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American Journal of Ophthalmology

2025
271巻

タムスロシン使用による機能病態変化

American Journal of Ophthalmology 271巻 (3号) 2025

The effect of tamsulosin on iris morphology, ciliary muscle thickness, and pupil diameter.
Ozturk C et al(Turkey)
Amer J Ophthalmol 271(3): 389-395, 2025
・タムスロシンが虹彩形態、毛様体筋厚CMT、瞳孔径PD、光刺激に対する瞳孔反応を前眼部OCTおよび角膜形状解析を用いて検討した。
・新規に良性前立腺肥大症と診断された43名の患者の右眼を対象とし、虹彩の散瞳筋領域DMRの厚さ、括約筋領域SMRの厚さ、DMR/SMR比、瞳孔径PD(暗所・中間照度・明所の3条件)、毛様体筋厚CMT1、CMT2、CMT3(scleral spurから1、2,3mm後方)、前房深度ACDをタムスロシン治療開始前と治療3か月後に測定した。
・タムスロシン治療後、以下の項目が有意に減少した。
・散瞳前と散瞳後の散瞳筋領域(DMR)厚(いずれもP<.001)、散瞳前と後のDMR/SMR比(いずれもP=.001)。
・散瞳前の瞳孔径(PD)は暗所、薄明、明所のすべての条件で減少したが、有意差があったのは明所のみ(P=.04)。
・散瞳後の瞳孔径はタムスロシン治療後に有意に減少(P<.001)。
・タムスロシン治療は、虹彩括約筋厚(SMR)、毛様体筋厚(CMT1,CMT2,CMT3)、前房深度(ACD)には影響を与えないが、虹彩散瞳筋厚(DMR)、DMR/SMR比、散瞳前の明所での瞳孔径、散瞳後の瞳孔径を有意に減少させていた。(TY)

2025
271巻

ピロカルピン点眼と裂孔原性網膜剥離のリスク

American Journal of Ophthalmology 271巻 (3号) 2025

Using real-world data to assess the association of retinal detachment with topical pilocarpine use.
Elhusseiny AM et al(AR USA)
Amer J Ophthalmol 271(3): 1-6, 2025
・ピロカルピン点眼薬の使用と、新規発症の裂孔原性網膜剥離(RRD)との関連を検討した。
・電子健康記録(EHR)を用いて、ピロカルピン投与開始後のRRD発症リスクを解析した。
・対象者は40歳以上の1億3000万人以上の患者データである。
・ピロカルピン群は40歳以上の成人患者で、1.25%濃度またはその他の濃度のピロカルピン点眼薬を初めて使用した患者。
・対照群は老視の患者で、人工涙液を開始した患者である。
・傾向スコアマッチング後の解析では、ピロカルピン群においてRRDのリスクが有意に高かった。
・ピロカルピン群と対照群は、3か月後のRRD発症率は、0.53%:0.25%(相対リスクRR=2.18(95% CI:1.07–4.45, P=.03)
・6か月後は0.60%:0.31%(RR=1.93(95% CI:1.01–3.67, P=.04)。
・1年後は0.79%:0.33%(95% CI=1.28–4.27, P=.005)。
・Cox比例ハザードモデルでは、ピロカルピン使用は、対照群と比較してRRDリスクを3.14倍に増加させた(95% CI:1.66–5.93, P<.001)。
・リスク因子は、男性(aHR:2.36, P=.001)、近視(aHR:2.36, P=.001)、硝子体変性(aHR:2.22, P=.020)、格子状変性(aHR:3.71, P=.010)、偽水晶体眼(aHR:3.48, P<.001)であった。
・ピロカルピン点眼薬の使用はRRDリスクを増加させることがわかった。(TY)

