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Ophthalmology

2025
132巻

近視進行抑制治療としての多焦点SCL

Ophthalmology 132巻 (4号) 2025

Multifocal soft contact Lenses for the treatment of myopia progression in children. A report by the American Academy of Ophthalmology
Cavuoto KM et al(FL USA)
Ophthalmology 132(4): 495-503, 2025
・18歳以下の小児に対する近視進行抑制治療としての多焦点SCLの有効性の文献的評価を行った。
・PubMedの英語論文を対象に2024/3までの文献検索を行い、抽出された76論文の内、12論文を調査した。
・エビデンスレベルは11件がレベルI、1件がレベルIIであった。
・使用したSCLは2焦点、多焦点、焦点深度拡張型EDFなどであるが、すべての研究において、多焦点SCL使用群は近視進行が抑制されていた。
・球面等価SEの変化量は、少なくとも1年間の経過観察で、多焦点SCL群で-0.22~-0.81D、対照群(単焦点眼鏡/CL)では-0.50~-1.45Dであった。
・眼軸長(AL)の伸長は治療群では0.05~0.39mm、対照群では0.17~0.67mmであった。
・SEに関しては11件の研究で、ALに関しては12件すべての研究で有意差が認められた。
・重篤な有害事象は報告されなかった。
・最適な治療期間や、長期にわたる進行の抑制効果、多焦点SCL使用中止後の進行については、今後の課題である。
・どの多焦点設計や加入度が最も効果的かについては明確ではなく、レンズタイプや加入度によって有意差がないとする研究もあれば、高加入度のほうが効果が大きいとする研究もあった。(TY)

2025
132巻

緑内障の進行速度と血圧との関連

Ophthalmology 132巻 (1号) 2025

Relationship between blood pressure and rates of glaucomatous visual field progression. The vascular imaging in glaucoma study.
Donkor R et al(FL USA)
Ophthalmology 132(1): 30-38, 2025
・全身の血圧(BP)と標準自動視野検査(SAP)の変化率との関係を、64名の患者(平均年齢68.4±7.6 歳)の124眼(緑内障91眼、緑内障疑い33眼)で調査した。
・ベースライン時に、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)を行い、4カ月ごとに平均動脈圧(MAP)、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)とSAPを測定し、血圧がSAPの平均偏差(MD)の経時的変化率に及ぼす影響を解析した。
・28.3±6.0カ月で平均8.9±1.5回のSAP検査を行なった。
・MD変化率の中央値は0.14dB/年(-1.21〜0.96 dB/年)で、9眼(7%)が中~速い進行であった(MD変化率<-0.50 dB/年)。
・24時間平均MAPあるいは、SBPが10mmHg低いごとに、MDの減少速度は-0.171 dB/年(P = 0.045)と、-0.137dB/年(P = 0.023)早かった。
・平均SBPが低いことも、MDの進行と有意に関連していた(P= 0.003)。
・中等度から高速の進行者(MDの傾きが-0.50dB/年より速い人)は、日中(13時から21時)で進行の遅い者よりも有意に低いSBP値を示したが、日中の平均動脈圧(MAP)を平均すると、両グループ間に有意差は認められなかった(P=0.517)。(TY)

