Delayed closure of highly myopic macular holes combined with retinoschisis after inverted internal limiting membrane flap
Carla MM et al(Italy)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 263(3) : 647-657, 2025
・外層網膜分離(O-RS)を伴う高度近視性黄斑円孔HMMHに対する内境界膜ILM反転手術19眼の結果を検討した。
・OCTで最小円孔直径(MLD)、円孔基底径(BD)、円孔周囲の網膜厚(鼻側RTnas、耳側RTtem)、円孔周囲のO-RS高(鼻側O-RSNAS、耳側O-RSTEM)を測定した。
・従来型の閉鎖(n=14)と、術後30日以降に閉鎖した遅延閉鎖(n=5)に分類した。
・解剖学的閉鎖率は89%。
・平均BCVAは、術前0.23±0.17から、6か月後に0.44±0.20、最終フォローアップで0.46±0.25に改善(それぞれp=0.009、p=0.001)。
・すべてのフォローアップ時点で、「従来型閉鎖」と「遅延閉鎖」間に視力の有意差はなかった(全てp > 0.05)。
・ベースラインのO-RSNASは従来型309.3±97.8μm:遅延型436.5±116.7(p=0.026)、O-RSTEMは294.2±94.8:505.6±130.5(p=0.04)であったが、MLDおよびBDは関連がなかった。
・遅延閉鎖群では閉鎖までの平均日数は65.8±64.4日。
・その間、組織欠損部を覆う反転ILMフラップが観察された。
・O-RSNASおよびO-RSTEMは時間とともに減少し、最終的に黄斑円孔が閉鎖した。
・ILM反転フラップ法は、O-RSを伴うHMMH閉鎖に有用であった。(TY)
Asymmetric choroidal vascular pattern in tilted disc syndrome.
Nonaka K et al(東京女子医)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 263(3): 699-704, 2025
・傾斜乳頭症候群は、眼球の胚性裂の不完全閉鎖に関連した先天性疾患であり、黄斑部上方の脈絡膜は相対的に肥厚し、下方は菲薄化している。
・今回、黄斑部の脈絡膜血管パターンの上下対称性を評価した。
・13症例17眼すべてで、中〜大脈絡膜血管に上下非対称性が認められた。
・上部脈絡膜では下部より、血管密度(P=0.01)と平均血管径(P<0.01)が有意に高値だった。
・漿液性網膜剥離は4眼に認められ、すべて非対称な血管パターンの眼であった。
・脈絡膜血管の異常に起因する循環の不均衡が、漿液性網膜剥離の原因の1つである可能性が考えらえた。(TY)
Association between axial length and uveitis.
Ogawa M et al(東京医大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 263(3): 837-847, 2025
・近視とブドウ膜炎との関連性を明らかにするために、ブドウ膜炎患者と健常対照者の眼軸長(AL)を比較した。
・ブドウ膜炎患者663名1052眼(男288名、女375名、中央値56.0歳)を検討した。
・対照群は白内障以外の眼疾患のない738眼。
・眼軸長(AL)は、IOLマスターまたは従来のAモード超音波法で測定した。
・ブドウ膜炎群は、非感染性ブドウ膜炎、感染性ブドウ膜炎、原因不明のブドウ膜炎に分類した。
・1052眼のうち、808眼(76.8%)が非感染性ブドウ膜炎〔サルコイドーシス(176眼,16.1%)、Vogt-小柳-原田病(122眼,11.6%)、ベーチェット病(130眼,12.4%)、その他(380眼,36.1%)〕。
・146眼(13.9%)が感染性ブドウ膜炎。
・98眼(9.3%)が原因不明のブドウ膜炎。
・全ブドウ膜炎群のALは、対照群より有意に短かかった(23.73:24.31mm、p<0.001)。
・非感染性ブドウ膜炎群(23.12mm)、感染性ブドウ膜炎群(23.99mm)も、対照群と比べて有意にALが短く(p<0.001およびp<0.05)、非感染性ブドウ膜炎群は感染性ブドウ膜炎群よりも有意にALが短かかった(p<0.05)。
・眼軸長が1mm短くなるごとに、ブドウ膜炎発症リスクは、年齢・性別未調整で1.266倍(95%CI=1.196 1.341、p<0.001)、調整後では1.446倍(95%CI=1.349□1.549、p<0.001)であった。
