Incidence and progression of age-related macular degeneration among patients with and without obsructive sleep apnea. A National Cohort Study.
Blazes M et al(WA USA)
Retina 45(2): 198-206, 2025
・閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)は、AMDのリスクを高めるかどうかを検討した。
・台湾の国民健康保険研究データベースを用いて、2000~2018にOSAと診断された66,869人のOSA患者と66,869人の非OSA患者を抽出し、AMDリスク、および非滲出型AMDから滲出型AMDへの進行リスクを調査した。
・OSAでは、AMDのハザード比は1.36(95%CI: 1.29–1.43、P < 0.0001)。
・非滲出型AMDから滲出型AMDへの進行リスクのハザード比は0.94(95%CI=0.77–1.14、P = 0.5073)であった。
・OSAは、AMDの発症リスク増加と関連していたが、既に非滲出型AMDがあっても、AMDの進行リスク増加は認められなかった。(TY)
Visual acuity loss after vitrectomy for epiretinal membrane in eyes with glaucoma.
Higashide T et al(金沢大)
Retina 45(2): 247-256, 2025
・緑内障眼における黄斑前膜手術後の視力低下の発生率を調査した。
・緑内障群(43人47眼)および対照群(46人46眼)において、黄斑前膜に対する硝子体手術(内境界膜剥離)の前後で、視力、中心視野(Humphrey 10-2)を測定した(手術前、術後3、6、12カ月)。
・緑内障群では、術後1.5年以上にも実施した。
・術前からの0.2 logMAR以上の低下を「有意な視力低下」と定義し、関連因子を検討した。
・術後1年間では、両群ともに有意な視力低下は認められず、手術後の視力は両群で同程度に有意に改善した(両群間の比較:P > 0.15)。
・しかし、緑内障群の8眼(17%)において、術後1.5年以上経過してから有意な視力低下が認められた。
・これは、手術前の中心視野のMDが悪かったこと、および術後1年間の中心視野のMDの低下量が大きいことと関連していた(HR= 0.83–0.72、それぞれP = 0.018、P < 0.001)。
・緑内障眼では、黄斑前膜手術後に長期間を経て有意な視力低下が生じる可能性があり、そのリスクは術前の中心視野障害の程度および術後1年間の中心視野の悪化と関連していた。
・緑内障患者ではERM手術時のRGCに障害を与えない術式の改善が必要と考えられる。(TY)
Comparison of surgical outcomes of macular telangiectasia type 2-associated macular hole with idiopathic macular hole. A tertiary center review.
Lee JH et al(Korea)
Retina 44(12): 2076-2085, 2024
・黄斑部毛細血管拡張症2型に関連する黄斑円孔(MacTel-MH)27眼と、特発性黄斑円孔(idiopathic MH)243眼との手術成績を比較した。
・2015/1~2023/9に黄斑円孔手術を受けた患者を対象とした。
・術後2年での黄斑円孔閉鎖率は、MacTel-MH群よりもi-MH群の方が高かった。
・一方で、MacTel-MH群では、ellipsoid zoneおよび外境界膜ELMの回復が、特発性黄斑円孔群よりも顕著であった。
・短期的にはMacTel MHの成績は特発性黄斑円孔よりも不良である可能性があるが、長期的には外網膜構造の回復に伴い、視力の改善は特発性黄斑円孔と同等になり得ると考えた。(TY)
The inverted intrenal limiting membrane flap technique is not recommended for the treatment of large macular holes smaller than 650μm.
