小川広徳 他 臨床眼科紀要18(8):2025 490-494
・難治性である強度近視眼の傍血管微小裂孔を伴う網膜剥離に対して、内境界膜翻転術を行い復位を得た症例の報告
・症例:79才女性、術前左眼視力0.04(0.07×S.-7.50D.)、左眼軸長29.80mm
・後極の広範な網膜剥離。網脈絡膜萎縮のため検眼鏡的に裂孔の同定が困難であったためOCTで位置を同定した。
・強度近視眼の後極の網膜剥離で裂孔不明の場合、傍血管微小裂孔の可能性があり、特に耳側血管付近が好発部位とされる。
・網膜皺壁や網膜分離は強度近視眼で血管周囲にみられるOCT所見である。
・網脈絡膜萎縮巣内の裂孔閉鎖には内境界膜翻転法が有用である可能性がある。(AM)
卯木伸介 他.臨床眼科79巻7号2025年7月:911-915
・アトロピン(At)点眼で副作用が発現した症例にAt眼軟膏を処方し屈折検査を行った症例の報告。
・At点眼で192例中14眼(7.3%)に副作用(発熱、発疹、顔面紅潮、充血、不穏)が発現したため点眼を中止した。
・1か月後に14眼中5眼(1歳~4歳)にAt眼軟膏を処方し再検査を行った。
・軟膏による副作用の発現はみられなかった。
・投与方法:アトロピン点眼 :1日2回点眼 1週間
アトロピン眼軟膏:1日1回点入(児の就寝中に保護者が行う) 1週間
・眼軟膏は結膜嚢に点入後、眼表面に長時間滞留し薬剤を徐放する。このため急激な薬剤暴露を防ぎ、副作用が少ないと考えられている。
・アトロピン眼軟膏を投与後副作用発現率が0.74%(240例中2例)で眼瞼皮膚炎および発熱がみられたとの別の報告がある。
・眼軟膏1㎝の長さが点眼液1滴量に相当する。
・アトロピン眼軟膏は、点眼や涙嚢部圧迫に抵抗する小児やアトロピン点眼アレルギー既往児の代替方法となりうる。(AM)
Quality of Life and Symptomatology in Neuropathic Corneal Pain in Comparison With Dry Eye Syndrome
Jia Ying Chin, et al. (Singapore)
Cornea 2025(7);44:825–831
・目的:神経因性角膜疼痛は、角膜の知覚神経の異常な活動により生じる痛みである。
・この痛みは一般的な角膜疾患とは異なり、実際の組織損傷が軽微または存在しない場合でも強い痛みを伴うことが特徴。
・患者は「焼けるような痛み」「刺すような痛み」「異物感」などを訴え、通常の治療に対して効果が乏しい。
・神経因性角膜疼痛(NCP)とドライアイ(DED)の生活の質(QOL)と症状を調査する。
対象と方法:NCP患者50名とDED患者100名、計150名。
・患者の症状とQOLは、眼痛評価調査(Ocular Pain Assessment Survey:OPAS)とドライアイ疾患特異的問診票(Ocular Surface Disease Index:OSDI)で評価した。
・また、眼表面の評価をした。
・NCP診断基準: (1) 灼熱感、刺すような痛み、ズキズキする感じ、撃つような感じ、鋭い痛み、異痛症、光異痛症、または痛覚過敏などの持続性神経障害性眼痛の症状があり、OPAS 質問票の 3 個以上の質問で 30% 以上のスコアを獲得した状態が 3 か月以上続くこと。
・(2) 生体共焦点顕微鏡画像で検出された角膜神経異常 (微小神経腫、数珠状変化、神経の曲がり、角膜神経線維密度または神経線維長の減少など)。
・(3) 国立眼研究所 (NEI) スコアリング システムで眼表面フルオレセイン染色スコアが 2 未満または全くないこと。
・末梢性、中枢性、混合性の NCP を区別するために、0.5% プロパラカイン塩酸塩点眼薬 (Alcaine、Alcon、テキサス州フォートワース) を点眼し、 5 分後にアナログスケールを使用して痛みの軽減の程度を調査した。
・痛みが完全に消失した患者は末梢性 NCP、部分的に軽減した患者は混合型 NCP、痛みが軽減しなかった患者は中枢性 NCP と診断された。
・DED の診断基準: (1) OSDI 質問票で少なくとも 13 点のドライアイ症状が持続している。
・(2) 次の眼恒常性異常の少なくとも 1 つが存在する。
・① 涙液破壊時間 (TBUT) が 10 秒未満
・② 片方の眼の涙液浸透圧が 308 mOsm/L 以上、または両眼で 8mOsm/L 以上の差がある。
・③眼表面染色:角膜フルオレセイン染色点が5個以上、結膜フルオレセイン染色点が9個以上。