・ブドウ膜炎では、眼軸長は有意に短く、眼軸長の短い眼ではブドウ膜炎の発症リスクが高まる可能性が示された。(TY)
Risk factors of pediatric steroid-induced ocular hypertension
Takano F et al(神戸大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 263(3): 867-872, 2025
・ステロイド誘発性眼圧上昇(SIOH)の危険因子を、入院中に全身性ステロイドを投与された20歳未満の小児78名で調査した。
・30名(38.5%)がステロイド反応者で、48名が非反応者であった。
・ステロイド投与初月の眼圧の中央値は、反応者で24.0mmHg(四分位値:23.0~28.3)、非反応者では15.0mmHg(四分位値:12.3~18.0)であった。
・一般化推定解析により、若年齢、男性、基礎疾患、白血球数の増加、体重あたりの1か月の総ステロイド投与量が独立した関連因子であった。
・高用量ステロイドを投与する際には、特に若年で男性患者では治療中の眼圧変化を注意深くモニタリングする必要があり、また、眼圧フォローアップ時には白血球数の推移にも注意を払う必要があると考えられた。(TY)
Povidone-iodine in vitro antiseptic efficacy as a function of exposure duration, concentration, preparation, and length of storage.
Ambrosino CM et al(MD USA)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 262(12): 4005-4012, 2024
・ポビドンヨード(PVP-I)の濃度、開封後の保存期間(透明なボトルに入れた後、キャップをして暗所保存)、調製方法が消毒効果に与える影響について、in vitroで調査した。
・PVP-I溶液は、濃度(0.6%、5%、10%)、開封後の保存期間(0日、7日、30日)、調製方法(市販製剤 vs PVP-I溶液から調製)を用いた。
・病原体には、S.epidermidis、S.viridans、P.aeruginosa、MRSAと、M-感受性S.aureus、C.albicansを使用した。
・最近の研究では、従来の5% PVP-I製剤よりも、0.6% PVP-Iがより効果的であるとの報告があるが、眼内炎症の9%~30%を占めるS.viridansに関しては、5%よりも0.6% PVP-Iは増殖抑制効果が弱かった。
・最大30日間の保存または調製されたPVP-Iの抗菌効果は開封直後のものと同等であった。(TY)
The time course of spontaneous closure of idiopathic full-thickness macular holes.
Neubauer J et al(Germany)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 262(9): 2859-2865, 2024
・特発性全層黄斑円孔(idiopathic FTMH)の自然閉鎖について、2008/8~2019/8の症例で調査した。
・1,256眼のMHのうち、硝子体注射既往がない、眼疾患がない、光凝固などの既往がない、-6D以上の近視がない症例338例をiFTMHとして対象とした。
・338例中31眼(9.2%)が自然閉鎖し、診断後、閉鎖までの中央値は44日であった。
・自然閉鎖したiFTMHはbaselineの最高視力が良く、iFTMHの直径が小さかった(いずれもp<0.0001)。
・平均最高視力は0.4±0.21logMAR (dva:0.4)から閉鎖後、0.29±0.20 (dva:0.51)に改善した(p=0.031)。
・iFTMHの直径は自然閉鎖までの時間に正の相関があった(Pearson r=0.37 p=0.038)。
・また、自然閉鎖したiFTMHのうち、5例(16%)で閉鎖後の中央値136日で、再度、円孔が発生した。
・論理回帰モデルでは、円孔直径は自然閉鎖に相関していた(odds-ratio=0.97)。
・Kaplan-Meier曲線では円孔径≦250μ(n=124)の小円孔の25%、<150μ(n=48)の55%が2か月以内に自然閉鎖すると予測された。
・硝子体手術を行う前に自然閉鎖があることを考慮することも大切である。(TY)
The rising tide of rhegmatogenous retinal detachment in Germany: a nationwide analysis of the incidence, from 2005 to 2021.