2025
132巻

眼軸長と緑内障の進行速度

Ophthalmology 132巻 (1号) 2025

Assessing glaucoma severity and progression in individuals with asymmetric axial length. An intrapatient comparative study.
Huh MG et al(Korea)
Ophthalmology 132(1): 39-51, 2025
・眼軸長の差が1.0 mm以上ある20歳以上の両眼の緑内障患者95名190眼(51.2±12.3歳)で、症状および進行に差があるかを10.1±3.9年追跡調査した。
・長眼軸眼と短眼軸眼との間に眼圧、角膜中央厚CCTの有意差はなかった。
・ベースラインの視神経乳頭パラメータでは、卵形指数(ovality index:視神経乳頭の中心を通る短径と長径の比率)、βゾーン(ブルッフ膜が存在する領域)およびγゾーン(ブルッフ膜が存在しない領域)の傍乳頭萎縮(PPA)領域が、長い眼の方が大きかった(P<0.001)。
・長眼軸長眼の方が網膜神経線維層RNFL厚(P=0.009)、神経節細胞-内網状層(GCIPL)厚(P<0.001)が薄かった。
・ベースライン視野検査では、MDおよび視野指数(VFI)が長眼軸長眼で有意に低かった(P<0.001、P=0.034)。
・進行の解析では、以下の進行率が長眼軸長眼で有意に大きかった。
・上部GCIPLの年間変化率は、-0.65:-0.40 µm/年(P=0.006)、MDの年間変化率は、-0.40:-0.21 dB/年(P=0.005)、VFIの年間変化率は-0.92:-0.46%/年(P<0.001)で、眼圧変動の差が大きいほど、MDおよびVFIの進行速度の差も大きくなっていた。
・眼軸長の差が1.0 mm以上ある場合、長眼軸長眼では緑内障がより重症であり、進行も速い傾向があった。(TY)

2024
131巻

小児近視に対する赤色光治療の有効性

Ophthalmology 131巻 (11号) 2024

Repeated low-level red light therapy for myopia conrol in high myopia children and adolescents. Randomized clinical trial.
Xu et al(China)
Ophthalmology 131(11): 1314-1323, 2024
・低レベル赤色光(RLRL)を繰り返す治療の有効性と安全性を評価した。
・2021年2月~2022年4月に、-4.0D以上の6歳から16歳の子供192人を対象にして、1:1の比率で、RLRL治療と眼鏡の介入群と眼鏡だけの対照群にランダムに割り当てた。
・RLRL治療は1回3分、1日2回、4時間以上の間隔をあけて、週7日実施。
・192人の参加者のうち、188人(97.91%)を解析した。
・12ヶ月後、眼軸長の平均変化は介入群で-0.06mm(95%CI=-0.10~-0.02mm)、対照群で+0.34mm(95%CI=+0.30~+0.39mm)であった。
・12か月後の屈折度の変化は介入群で0.11D(95%CI=0.02~0.19D)、対照群で-0.75D(95%CI=-0.88~-0.62D)であった。
・介入群では、48名53.3%の参加者が12ヶ月の経過観察で0.05mm以上の眼軸短縮を示した。
・繰り返し低レベル赤色光治療は、高近視の進行管理において有効であり、眼軸短縮の効果があった。(TY)

2024
131巻

低濃度アトロピン近視治療の5年経過

Ophthalmology 131巻 (9号) 2024

Five-year clinical trial of the low-concentration atropine for myopia progression (LAMP) study.
Zhang XJ et al(Hong Kong)
Ophthalmology 131(9): 1011-1020, 2024
・低濃度アトロピン近視治療(low-Concentration Atropinen for Myopia Progression Study:LAMP)の5年間の長期効果、治療中止後に再治療を必要とした比率、必要に応じた再治療(PRN)の効果について検討した。
・4歳から12歳を対象として5年間経過観察したLAMP研究であるが、3年目に治療継続群と治療停止群にランダムにわけた。
・点眼治療群では、4年目と5年目は0.05%、0.025%、0.01%群の全てを0.05%に変更し、点眼中止群では1年間で0.5D以上の近視進行があったものは、PRN治療として、0.05%アトロピン治療を開始した。
・5年間経過をみた症例は270例で、そのうち、5年間点眼治療を継続した群での近視進行度は-1.34±1.40(0.05%群)、-1.97±1.03(0.025%群)、-2.34±1.71(0.01%群)で有意差があった(p=0.02)。
・眼軸長延長についても同様の有意差があった(p=0.01)。
・PRN治療群では、94/107(87.9%)が治療再開が必要であり、近視進行度は継続治療群:PRN治療群では、近視進行度は-0.97±0.82:-1.00±0.74で有意差はなく(p=0.55)、眼軸長延長についても0.51±0.34:0.49±0.32mmで有意差はなかった(p=0.84)。
・アトロピン点眼治療を中止して近視進行があった人でも治療再開が有効であった(TY)