Chen J et al(China)
Retina 44(12): 2086-2090, 2024
・黄斑円孔は小型< 250µm、中型250–400µm、大型>400µm、巨大>650µmにわけられる
・650 µm 未満の大型MHに対し、反転フラップ法(Inverted Flap Technique: IFT)32眼と、従来の内境界膜(ILM)剥離術37眼の成績を比較した。
・両群とも、フォローアップ期間を通じてBCVAは有意に改善したが(P < 0.001)、すべての時点(術後1,3,6か月)でIFT群の視力成績はILM剥離群よりも劣っていた(P = 0.039, 0.005, 0.006)。
・また、術後6か月時点でのELM回復率は、ILM剥離群(78.3%、29/37眼)がIFT群(53.1%、17/32眼)よりも高かった(P = 0.079/ 0.026)。
・IFTはILM剥離術と比較して、ELMの回復および視力の改善が不良であることが示され、650 µm 未満の大型黄斑円孔手術には適していない可能性が考えられた。(TY)
Gunn dots in children aged 11-12 years from the general community sample Copenhagen child cohort 2000 Study.
Boberg-Ans LC et al(Norway)
Retina 44(11): 1961-1965, 2024
・Gunn dotsは、Ludwig Gunnが最初に報告した健康な若い人の視神経乳頭周辺にみられる網膜神経線維層に存在する小さな白色の点状病変で、無症候性で、臨床的な意義は少ない。
・11~12歳の健康な子ども761名の赤外線フリー写真を視神経乳頭を中心にして撮影し、直径6mm内のGunnドットを数えた。
・Gunnドットは761名中716名(94%)で観察された。
・ドットの大半は視神経乳頭の上下方向、中心から3mm以内にあり、1眼に約66個(0~574個)だった。
・特に、視神経乳頭の上側側頭部および下側側頭部の縁付近に位置する網膜神経線維層RNFLが最も厚い領域に多く見られ、光の入射角により、その見え方が変化する。
・楕円形または多角形をしており、直径が10~15µmである(網膜動脈径100~120µm、網膜静脈径120~150µm)
・単独で存在したり、やや規則的に集まっていることもある。
・最も近い点との距離は30~100µm離れている。
・ガンドットは、網膜の内境界膜近くに存在するミュラー細胞の基部で光が反射することによって生成されると考えられている。(TY)
Investigation of the pathophysiology of epiretinal membrane foveoschisis. Analysis of longitudinal changes in visual functions, retinal structures, and retinal traction force.
Matoba R et al(岡山大)
Retina 44(11): 1992-2000, 2024
・未治療の黄斑上膜による中心窩分離者(FS)33名35眼の最良矯正視力BCVA、M-CHARTS、黄斑上膜面積、網膜皺襞の最大深度、FS面積、FSの円形度などを調査した。
・FS面積の年間変化率に基づいて2つのグループに分けてみると、FS拡大群では平均観察期間29.1±27.0か月で、BCVAと平均M-CHARTSスコアが有意に悪化し、網膜牽引力の強さの指標としての網膜皺襞の最大深度も有意に増加した。
・一方、FS非拡大群では、BCVA、平均M-CHARTSスコア、および網膜皺襞の最大深度に有意な変化はみられなかった。
・多変量ロジスティック回帰分析では、網膜皺襞の最大深度(OR=1.05 95%CI=1.00-1.10 P=0.048)およびERMによる非対称的な牽引と関連するFSの円形度(OR=0.91 95%CI=0.83-1.00 p=0.043)がFS拡大と有意に関連していた。
・ERMが主に原因となるFSでは手術適応があるが、硝子体が関与するFSの一部の症例では、治療を必要としない場合もあるだろう。(TY)
Pedicle transposition flap, inverted flap, free flap, and standard peel for large full-thickness macular holes. A comparative study.