・結果:NCP群とDED群の平均年齢はそれぞれ56.8 ± 14.7歳と59.9 ± 16.2歳であった(P = 0.062)。
・NCP群とDED群では、それぞれ43名(86.0%)、85名(85.0%)が女性であった(P = 0.707)。
・NCP群は、DED群と比較して、眼表面全体の染色スコアと角膜染色スコアがそれぞれ有意に低く、TBUTは良好であった。
・しかし、NCP群は、眼痛評価調査のほとんどの質問項目で有意に低いスコアを示し、全般的な疼痛(P = 0.019)、最大および平均眼痛、眼以外の疼痛(すべてP < 0.05)は有意に重症であった。
・ NCP群は、日常生活のあらゆる側面においてQOLが有意に低下していた(すべてP < 0.001)。
・NCP群は、眼痛について考える時間が長く、化学的刺激および機械的刺激を受けた際の疼痛強度がDED群よりも有意に高かった(すべてP ≤ 0.008)。
・灼熱感および羞明は、NCP群で有意に多く認められた(それぞれP = 0.032、P = 0.012)。
・結論:DEDと比較して、NCPはより重篤で頻繁な症状を引き起こし、QOLのあらゆる側面への悪影響が大きい。(CH)
Efficacy of the Rho-Kinase Inhibitor for Corneal Endothelial Protection in Fuchs Endothelial Corneal Dystrophy After Phacoemulsification
Benjama Keeratidamkerngsakul, et al. (Thailand)
Cornea 2025(7);44:896–904
目的:ROCK阻害剤は、細胞増殖、遊走、接着を促進することで角膜内皮再生を促進する可能性があることが実証されている。
・フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)患者の、PEA+IOL術後の角膜内皮保護に対するRhoキナーゼ(ROCK)阻害剤の有効性を評価する。
対象と方法:白内障を伴うFECD患者31名48眼。
・PEA+IOL後1ヶ月間、抗菌薬点眼とステロイド薬に加えて、ROCK阻害剤(リパスジル)点眼群(24眼)またはプラセボを1日4回投与する対象群(24眼)に無作為に割り当てた。
・点眼は全て1日4回、1ヶ月使用した。
・角膜内皮細胞密度(ECD)、中心角膜厚(CCT)、および角膜混濁を測定した。
・手術はCENTURION Vision Systemを使用。
・結果:リパスジル投与群では、角膜内皮細胞の喪失が有意に減少した。
・中心ECDは、ベースラインの2361cells /mm²(2151~2571)から術後 1 週間で 2255(2045–2465)cells /mm²に低下した後、術後1 か月で 2324(2114–2534)cells /mm²、3 か月で 2506(2296–2716)cells /mm² に増加し、ベースラインの 中心ECD より高くなった。
・対照群の平均中心ECDは、ベースラインでは2354(2144~2564)cells /mm²であり、術後1週間で1978(1768~2188)cell /mm²に低下した後、1ヶ月後に2067(1857~2277)cells /mm²、3ヶ月後に2204(1994~2414)cells /mm²に増加した。
・術後3ヵ月時点で、対照群における中心ECD減少率は、ベースラインと比較して6.1%であったが、リパスジル群では -9.0%であり、中心ECDが有意に増加したことを示した。
・傍中心ECD減少率は、リパスジル群で0.4%であったのに対し、対照群では7.3%であった(P = 0.128)。
・角膜混濁は、リパスジル群ではほぼ変化がなかったが、対照群では経時的に有意に増加した。
・平均CCTは、両群ともベースラインから3ヶ月後までわずかに増加したが、群間に有意差は認められなかった。
・有害事象はリパスジル群では、結膜充血が最も多かった。
・結論: ROCK阻害剤点眼薬は白内障手術を受けるFECD患者において、角膜内皮細胞の減少を予防し、内皮機能を改善する有益な効果を示し、角膜透明度が良好に維持された。(CH)
Three-Year Change in Subfoveal Choroidal Thickness and Area With Multifocal Contact Lens Wear in the Bifocal Lenses in Nearsighted Kids (BLINK) Study
Maria K Walker et al.