2024
131巻

半量点眼瓶を使用した緑内障治療の効果

Ophthalmology 131巻 (9号) 2024

An evaluation of the efficacy and safety of timolol maleate 0.5% microdrops administered with the nanodropper.
Steger JS et al(MD USA)
Ophthalmology 131(9): 1045-1055, 2024
・通常の点眼瓶での1滴28μlの代わりに1滴12.5μlのNanodropper Adaptorを使用した点眼治療の効果を0.5%のチモロール点眼薬で検討した。
・開放隅角緑内障OAGあるいは高眼圧症OHTで、眼圧低下作用が弱まるかどうかを検討した。
・この少量点眼装置は前報での調査では、9種類の点眼薬を通常の点眼瓶(39.8±2.1μl)より62%減らすことができ(15.1±1.0μl)、点入回数を2.6倍に増やすことができることを報告している。
・両眼にいずれかを1滴点入し、眼圧、心拍数HR、血圧BPを前,1,2,5,8時間後に測定した。
・点眼後、両群とも有意に眼圧は低下しており、4回の測定時間中3回で、少量点眼薬の劣勢はみられず、少量点眼群では通常点眼群よりも心拍数は約3拍/分(bpm)少なかったことから、少量点眼でも同等の眼圧低下作用があり、心拍数や血圧に与える影響が少ないことがわかった。(TY)

2024
131巻

末期緑内障患者における初回線維柱帯切除術と薬物治療の比較

Ophthalmology 131巻 (7号) 2024

Evaluating Primary Treatment for People with Advanced Glaucoma: Five-Year Results of the Treatment of Advanced Glaucoma Study.
King AJ,  et al TAGS Study Group
 Ophthalmology. 131(7):759-770.  2024

目的:末期緑内障患者における初回線維柱帯切除術と薬物治療の比較を目的とした多施設ランダム化比較試験。
方法: 2014年から2017年の間に新たに診断された末期開放隅角緑内障の成人453名が参加し、227名が線維柱帯切除術、226名が薬物治療に割り付けられた。
参加者は1:1の比率で、マイトマイシンC強化線維柱帯切除術または眼圧下降点眼薬による段階的薬物治療を受け、5年間追跡された。
主な評価項目は、5年目に視覚特有の生活の質(QoL)を測定する25項目の視覚機能質問票(VFQ-25)でした。
結果:線維柱帯切除術群のVFQ-25スコアは平均83.3、薬物療法群は81.3であり、統計的には有意差は見られなかった。
眼圧は、線維柱帯切除術群が12.07 mmHg、薬物療法群が14.76 mmHgで、線維柱帯切除術群において有意に低い結果が得られた。
また、視野平均偏差でも線維柱帯切除術群が優位に改善されたが、安全性イベントは両群で類似しており、重篤な有害事象はまれだった。
結論:進行性緑内障患者における初回線維柱帯切除術が眼圧を効果的に低下させ、病気の進行を防ぐための優れた治療法であることを示した。
そして、安全性の面でも薬物治療と同等であることが確認された。(KK)

2024
131巻

慢性腎臓病とAMDとの関連

Ophthalmology 131巻 (6号) 2024

Is kidney function asociated with age-related macular degeneration? Fingings from the Asian Eye Epidemiology Consortium.
Xue CC et al(Singapore)
Ophthalmology 131(6): 692-699, 2024
・慢性腎臓病CKDと加齢黄斑変性症AMDは関連があると考えられている。
・同じリスクファクター、病因や遺伝的多型を持っているからである。
・この関連について、Asian Eye Epidemiology Consortiumのデータベースを使用して、独立した10種の51,253例の研究を調べてみたので報告する。
・AMDはWisconsin ARM Grading System、International ARM Epidemiological Study Group Classification、Beckman Clinical Classificationのいずれかを使用し、CKDはeGFRが60ml/min per 1.73m2以下と定義し、年齢、性、高血圧、DM、BMI、喫煙、コレステロール値で補正した。
・51,253名(54.1±14.5歳)のうち、5079例(9.9%)でCKDがあり、初期AMDの有病率は9.0%、晩期AMDは0.71%であった。
・交絡因子で調整後、CKD者では晩期AMDの確率はOR=1.46 (95%CI=1.11-1.93 p=0.008)、腎機能が低くなると(eGFRが10-unit低下)、晩期AMDの確率はOR=1.12 (95%CI=1.05-1.19 p=0.001)であった。
・しかし、CKDであることやeGFR値は早期AMDとは関連がなかった。
・CKDの患者は眼底検査が大切であると考えられた(TY)