2025
270巻

閉塞性睡眠時無呼吸を伴う非増殖糖尿病網膜症患者の進行リスクと全身リスク

American Journal of Ophthalmology 270巻 (2号) 2025

lmpact of obstructive sleep apnea on diabetic retinopathy progression and systemic complications.
Rahimy E et al(CA USA)
Amer J Ophthalmol 270(2): 93-102, 2025
・閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を伴う非増殖糖尿病網膜症(NPDR)患者での糖尿病網膜症の進行リスクと全身血管イベントのリスクを評価した。
・OSAは全世界で男性の約22%、女性の約17%が罹患していると推定されており、肥満の増加に伴い発症率は急速に上昇している。
・TriNetX(1億2400万人以上の患者データ)から、OSAのあるNPDR患者とOSAのないNPDR患者を調査した。
・増殖性糖尿病網膜症(PDR)の既往のあるもの、DMEのあるもの、以前の眼科的治療歴(硝子体内注射、レーザー治療、硝子体手術)のあるものは除外した。
・合併症への進行率、眼科的治療の必要性、全身性イベントの発生率を1年、3年、5年で調査した。
・傾向スコアマッチングを行い、各グループそれぞれ11,931名を分析した。
・増殖糖尿病網膜症(PDR)のリスクはOSA群で上昇していた。
1年後:RR=1.34、3年後:RR=1.31、5年後:RR=1.28(いずれも P<0.001)。
・DMEのリスクもOSA群で上昇していた。
1年後:RR=1.31、3年後:RR=1.19、5年後:RR=1.18(いずれも P<0.001)。
・硝子体内注射のリスクがOSA群で上昇していた。
1年後:RR=1.59、3年後:RR=1.58、5年後:RR=1.54(いずれも P<0.001)
・レーザー光凝固も同様の傾向があったが、硝子体手術では有意な差は見られなかった。
・全身性イベントのリスクとして、脳卒中のリスクがOSA群で上昇していた
1年後:RR=1.80、3年後:RR=1.56、5年後:RR=1.49(いずれも P<0.001)。
・心筋梗塞のリスクもOSA群で上昇していた。
1年後:RR=1.51、3年後:RR=1.46、5年後:RR=1.43(いずれも P<0.001)。
・死亡リスクもOSA群で上昇していた。
1年後:RR=1.31、3年後:RR=1.19、5年後:RR=1.15(いずれも P<0.001)。
・以上から、NPDR患者ではOSAのスクリーニングが必要であると考えた。(TY)

2025
269巻

HAL眼鏡の近視抑制効果について

American Journal of Ophthalmology 269巻 (1号) 2025

Spectacle lenses with highly aspherical lenslet for slowing axial elongation and refractive change in low-hyperopic Chinese children: a randomized controlled trial.
Zhang Z et al(China)
Amer J Ophthalmol 269(1): 60-68, 2025
・高度非球面レンズレット(HAL)眼鏡は、近視児童の進行抑制に効果的であることが示されている。
・本研究では、球面等価屈折誤差(SERE)が0.00~+2.00 Dの軽度遠視の6.0~9.9歳の児童108名を対象として、HALレンズが屈折や眼軸長(AL)の変化に影響するかどうかを、HAL群とSVL(単焦点眼鏡レンズ)群とで装用開始時、6か月後、12か月後で検討した。
・1年間のSERE(屈折度数)の変化はHAL群-0.23D、SVL群-0.19(p=0.883)、1年間の眼軸長(AL)の伸長はHAL群0.19mm、SVL群0.24mm(p=0.057)でいずれも有意差はなかったが、HAL群の中で、週30時間以上眼鏡を装用した児童は、SVL群の児童と比較してALの伸長が有意に抑制された(0.11mm:0.27mm p<0.001)。(TY)

2024
268巻

緑内障濾過手術後の合併症予測のためのCorvis STの有用性

American Journal of Ophthalmology 268巻 (12号) 2024

Usefulness of eye deformation in the Corvis ST measurement to predict postoperative hypotony complications in glaucoma.
Asaoka R et al(浜松市)
Amer J Ophthalmol 268(12): 66-75, 2024
・Corvis ST を用いた生体力学的パラメータが、線維柱帯切除術(88眼/88名)またはMMC併用の濾過胞ニードリング術後(12眼/12名)の計100眼(100名)で、低眼圧黄斑症および脈絡膜剥離(CD)の発生予測に有用かどうかを検討した。
・低眼圧合併症の重要な予測因子を、多変量ロジスティック回帰分析により特定した。
・13眼が低眼圧黄斑症、21眼が脈絡膜剥離(CD)を発症した。
・低眼圧黄斑症の有意な予測因子は、男性、術前のGAT眼圧の高さ、および、最深陥凹時の変位振幅(highest concavity deflection amplitude)の大きさであった(P < .05)。
・脈絡膜剥離の有意な予測因子は、眼軸長の短かさ、角膜中心厚の薄さ、術前GAT眼圧の高さ、および眼内レンズ眼であった(P < .05)。
・以上から、術前眼圧が高くても、男性で最深陥凹時の変位振幅が大きい場合には、低眼圧黄斑症の発症に注意を払う必要がある。
・脈絡膜剥離の発症に対しては、短眼軸長、薄い角膜厚、術前眼圧の高さ、眼内レンズ眼が関与していた。(TY)