Invest Ophthalmol Vis Sci 66(5): 2025 doi:https://doi.org/10.1167/iovs.66.5.5
・近視の治療のためにマルチフォーカルCL(MFCLs)を着用した子供の脈絡膜厚と断面積変化を画角26度のOCT画像を用いて評価した。
・7~11歳の近視の子供281人(—0.75~-5.0D)を、単焦点CL(SVCLs)、+1.50 D加入MFCL、+2.50 D加入MFCL群にランダムに割り当て、着用後2週間、その後3年間毎年測定した。
・MFCLは、CooperVisionの中心遠見、周辺加入のBiofinity Multifocal Dであり、装用時間はいずれも1日、10から11時間である
・着用開始2週間後、SVCL群に対して+2.50 D MFCL群では、脈絡膜厚は8±3 µm増加(P = 0.003)、脈絡膜断面積は0.07±0.02 mm2増加した(P = 0.002)。
・3年後でも+2.5D MFCL群では、脈絡膜厚は7±3μm(p=0.01)、脈絡膜断面積は0.06±0.02mm2増加していた。
・+1.50D MFCL群では、装着2週間後の脈絡膜厚も断面積も、SVCL群との間に有意差はなかったし(いずれもp>0.25)、3年後も有意差はなかった(p=0.09とp=0.11)。
・ただし、+1.50D MFCLと+2.50D MFCLとの間には脈絡膜厚(p=0.13)も脈絡膜断面積(p=0.07)にも有意差はなかった。
・+2.50 MFCL群で脈絡膜面積の増加が大きかった者では、3年間で眼軸の延長が少なかった(TY)
Axial Length Stabilization or Reduction in over 40% of Patients Wearing Extended Depth-of-Focus Contact Lenses
Debabrata Hazra, et al. (慶應大学)
J Clin Med. 2025 Mar 5;14(5):1750.
・目的:中心焦点や周辺焦点のぼけを生じず、網膜全体の像質を向上させる新しいタイプの多焦点コンタクトレンズ(MFCL)であるEDOF CLが開発され、これまでの研究でEDOF CLを用いた近視抑制の有効性が確認されている。
・EDOF CL装用に伴う近視進行についてレトロスペクティブに調査した。
・対象と方法:近視の進行を抑制するためにEDOF CLを装用した24名の近視の小児(24眼、平均年齢13.9歳)、全例低濃度アトロピン点眼薬は併用していない。
・ベースライン時とEDOF CL装用1年後に眼軸長(AL)、等価球面度数(SE)、および中心窩脈絡膜厚(CT)を測定し変化を比較した。
・0.05 mm以上の眼軸長短縮を認めた症例を眼軸長短縮と定義した。
・脈絡膜の日内変動を考慮し、CT値の変化は年間20 µm以上の増加または減少と定義した。
・結果:ベースライン時の平均AL、SE、CTはそれぞれ26.31mm、-6.38ディオプター(D)、235µmであり、1年後にはそれぞれ26.40mm(p = 0.03)、-6.61D(p = 0.05)、244µm(p = 0.18)であった。
・ALは20.8%で減少(≧-0.05mm/年)し、20.8%で維持、58.4%で増加(≧+0.05mm/年)した。
・ALが減少した患者の平均屋外活動時間は200.6分/日であり、ALが増加した患者は126.7分/日であった。
・
・ALの変化はCTの変化と有意に相関しており(β=-0.46、p < 0.05)、ALが短縮した患者の80%でCTが増加した(≧+20µm/年)。
・結論: EDOF CL装用眼においてALが減少した症例が20.8%認められ、そのうち80%でCTが増加していた。
・ALが減少した症例は増加した症例に比べ、1日平均3時間以上の長時間の屋外活動をしていた。