Macchi I et al(UK)
Retina 44(9): 1552-1559, 2024
・直径500μを超える大きな特発黄斑円孔126例129眼(2018/1~2022/10)について、通常のILM剥離法、有茎弁法、翻転法、free弁法で行い、結果を比較した。
・平均年齢73.2±8.4歳、経過観察期間の中間値は5ヶ月である。
・全体の閉鎖率は81%であり、通常のILM剥離法が有意に閉鎖率が低かった(59% p<0.0001)。
・有茎弁法はfree弁法と比較すると視力改善が有意に良かった(ETDRS文字で+27文字:+12文字 p=0.02)。
・有茎弁法とは、ILMを全周剥離し、蝶番となったflapを円孔上に置き、慎重に液空気置換を行って、中央部にとどめるもので、粘弾物質は使用せず、円孔周囲は細心の注意を払って液を取り除くことで、flapを接着させ、術後のflap移動を防ぐものである。
・3か月後のELMの復元率は有茎弁法ではfree弁法や通常のILM剥離法よりも有意に良好で(p=0.008, p=0.03)、6か月後では、free弁法、ILM剥離法、翻転法よりも有意に良好であった(p=0.02, p=0.04, p=0.006)。
・大きな特発黄斑円孔では、通常のILM剥離法の結果は良くなく、他の3法は成功率は同等であった。
・中心窩の微細形状の回復は有茎弁法が最も良く、free弁法が最も不完全であった。(TY)
CHANGES IN SCLERAL THICKNESS IN THE ACUTE PHASE OF VOGT-KOYANAGI-HARADA DISEASE
RETINA 44:2024:
AYANO OSHIRO et al(琉球大)
前眼部OCT(CASIA2;Tomey)を用いて急性期の原田氏病眼の強膜の厚さと毛様体脈絡膜滲出液の変化を調べた初めての論文
<方法>治療未経験の原田氏病患者17名34眼のステロイド治療開始後に、前眼部OCTを用いてベースライン・1週間後・2週間後・12週間後の強膜の厚さと毛様体脈絡膜滲出液の変化を調べた。
・強膜の厚さは、OCT画像の強膜岬から直線で6mm後方の強膜表面を、各外眼直筋4方向から測定した。
・脈絡膜厚はB-scan OCTで、中心窩の網膜色素上皮線から脈絡膜‐強膜境界面間の長さを測定した。
<結果>
・28/34眼(82.4%)に毛様体脈絡膜滲出液を認めた。
→毛様体脈絡膜滲出液のある症例の強膜の厚さはベースラインから1週後までが最大値となり、以後急速に減少した。
→毛様脈絡膜滲出液のない症例の強膜の厚さは全期間で有意な変化はなかった。
・漿液性網膜剥離はベースラインで28/34眼(88.2%)にみられた。
・脈絡膜の厚さは1週間後以降から減少し続け、12週間後には消失した。
<結論>原田氏病の急性期には毛様体脈絡膜滲出液が存在する頻度が高く、その場合は強膜の厚さが最大値になる。
その後、治療により強膜の厚さは減少する。 (AM)
Prednisolone eye drops as a potential treatment in non neovascular pachychoroid-related diseases.
Tillaart FMVD et al(Netherlands)
Retina 44(8): 1371-1378, 2024
・パキコロイド関連疾患でプレドニゾロン点眼薬の効果を調査した。
・パキコロイド関連疾患とは、CSC、PPE:pachychoroid pigment epitheliopathy、PNV:pachychoroid neovasculopathy、AT1:polypoidal choroidal vasculopathy/aneurysmal type 1 neovascularization、FCE:focal choroidal excavation、PPS:peripapillary pachychoroid syndrome。
・対象疾患は、44眼の慢性中心性網脈絡膜症CSC、8眼のパキコロイド色素上皮症、2眼の視神経乳頭周囲パキコロイド症候群の48例54眼である。
・プレドニゾロン点眼薬は1%のものを1日3回点眼し、直径6mmの黄斑容積、直径1mmの中心黄斑厚を測定した。
・平均41.2±14.5日経過をみた。
・慢性CSCの44眼では、黄斑容積も中心黄斑厚も有意に減少し(p<0.001)、10眼(22%)では浮腫は完全に消失した。
・パキコロイド色素上皮症では鼻側の網膜厚が減少(p=0.025)。視神経乳頭周囲パキコロイド症候群では1眼で構造が改善した。
・全例で視力改善はみられなかった。(TY)
Ellipsoid zone recovery in macular telangiectasia type 2.