2024
267巻

糖尿病網膜症に対する汎LK時の疼痛軽減について

American Journal of Ophthalmology 267巻 (11号) 2024

A comprehensive meta-analysis on the role of analgesics and anti-inflammatories in pan-retinal photocoagulation.
Arruda MP et al(Brazil)
Amer J Ophthalmol 267(11): 112-121, 2024
・増殖糖尿病網膜症に対する汎網膜光凝固治療時の疼痛管理を評価した。
・PubMed、Embaseなど、4種のデータベースから、PRPを受ける患者を対象としたランダム化対照試験(RCT)を検索し、13の研究(1404眼)を対象として、鎮痛剤や非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)をプラセボと比較した。
・痛みは視覚アナログ尺度で、左端の0(痛みなし)から、右端の10(最も強い痛み)で評価した。
・薬剤の効果判定は標準化平均差[SMD]で評価した
SMD:2群間の平均の差を標準偏差で割って標準化したもの:0.2=小効果、0.5=中効果、0.8=大効果。
・鎮痛剤使用者はプラセボより、痛みが有意に少なかった。
・SMD=―0.38、95%CI=―0.58~―0.17、p<0.1。
・特に、NSAIDの全身投与も痛みの有意な減少があった(SMD=―0.28、95% CI ―0.50~―0.07、p<0.01)。
・(メタミゾ―ル、エントノックス、アセトアミノフェン、イブプロフェン、カフェイン、メフェナミック酸、筋肉内投与のケトロラック、カリウムジクロフェナク)
・点眼薬(ケトロラック0.5%とジクロフェナク0.1%)のみによる投与でも痛みの感受性に有意な差があった(SMD=―0.46、95% CI ―0.88~―0.05)ものの、個人差が大きかった。
・PRPの前に全身投与された鎮痛剤が痛みを大幅に軽減し、NSAIDも有効であることが確認された。
・NSAIDの点眼薬も痛みの軽減に有効であるが、個人差がおおきかった。(TY)

2024
266巻

動脈硬化度と緑内障の発症リスク

American Journal of Ophthalmology 266巻 (10号) 2024

Arterial stiffness and incident glaucoma: a large population-based cohort study.
Beros AL et al(New Zealand)
Amer J Ophthalmol 266(10): 68-76, 2024
・ビタミンD評価研究の集団(50-84歳)を利用して、動脈硬化が新たに発生する緑内障と関連しているかどうかを調査した。
・2011/4~2012/11に、既知の緑内障のない4,713人の参加者(66±8歳)の動脈硬化度を、大動脈脈波速度(aPWV)、推定頸動脈-大腿動脈脈波速度(ePWV)および大動脈脈圧(aPP)を用いて評価し、緑内障の相対リスクを求めた。
・平均追跡期間10.5±0.4年で、301人が緑内障を発症した。
・aPWVでは、ハザード比(HR)は1.36(95%CI=1.14-1.62)、ePWVのHRは1.40(95% CI=1.14-1.71)で、動脈硬化は、新たに発生する緑内障と関連していたが、aPPのHRは1.06(95% CI=0.92-1.23)で、関連はなかった。
・動脈硬化をカテゴリ変数として分析した場合、aPWVの最高四分位ではHR=2.62(95% C=1.52-4.57 p=0.007)、ePWVはHR=2.42(95% CI=1.37-4.27 p=0.03)、aPPはHR=1.68(95% CI=1.10-2.5 p=0.02)で、最高四分位数は、緑内障の発症と関連していた。
・簡単なオシロメトリ装置で測定された動脈硬化度は、緑内障の発症を予測し、リスクがある人を特定するのに役立つ可能性がある。(TY)

2024
266巻

着色IOLはAMDの黄斑萎縮進行に影響するか

American Journal of Ophthalmology 266巻 (10号) 2024

The effect of blue-light filtering intraocular lenses on the development and progression of macular atrophy in eyes with neovascular age-related macular degeneration.
Achiron A et al(Israel)
Amer J Ophthalmol 266(10): 135-143, 2024
・青色光フィルター眼内レンズ(着色IOL)が新生血管性加齢黄斑変性症(nAMD)患者の黄斑萎縮(MA)の発症および進行に与える影響を評価した。
・抗VEGF注射を受け、2007~2018に白内障手術を受けたnAMD患者373名373眼(手術時年齢78.6±6.7歳)で、2023/6まで追跡調査し、着色IOLを受けた被験者と透明IOL患者の間でMA発症率を比較した。
・着色IOLは206眼に、透明IOLは167眼に挿入され、9件の既存および77件の新規MAケースが検出されたが、両者の分布は類似しており、単変量および多変量のCox回帰分析では、両者間に新たなMA発症リスクには有意差がなかった。
・最終訪問時のMA面積は、着色IOLで5.14±4.71 mm²、透明IOLで8.56±9.17 mm²(p=0.028)、年間平均MA面積の増加はそれぞれ0.78±0.84 mm²と1.26±1.32 mm²(p=0.042)であった。
・着色IOLは、MA発症率には有利性はなかったが、nAMD患者の経過観察では、進行が少なかった。(TY)

