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Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology

2013
251巻

甲状腺眼症に対する片側眼窩脂肪減圧の長期結果

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 251巻(3号)2013

Long-term outcomes of unilateral orbital fat decompression for thyroid eye disease
Minwook Chang (Korea University College of Medicine, South Korea)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(3):935-939, 2013
・眼窩減圧手術には2つの方法があり、眼窩部外壁と内壁の2つの減圧に加えて脂肪除去する方法と脂肪減圧のみである。33名の33眼窩のうち13名は脂肪減圧(A群)、20名は骨減圧(B群)
・患者は3ヶ月以上甲状腺機能に異常無く落ち着いた状態で、6ヶ月以上眼球突出の度合いが不変で、脂肪主体の眼球突出タイプであり、喫煙せず、プロスタグランジン内服せず、リウマチ等の他の自己免疫疾患の無い患者とした。術後1週、1,3,6ヶ月、1,2,3年後に眼球突出度をヘルテルにて測定した。
・最大効果に達するまでの期間はB群(7ヶ月)よりA群(2ヶ月)の方が早かった。3年後の平均ヘルテル値はA群18.9±2.4㎜、B群17.2±2.1㎜。A群ではB群よりも逆戻りした。3年後戻った度合いは、A群2.3±1.4㎜、B群0.7±0.9㎜。1年後はA群の方が効果があったが、B群では逆戻りの傾向が無かった。2㎜以上の再突出を再発と定義すると、A群では13人中10人(76.9%)で明らかな再発。しかしB群では2人のみ(10%)。再発患者でも、採血上、T3,free T4,TSH,TSIには変化無かった。ゆえに症状の活動性は無いと思われた。
・両群で術後合併症があり、B群では眼瞼腫脹と結膜浮腫が高頻度でみられたが、治療ですぐ改善した。AB群共に眼球運動制限がみられたが、ステロイドで治癒した。
・再発する仮説は3つ考えられる。
①再び脂肪が増殖する ②空洞となった空間に軟部組織が侵入してくる ③甲状腺疾患自体の再発
・甲状腺眼症の患者における眼球突出軽減のための片側眼窩脂肪減圧術の長期結果は再発の多さから不十分なものかもしれない。この結果をふまえて術式を決定すべきである。(YM)

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