Goerdt L et al(Switzerland)
Retina 44(8): 1413-1421, 2024
・黄斑部毛細血管拡張症type2で、ellipsoid zone(EZ)形状の回復について報告する。
・21例24眼(68±8.54歳)で21.25±12.79ヶ月経過をみたところ、EZ消失面積は0.036±0.028→0.01±0.013mm2に変化した(p<0.001)。
・最高視力はlogMAR 0.23±0.33(小数点0.59)→0.34±0.34(同0.46)となった(p=0.3)。(TY)
Evaluation of prone versus supine positioning in fresh rhegmatonenous retinal detachment treated with pars plana vitrectomy and gas.
Agarwalla A et al(India)
Retina 44(7): 1150-1156, 2024
・新鮮な網膜剥離に対して25G硝子体手術(ガス注入)を行った72症例で、術後の仰向き姿勢37眼とうつ伏せ姿勢35眼を、術後3か月経過をみた。
・両群間に、網膜剥離の進展状況、部位、裂孔数などに有意差はなかった。
・術後復位例は仰向き群で97.3%、うつ伏せ群で94.3%で、有意差はなかった(p=0.61)。
・3か月後の視力は仰向き群で0.44±0.27(小数点0.36)、うつ伏せ群で0.35±0.27(0.45)で有意差はなく(p=0.119)、いずれも術前より有意に視力は上昇した(p<0.001)。
・術後の眼圧も同等で、白内障増加も同等(60%:53.8%)であった(P=1.00)。
・眼圧上昇スパイク、黄斑前膜形成、CME発生状況も同等であった(TY)
Comparison of the effects of eight different topical nonsteroidal anti-inflammatory drugs on reducing intravitreal injection-induced pain.
Sakallioglu A et al(Turkey)
Retina 44(7): 1196-1202, 2024
・非ステロイド点眼(NSAID)の硝子体注射による痛み緩和効果について662例662眼について、7種(8種:濃度違い)のNSAIDとCtrl(生食水)について検討した。
・痛みはvisual analog scale(VAS)で、注射直後と注射6時間後に0から10で評価した。
・0:痛みなし、10:激痛。
・最初に麻酔のproparacaine点眼を1滴点眼し、10%ヨードで眼瞼眼窩領域を消毒後、開瞼器をかけ、再度proparacaine点眼、5%ヨード点眼し、1分間待ち、生食で眼表面の残存ヨードを洗い流し、再度、proparacaine点眼後に30G針で、抗VEGF薬を注入した。
・8種のNSAIDsは、処置の30-40分前に1滴点入した。
・NASID点眼は、Nepafenacネバナック0.3%、Nepafenacネバナック0.1%、Ketorolac0.5%、Diclofenacジクロード0.1%、flurbiprofen(フロベン)0.03%、Indomethacin(インフリー)0.1%、Bromfenacブロナック0.09%、Pranoprofenニフラン0.1%である。
・ネバナック0.3%、ネバナック0.1%、ブロムフェナクの3種が注射直後と6時間後のVASが最小であり、ジクロードとKetrolacがVASが大きかったが、Ctrlよりは小さかった。
・フルベン、ニフラン、インフリーは注射直後の痛み緩和には影響がなかったが、6時間後のVASは有意に小さくなっていた。(TY)
Bilateral eye patching may improve clinical outcomes for acute primary rhegmatogenous retinal detachment.