2024
263巻

デスメ膜角膜内皮移植術(DMEK)後の移植片接着のための仰臥位姿勢

American Journal of Ophthalmology 263巻 (7号) 2024

Supine Positioning for Graft Attachment After Descemet Membrane Endothelial Keratoplasty : A Randomized Controlled Trial
ANNE-MARIE S. KLADNY, et al. (Germany)
Am J Ophthalmol 2024(7);263: 117–125.
目的:DMEK術後の仰臥位保持のプロトコールは、数分から5、6日以上まで大きく異なっている。今回、移植片の接着に対する長時間の仰臥位の有効性を評価した。
対象と方法:Fuchs角膜ジストロフィーからの水疱性角膜症のためDMEKを受けた患者を術後5日間の仰臥位(介入)群と1日間(対照)群に無作為に割り当てた。
前眼部OCTを用いて定量化された術後2週間の移植片剥離の面積と体積、前房内空気再注入、視力、合併症について検討した。
結果:2022 年5月から 2023 年4月の間に、DMEKを受けた計86眼(介入群35眼、対照群51眼)。移植片剥離の平均面積は介入群28.6%、対照群27.5%(P =0.80)、移植片剥離の平均体積は介入群 0.8 µL、対照群0.7 µL であった(P =0.85)。手術後2週間で移植片の3分の1以上が剥離したのは、介入群11眼(31%)、対照群19眼(37%)。術後2 週の間に前房内空気再注入が必要になったのは、介入群10 眼 (29%)、対照群14 眼 (27%) で有意差はなかった
術後2 週間の受診時の視力は1 (視力最悪) から 10 (視力最良) までのアナログスケールで、介入群 6.0、対照群 5.9だった。
最も多い合併症は腰痛で、介入群では43%、対照群では27%であった。
結論:移植片の接着は長時間の仰臥位では改善しなかった。長時間の仰臥位はしばしば腰痛を引き起こした。これまでの研究でも、体位に関係なく接着する事が示唆されており、術後の長時間の仰臥位は必要ないかもしれない。(CH)

2024
263巻

角膜移植片拒絶反応のリスクとワクチン接種

American Journal of Ophthalmology 263巻 (7号) 2024

Risk of Corneal Graft Rejection and Vaccination
: A Matched Case-Control Study From a United States Integrated Health Care System
JENNIFER H. KU, et al. (California,USA)
Am J Ophthalmol 2024(7);263: 133–140.
目的:大規模な統合医療システムであるKaiser Permanente Southern California(KPSC)の角膜移植レシピエントの大規模集団を用いて、角膜移植片拒絶反応のリスク上昇とワクチン接種との関連を評価した。
KPSCは、南カリフォルニアの住民を代表する約490万人の会員に包括的な医療サービスを提供する統合医療機関である。
対象と方法:2008年1月から2022年8月までに角膜移植を受けた全年齢のKPSC会員。移植の方法には角膜内皮移植、全層角膜移植、深部層状角膜移植術が含まれる。
結果:2008 年 1 月から 2022 年 8 月の間に角膜移植を受けた患者で移植片拒絶反応を経験した601名(症例群)、マッチングされた移植片拒絶反応がなかった1803 名(対照群)。平均年齢 66 歳 [標準偏差 17.0]、女性 52%、非ヒスパニック系白人 47%)。症例群では全層角膜移植術(n=282、46.9%)が最も多く、次いで角膜内皮移植術(n=242、40.3%)、対照群では角膜内皮移植術46.0%(n = 830、46.0%)、全層角膜移植術40.9%(n = 737、40.9%)を受けていた。
症例群 23% と対照群22% が1 回以上のワクチン接種を受けていた(症例群の拒絶反応発症の12 週間前までの期間)。症例と対照を比較した、ワクチン接種の調整オッズ比 (aOR) は 1.17 (95% CI: 0.91, 1.50]) だった。aOR は、1 回のワクチン接種で 1.09 (0.84, 1.43)、2 回1.53 (0.90, 2.61)、3 回1.79 (0.55, 5.57) だった。mRNA ワクチン(COVID-19)では 1.60 (0.81, 3.14)、アジュバント/高用量ワクチン(インフルエンザ、ヒトパピローマウイルス、肺炎球菌、B型肝炎など)では 1.19 (0.80, 1.78)だった。
ワクチン接種期間を8週間前とした結果も、これらの所見と一致していた。
結論: aORは、ワクチン接種回数の増加およびmRNAベースのワクチンに関連した角膜移植片拒絶反応のリスク増加の可能性を示唆した。
しかし、これらの増加は統計的に有意ではなかった。
ワクチン接種と移植片拒絶反応の関連性を示唆する証拠は見つからなかった。この調査結果は、移植片拒絶反応のリスクを大幅に高めることなく、角膜移植患者にワクチン接種することを支持する。(CH)