2024
131巻

角膜障害による視覚障害者に対する視覚補助具

Ophthalmology 131巻 (5号) 2024

Evaluation of a retinal projection laser eyeware in patients with visual impairment caused by corneal diseases in a randomized trial.
Stöhr M et al(Germany)
Ophthalmology 131(5): 545-556, 2024
・網膜や視神経以降は健全であるのに、角膜障害で視力が悪い人に対する視覚補助具(LVAs)を検討した。
・LVAsは残った視機能を拡大とかコントラスト増強によって最大限に活用しようとするものであるが、中間透光体に依存しているために十分に効果がでていない。
・そこで、我々は眼鏡タイプの新しいレーザー技術で、中間透光体をバイパスする装置(laser eyewear:LEW)を開発した。
・カメラでとらえられた像は低エネルギーレーザーで直接、網膜に投影されるため、患者はフルカラーの画像を見ることができる。
・今回、角膜疾患のために視力が、logMAR=0.7以下(小数点0.2以下)、logMAR=1.7以上(小数点0.02以上)となっている21名(25-69歳)でテストを行った。
・文字読みのスピードテストで、眼鏡では4名のみが文字が読めただけであった
・いずれも2倍拡大での拡大鏡とLEWでは、平均的なスピードは変わらなかったが、拡大鏡よりはLEWの方がより多くの被検者で文字を読むことができた。
・LEWは使用者全員で有用であることがわかった(TY)

2024
131巻

緑内障患者の痴呆症のリスクについて

Ophthalmology 131巻 (3号) 2024

Risk of Alzheimer’s disease and related dementias in persons with glaucoma.
Crump C et al(TX USA)
Ophthalmology 131(3): 302-309, 2024
・緑内障は痴呆症に進行しうる脳の神経変性疾患と関連しうる視神経症の異質な群と考えることができるが、現在までそのような検討はなされていないので、今回、緑内障後の痴呆症について大集団症例研究を行った。
・Swedenで、1995-2017に緑内障と診断された324,730名と、年齢・性をマッチさせた3,247,300例の痴呆症でない対照群とで調査した。
・Alzheimer病(AD)、血管性痴呆(VaD)、その他の痴呆症について、社会人口学的因子と併存疾患で調整して検討した。
・1600万人年person-yearの経過観察中、緑内障の32,339名(10%)と対照群の226,896名(7%)が痴呆症と診断された(人年 person-year:観察した人数とその観察年数をかけたもの)
・緑内障者では全ての原因の痴呆症発症の調整HRは1.57(1.54-1.59)、そのうち、AD発症は1.39 (95%CI=1.35-1.43)、VaD発症は1.66(1.61-1.72)であった。
・緑内障の型別では、POAGとNTGでは、AD発症はそれぞれ1.31(1.27-1.36)と1.28(1.20-1.36)、VaD発症は1.61(1.54-1.68)と1.39(1.28-1.50)であった。
・PACGではVaD発症は1.26(1.02-1.56)であったが、AD発症は0.98(0.82-1.28)であった。
・これらの所見には男女差はなかった。
・また、このリスクは70歳以上で緑内障と診断された人で最も高く、60歳未満で診断された人では高くなかった。
・高齢になって緑内障と診断された人は痴呆症について注意してみていく必要がある。(TY)

