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Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology

2017
255巻

緑内障と生活習慣のレビュー

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 255巻(4号)2017

 Modifiable factors in the management of glaucoma: a systemic review of current evidence
Idan H. Asaf A (Israel)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 255(4):789-796, 2017
2013年1月-2016年7月の3年間の生活習慣とPOAGの関係をレビュー
Cochrane Library, MEDLINE, PubMed, ClinicalTrials.gov, metaRegister of Controlled Trials, WHO International Clinical Trials Registry Platform, Google Scholarを調査
結果
食事
フルーツ(特に新鮮なオレンジとピーチ)は健康な人の緑内障リスクを低下させるかもしれない
ニンジンや緑黄色野菜、ケール、レタスもリスク低下と関係しているかもしれない
ある調査では鉄やカルシウムの酸化物サプリメントは緑内障リスクを増加させている可能性があるとしている
3つのrondomized controlled study
Mutolo et al:22名のPOAG患者をhomotaurine(タウリン), coleus forskohlii root extract(シソ科のハーブ根抽出エキス), 1-carnosine(カルノシン:瞬発力を要するスポーツでのサプリメント), 葉酸、Vit B1,B2, B6とマグネシウムの入ったタブレット2錠を1年間毎日投与した群としなかった群で比較
治療群ではピーク眼圧が2mmHg低下、パターンERGの改善(2.9μV,P<.05)、中心窩感度の改善(4.8dB,P<.05) を認めたがコントロール群では認めなかった
Garcia-Medina et al:170名のPOAGでコントロール群と、ビタミン群、ルテイン、亜鉛、銅、マグネシウム、セレニウム、オメガ3脂肪酸を含む異なるサプリメント群2群で2年後有意差なし
視野、OCTでも差が出なかった
Bonyadi et al:34名のPOAG患者にプラセボとサフラン抽出液を1か月投与し、その後1か月経過観察したところ、サフラン投与群は有意に眼圧下降したが、投与中止により元に戻った

睡眠時の姿勢
立位よりも臥位で眼圧は上昇するが、少し頭部を上げると上昇幅は緩和されるかもしれない
Kim et al:692名のPOAG患者で聞き取り 1/3の患者は横向きで寝ており、そのうちの66-72%は悪い方の眼が下であった
Lee et al:20名のPOAG患者で調査。5分間の側臥位で緑内障の程度や頭部挙上に関わらず下側の眼が1.3±0.99mmHg上昇した
Kaplowitz et al:261名のPOAG患者をスリープラボ画像や家庭での録画で調査したところ、多くの患者は側臥位を好んでいたが、VFの悪化の程度と左右の向きは逆であった(灌流圧の減少ではないかと推論)
Flatau et al:枕による機械的圧迫が影響する可能性を指摘。22名の緑内障患者と11名のコントロール群でうつ伏せさせたところ緑内障患者は2.5±1.1mmHg上昇したが、コントロール群は上昇しなかった
Lazzaro et al:スリープラボを用いて15名の緑内障患者と15名のコントロールに対して、1日はフラットに、1日は20度の頭部挙上で寝させ、睡眠前と睡眠後2時間ごとに眼圧測定
頭部挙上群の方が1.51mmHg眼圧上昇が少なかった
Park et al:ベッドごと30度挙上が有意に眼圧を下げた(2.0mmHg)が枕だけでは変化がなかった

カフェイン
多くのスタディでは1杯のコーヒーで2時間ほど1-2mmHg眼圧上昇すると指摘
3杯以上のカフェイン摂取で感受性の高い人は緑内障のリスクが上昇するとの報告もあるが、POAG患者での調査はできていない
Aziz et al:91名のPOAG患者で調査 コーヒー摂取と疾患の重症度は関係しないが、摂取頻度と疾患の進行度は有意に相関 この小さな調査では毎日のコーヒー消費が疾患の進行を8倍高めるとしている

運動
ジョギングやサイクリング、ウォーキングなどの有酸素運動は眼圧を加工させるが、思いウェイトリフティングは眼圧上昇をするかもしれない
Agrawal et al:新規に診断された90名のPOAG患者を3つのグループに分け、1グループだけ一日30分の運動を指示したところ、運動群のみ有意に眼圧下降した

ヨガ
運動とは逆にヨガは有害かもしれない
逆立ちのポーズはポーズ中、そしてその後も眼圧を約2倍に上昇させる
Jasien et al:POAG患者で“下向きの犬のポーズ”で17±3.2mmHg → 28±3.8mmHg
“前屈”ポーズで17±3.9mmHg → 27±3.4mmHgに上昇した

水中メガネ
スイミングゴーグルは最大4.5mmHg眼圧上昇し、視神経の血流を低下させるかもしれないし、レクトミー後のブレブを伸展させると報告している
Franchina et al:スイミングゴーグルと緑内障とは関係がないと報告
長期的に影響があるのかはまだ分かっていない

他の要因に関する報告
きついネクタイ:眼圧上昇をきたす可能性はあるが、実際上は影響がないと思われる
アルコール:消費量は緑内障のリスクには影響なし
タバコ:しっかりとした報告がないが、緑内障の発症に関与することを示唆する報告と関係ないとの報告がある

上記一つ一つは1-3mmHgの小さな効果でも積み重なると大きなものになる
EMGTSでは1mmHgの眼圧下降が10%進行抑制になるとの報告(MM)

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