2024
262巻

隅角閉塞と角膜輪部幹細胞との関係

American Journal of Ophthalmology 262巻 (6号) 2024

Correlation between anterior chamber angle status and limbal stem cell deficiency in primary angle-closure glaucoma.
Mao J et al(China)
Amer J Ophthalmol 262(6): 178-185, 2024
・前房角(ACA)の開放か閉塞状態と角膜輪部上皮幹細胞(LEBCs)の濃度との関連について、PACG患者29名54眼で検討し、54眼のCtrlと比較した。
・超音波生体顕微鏡UBMでのACA状態を計測し、共焦点顕微鏡でのLEBCs密度を4象限で評価した。
・UBMは仰臥位で、3、6、9、12時部位で測定し、虹彩周辺部が線維柱帯部に接触していれば隅角閉塞と判定した。
・PACG群の重症度は、ハンフリー視野計のMD値で判定した。初期はMD>―6dB、中期はMDが―6dB~―12dB、末期はMD<―12dB。
①PACG群での上下鼻耳側のLEBCsの平均密度は、Ctrl群より低かった。
②初期、中期、末期PACGでは、LEBCs密度は、隅角閉塞度に応じてCtrl群より少なかった(p<0.05)。
・初期、中期のPACGでは、開放隅角眼よりもLEBCs密度は少なかった(p<0.05)。
③比較分析では、初期のPACGではLEBCs密度は4象限で有意差があったが(p<0.05)、中期PACGでは3象限で有意差(p<0.05)、末期PACGでは2象限のみで有意差があった(p<0.05)。
・このことから、初期のPACGでは隅角閉塞がLEBCs密度に顕著に影響するが、末期では隅角閉塞と病勢の進行が関与していると考えられ、緑内障は角膜輪部の幹細胞密度の減少を伴いながら進行すると思われる。
・隅角閉塞は房水の流れを障害するだけでなく、LEBCs密度を下げ、輪部幹細胞不全(LSCD)を発症する要因になる。(TY)

2024
261巻

中心性網脈絡膜症の強膜厚について

American Journal of Ophthalmology 261巻 (5号) 2024

Scleral thickness in simple versus complex central serous chorioretinopathy.
Imanaga N et al(琉球大)
Amer J Ophthalmol 261(5): 103-111, 2024
・217例217眼の中心性網脈絡膜症CSCを単純CSC167眼と複雑CSC50眼に分けて、強膜厚を測定した。
・強膜厚は前眼部OCTを利用し、4直筋直下の4か所で、強膜岬から6mmの強膜厚を測定した。
・単純CSCと複雑CSCは、自発蛍光とOCTでのRPE変化で分類した。
・複雑CSCは単純CSCよりも、年齢が有意に高く(p=0.011)、男性に多く(p=0.01)、両眼に多く(P<0.001)、視力が悪く(P<0.001)、中心窩脈絡膜厚が厚く(P=0.025)、下液の被包化の頻度が高く(p<0.001)、毛様体脈絡膜の滲出が多かった(p<0.001)。
・CSC眼では正常眼よりも強膜厚が厚いことは以前に報告しているが(Ophthalmol Retina 5:285, 2021)、複雑CSCの強膜厚は上、下、耳、鼻側の全ての位置で単純CSCよりも厚かった(全て p<0.001)。
・複雑CSCは多変量解析では、単純CSCよりも高齢(OR=1.054 95%CI=1.013-1.097 p<0.001)、男性(OR=10.445: 1.151-94.778 p<0.001)、両眼(OR=7.641: 3.316-17.607 p<0.001)、4方向の平均強膜厚(OR=1.022: 1.012-1.032 p<0.001)であった。
・CSCでは強膜が厚く、殊にcomplex CSCでは更に厚い事から、渦静脈が強膜を貫通する部位での絞扼が渦静脈うっ滞の主因と推測される(TY)