Alfaar AS et al(Germany)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 262(8): 2431-2438, 2024
・2005年から2021年までの17年間のドイツでの裂孔原性網膜剥離(rRD)の頻度を調査した。
・調査したのは、毎年約1900万件の入院データである。
・網膜剥離データは再手術例を除外して比率を求めた。
・この17年間に332,650件のrRDが報告されており、2005年の比率は10万人あたり15.6人であったが、2021年には24.8人に増加していた。
・平均して、男性が4.0%、女性が2.6%、年齢は平均して60.2歳から62歳で、平均入院期間は6日から3.3日に減っていた。(TY)
Aqueous misdirection syndrome: clinical outcomes and risk factors for treatment failure.
Senthil S, et al.
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 262(7):2209-2217., 2024
目的:術後のAqueous misdirectionの結果と介入の失敗を予測する要因を評価する。
方法:後ろ向き研究、緑内障または白内障手術後にAqueous misdirectionを起こした47人49眼。
Aqueous misdirectionの解消は、中心前房の深化と眼圧が21 mmHg以下であることと定義した。
Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、治療の失敗リスク要因が評価した。
結果:49眼中10眼(20%)は保存的治療で解消し、39眼(80%)は複数回の介入を必要とした。
そのうち95%(39眼中37眼)が解消された。
偽水晶体眼は複数回の介入の必要性を予測し、ハザード比は2.391だった。
また、Aqueous misdirectionの解決に関して、眼軸長が長い眼や以前に緑内障手術を受けた眼は改善を予測し、受診の遅れは失敗を予測する要因とされた。
結論:偽水晶体眼は難治性が高く、複数の介入が必要であることが示された。
さらに、以前に緑内障手術を受けた眼や眼軸長が長い眼はより早く改善する傾向があり、受診の遅れは解決に失敗するリスク要因であることが確認された。(KK)
Biomechanical properties measured with dynamic Scheimpflug analyzer in central serous chorioretinopathy.
Aoki S et al(東大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 262(6): 1795-1803, 2024
・中心性網脈絡膜症CSCRの発症原因として、最近は、脈絡膜渦静脈の鬱血が要因と考えられており、強膜が患眼で厚いことがわかってきた。
・今回、CSCR眼では角膜が硬いかどうかをCorvis STで測定し、強膜の硬さを推定してみた。
・CSCR患者33例52眼と、Ctrlの32例52眼で比較した。
・年齢、性、眼軸長、眼圧、中心角膜厚などには差がないことを確認した。
・Corvisでは、CSCR眼ではCtrl眼に比較して変形しにくかった。
・CSCR眼では、耳側と鼻側での前部強膜厚はCtrl眼より厚かったが、角膜の変形しにくさとは有意差がなかった。
・CSCR眼では、強膜の厚さと無関係に角膜が硬かった。(TY)
The effect of uneventful cataract surgery on Schlemm’s canal and the trabecular meshwork in cases with pseudoexfoliation.
Alpogan O et al(Turkey)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 262(4): 1271-1279, 2024
・落屑症候群PXの症例37眼で、合併症のない白内障手術がシュレム氏管SCと線維柱帯TMに与える影響を検討した。
・Ctrlは37眼で、37眼のPX症例は単なるPXS眼とPX緑内障PXGの2群に分けて検討した。
・Scheimpflugカメラを用いた前眼部撮影、前眼部OCTを用いてSCの長さと面積、TMの厚みと長さを術前と術後1か月、3か月で測定した。
・術前には眼圧、ASパラメータ、SCとTM値には有意差はみられなかった。
・術後ではASパラメータの有意な増加、眼圧の有意な低下がPX群、Ctrl群の両者でみられた(p<0.05)。
・術後、PX群では鼻側と耳側のSC面積が有意に増加していた(p=0.007,p=0.003)。
・PX群内での解析では、PXS群で鼻側と耳側のSC面積の変化だけが有意に増加していた(p=0.006, p=0.003)。(TY)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 262(2):469-476, 2024
Matoba R et al(岡山大)
Evaluation of epiretinal membrane formation after scleral buckling for treating rhegmatogenous retinal detachment: En face optical coherence tomography image-based study.
