皮膚炎に関連した白内障手術を行った連続13例(平均年齢26.8歳、9例が男性)で行った。
・超音波乳化吸引後に前後房を粘弾物質で満たし、27G眼内照明プローブを角膜切開創から前房に挿入し、広角眼底観察システム下で強膜圧迫しながら眼底周辺部を観察した。
・それで網膜裂孔や剥離が見つかったら処置を行い、最後に眼内レンズを挿入した。
・13眼中5眼(38%)で網膜裂孔がみつかり、そのうち2例(15%)は網膜剥離も発症していた。
・3眼は冷凍凝固処置を行い、網膜剥離を発症していた2例では強膜バックルを行った。
・手術時間は処置をしなかった症例では平均22分、冷凍凝固例では28分、バックル例では80分であり、合併症はなかった。(TY)
三村治(兵庫医大)
眼科手術 37(2): 175-180, 2024
・局所麻酔薬は全て多少とも外眼筋毒性を有しており、なかでもブピバカインは最も筋毒性が強い。
・筋内に注射すると低濃度でも外眼筋の肥厚・拘縮をきたし、長期あるいは恒久的な眼球運動障害や機械的斜視を起こす可能性がある。
・ボツリヌス毒素を注射した筋の拮抗筋に対して、斜視の非観血的治療として行うこともある。
・ブピバカインは眼科手術の局所麻酔薬として使用すべきではない。(TY)
Ocular Surface Disease in Patients With Atopic Dermatitis Treated With Dupilumab: A Prospective Case–Control Study
Paola Marolo, et al. (Italy)
Cornea 2024(2);43:221–227
2018年に承認されたアトピー性皮膚炎の治療薬であるデュピルマブは、炎症を引き起こす物質であるインターロイキン4とインターロイキン13の働きを抑えることで症状を改善する。
しかし、その一方で、デュピルマブによる眼表面疾患(dupilumab-induced ocular surface disease;DIOSD)という副作用が報告されている。
DIOSDは、結膜炎、角膜炎、眼瞼炎、ドライアイ、流涙など、さまざまな眼の症状を引き起こす。
目的:デュピルマブで治療された AD 患者の 6 ヵ月後の DED 有病率の変化を評価すること。
対象と方法: 2021年5月から12月の間にデュピルマブの投与が予定されていた中等症から重症のAD患者と健常者を対象とした。DED有病率、Ocular Surface Disease Index (OSDI)、涙液層破壊時間、涙液浸透圧、染色スコア、シルマー試験の結果をベースライン時、治療1ヵ月後、6ヵ月後に評価した。皮膚のEczema Area and Severity Index(湿疹面積と重症度指標)はベースライン時に評価された。
結果:デュピルマブ治療を受けたAD患者36人と健常対照者36人の72眼を対象とした。
DEDの有病率はデュピルマブ群でベースライン時の16.7%から治療開始6ヵ月後には33.3%に増加した(P = 0.001)のに対し、対照群では横ばいであった(P = 0.110)。6ヵ月後、デュピルマブ群でOSDIと染色スコアは増加し(8.5 ± 9.8 から11.0 ± 13.0へ、P = 0.068、0.1 ± 0.5 から0.3± 0.6へ、P = 0.050)、涙液層破壊時間とSchirmer試験は減少したが(7.8 ± 2.6秒から7.1 ± 2.7秒へ、P<0.001、15.4 ± 9.6mmから13.2 ±7.9mmへ、P = 0.036、)、対照群では変化はなかった。両群とも涙液浸透圧は変化しなかった(デュピルマブ群P = 0.987、対照群P = 0.073)。治療開始6ヵ月後で、結膜炎42%、眼瞼炎36%、角膜炎2.8%が認められた。重篤な副作用ではなく、デュピルマブを中止した患者はいなかった。湿疹面積および重症度指数とDED有病率との関連は示されなかった。
結論:デュピルマブ治療を受けたAD患者では、6ヵ月後にDED有病率が増加した。しかし、重篤な眼の副作用は認められず、治療を中止した患者はいなかった。
デュピルマブがIL-13をブロックすることでゴブレット細胞(粘液を分泌する細胞)が減少し、ムチン分泌低下と粘膜上皮バリア機能不全を引き起こす可能性や、Th2細胞(アレルギー反応に関与する免疫応答)の抑制によりTh1細胞(細胞性免疫に関与する免疫応答)が亢進することが関与している可能性が示唆された。(CH)
眼臨紀 17(1):20-25, 2024
蔵並藍他(東京女子医大)
・中心性漿液性脈絡網膜症CSCに対して、網膜光凝固治療後の漿液性網膜剥離SRD消失直後の視力低下と網膜視細胞外節PROSの伸長との関連を88例91眼(平均52.2歳)について検討した。
・LP後のSRD消失直後に視力が0.1以上低下した低下群12例12眼(13.2%)、不変群49例51眼(56.0%)、0.1以上改善した改善群27例28眼(30.8%)に分けて、LP後のPROS長を評価した。
・LP前視力は改善群で低下群、不変群より有意に不良であったが(p<0.05)、各群とも、LP前よりは有意に改善した(p<0.05)。
・LP時のPROS長は、低下群で11.7±4.0μで、不変群8.14±2.5、改善群8.04±2.2μより有意に延長していた(p<0.01とp=0.01)。
・PROS伸長があるCSCに対してLPを行うと、SRD消失直後に一過性視力低下おきたす可能性がある。
・SRDが遷延化すると、RPEによるPROSの代謝が阻害され、PROSが伸長すると考えられる。(TY)
Tajima A, Sassa Y, Ishio D, et al. Clinical features of 26 cases of COVID-19-associated conjunctivitis. Jpn J Ophthalmol 2024; 68: 57-63.