2024
131巻

緑内障手術後の眼内炎のリスク

Ophthalmology 131巻 (2号) 2024

Early endophthalmitis incidence and risk factors after glaucoma surgery in the Medicare population from 2016 to 2019.
Sabharwal J et al(MD USA)
Ophthalmology 131(2): 179-187, 2024
・Medicareの65歳以上の患者で、2016-2019にかけて、緑内障手術、白内障手術、あるいは、緑内障+白内障同時手術を受けた症例で、42日以内に眼内炎を発症した症例を対象とした。
・緑内障手術を受けた症例は466,928例(うち、白内障同時手術310,823例66.6%)あり、白内障単独手術を受けた8,460,360例を対照として検討した。
・緑内障手術はMIGSが67.8%、線維柱帯切除が14.0%、チューブシャント手術が10.9%、その他が7.3%である。
・全緑内障手術眼のうち、572例(0.123%)で眼内炎が発症していた。
・眼内炎の発症は1000例中、緑内障手術は1.5例(95%CI=1.3-1.7)、同時手術は1.1例(95%CI=1.0-1.2)、白内障単独手術は0.8例(95%CI=0.8-0.8)であった。
・眼内炎診断がついた中間値は緑内障手術では16.5日で、同時手術、白内障単独手術の8日、6日に比して遅かった。
・緑内障手術の中では、MIGSと比較して、眼内炎のリスクが有意に高かったのはチューブシャント手術で、単独手術では調整OR(aOR)=1.8(p=0.002)、同時手術ではaOR=1.8(p=0.047)であった。
・また、同時手術では、年齢 aOD=1.03 (p=0.004)、男性 aOR=1.46 (p=0.001)で、眼内炎のリスクが高かった。(TY)

2023
130巻

原発隅角閉塞症に対するレーザー虹彩切開の効果

Ophthalmology 130巻 (8号) 2023

Fourteen-year outcome of angle-closure prevention with laser iridotomy in the Zhonghan Angle-Closure Prevention Study. Extended follow-up of a randomized controlled trial.
Yuan Y et al(China)
Ophthalmology 130(8): 786-794, 2023
・原発隅角閉塞症疑い(PACS)に対するレーザー周辺虹彩切除(LPI)の効果を14年間観察し、原発閉塞隅角症(PAC)に移行するリスク因子を検討した。
・50歳から70歳の889名の両眼のPACSを対象とし、ランダムに片眼にLPIを行ない、他眼をCtrlとした。
・周辺隅角癒着、眼圧が24mmを越える、あるいは急性隅角閉塞(AAC)が発生した場合をPACと判定した。
・14年間でLPI眼の480眼(390+90)とCtrl眼の462眼(388+74)が脱落したが、LPI眼では409眼(889-480)中33眼(8.1%)、Ctrl眼では427眼(889-462)中105眼(24.6%)がPACに移行し(p<0.01)、PACへ移行する率はCtrl眼と比較するとLPI眼ではHR=0.31(95%CI=0.21-0.46)であった。
・その中で、LPI眼では1眼、Ctrl眼では5眼がAACを発症し、LPI眼では2眼、Ctrl眼では4眼が原発隅角閉塞緑内障(PACG)に移行した。
・14年間観察すると、Ctrl眼と比較してLPI眼では核白内障がより強く、眼圧が高く、隅角が広く、周辺部前房深度がより深かった。
・PACへ移行するリスクが高いものは、Ctrl眼では高眼圧(HR=1.11)、周辺部前房深度が浅い(10%深いとHR=0.70)、中心部前房深度が浅い(0.1mm深いとHR=0.88)ことであり、LPI眼では高眼圧(HR=1.14)、周辺部前房深度が浅い(10%深いとHR=0.45)、暗室うつ伏せテストでの眼圧上昇が少ない(1mmHg上昇するとHR=0.87)ことであった。(TY)

2023
130巻

多分割眼鏡( DIMS)と近視進行の予防

Ophthalmology 130巻 (5号) 2023

The efficacy of defocus incorporated Multiple Segments Lenses in slowing myopia progression. Results from diverse clinical circumstances.
Liu J et al(China)
Ophthalmology 130(5): 542-550, 2023
・焦点をぼかす多分割眼鏡(Defocus incorporated multiple segments(DIMS)眼鏡が近視進行を予防できるかを検討した。
・DIMSはHOYAビジョンケア部門と香港理工大学が共同開発したものである。
・DIMSを使用した3639例と、単焦点SV眼鏡を使用した6838例とで比較した。
・主観的な屈折での球面等価量で評価した。
・症例の年齢は6-16歳(11.02±2.53歳)で、基準時の屈折度は0.00~-10.0D(ー2.78±1.74D)。
・1年経過と2年経過を調査した。DIMS群とSV群は、1年後は-0.50±0.43D:-0.77±0.58D(p<0.001)、2年後は-0.88±0.62D:ー1.23±0.76D(p<0.001)で、DIMS群の近視進行が遅かった。
・近視進行が0.25D以下だった例は1年後は40%と19%(p<0.001)、2年後は33%と20%、1.0D以上進行した例は1年後は9%と22%(p<0.001)、1.5D以上の進行例は2年後は12%と29%(p<0.001)であった。(TY)