・強膜内陥術後のERM形成について61例66眼(31.0±14.0歳)で検討した。
・PVDはB-scan OCT画像で判定し(24眼36.4%に存在)、ERMと網膜数壁はen face OCT画像で判定した。
・18.3±12.6か月の経過観察で、ERM形成は15眼(22.7%)で検出され、傍中心窩の数壁は5眼(7.6%)で検出された。
・ERM形成例と非形成例との間に視力の有意差はみられなかった(p=0.593)。
・高齢であること(OR=1.07 95%CI=1.01-1.14 p=0.032)とPVDの存在(OR=5.26 95%CI=1.06-26.10 p=0.042)がERM形成のリスクファクターであった。
・PVD発症者では網膜裂孔からのPRE細胞が硝子体下腔に達し、ERMを形成するが、PVD非発症者ではRPE細胞が硝子体に阻まれ黄斑部に到達しないためと考えられる(TY)
Wan X, Wu Y, Zhai Z, et al. Factors affecting long-term changes of meibomian gland in MGD patients. Graefe’s Arch Clin Exp Ophthalmol 2024; 262: 527-535.
・MGDの治療で、マイボーム腺の脱落から回復あるいは悪化をきたした要因を検討するため、上海の復旦大学で1年以上経過を観察しえた患者について検討した。
・MGDの診断は症状と眼瞼縁の所見から行った。この診断基準はわが国(日眼会誌2023年127巻2号掲載のガイドライン)と共通している。
・除外基準として何らかの眼科手術後、他の眼表面疾患を有する場合、外傷の既往、眼炎症、酒さ、アトピー性皮膚炎など。原則右のみの上眼瞼のマイボーム腺所見を評価。右が除外基準に該当する場合は左の所見を検討。
・主な検討項目としては、corneal fluorescein staining (CFS), tear meniscus height (TMH), noninvasive breakup time (NIBUT)と、非接触型のマイボグラフィー(Keratograph 5M; Oculus, Wetzlar, Germany)で観察されたマイボーム腺の形状である。
・マイボグラフィーの解析にはMG自動解析装置(DMK, Guangzhou, China)を用いた。
・対象は79症例79眼。マイボーム腺として認識された領域の面積をROI (region of interest:関心領域・・画像用語のようです)で割って算出した腺の領域(AR: gland area ratio)において、初回の検査時(baseline)と最終の検査時(last visit)の比較でARが5%以上増加したものを「改善」、5%以上減少したものを「悪化」として各パラメーターとの関連を検討した。
・79例中男性が50人(63.3%)、女性29人(37.7%)、平均年齢36.03±15.78歳(6-73歳)、ARの「改善」が34.2%(27/79)、「不変」35.4%(28/79)、「悪化」30.4%(24/79)。
・改善、不変、悪化の各平均年齢は27.56±13.83歳、40.07±15.82歳、40.96±4.31歳。男性の比率は81.5%(22/27)、64.3%(18/28)、41.7%(10/24)。
・若い男性で治療による回復の可能性が高い。性差についての考察はないが、MG stem cellの増殖能が加齢とともに低下してくるため、若い人ならマイボーム腺再生の見込みはあるが、年齢とともにマイボーム腺の改善が得られなくなっていると考えられる。
・初回の検査時(baseline)と最終の検査時(last visit)の比較でマイボーム腺機能のパラメーターの中で有意な変化のあったものは、ARの他、corneal fluorescein staining (CFS)、gland signal index(SI)であった。このSIとは、マイボーム腺管内の分泌物(meibum)の光学濃度を測定したものでマイボーム腺機能の指標である。
・治療としては、IPL(intense pulsed light)が有効であり、改善例、不変例、悪化例でIPLが施されていたのはそれぞれ77.8%(21/28)、53.6%(15/28)、37.5%(9/24)だった。
・【結論】MGDの患者を1年以上経過観察すると、1/3の患者で改善が得られているが、若い患者ほどマイボーム腺の回復が期待できるため、早期にMGDを見つける必要がある。(KH)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 262(1):103-111, 2024
Paschon K et al(Austria)
Prospective analysis of anatomic features predisposing patients to intraoperative floppy iris syndrome.