2024
260巻

白人小児における焦点深度拡大ソフトコンタクトレンズ(MYLO ®)の2年間の近視治療効果

American Journal of Ophthalmology 260巻 (4号) 2024

Two-Year Myopia Management Efficacy of Extended Depth of Focus Soft Contact Lenses
(MYLO) in Caucasian Children
SERGIO DÍAZ-GÓMEZ, et al. (Australia)
Am J Ophthalmol 2024(4);260: 122–131.
目的:遠用単焦点眼鏡と焦点深度拡張型ソフトコンタクトレンズ(CL)を装用した白人小児における、ベースラインからの眼軸長(AL)と等価球面度数(SE)の変化で近視の進行を評価する。
対象と方法:SEが-0.75~-10.00Dの小児(6~13歳)90名。45名がCL(MYLO ®、markennovy)、45名が眼鏡を装用した。調節麻痺下屈折検査とALを6か月間隔で測定した。 CL 装用 1ヶ月後の視力と快適性に関する主観的な回答は、1 (非常に悪い) から 10 (優れている) までの尺度による質問票を使用して判定された。
CL群は最低週6日、10時間 CLを装用するよう指示された。
対照群は遠用単焦点眼鏡を使用し、起きている間は装用するように指示された。
結果:2年後のSE/AL平均変化量は、CL群で-0.62±0.30D/0.37±0.04mm、眼鏡群で-1.13±0.20D/0.66±0.03mmであった(p<0.001)。CL群では100%がAL増加0.50mm以下であったが、眼鏡群では全員が0.50mm以上増加した。CL群では53%、眼鏡群では1%がSE-0.50D以下の進行だった。すべての質問項目の平均値は9以上であった。
結論:焦点深度拡張型ソフトコンタクトレンズの使用は、遠用単焦点眼鏡の使用と比較して、眼軸長の伸長と近視の進行を抑制した。(CH)

2024
259巻

米国での円錐角膜の有病率と経済的負担

American Journal of Ophthalmology 259巻 (3号) 2024

Singh RB, Parmar UPS, Jhanji V. Prevalence and economic burden of keratoconus in the United States. Am J Ophthalmol 2024; 259: 71-78.
・米国でMedicaidとChildren’s Health Insurance Program (CHIP) に登録されている国民で円錐角膜と診断された者を対象とした。
・円錐角膜の有病率について2016年1月から2019年12月までのコホート研究(前向き研究)を行った。対象は約69,502,000名(米国民の20~21%)。Alaska, Utah, Alabama, Vermontの4州を除いて全土の加入者である。
・円錐角膜の有病率は、2016年では0.04% (27,801/69,502,000)、2016年の0.03% (16,266/54,219,600)から増加している。性別では女性の方がtotalで52.47%とやや多く、年代ではどの年でも18-39歳が高い有病率・有病者数を示し、40-64歳がそれに次いでいた(Table 2)。民族ではBlackがもっとも多く、次がHispanicだった。
・上記有病率の結果を得て、円錐角膜による個人の経済的損失について、2011年にRebenitschらが報告した方法(Am J Ophthalmol 2011; 151: 768-773)に則って、クリニックへの通院、コンタクトレンズ、手術、手術合併症などにかかわる生涯の負担額の平均値と中間値で示した。期間中のインフレ補正も行って算出し、米国全国民に換算した結果も示した。(KH)

2024
259巻

米国眼科の指導的立場にいる女性の割合

American Journal of Ophthalmology 259巻 (3号) 2024

Vought R, Vought V, Lin M, et al. Gender representation among ophthalmology fellowship directors in 2022. Am J Ophthalmol 2024; 259: 166-171.
・米国では医学生における女性の割合が2019年には50.5%と初めて過半数に達したが、学問や教育の分野での指導的立場にいる女性は少なく、とくに眼科を含む外科系診療科では2016年の時点で約27%にとどまっている。
・眼科での実情を詳しく知るために、2022年での「Fellowship Director」の女性の割合を調べた。(ちなみに、米国での眼科医における女性の割合については、日本での日眼や日眼医に該当する高い組織率のある団体がないため、眼科医総数自体が不明のようである:平野私見)
・Fellowship Directorはわが国での卒後教育体系ではあまり理解できない地位だが、臨床指導体制では大学の主任教授的な、かなり偉い人。学位とMDがあって、今回の研究ではその肩書は、わが国言う講師(assistant professor)が19%、准教授(associate professor)が30%、教授(professor)が51%である。
・眼科でFellowship Directorの任に就いている女性は全体の29%。Fellowship Directorたちの眼科研修を終えてからの平均期間は男性の24年に対して女性は17年であった。
・Program typeおよび国内の地域についてはとくにFellowship Directorの男女比に差はなかった。
・専門分野で言えば、小児眼科と斜視では女性の比率が高く、緑内障、神経眼科、網膜硝子体手術では小さかった。眼科手術の分野では、眼形成と網膜硝子体手術のFellowship Directorの女性比率が低く、角膜・外眼部・屈折矯正手術の分野では比較的高い比率であった。(KH)