Tang PH et al(MN USA)
Retina 44(4): 591-600, 2024
・裂孔原性網膜剥離RRDに対する術前の両眼帯BEPが網膜剥離と視力に与える影響を、retro-spectiveに335例について検討した。
・手術までのfull-time両眼帯を遵守した割合で、高遵守(≧90%)、中度遵守(>90%,≧50%)、低遵守(<50%)、Ctrl群に分けた。
・遵守群の240例を、95例のCtrl群と比較した。
・網膜剥離の状態を手術直前に評価した所、高遵守で64%、中遵守で35%と、低順守の4%、Ctrlの3%に比して、有意に下液減少がみられた(p<0.01)。
・黄斑剥離の症例での黄斑再接着の比率は、高遵守29%、中遵守8%で、低遵守の2%,Ctrlの1%よりも有意であった(p<0.01)。
・術後最終視力については、黄斑ON症例では遵守の影響はなかったが、黄斑OFF症例では高遵守はlogMAR=0.30(小数点0.5)であり、低遵守のlogMAR=0.40(0.4 p=0.04)、CtrlのlogMAR=0.60(0.25 p=0.02)より有意に良かった。
・術前の両眼帯を50%以上の時間、遵守することは術後視力に有意義であることがわかった。
・RDの診断から手術までのどの程度の遵守時間が最大の効果があるかについては検討していないが、3日を過ぎると遵守度が悪くなっていた。(TY)
INCIDENCE AND RISK FACTORS OF INTRAOCULAR INFLAMMATION AFTER BROLUCIZUMAB TREATMENT IN JAPAN
SATORU INODA, et al. (自治医大)
RETINA 44:714–722, 2024(4)
目的:本邦における滲出型加齢黄斑変性に対するブロルシズマブ(ベオビュ)硝子体内注射(IVBr)後の眼内炎(IOI)発生率とその危険因子を検討する。
対象と方法: 14施設で2020年5月から2022年5月までにブロルシズマブによる治療を受けた滲出型加齢黄斑変性患者(日本国籍、年齢50歳以上、nAMDと確定診断、少なくとも1回のIVBrを受けた症例)1,351例を対象とした。男性76%、平均年齢は75.3歳。
結果:IOIは152眼(11.3%)、網膜血管炎(RV)および/または網膜血管閉塞(RO)は53眼(3.9%)に起こった。94例が両眼の治療を受け、両側性IOIは5例(5.3%)だった。
16眼(1.2%)にIOIによる不可逆的な視力低下が、9眼(0.67%)にRVおよび/またはROによる3 line以上の視力低下がみられた。
IOI発症までの期間の中央値は、最初のIVBr注射から49日(範囲:2~324日)、最後のIVBr注射から28日(1~138日)であった。2例を除くすべてのIOI症例は、最後のIVBr注射から4か月以内に発症した。RVおよび/またはRO発症までの期間は、初回注射後が57(7-289)日、最終注射後が26(1-138)日であった。
累積IOI発生率は、30日、180日、365日でそれぞれ4.5%、10.3%、12.2%であった。
IOIは、初回注射後91眼(初回注射を受けた患者の6.7%)、2回目33眼(3.1%)、3回目17眼(1.9%)、4回目以降10眼(1.2%)だった。IOIの発生率は、1回目、2回目、3回目の注射から4ヵ月後で、それぞれ11.8%、3.8%、2.3%であり(P<0.001)、IOIは1回目のIVBr注射後に最も多く発症した。
IOI(RVを含む)および/またはROの既往(オッズ比[OR]、5.41;P = 0.0075)および女性(OR、1.99;P = 0.0004)は、IOIと有意に関連していた。
高血圧、糖尿病、他の抗VEGF薬の使用歴(スイッチング)、両眼注射などの他の因子についても検討したが、これらは有意な危険因子ではなかった。
結論:ブロルシズマブ治療におけるIOIの1年累積発生率は12.2%であった。IOI(RVを含む)および/またはROの既往と女性が有意な危険因子であった。IOIは初回IVBr注射後に最も多くみられ、最終注射後4ヵ月間に集中し、徐々に減少する。そのため注射後4ヵ月までは患者を注意深く観察することを推奨する。
米国ではIOI(RVを含む)および/またはROの発生率は2.4%、韓国では13.9%との報告がある。IOIの発生率は東アジア人集団の方が高いようである。(CH)
Full-thickness macular hole closure with topical medical therapy.