・屋外活動時間が十分かつEDOF CLを装用することで、近視のALの伸長を抑制できる可能性が示唆された。(CH)
鳥居(慶応大)
あたらしい眼科 42(4): 459-460, 2025
・強度近視眼では成人以後も眼軸長が伸び続けている。
・20歳以上の成人の近視の進行程度は0.04~0.4D/年程度。
・強度近視眼(SE-6D以下)の年齢別の眼軸長伸長を調べた報告では、7歳~18歳未満では0,46mm/年。18歳~40歳未満では0.07mm/年。40歳~70歳未満では0.13mm/年。
・50~70歳でも中等度~急速に眼軸長が伸長する症例がある。
・幼少期において屋外活動が近視進行を抑制するが、20~28歳の成人でも屋外活動は近視進行抑制効果があることが報告されている。
・屋外環境に存在するバイオレットライト(360~400nm)が関与している可能性。
・IOL手術時に短波長カットのIOLを挿入した群(VLカット群)と、一部カットするIOL挿入群で、白内障手術後5年間の近視進行を比較した報告によると、VLカット群でIOL術後も有意に近視が進行した。
・短波長に感受性がある内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)が関与し、長時間の屋外活動でのVL受光により、脈絡膜厚が有意に厚くなり、近視抑制につながっているだろう。(TY)
佐藤 智樹 IOL&RS Vol.39 No.2 June 2025.
・前駆症状期:結膜充血、濾胞性結膜炎
通常の副作用との区別が難しく投薬が継続されやすい
・周辺部角膜浸潤期:角膜浸潤が徐々に角膜中央に向かって拡大する
→この時期までに発見したい
・角膜実質炎期:新生血管が角膜深部に侵入する
脂質沈着や扇状混濁の形成。視力低下が顕著となり、かつ視力回復困難となる
・治療方針:角膜浸潤が認められれば点眼の早期中止・変更と、ステロイド点眼の開始による炎症の制御が推奨される。また、早期発見には定期的な診察が必要である。(AM)
桜井寿也 眼科手術38:464-468. 2025
・黄斑円孔の術後視力は、外境界膜(ELM)の連続性の有無に影響される。
・翻転した内境界膜(ILM)が円孔を完全に被覆すると、網膜外層構造の再構築に影響を与える可能性があり、筆者はILM翻転を円孔の半周としている。
・ILMを円孔底に埋め込むILM Insertion法と、ILMで円孔上部を覆うILM covering法の比較も含め術後の検討が行われた論文。
・症例:眼軸長27mm以上の黄斑円孔患者52例52眼 平均年齢62.7才
平均眼軸長29.4mm 平均円孔底径748.9㎛ 最小円孔径380.0㎛
・結果:術後円孔閉鎖50/52眼、術後12か月までに視力は有意に改善した
・ILM Insertion法とcovering法とで円孔閉鎖率とELMの再生割合に有意差は無かった。(AM)
Junfuku Lee あたらしい眼科42(2):199-202. 2025
・レッドライト治療の副作用である短期羞明、閃光盲、残像は、一般的に数分間の閉瞼後に消失するが、2023年に中国で網膜障害と視力低下をきたした1症例の報告があった。
・その後の調査の結果、重度の副作用の発症率は約0.0067%でまれな副作用と考えられた。
・症状の内訳は、羞明や残像の遷延、視力低下、網膜障害で、治療中断により回復した。
・光治療に対する過敏症がある場合に起こる稀な有害事象と考えられている。
・このため、治療後に5分以上持続する羞明や残像の症状がある場合は治療の中止を検討する必要がある。(AM)
Effect of repeated Low-Level red light therapy on axial length in myopic individuals: predictors for a good response
Daohuan Kang et al:BMC Ophthalmol 25, 273 (2025)