2024
258巻

原発閉塞隅角緑内障(PACG)及び原発開放隅角緑内障(POAG)の家族リスク

American Journal of Ophthalmology 258巻 (2号) 2024

Genetic and Environmental Contributions of Primary Angle-Closure Glaucoma and Primary Open-Angle Glaucoma: A Nationwide Study in Taiwan.
Lee JS, et al
Am J Ophthalmol. 258(2):99-109. 2024

目的:原発閉塞隅角緑内障(PACG)及び原発開放隅角緑内障(POAG)の家族リスクを推定し、環境要因と遺伝要因の寄与を評価する。
方法:研究は2000年から2017年の台湾国民健康保険プログラムデータベースを使用し、4,144,508家族を解析した。
polygenic liability modelを用いて緑内障の遺伝率や家族内伝達を推定し、Coxモデルを使用して近親者に緑内障がある場合の調整済み相対リスク(RR)を算出した。
結果:近親者にPACGまたはPOAGがいる人の有病率はそれぞれ0.95%及び2.40%であり、一般人口よりも高い。
PACGの相対リスクは2.44、POAGの相対リスクは6.66と非常に高く、PACG及びPOAGのphenotypic variancesに対するestimated contributionsは、additive genetic variance,がそれぞれ19.4%及び59.6%、common environmental factorsが19.1%及び23.2%、nonshared environmental factorsが61.5%及び17.2%だった。
結論:POAGに対する遺伝的関与とPACGに対する環境的寄与の相対的重要性が強調された。
今後、PACGに関連する新しい環境決定因子の特定が求められる。(KK)

2024
257巻

レーザー周辺虹彩切開術 (LPI) を受けた原発閉塞隅角症(PACD) 患者の前房隅角の変化

American Journal of Ophthalmology 257巻 (1号) 2024

Progressive Changes in the Anterior Segment and Their Impact on the Anterior Chamber Angle in Primary Angle Closure Disease.
Kwak J, Shon K, Lee Y, Sung KR.
Am J Ophthalmol. 257(1) :57-65. ,2024

目的:光干渉断層撮影 (OCT) を用いて前眼部の変化を調査し、レーザー周辺虹彩切開術 (LPI) を受けた原発閉塞隅角症(PACD) 患者の前房隅角の変化を評価する。
方法:後ろ向き臨床コホート研究として、103名のPACD患者を対象に、平均6.5年間にわたりAS-OCTによる追跡調査が行われ、隅角関連パラメータの経時変化が分析された。
結果:angle opening distance (AOD750)の減少は有意ではなかったものの、angle recess area (ARA750)は有意に減少し、lens vault (LV)はLPI後に有意に増加した。
また、平均LVの変化は他の隅角関連パラメータと負の相関関係にあり、瞳孔径(PD)は加齢とともに減少した。
結論:加齢によるLVの増加がLPI治療後のPACD眼において前房を浅くし、隅角を狭くする要因であることを示唆していますが、加齢に伴う瞳孔の収縮と虹彩の薄化がACAの狭窄の影響を相殺する可能性も考えられる。
隅角関連パラメーター:anterior chamber depth (ACD), angle opening distance (AOD750), angle recess area (ARA750), iris thickness (IT750), lens vault (LV), and pupil diameter (PD)、scleral spur angle(SSA)(KK)