Wang J et al(IL USA)
Retina 44(3): 392-399, 2024
・点眼治療で黄斑円孔が閉鎖した症例について検討した。
・2017-2022に治療した168例の黄斑円孔のうち、71例はステロイド(プレドニゾロン点4×1など)、炭酸脱水素酵素阻害剤(ブリンゾラミド点3×1など)、NSAID点眼薬(ブロムフェナク点4×1など)で治療を開始した。
・22例は脱落したが、49例(平均年齢67歳 59%が女性)について解析した。
・7/49例は硝子体手術PPV後の2次的なMHで、42/49例は特発性MHである。
・結果、18/49例(36.7%)は点眼治療で閉鎖し、このうち13例は特発性MHであった。
・円孔径が密接に閉鎖に関与しており、円孔径が10μm小さくなるにつれ、閉鎖確率は1.2倍(CI=1.1-1.4 p=0.001)になった。
・面白いことに黄斑前膜の存在は、点眼薬治療での円孔閉鎖とは相関がみられなかった。
・閉鎖にかかった時間は107.2日(20~512日)であり、円孔径とは関連がなかった(CI=-0.478~+1.938 p=0.217)。
・硝子体黄斑牽引VMTの存在は閉鎖に対して逆相関があった(OR=6.1 CI=1.2-31.3 p=0.029)。
・最初から硝子体手術PPVを選択した人と、PPVを選択する前に点眼治療を行った人との間には最終の最高視力には関連がなかった(p=0.318)(TY)
Prevalence and risk fators of age-related macular degeneration features among pilots.
Park JY et al(Korea)
Retina 44(3): 475-486, 2024
・韓国空軍のパイロット2,781名について加齢黄斑変性症のリスクファクターを調査した。
・黄斑変性症は、韓国空軍のパイロットの12.9%にあたる2,781名で、50歳以上が35.2%である。
・黄斑変性症のあるパイロットは年齢と相関(OR=1.082 CI=1.067-1.096 p<0.001)、女性で少なく(OR=0.229 CI=0.056-0.939 p=0.041)、喫煙(OR=1.027 CI=1.008-1.047 p=0.006)、飛行時間(OR=1.004 CI=1.003-1.005 p<0.001)、総コレステロール値(OR=1.004 CI=1.000-1.007 p=0033)、LDLコレステロール値(OR=1.005 CI=1.001-1.008 p=0.011)に相関していた。
・勤務状況にも関連し、戦闘機パイロットと比較して、地上勤務(OR=0.617 CI=0.460-0.827)、ヘリコプター(OR=0.572 CI=0.348-0.940)で有意差があった(p=0.002)。
・空軍のパイロットは一般の人よりもAMDの比率が高く、パイロットの職業リスクと考えられる。
・黄斑変性症の比率は一般:空軍では、40代が1.62%:18.4%、50代が5.16%:34.5%、60歳以上が11.68%:62.5%であった
・空軍の50歳以上では35.2%(112/318)であり、初期AMDが23.3%、中期AMDが11.6%、後期AMDが0.3%であった。
・飛行時間でみると、2000時間以内では9.34%、2000-4000時間では23.33%、4000-6000時間では50.94%、6000時間以上では100%であり、飛行時間とともに増えていた(p<0.001)。(TY)
Retina 44(1):28-36, 2024
Amari B et al(France)
Lifetime ambient ultraviolet radiation exposure and incidence of age-related macular degeneration.
・フランスのボルドー地区の73歳以上の963名の住民について、生涯にわたる紫外線(UVR)暴露とAMD発症との関連を調査した。
・614名の進行AMD小集団と、422名の初期AMD小集団が含まれている。
・EuroSun衛星を利用して住民の環境のUVR暴露歴(UV-A、UV-B、全UV)を見積もった。
・2006-2017にわたって2-3年に1回は眼底写真とOCT検査を行った。
・全UV、UV-A、UV-B暴露の中間4分位は、下4分位の者に比較して、初期AMDの発症が有意に高かった(HR=2.01 95%CI=1.27-3.13、HR=2.20 95%CI=1.38-3.50、HR=1.79 95%CI=1.13-2.80)。
・しかし、このリスクはUV暴露の高4分位でも更に上昇はしていなかった。
・進行AMDでは、どのUVでもとは有意な関連はみられなかった。(TY)
EFFECT OF ANESTHESIA DURATION ON INTRAVITREAL INJECTION PAIN: A double-blinded, randomized, comparative study.