2023
130巻

硝子体注射を繰り返すとドライアイが改善する?

Ophthalmology 130巻 (5号) 2023

Associations between Serial Intravitreal Injections and Dry Eye.
Malmin A, Thomseth VM, Førland PT, Khan AZ, Hetland HB, Chen X, Haugen IK, Utheim TP, Forsaa VA. (Norway)
Ophthalmology. 2023;130(5):509-515. doi: 10.1016/j.ophtha.2023.01.009. Epub 2023 Jan 21. PMID: 36693594.
【目的】
nAMDに対して抗VEGF治療を受けた患者において、連続する硝子体内注射(IVI)が眼表面およびマイボーム腺(MG)に及ぼす影響を検討
【対象と方法】
抗VEGF薬による片眼IVI投与を受けているnAMD患者
僚眼を対照とした
涙液検査と眼表面検査は、IVIの最低4週間後に1回ずつ施行
*注射時の麻酔・消毒プロトコルは下記
【主要評価項目】
以下をレトロスペクティブに評価;
上下のMG消失、涙液メニスカスの高さ(TMH)、球結膜充血(BR)スコア、
非侵襲的涙液崩壊時間(NIBUT)、涙液浸透圧(TOsm)、シルマーテスト、角膜染色、
フルオレセイン涙液崩壊時間(TBUT)、マイボーム腺発現率(ME)、マイバムの質
【結果】
54-95(平均77.5)歳の患者90名
治療眼におけるIVIの数は2-132(中央値19.5)回
上眼瞼の平均MG喪失率は、
治療眼で19.1%(SD、11.3)、
対照眼で25.5%(SD、14.6)であった(P = 0.001)
下眼瞼では、MG損失の中央値は、
治療眼で17.4%(四分位範囲[IQR]、9.4-29.9)、
対照眼で24.5%(IQR、14.2-35.2)であった(P < 0.001)
球結膜充血(BR)スコアの平均は、
治療眼では1.32(SD、0.46)であったのに対し、
対照眼では1.44(SD、0.45)であった(P = 0.017)
涙液メニスカスの高さ(TMH)の中央値は、
治療眼で0.36mm(IQR、0.28-0.52)、
対照眼で0.32mm(IQR、0.24-0.49)であった(P = 0.02)
以下は治療眼と対照眼で差はみられず;
非侵襲的涙液崩壊時間(NIBUT)、涙液浸透圧(TOsm)、シルマーテスト、角膜染色、
フルオレセインTBUT、マイボーム腺発現率(ME)、マイバムの質
【結論】
nAMD患者において、術前にPVP-Iを塗布した上で抗VEGF薬による静脈内注射を繰り返すと、非治療群と比較して、MGロスの減少、涙液量の増加、炎症徴候の減少がみられた。
この殺菌方法は、眼表面に有益な効果をもたらす可能性がある。

【注射時の麻酔・消毒プロトコル】
防腐剤非含有の塩酸テトラカイン1%点眼液(Minims, Bausch & Lomb)を1滴点眼
PVP-I 5%点眼液(Betadine; Alcon)を1滴点眼
眼瞼縁、睫毛、眼周囲の皮膚をPVP-I 5%で洗浄
開瞼器の後、IVI投与前に再びPVP-Iを点眼
注射後の生理食塩水による消毒洗浄なし
抗生物質や眼軟膏の使用など、注射後の局所治療もルーチンに行わず(MK)