・IFISの術前の解剖学的な特徴を検討した。
・α1遮断剤服用者55例と非服用者55例で検討した。
・のうち、IFISは45例で発症し、瞳孔径がIFIS例では有意に小さかった。
・AS-OCTでは、3.29±0.85:3.63±0.68mm p=0.03。瞳孔計では3.56±0.87:3.95±0.67mm p=0.02)。
・前房深度が有意に浅かった(3.12±0.40:3.32±0.42 p=0.02)。
・α1遮断剤服用者55例中女性が14例(25.5%)、α1遮断剤種類は7種類で、タムスロシンが27例(49%)。(TY)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 262(1):19-32, 2024
Bulloch G et al(Australia)
Ocular manifestations of obstructive sleep apnea: a systematic review and meta-analysis.
・閉塞性睡眠時時無呼吸(OSA)が眼疾患を発症するかどうかはまだ不明瞭である。
・文献的に評価するメタ解析を行い、関連を検討した。
・使用したデータベースは、PubMed、EMBASE、Google Scholar、Web Of Science、Scopus databaseで、1901年から2022年7月までの49研究を検索し、OSAと関連した疾患をodds比(95%CI)で検討した。
・非動脈炎性前部虚血性視神経症NAIONが 3.98(2.38-6.66)、フロッピー眼瞼症が3.68(2.18-6.20)、網膜静脈閉塞が2.71(1.83-4.00)、中心性網脈絡膜症が2.28(0.65-7.97)、円錐角膜が1.87(1.16-2.99)、緑内障が1.49(1.16-1.91)であり、有意差があった(p<0.001)。
・特発性頭蓋内圧亢進が1.29(0.33-5.01)、AMDが0.92(0.24-3.58)であった。(TY)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 261(12):3503-3510, 2023
Safir M et al(Israel)
Iris color as a predictive factor for intraoperative floppy iris syndrome.
・白内障手術中に発生するIFISの予測因子として虹彩の色が影響するかについて、2019/7から2020/2に2か所の医療機関で検討した。
・虹彩の色は電話で本人に問い合わせた。
・術前にα遮断剤の過去と現在の服用について調査した。
・1,587眼の手術の内、74眼のIFIS発症者と、ランダムに選んだ81眼の非発症者を選択して調査した。
・α1遮断剤服用者は、IFIS発症者の62.2%、非発症者の54.3%を占めていた。
・平均年齢は74.03±7.09歳で35.5%が女性であった。
・虹彩色は茶が110/155(71.0%)、青が25/155(16.1%)、緑が20/155(12.9%)、灰色が0/155(0%)であった。
・茶色虹彩に比較して、青色虹彩は4.5倍IFISの危険性が高く(OR=4.50 95%CI=1.73-11.70 p=0.002)、緑虹彩は7.0倍(95%CI=2.19-22.39 p=0.001)であった。
・明るい虹彩は茶色虹彩に比較して、より重篤なIFISを発症しやすく、両眼性に発症するIFISも、緑虹彩群では茶色虹彩群い比較して10.4倍(OR=10.43 95%CI=3.35-32.54 p<0.001)発症しやすかった。
・女性のIFIS者でα遮断剤の服用歴のない人では、虹彩が明るい人が5/15(33.4%)を占めていた。(TY)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 261(12):3541-3547, 2023
Lotfy NM et al(Egypt):Clinical outcomes of vacuum-dehydrated amniotic membrane (Omnigen) mounted on contact lens (Omnilenz) in eyes with acute chemical eye injuries.
・Omnigenは真空乾燥された羊膜で、特殊な治療用CL(Omnilenz)に組みこまれているものであり、今回、2021/7~2022/11の間に、このOmnilenz-Omnigenを急性化学外傷(CEI)に使用した結果を報告する。
・化学外傷後2日以内に使用開始し、1か月以上経過をみた21例23眼である。
・アルコール外傷が8眼、アルカリ外傷が7例、酸外傷が4例、不明が4例であった。
・輪部血管の回復は56.5%で得られた。
・Omnilenzの複数回使用は5眼(21.7%)で必要であったが、全例で1か月後には完全な上皮の治癒が得られた。
・軽度の臨部虚血は3眼(13%)でみられたが、重篤な副作用が残った症例はなかった。(TY)
Graefes Arch Clin Exp Opthalmol 261(11):3083-3095, 2023
Zhang G et al(China)
The evolution of mechanism of accommodation and a novel hypothesis.