・佐賀県の好生館病院で2020年3月から2021年3月までの期間に新型コロナウイルス感染症で入院した患者282名の結膜炎の発症状況とその背景要因を調べた。
・282名中26名(9.8%)に結膜炎の発症があった。症状としては結膜充血のみがほとんどで、眼瞼腫脹を来した者が2名、眼痛、眼掻痒感、眼脂が各1名だった。
・26名中新型コロナウイルス感染症発症時に結膜充血のあった者は4名だったが、実際にこれが単独の初発症状だったかどうかは本文からは読み取れなかった。また、新型コロナウイルス感染症発症から結膜炎所見出現までの期間は平均3日間(1~5日)だった。
・結膜炎の発症と新型コロナウイルス感染症の重症度とは関連性がなかったが、結膜炎のない患者と結膜炎のある患者を比較すると、平均年齢は51.00歳に対しては35.00歳、男性の割合は51.6%に対して77.8%、喫煙者20.3%に対して44.4%で、若年、男性、喫煙の3つが結膜炎発症の要因として有意であった。(KH)
依藤彰記、細谷友雅、岡本真奈他. ブリモニジン点眼液使用経過中に発症した角膜実質炎の3例. 眼科2019; 61: 1527-1533.
篠崎友治、溝上志朗、細川寛子他. ブリモニジン関連角膜実質混濁の臨床経過~自験3症例からの考察. あたらしい眼科2024; 41: 82-88.
・世界で初の報告は”Maruyama Y, et al. Cornea 2017; 36: 1567-1569” である。
・海外での報告例はほとんどなく、2024年4月現在、Purgert RJ, et al. Can J Ophthalmol 2020; 55: e172-173. があるのみ。なぜ日本ばかりが多いのかは不明。海外の方がブリモニジンの濃度が濃く(一般に0.2%、わが国は0.1%)、添加物にも差異はない。
・臨床的特徴としては、①長期間のブリモニジン使用歴、②角膜周辺部に生じる、③実質深層への血管侵入を伴って角膜浸潤をきたすが上皮欠損は伴わない、④経過が長くなると脂肪変性をきたす、⑤発症前または発症時に顕著な充血がある、⑥ステロイド薬で浸潤は消退するが沈着や瘢痕による混濁は残る。
・機序としては、ブリモニジンの組織移行性が高く、角膜実質に移行して何らかの免疫反応(III型アレルギー反応?)をきたしているのではないかと考えられる。(KH)
Tsukahara-Kawamura T, Hanaoka N, Uchio E. Evaluation of anti-adenoviral effects of the polyvinyl alchol iodine ophthalmic solution. Jpn J Ophthalmol 2024; 68: 64-69.
・ヒトアデノウイルスは眼、呼吸器、消化管、尿路等への感染が知られており、これらの原因として報告されている16型(HAdV-1, -2, -3, -4, -5, -6, -7, -8, -11, -37, -53, -54, -56, -64, -81, -85)に対するPVA iodine(サンヨード)の抗ウイルス効果を検討した。
・in vitroでの検討で16型すべてにおいて殺ウイルス効果(virucidal effect)が確認された。
・ちなみに、ヒトアデノウイルス(HAdV)はアデノウイルス科マストアデノウイルス属(mastadenovirus)に属する。エンベロープを持たない2本鎖DNAウイルスで、現時点で7種(A~G)の亜属に、さらに血清型によって現在は100を超える型が報告されている。
・EKCの原因となるのはHAdV-D (-8, -37, -53,-54, -56, -64, かつては-19aも)およびHAdV-E (-4)が知られている。
・咽頭結膜熱(PCF)の原因としてはHAdV-B (-3, -7)が挙げられている。(KH)