2023
130巻

緑内障の診断と進行評価としての角膜ヒステレシス

Ophthalmology 130巻 (5号) 2023

Corneal Hysteresis for the Diagnosis of Glaucoma and Assessment of Progression Risk
A Report by the American Academy of Ophthalmology
Arthur J. Sit et al, Ophthalmology 130(5),433-442: 2023
・角膜ヒステレシス(CH)に関する423のabstractを調べ、Evidence level 1と2の6文献を採用した。
・結果:CHはPOAG,PACG,PEG,PE syndrome で正常眼より低かった。
・眼圧の高い患者や眼圧下降薬を使用している患者でCHが低いことについては、それら高眼圧、点眼薬がCHに及ぼす影響があり解釈は難しい。
・しかし、未治療のNTG患者は同程度の眼圧の正常眼と比べてCHが低かった。
・さらに、CHが低いことは明らかによくコントロールされた患者を含む、OAGの視野障害(機能)や構造のパラメータ進行のリスクであった。(MM)

2023
130巻

緑内障と角膜ヒステレシス

Ophthalmology 130巻 (4号) 2023

Corneal hysteresis for the diagnosis of glaucoma and assessment of progression risk.
Sit AJ et al(MN USA)
Ophthalmology 130(4): 433-442, 2023
・緑内障の診断や緑内障の進行の判断に対する角膜ヒステレシス(CH)の有用性について文献をレビューした。
・2022/7迄にPubMedに掲載された論文423件から13件を厳選して調査した。
・CHは弾性と粘性の両方を反映している。
・弾性は持続力に対する変形の大きさを決定し、粘性は組織の変形や回復の速度を決定する。
・POAG、PACG、PE緑内障、偽落屑症候群ではCHの値は正常者よりも低かった。
・高眼圧者や緑内障点眼薬治療者での低いCHの解釈は複雑である。
・しかし、未治療のNTG者のCHは、同じ眼圧の正常者よりも低い。
・また、POAG者でCHが低い場合、眼圧が十分にコントロールされていても、緑内障の進行リスクは高いだろう。(TY)

2023
130巻

コロナワクチン接種と副作用について

Ophthalmology 130巻 (3号) 2023

Ocular adverse events after coronavirus disease 2019 mRNA vaccination. Matched cohort and self-controlled case series studies using a large database.
Hashimoto Y et al(東大)
Ophthalmology 130(3): 256-264, 2023
・COVID-19のmRNAワクチン接種後の眼副作用について検討した。
・2021/2~2021/9にCOVID19ワクチン(Pfizer-BioNTech製)を初回接種後21日間、2回目接種後84日間について、self-controlled case series(SCCS) studyで、各99,718人について解析検討した。
・イベントは、ぶどう膜炎、強膜炎、網膜静脈閉塞症、視神経炎を取り上げた。
・初回接種後、副作用イベント件数はワクチン接種者:Ctrlでは29件:21件、2回目接種後では79件:28件であった。
・接種者とCtrl者での積算副作用発症件数の差は、人口10万人あたり、初回接種後は2.9件(95%CI=-14.5~19.1)、1.1倍(0.6~2)、2回目接種後は51.3件(16.2~84.3)、1.8倍(1.2~2.9)接種者が多かった。
・2回目接種後は、RVOだけでは29.4件(8.3~48.7)、3.3倍(1.3~16.1)接種者が多かった。
・ただし、SCCS法でこの期間内で発症する率を、それ以降の期間内で発症する率とで比較すると、初回接種後と2回目接種後の期間での発症率は、0.89(0.62~1.28)と0.89(0.71~1.11)であり、ワクチンが眼副作用の発症リスクを増やすとは言えないことが分かった。(TY)

