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British Journal of Ophthalmology

2015
99巻

円錐角膜からの急性水腫に対するデスメ膜前の縫合の有効性と安全性

British Journal of Ophthalmology 99巻(6号)2015

Efficacy and safety of pre-Descemet’s membrane sutures for the management of acute corneal hydrops in keratoconus
H Yahia Cherit, et al. (France)
Br J Ophthalmol  99(6):773-777,2015
目的:急性水腫に対するデスメ膜前の圧迫縫合の有効性と安全性を評価する。
対象と方法: 7人(男性4人、女性3人)、平均年齢29歳、全員平均6.3年間円錐角膜として治療を受けていた。
2人アトピー、1人ダウン症候群。急性水腫発症後、平均2.85日で圧迫縫合を受けた。
角膜上皮を剥離後、前房に空気を注入しデスメ膜破裂部位をわかりやすくし、tearのエッジにマーカーで印をつけ、その間を10−0ナイロンで3〜7糸縫合した。デスメ膜の上に針を通すが、前房を空気で満たしているので針を入れるときにデスメ膜にしわが寄るので比較的容易であった。前房3/4ほど空気にして終了。(1人はC3F8空気の混合)
予防のイリデクはしていない。
結果:全ての症例で術後1日目から浮腫が軽減した。
視力  術前 2.13 logMAR  → 術後1ヶ月 1.65 logMAR →術後2ヶ月 0.84 logMAR
角膜厚 術前 1472μm → 術後1日目 909μm→ 術後15日目 716μm→ 術後1ヶ月 528μm
6眼は術後15日目で浮腫は消失した。1眼は1ヶ月後に消失した。(広範囲の破裂と浮腫あり)
平均4.1ヶ月で抜糸した。
前眼部OCTにより4人が術後1日目で破裂の消失が確認できた。
角膜内皮細胞密度は平均2329 cells/mm2
高眼圧、感染、新生血管のような合併症はなかった。
結論:円錐角膜の3%に急性水腫が発症すると言われ、2から6ヶ月で自然に治る。ガスや空気の前房内注入も浮腫軽減を早めるとも言われているが、この研究では縫合と空気注入で術後1日目から浮腫が引いた。
この早い回復はデスメ膜の柔軟性のためでもある。実際にデスメ膜が破裂する時、収縮したり丸まったりする。その結果、内皮が破裂の間隙に移動しなければならない。さらにそれらの細胞は新しいデスメ膜を作らなければならない。それは実質に水を通さないようにするためである。このプロセスが数週間から数ヶ月かかる。
ガスや空気を入れるとデスメ膜と実質は接着するが、破裂の間隙はそのままという事がわかった。
圧迫縫合は破裂の辺縁をつなぎ合わせ、数日のうちに浮腫も引くので内皮が移動する必要もない。
さらに、内皮細胞の損傷を最小限にする為、デスメ膜の前で縫合した。Rajaramanらが報告した全層縫合と同じぐらいの効果が得られた。
急性水腫に対する前房内に空気を入れたデスメ膜の前での圧迫縫合は安全で有効であり、角膜の浮腫の期間を短くできることを示唆する。(CH)

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