2023
251巻

焦点深度拡大(EDOF)眼内レンズと三焦点眼内レンズの比較

American Journal of Ophthalmology 251巻 (67号) 2023

Extended Depth of Focus Versus Trifocal for Intraocular Lens Implantation: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis.
Karam M, Alkhowaiter N, Alkhabbaz A, Aldubaikhi A, Alsaif A, Shareef E, Alazaz R, Alotaibi A, Koaik M, Jabbour S. (Saudi Arabia)
Am J Ophthalmol. 2023 Jul;251:52-70. doi: 10.1016/j.ajo.2023.01.024. Epub 2023 Feb 1. PMID: 36736751.
【目的】
焦点深度拡大(EDOF)眼内レンズと三焦点眼内レンズを比較
【対象と方法】
PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)ガイドラインに従い、EDOF眼内レンズと三焦点眼内レンズを比較した研究をレビュー
【結果】
2,200眼が参加した22の研究が同定
三焦点眼内レンズはEDOF眼内レンズと比較して、
球面(平均差[MD]=-0.23、P = 0.001)と等価球面度(MD = -0.11、P = 0.0001)で有意な改善
円柱度数(MD = -0.03、P = 0.25)や乱視度数には差が認められなかった
三焦点眼内レンズは、
無矯正近方視力(MD = 0.12、P < .00001)および遠方矯正下の近方視力(MD = 0.12、P = .002)に優れていた
術後の矯正遠方視力(MD=-0.01、P=0.01)はEDOF群で有意に改善したが、
術後の非矯正遠方視力(MD=0.00、P=0.84)、非矯正中間視力(MD=0.01、P=0.68)、遠方矯正下の中間視力(MD=-0.01、P=0.39)には差が認められなかった。
デフォーカス曲線は、
近方視力では三焦点眼内レンズが、中間視力ではEDOF眼内レンズが有利であった
眼球収差、CS、ハロー(オッズ比=0.64、P=0.10)、グレア、患者満足度は、
両群に有意差はみられなかった
三焦点眼内レンズは、
QoV質問票スコアの改善(MD = 1.24, P = 0.03)および眼鏡からの自立(オッズ比 = 0.26, P = 0.02)と関連していた
【結論】
三焦点眼内レンズはEDOF眼内レンズと比較して非矯正近用視力を改善した。
非矯正遠用視力、中間視力、ハロー、グレアは両群間で統計学的な差はなかった。(MK)

2023
256巻

原発閉塞隅角症疑PACSがPACに進行する要因の検討

American Journal of Ophthalmology 256巻 (12号) 2023

Amer J Ophthalmol 256(12):27-34, 2023
Cho A et al(CA USA)
Role of static and dynamic ocular biometrics measured in the dark and light as risk factors for angle closure progression.
・原発閉塞隅角症疑PACSが原発閉塞隅角症PACに進行する要因について、静的ならびに動的な眼の生体パラメータを、未治療眼において検討した。
・動的な計測にはAC-OCTを用いて明所と暗所での差を求めた。
・対象は861例861眼で、そのうち36例がPACSからPACへの進行例である。
・明所と暗所のTISA500値(mm2)が進行と相関があったが(p<0.001)、その差には相関がなかった(p≧0.08)。
・年齢(Hazard ratio=1.09/年)、IOPが高い(HR=1.13/mmHg)、明所でのTrabecular iris space aera:TISA500(HR=1.28/0.01mm2)が有意に進行のリスクであった(p≦0.04)。
・進行リスクはTISA500の下四分位は、明所ではHR=4.56(p<0.001)で、暗所のHR=2.89(p=0.003)よりも強く相関していた。(TY)

2023
256巻

隅角切開手術の単独手術と白内障同時併用時での効果

American Journal of Ophthalmology 256巻 (12号) 2023

Amer J Ophthalmol 256(12):118-125, 2023
Zhang Yu et al(China)
Influence of goniotomy size on treatment safety and efficacy for primary open-angle glaucoma: a multicenter study.
・POAGに対して、PEA+IOL手術(PEI)と同時あるいは単独で行った隅角切開(120,240,360度切開)の効果と安全性について、多施設で検討した。
・手術成功とは術後眼圧が追加手術なしで、6-18mmHgで、IOPが20%以上低下したものとした。
・追加点眼薬が必要な場合は条件付き成功、不要な場合は完全成功とした。
・231例を平均14.4±8.6か月(6.0-48.0)経過観察した。
・眼圧下降、術後点眼薬数、生命表分析では、3群間に有意差は見られなかったが、前房出血は360度切開が最も多かった。
・12か月後の完全と条件付き成功率は、単独手術では、120,240,360度切開で、35.1%,46.1%,45.0%(完全)、66.4%,75.1%,75.1%(条件付き)。
・PEI併用手術では、52.9%,61.6%,51.4%(完全)、67.0%,82.7%,79.5%(条件付き)であった。
・POAGにおいて、120,240,360度切開は、PEIを同時に行っても、行わなくても、眼圧下降効果はほぼ同等であり、360度切開は前房出血をきたしやすく、120度切開で十分であると考えた。(TY)

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