・目的:近視眼に対する反復低レベル赤色光 (RLRL) 療法に良好な反応を示す因子を特定すること
・対象:2022年10月から2023年10月に反復低レベル赤色光を受けた4~17歳の91人
・方法:RLRL 療法を 1 日 2 回(1回3分間、最低4時間の間隔をあける)、週 5 日行う
・蘇州玄佳オプトエレクトロニクス技術の赤色光デバイスを使用。
・波長 650 ± 10 nm の赤色光、照明強度約 1600 lx
・1年間の眼軸長の伸びが0.1mmを超える50 人を不良反応者グループに分類し、反対に0.1mm以上眼軸長が短縮した41 人を良好反応者グループに分類した。
・年齢、性別、瞳孔収縮径 (PCD)、眼圧 (IOP)、球面等価屈折 (SER)、AL、角膜曲率 (ACC)、脈絡膜の厚さ (CT) などのベースライン特性を記録し1 年間追跡した。
・単変量および多変量分析により、AL の変化に関連する因子を特定した。
・結果:良好なレスポンダー群は眼軸長が平均0.29mm短縮し(-0.29 ± 0.16 mm )、不良レスポンダー群は平均0.23mm増加した(+ 0.23 ± 0.12 mm)。
・良好なレスポンダー群は、初期の球面等価屈折が低く(-4.15 ± 2.87 D vs. -2.62 ± 1.80 D)、より長い眼軸長(24.76 ± 1.21 mm vs. 24.15 ± 0.99 mm)の症例が多かった。
・単変量解析で、初期眼軸長と球面等価屈折が良好な反応を示す因子として特定された 。
・脈絡膜の厚さは両グループで有意に増加し、良好なレスポンダー群はより大きな増加を示した。
・結論・ベースライン AL が長く、SER が低いことは、RLRL 療法に対する良好な反応を示す重要な予測因子である。
・特に初期近視が重度で AL が長い人において、近視の進行を制御するのに効果的であることが示唆された。(AM)
眼臨紀 17(11): 811-815, 2024
牧山由希子他(京都府)
・急性原発閉塞隅角緑内障に対する白内障手術後に網膜斑状出血を生じ、約3か月後に吸収された。
・眼球減圧網膜症ODRは、緑内障濾過手術後の急激な眼圧下降に伴う網膜出血斑を特徴として、1992年に報告された。(TY)
眼科臨床紀要17(10):2024
高橋翔吾 他(富山大)
<症例>75歳女性
既往症:右眼中心性漿液性網脈絡膜症
右眼PCVの診断でファリシマブ硝子体内投与開始。導入期3回目の注射より18日後に右眼中心視野障害と視力低下を自覚した。
網膜静脈炎と視神経乳頭炎の併発を疑う所見を確認した。
トリアムシノロンアセトニド20mgテノン嚢下投与、ベタメタゾン点眼、ブロムフェナクナトリウム点眼を開始し改善した。
<考案>抗VEGF薬投与後に自覚症状が悪化した場合には速やかな診察が必要である。 (AM)
COVID-19罹患後にacute macular outer retinopathy (AMOR)を発症した2例
眼科 Vol.66 (10) 2024
竹内一彦 他 (日本大学)
・COVID-19罹患後に急性に若年女性に発症する報告がある
・一般的な症状は視力低下、傍中心暗点、光視症
・網膜外層に病変が起こる
・検眼鏡で病巣を検出しにくい
<症例1>
28歳女性
主訴:左眼中心視野異常
発熱し近医で COVID-19罹患の診断。その2日後に視野異常を自覚し12日後に眼科受診。
COVID-19ワクチン接種は2回受けていた。
視力:右0.8(1.0)
左0.7(1.0)
(画像供覧)
(経過)・両眼AMORの診断で0.1%ベタメタゾン点眼4回/日開始漸減し3か月施行した。
・5か月後に近赤外線画像の低反射領域軽快
OCTではIZラインの不整が残存した。
自覚症状は消失した。
<症例2>
28歳女性
主訴:左眼視野異常
発熱し近医でCOVID-19罹患の診断4日後に楕円形の残像が見えることに気づき7日後に眼科受診した。