2023
130巻

黄斑円孔の手術までの期間と術後視機能

Ophthalmology 130巻 (2号) 2023

The effect of macular hole duration on surgical outcomes. An  individual participant data study of randomized controlled trials.
Murphy DC et al(UK)
Ophthalmology 130(2): 152-163, 2023
・特発性全層黄斑円孔(iFTMH)手術後の視力改善に対する術前迄の症状持続時間について検討した。
・2000~2022年の文献を調査した。
・適合した12文献940眼の結果で、症状の持続の中間値は6か月(4分位値は3-10ヶ月)である。
・初回治療での閉鎖率は81.5%であり、閉鎖可能性と症状の持続時間には相関がみられた。
・ロジスティック回帰分析では、手術が1か月遅れる毎に閉鎖率は0.965倍(95%CI=0.935-0.996 p=0.026)であった。
・ILM剥離、ILM片移植、術前の良いBCVA、術後うつ伏せ姿勢、iFTMHが小さいことが、初回閉鎖率に相関していた。
・閉鎖が得られた症例の術後最高視力の中間値はlogMARで0.48(20/60)であったが、ロジスティック回帰分析では、手術が1か月遅れる毎にlogMARで0.008悪くなっていた(95%CI=0.005-0.011 p<0.001)。
・手術までの期間は解剖学的にも視機能的にも影響があり、できるだけ早期の手術が望まれる。(TY)

2023
130巻

アルコール摂取と落屑緑内障との関連について

Ophthalmology 130巻 (2号) 2023

Long-term alcohol consumption and risk of exfoliation glaucoma or glaucoma suspect status among United States Health Professionals.
Hanyuda A et al(慶応大)
Ophthalmology 130(2): 187-197, 2023
・総アルコール摂取量(ビール、ワイン、蒸留酒)と落屑緑内障あるいは落屑緑内障疑者(XFG/SFGS)との関連を調査した。
・Nurse Helth Study(1980-2018)、Health professionals Follow-up Study(1986-2018)、Nurses’ Health Study II(1991-2019)に載った195,408名について2年毎に調査した。
・40歳以上で、食事や眼科所見が確認され、XFG/XFGSではない人を対象とした。
・積年で6,877,823眼の経過観察中に705眼でXFG/XFGSが判明した。
・全アルコール摂取量が多いほど、有意にXFG/XFGSのリスクが増えていた。
・推定多変量調整比較リスク(MVRR)を求めると、1日15g以上のアルコール摂取者では非摂取者の1.55倍(95%CI=1.17-2.07 p=0.02)であった。15gのアルコール量:5%ビール=300cc、15%日本酒=100cc。
・この値は緑内障の家族歴のある人では1.17倍(95%CI=0.56-2.44 p=0.34)であったが、家族歴のない人では1.64倍(95%CI=1.16-2.33 p=0.01)であった。
・XFG/XFGSと診断される前4年間の1日平均15g以上の摂取者は非摂取者の1.65倍(95%CI=1.25-2.18 p=0.002)であった。(TY)

2023
130巻

CLユーザーのアカントアメーバ角膜炎のリスクファクター

Ophthalmology 130巻 (1号) 2023

Acanthamoeba Keratitis Risk Factors for Daily Wear Contact Lens Users
A Case-Control Study
Nicole Carnt, et al. Ophthalmology 130(1): 48-55, 2023 (England)
・2011年1月から2013年2月までにSouth-East Englandの提供する救急外来に受診したアカントアメーバ角膜炎(AK)患者(後ろ向き)とその後2014年8月までに受診したAK患者(前向き)を、2014年2月から2015年6月までに受診したCLとは関係ないと思われるCLユーザー患者(前向き)をコントロールとして、使い捨てレンズと再使用可能レンズのリスクファクターを検討するとともに、使い捨てレンズ使用者のリスクファクターを調査
・83名のAK、122名のコントロール
・Daily Disposal (DD): AK 20例 (24%)、Control 66例(54%) 
・DDと他のCLの比較
・Daily wear(DW) reusable lens: OR 3.84 (95%CI 1.75-8.43)
・Rigid lens: OR 4.56 (95%CI 1.03-20.19)
・DDレンズユーザーでのリスクファクター
・定期診察が少ない:OR 10.12 (95%CI 5.01-20.46)
・装着したままシャワーを浴びる:OR 3.29 (95%CI 1.17-9.23)
・レンズの再使用:OR 5.41 (95%CI 1.55-18.89)
・装用したまま寝る:OR 3.93 (95%CI 1.15-13.46)
・PAR%(population attributable risk percentage:寄与危険割合): 30-60%はリユーザブルCLからDDに変更することで予防できた可能性がある。(MM)

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