眼科JOURNALトップ > JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) > 目尻のしわの治療のためのボツリヌス毒素A型の涙液膜の安定性と涙液産生への影響

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology)

2014
132巻

目尻のしわの治療のためのボツリヌス毒素A型の涙液膜の安定性と涙液産生への影響

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 132巻(3号)2014

Botulinum Toxin Type A Injection for Lateral Canthal Rhytids Effect on Tear Film Stability and Tear Production
Min-Chieh Ho, et al. (Taiwan)
JAMA Ophthalmal. 132(3): 332-337, 2014
・目尻のしわの治療のためのボツリヌス毒素A型が、涙液膜の安定性と涙液産生にどのように影響しているか。
・目尻のしわのある30〜60歳の女性58人 平均年齢46.3歳
 30〜40歳 20人、 40〜50歳  17人、 50〜60歳  21人
doseA  2U 0.05ml  3ショット 眼輪筋内
doseB  4U 0.05ml  3ショット 眼輪筋内
片眼doseA、もう片眼doseB
治療後1週後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、TBUT、麻酔なしシルマー試験、麻酔ありシルマー試験を施行した。
・TBUTは注射1週後に際立って減少し、1〜3ヶ月間続いた。6ヶ月後に部分的に回復した。シルマー試験は麻酔あり、なしでも注射1ヶ月間減少し、6ヶ月後完全に回復した。
年代別では、
30〜40歳 TBUTは注射後1週後減少し、6ヶ月後完全に回復した。
40〜50歳 TBUTは注射後3ヶ月間減少し、6ヶ月後部分的に回復した。
50〜60歳 TBUTは注射後6ヶ月間減少したままだった。
シルマー試験ではどの年代でも、麻酔あり、なしとも注射後1ヶ月で最も減少し、その後徐々に回復した。
・若い人ほどより速くTBUTが回復する傾向にあった。
TBUTとシルマー試験結果両方がdoseAよりdoseBで減少していたが、統計学的に有意差はなかった。
・ボツリヌスの量が増えるほど、より大きい影響あるように思われた。
ボツリヌスによるリオラン筋麻痺がマイボーム腺からの脂質分泌を減少させるだろう。そのために、涙液層の脂質不十分をもたらすかもしれない。
麻酔あり、なしの両方のシルマー試験が減少したことに気付いた。これは、ボツリヌスが交感神経でなく副交感神経系ファイバーだけを阻害するから、基礎分泌と刺激性分泌の両方が、少なくとも部分的に副交感神経によって支配されることを意味する。
ボツリヌス菌注射の深さは目尻の眼輪筋の層に制限された。そのため、ボツリヌスが眼輪筋と眼窩隔膜を通って涙腺に到達したと思われる。
TBUTで注射後短期間での減少、シルマー試験結果で緩やかな減少という結果は、マイボーム腺の方が注射部位から近く、涙腺までが遠かったからと考えられた。
ボツリヌス治療を受けようとしている患者にドライアイの危険性を知らせる必要がある。(CH)

過去のアーカイブ