COVID-19ワクチン接種は2回受けていた。
視力:右0.7(1.0)
左0.9(1.0)
(経過)無治療で経過観察を行った。
初診から74日後、IZラインの不整は残った。自覚症状は残存した。
・ COVID-19罹患後に傍中心暗点を発症した場合AMORを疑う。診断にはマルチカラー画像,近赤外光画像,OCT,OCTAが有用である。(AM)
山田他(慈恵医大)
眼臨紀 17(10): 729-734, 2024
・2015~2019にRRD病名での手術患者706例を対象として、患者住所(各市)の人口数から年間発生率を計算した。
・34市に分類され、発生率の少ない市は除外し、4市の553眼から発生率を計算した所、発生率は10万人当たり12.5人であり、55~59歳に単一ピークがあった。
・30年前の発生率は10万人当たり10.4人であり、ピークは60~69歳、次ピークは20~29歳の2峰性であった。
・発生率増加の原因は近視の有病率の上昇であろう。(TY)
Early Outcomes of an Artificial Endothelial Replacement Membrane Implantation After Failed Repeat Endothelial Keratoplasty
Luigi Fontana, et al. (Italy)
Cornea 2024(9);43:1088–1094
目的:繰り返す角膜内皮移植術(EK)の移植片不全に対する人工角膜内皮(EndoArt、EyeYon Medical社、イスラエル)移植術の成績を報告する。
EndoArtは、厚さ50μm、直径6.5mmのヒドロキシエチルメタクリレートとメチルメタクリレートの柔軟な材料で構成され、角膜後面の曲率に合わせて成形され、人工的な流体バリアとして機能し、病的な角膜内皮の機能を代替する。デバイスが角膜内皮面に接着すると、角膜実質への水分の浸透が妨げられ、その結果、実質の浮腫が減少し角膜の透明度が改善する。
対象と方法:過去に2回以上EK後に移植片不全となった患者5例。逆シンスキーフック(Moria SA, Nanterre, France)を用いてEKグラフトを角膜後面から剥離し、2.0mmの角膜トンネルから取り出した。その後、EndoArtを角膜表面に置き、端に見える「F」マークに従って、正しい方向を確認した。先端が鈍いスパチュラ(Janach Srl, Como, Italy)を使用し、角膜トンネルを通して前房内にEndoArtを押し込んだ。前房内に挿入されると自然に展開し、角膜中央に配置された。10%C3F8を前房内に注入し、角膜後面に密着させた。10-0のナイロンで角膜に1針縫合、3ヵ月に抜糸した。
結果:4例はEndoArt移植前に2回、1例は3回のEKを受けていた。最後のEKからEndoArt移植までの平均期間は3±1年であった。手術の6ヵ月後、角膜後面に完全に接着し、すべての患者で角膜中心部は透明であった。術前の平均CDVAは1.26 ± 0.25 logMAR、術後最終平均CDVAは0.74 ± 0.44 logMARであった(P = 0.062)。術後、視力は2例で11 line改善、2例で2~5 line改善、1例で3 line低下した。平均CCTは、術前805 ± 135 mmから術後6ヵ月で588 ± 60 mm、全例で顕著なCCT低下がみられた(P = 0.015)。重大な合併症は認められなかったが、5人中4人は、術後2~8週間でEndoArtの解離が生じたため、1回以上の10%C3F8再注入を必要とした。
緑内障点眼剤を使用している患者3例と緑内障手術歴のある患者1例での眼圧上昇は認められなかった。全例でNRS(Numerical Rating Scale)が1.5〜5ポイント減少し、自覚的な痛みが軽減した。