・調節のメカニズムは近視や老視の治療に強く影響しているが、そのメカニズムはまだ十分に解明されていない。
・Helmholtzは調節時にはチン氏帯は緩んでいるとの古典的な説を出しているが、最近、Schacharは調節時にはチン小帯は緊張しているとの説を出している。
・安静時には毛様筋は弛緩し、静脈血は渦静脈に戻り、毛様突起は柔らかである。
・チン氏帯の張筋は弛緩し、矢状方向の主チン小帯は緊張し、水晶体を薄くしている。
・環状方向のチン小帯はやや弛緩するが、valley zonulesの緊張は変わらず水晶体位置は安定している。
・調節時には毛様筋が緊張し、静脈還流が阻害され、毛様体突起は固くなり前内方に移動し、張筋の緊張は高まるために主チン小帯の矢状方向の張力がそがれ、水晶体の形状がより本来の形に近づくために中央部がやや突出して屈折力が増す。(TY)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 261(11):3231-3239, 2023
Aakisaka et al(宮崎)
Changes in the preoperative ocular surface flora with an increase in patient age: A surveillance analysis of bacterial diversity and resistance to fluoroquinolone.
・眼手術前の結膜嚢培養で検出された菌について、患者年齢、フルオロキノロン耐性を検討した。
・2018/8から2020/12までに手術をおこなった5490例8923眼について検討した。
・全部で9,894菌が検出され、表皮ブ菌 31.0%、黄色ブ菌6.1%、その他ブ菌3.9%、腸球菌5.8%、コリネ菌31.7%、アクネ菌7.5%などであった。
・検出された菌は年齢が増すにつれて多くなっていたx1.018/10歳(p<0.0001)。
・レボフロキサシン耐性の表皮ブとコリネ菌の比率は年齢が増すにつれて増えていた x1.204とx1.087/10歳(p<0.0001)。(TY)
Graef Arch Clin Exp Ophthalmol 261(10):2953-1959, 2023
Battagliola ET et al(Italy)
Topical antibiotic prophylaxis before intravitreal injections: a pilot study.
・硝子体内注射を予定している人に対する予防的な抗菌点眼薬投与とポビドンヨードだけの投与とで、眼表面の無菌状態を調査した。
・対象をクロラムフェニコール群(Ch群)、ネチルマイシン群(Ne群)、市販のオゾン消毒薬(Oz群)、無点眼群(Ctl群)に分けて検討した。
・硝子体注射直前の5%ポビドンヨード液(PI)点眼前後の結膜嚢培養の陰性率を調べた。
・PI点眼前の陰性率は、Ch群(61.1%)とNe群(31.3%)では、Oz群(83.3%)やCtl群(86.5%)に比較して有意に高かったが(p<0.04)、この差はPI液点眼後3分後にはなくなっていた。
・PI点眼後はCh群(11.1%)、NE群(12.5%)、Ctl群(15.4%)、Oz群(25.0%)となっており、有意差もなくなった(p>0.05)。
・このことから、PI点眼だけで十分で、抗菌剤の前投与は不要であると考えた。(TY)
Influence of body positons adopted for resistance training on intraocular pressure: a comparison between the supine and seated positions.
Lara PM et al(Spain)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 261(7): 1971-1978, 2023
・筋トレ時の眼圧にはいろいろなファクターが関与しているが、体位の影響については知られていない。
・今回、ベンチプレス時の眼圧変動について座位と仰臥位で検討した。
・対象は男性10名、女性10名で、10回6セットを3種の強度(高負荷、中負荷、負荷無し)と仰臥位と座位でIcare IC200で右眼で測定した。
・座位では仰臥位よりも眼圧上昇が有意に少なく、負荷が大きいほど眼圧が高かった。(TY)