眼科JOURNALトップ > British Journal of Ophthalmology > 日本における治療歴のない糖尿病性黄斑浮腫の実際の管理:STREAT-DME研究における抗VEGF療法の有無による2年間の視力結果

British Journal of Ophthalmology

2020
104巻

日本における治療歴のない糖尿病性黄斑浮腫の実際の管理:STREAT-DME研究における抗VEGF療法の有無による2年間の視力結果

British Journal of Ophthalmology 104巻(9号)2020

Real-world management of treatment-naïve diabetic macular oedema in Japan: two-year visual outcomes with and without anti-VEGF therapy in the STREAT-DME study
Masahiko Shimura, et al. (東京医科大学)
Br J Ophthalmol. 2020;104 (9):1209-1215.
目的:治療歴のない糖尿病黄斑浮腫(DME)に対する2年間の治療後の最高矯正視力(BCVA)の結果を調査すること。
対象と方法:2010年から2015年の間、2年間治療、経過観察できた治療歴のないDMEの合計2049眼(27施設)。治療パターンによって、抗VEGF単剤療法グループ(グループA)、抗VEGF療法+薬剤および他の治療の併用療法グループ(グループB)、抗VEGF療法なしのグループ(グループC)に分類された。
DMEの治療は次のように分類:(1)抗VEGF剤(硝子体内ベバシズマブ(IVB:1.25 mg / 0.05 mL)、ラニビズマブ(IVR:0.5 mg / 0.05 mL)またはアフリベルセプト(IVA:2.0 mg / 0.05 mL)) 、(2)コルチコステロイド療法(TA療法(硝子体内TA(IVTA:4 mg / 0.1 mL)またはテノン嚢下TA療法(STTA:20 mg / 0.5 mL)))、(3)黄斑領域のレーザー光凝固術(4)硝子体切除術。
BCVAが0.3 logMAR(15文字)増加した場合「改善された」と定義され、0.3logMAR(15文字)減少した場合「悪化した」と定義。
結果:A群427眼(20.9%)、B群807眼(39.4%)、C群815眼(39.8%)のtotal 2049眼。
全体では、ベースラインBCVAは0.44±0.37logMARで、最終BCVAは0.40±0.42logMARに有意に改善した(p <0.001)。平均改善は-0.04±0.40logMAR。20/40以上の最終BCVAが46.3%で得られた。
ベースラインCMTは443.8±154.8µmで、最終CMT 335.6±154.8 µm(p <0.001)と大幅に減少し、CMTの改善は-108.2±186.8 µmだった。合計451眼(22.0%)が「改善」され、289眼(14.1%)が「悪化」した。
1234眼(60.2%)が2年間に抗VEGF剤を投与され、平均投与回数は3.8±3.3回。さらに、1077眼(52.6%)はTA 2.0±1.3回を受け、746眼(36.4%)は黄斑光凝固術1.9±1.4回を受け、597眼(29.1%)は硝子体切除術1.1±0.3回を受けた。
治療パターンに応じた2年間の結果
グループA(427眼)では、ベースラインBCVAは0.45±0.35で、最終BCVA 0.37±0.42と大幅に改善した(p <0.001)。ベースラインCMTは446.4±144.1µm、最終CMT 329.0±126.5 µmと大幅に減少した(p <0.001)。
105眼(24.6%)が「改善」し、51眼(11.9%)が「悪化」した。
最終的なBCVAは211眼(49.4%)で20/40よりも良好だった。427眼すべてに抗VEGF剤を投与し、2年間で平均4.3±3.6回。IVB 191眼(2.0±1.4回)、IVR 224眼(3.7±3.0回)、IVA 138眼(4.7±3.3回)だった。
グループB(806眼)では、ベースラインBCVAは0.48±0.36で、最終BCVAは0.46±0.40と有意な変化はなかった(p = 0.2253)。ただし、CMTは472.8±160.1 µmから348.6±151.1 µmに大幅に減少した(p <0.001)。
188眼(23.3%)が「改善」し、141眼(17.5%)が「悪化」した。
最終的なBCVAは314眼(38.9%)で20/40よりも良好だった。
806眼すべてに抗VEGF剤が投与され、2年間で平均3.6±3.1回。IVB 444眼(2.4±2.2回)、IVR 354眼(3.1±2.6回)、IVA 198眼(3.7±2.8回)だった。
他の治療法は、524眼(64.9%)がTA療法を受け(2年間で2.1±1.4回、IVTA 101眼(1.8±1.2回)とSTTA 458眼(2.0±1.3回)を含む)、361眼(44.7%)が黄斑光凝固術、295眼(36.6%)が硝子体切除術を受けた(表3)。
グループC(815眼)では、ベースラインBCVAは0.40±0.38であり、最終BCVA 0.35±0.44(p <0.001)と大幅に改善した。CMTは413.7±149.2 µmから326.2±133.5 µm(p <0.001)に大幅に減少した。
158眼(19.4%)が「改善」し、97眼(11.9%)が「悪化」した。
最終的なBCVAは424眼(52.0%)で20/40よりも良好だった。
553眼(67.9%)が2年間にわたってTA療法(1.9±1.2回)を受け、そのうち61眼がIVTA 61眼(1.7±1.0回)、508眼がSTTA 508眼(1.9±1.2回)、385眼(47.2%)が黄斑光凝固術、302眼(37.1%)が硝子体切除術を受けた。
BCVAの改善は、グループ間で有意差を示し、グループAよりもグループBで悪化した(p = 0.020)。ベースラインBCVAは他のグループよりもグループCで有意に良かった(p <0.001)が、最終的なBCVAは他のグループよりもグループBで有意に悪かった(p <0.001)。
結論:ベースラインBCVAが20/40以上の症例の68.0%が最終BCVA20/40より良好だったが、ベースラインBCVAが20/40以下の症例だと31.5%だった。BCVAが悪化する前に、DMEの治療を開始する必要がある。
DMEの治療の最終目標は20/40を超える社会的に有用なBCVAを維持することであるが今回の調査ではわずか46.3%だった。 (CH)

過去のアーカイブ