結論:この研究期間中にEndoArtの抜去を必要とした患者は一人もいなかったことから、短期的な安全性は良好であることが示唆された。また、患者の視機能を改善する能力を実証した。(CH)
臨眼 78(9):1073-1081.2024
後藤浩 他(東京医科大)
・本邦では梅毒患者が年々増加している
昨年は約1万5千件の報告
・20~50歳代男性、20歳代女性に多い
・多彩な眼所見を呈する
<眼所見の内訳>
前眼部炎症 67%
硝子体混濁 58%
視神経乳頭発赤 36%
網膜静脈炎88%・網膜動脈炎 73%
黄斑浮腫 19%
斑状網膜病変 17%→非HIV感染例では 梅毒を疑う重要な所見
視神経炎 8%
<症例提示>
①42歳女性
ぶどう膜炎の診断で紹介受診
右眼)硝子体混濁・網膜血管炎
②53歳男性
プレドニゾロン内服無効のため紹介
両眼)網脈絡膜炎
左眼)硝子体混濁・視神経炎
③36歳男性
急性網膜壊死疑いで紹介受診
左眼)硝子体混濁・網膜滲出病変
網膜血管炎
*全症例で血清梅毒反応陽性
FAG施行
<考案>
非定型的な中間部および後眼部ぶどう膜炎症例には積極的に血清梅毒検査を行う (AM)
臨眼 78(7)817-822 2024
村瀬裕香 他(東京医科歯科大)
・40代男性に多かった
<炎症の局在分類>
汎ぶどう膜炎 57.9%
後部ぶどう膜炎 31.6%
前部強膜炎 10.5%
↳後眼部炎症の症例が多かった
<眼所見の内訳>
網膜血管炎 73.7%
角膜後面沈着物および硝子体混濁47.4%
視神経乳頭炎 42.1%
・特徴的とされるASPPC(acute syphilitic posterior placoid chorioretinitis)所見が1 例にみられた
・治療開始が遅れると網膜外層萎縮や黄斑浮腫などにより視力予後不良となる
→血清学的検査の実施による診断と早期治療による後眼部炎症の鎮静化が重要 (AM)
眼科.66(6)2024
松本大蔵 他(自治医科大)
症例報告数が特に少なく、治療法の確立していない小児の外傷性黄斑円孔網膜剥離の報告
<症例>
13歳男児
サッカーボールによる左眼打撲
診断:左眼)外傷性黄斑円孔網膜剝離 網膜振盪症
両眼)高度近視
経過:円孔の自然閉鎖は見られず受傷後3週間で硝子体手術を施行した。
術中にPVDが生じていることが確認された。
術前の左眼視力: 0.03(矯正不能)
術後の左眼視力:(0.2)
<考案>
・過去の報告では約30~50%の症例の円孔が自然閉鎖した。
小さい円孔、円孔周囲に網膜内嚢胞が無い、後部硝子体剥離が無い症例に多かった。
受傷後1~2週で所見の改善が始まった。
・本症例は強度近視のため硝子体が既に液化していたか、受傷時にPVDが発生した可能性がある。
・外傷性黄斑円孔網膜剥離では受傷後1~2週間で所見の改善がなければ硝子体手術も選択肢になる。 (AM)
Retinal vasculitis after intravitreal aflibercept 8mg for neovascular age-related macular degeneration
Japanese Journal of Ophthalmology 68(5):531-537, 2024
Hideaki Matsumoto et al
アフリベルセプト8mgの臨床試験で報告のなかった網膜血管炎が発症したことに関する臨床報告
<症例>35眼34人:男23眼23人 女12眼11人
18眼(51.4%)…未治療
17眼(48.6%)…他剤より切り替え
内訳: 7眼 アフリベルセプト2mg
2眼 ブロルシズマブ
8眼 ファリシマブ
ブロルシズマブ関連眼内炎 5眼
ファリシマブ関連眼内炎 1眼
<症例提示>82歳男性 未治療 Type1.2.混合型 網膜血管炎と硝子体炎を発症した
<結果>
・アフリベルセプト8mg投与4週間後の検査で3眼(8.6%)に網膜血管炎を確認した。
・トリアムシノロンアセトニド(30mg/0.75 mL)のテノン嚢下注射で改善がみられた。 (AM)