Ma, Xiubin, Liang, Qianqian, Xue, Shuyue, Ren, Qi, Du, Qing, Zhang, Zhichun, Li, Xinying, Liu, Xin, Gao, Yan , Li, Jun (China)
Retina 2023; 43(8):1386-1392. | DOI: 10.1097/IAE.0000000000003824
【目的】
局所麻酔の持続時間の違いが硝子体内注射(IVI)の疼痛に及ぼす影響を検討
【対象と方法】
二重盲検無作為化比較試験
IVIを受ける連続した312眼を、局所麻酔(0.5%塩酸プロパラカイン点眼)の持続時間に応じて6群に無作為に割り付け
Group1:点眼麻酔1-5分後にIVI、Group2:6-10分、Group3:11-15分、
Group4:16-20分、Group5:21-25分、Group6:26-30分
患者は注射15分後にvisual analog scaleとWong-Baker FACES scaleを用いて痛みを評価
【結果】
6群間の疼痛スコアは、visual analog scale(P = 0.013)とWong-Baker FACES scale(P = 0.024)で有意差があった。
Group4の平均疼痛スコアは1.97±1.04(visual analog scale)、2.02±1.08(Wong-Baker FACES scale)でありGroup1・2・5・6に比べ有意に低かった
【結論】
局所麻酔の持続時間はIVIの疼痛と有意な関連があった
IVI前の0.5%塩酸プロパラカイン滴下は、投与後11~20分でIVIの疼痛緩和に最も効果的であった(MK)
Anterior segment optical coherence tomography in determination of entry site for vitrectomy in highly myopic eyes.
Hirono K et al(横浜市大)
Retina 43(5): 733-738, 2023
・前眼部OCTで毛様体扁平部の長さを推測し、高度近視眼で、強膜刺入創の位置を決める補助になるかを検討した。
・23眼の眼軸長29.2±2.3mmの近視性牽引性黄斑症患者を対象とし、術前に前眼部OCT(CASIA)で測定し、術中にも測定しているが、輪部からの距離を比較検討した。
・AS-OCTと術中測定での輪部から毛様体扁平部の長さは耳上側では6710±459μと6671±202μ(p>0.05)、鼻上側では6340±321と6204±402(p>0.05)であり、刺入部の平均位置は輪部から6.2mmであり、硝子体攝子は17/23眼(77%)で28mmのものを使用するのが良さそう。(TY)
Inverted internal limiting membrane flap for small-sized (<250μm) full-thickness macular hole. Anatomical and functional outcome.
Iuliano L et al(Italy)
Retina 43(4): 547-554, 2023
・50例の小円孔(<250μm)と50例の中円孔(250-400μm)の黄斑円孔について、25例ずつILM翻転法(ILM-IF)と通常のILM剥離で手術を行ない、解剖学的ならびに機能的な術後結果を比較した。
・6か月後の視力BCVA、micro-perimetric感度、外境界膜ELMとellipsoid zone(EZ)の回復を指標とした。
・BCVAは両群間で有意差はなかったが、6か月後の網膜感度では小円孔ではILM-IF法では20.79±0.48dBで、通常法の21.51±0.79dBよりも有意に悪かった(p=0.0035)。
・また、1か月後のELMとEZの回復度でも、ILM-IF法では24%と24%で、通常法の56%(p=0.0420)と64%(p=0.0095)よりも悪かったが、6か月後ではILM-IF法では40%と56%で、通常法の68%と80%との間には有意差はみられなかった。
・小円孔ではILM-IF法よりも通常法の方が解剖学的にも網膜感度の面からみても良いことがわかった。(TY)