眼科JOURNALトップ > British Journal of Ophthalmology > 緑内障とアレルゲン「先生、ネコを捨てなければいけませんか?」

British Journal of Ophthalmology

2015
99巻

緑内障とアレルゲン「先生、ネコを捨てなければいけませんか?」

British Journal of Ophthalmology 99巻(8号)2015

Glaucoma and allergies: ‘should I get rid of my cat?’ (Editrial)
Sng CCA, Barton K. (Singapore)
Br J Ophthalmol 99(8):10 1015, 2015
・上記論文に対する別の雑誌の論説
・TVや新聞で「why owning a cat could lead to blindness」「keep your dog, ged rid of your cat」などと大々的に流れたよう→患者が困って相談
・ネコアレルゲンやゴキブリアレルゲンが視神経に対する自己免疫疾患のトリガーとなる説はもっともらしい
過去にも緑内障性の視神経障害に対する免疫系の作用が神経保護・神経変性の両面で報告されている
上記論文の著者(Tsengら)はセンセーショナルに結果を伝えるマスメディアとは違い、この論文の制限と疑問点とを記載している
ロジスティック回帰分析で補正しているのは年齢・人種・そしてステロイド使用のみである
眼圧や家族歴などのリスクファクターを組み込むことができず、解析の交絡要因になりうると記載している
緑内障の診断は非ステレオ撮影の眼底写真とFDTのみ、緑内障のタイプもNHANESのデータからは得られず
ネコとイヌの)95%CIが広く(1.10-10.67および0.06-0.96)、精密性は低いと考えられる
仮にTsengらの論文の結果がまったく正当であったとしても、ネコアレルギー陽性とネコの飼い主であることとは一致しない。ネコアレルゲンはネコがいる家・いない家に関わらずいたるところに浮遊しているという報告もある。家の周りにネコがいないにも関わらず多くのひとがネコアレルゲンに感作されるという報告があり、ネコを飼っていなくても周囲には多くの人を感作させるだけのネコアレルゲンがあることを示す。さらに、ネコを捨ててもアレルギー症状はしばしば改善しないとの報告もある。さらにはネコの飼い主はネコアレルギー陽性の率が少ない、IgG4が関係した免疫寛容の状態になっているとの報告もある。ネコアレルゲンに感作されるのは幼少期に多く、緑内障患者が多いのは新たなアレルゲンに感作されにくい成人期である
【結論】我々はTsengらの好奇心を刺激する研究を推奨するが、ネコを飼っていても将来必ずしも緑内障にならないことをネコの愛好家たちは再度安心すべきである。その一方でゴキブリを根絶することに更なる調査が必要でないことは多くの人が同意するだろう。(MK)

過去のアーカイブ