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JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology)

2020
138巻

COVID-19の状況下で緑内障外来受診予約を延期すべきかどうかの指標

JAMA Ophthalmology (旧Archives of Ophthalmology) 138巻(7号)2020

Application of the Sight Outcomes Research Collaborative Ophthalmology Data Repository of Training Patients With Glaucoma and Clinic Appointments During Pandemics Such as COVID-19
Nikhil K. Bommakanti, et al; SOURCE Consortium (USA)
JAMA Ophthalmol Online ahead of print. July 17, 2020
新型コロナウイルス感染症の罹患・蔓延を防ぐため外出自粛を含めたソーシャルディスタンスが推奨され、AAOは急を要する患者以外は外来診療を行わないように勧告したが、どの患者が急を要し、受診した方がメリットがあるのか、予約を延期した方がいいのか判断する必要が生じた。緑内障は不可逆性の疾患で適切に治療しなければ視野障害の進行リスクがあるが、多くの患者は高齢で基礎疾患もありCOVID-19による罹患率・死亡率も高い。外来受診は他の患者への感染、クリニックの医師やスタッフの感染リスクを増加させ、PPEの消費にもつながる。
そのため、実装が簡単で、多くの患者に対して判断でき、急速に変化していく状況の変化に対応できる柔軟性を持つスケール化できるアルゴリズムを考案した
2020.3.16-2020.4.16までにSight Outcomes Research Collaborative(SOURSE) Ophthalmology Electronic Health Record Data Repositoryに登録されている大学の緑内障外来予約が予定されている患者を対象。
緑内障の重症度と進行のリスクスコアと、COVID-19の罹患リスクスコアを計算するリスク層別化ツールを開発し、各患者の合計スコアを決定した。
<COVID-19>(COCID-19 morbidity risk score(CS)) プラスでスコア
電子カルテからCOVID-19の罹患率、死亡率が高いのは高齢者、妊婦、慢性内科疾患を持つもので、65-79歳と比較し、80歳以上は統計学的に重みづけ。妊婦及び最近出産した女性で母乳育児をしていた可能性がある人も高リスクとした。内科合併症はCharlson Comorbidity Index(CCI)を用いて定量化した。
<緑内障>(Glaucoma severity and progression risk score(GS)) マイナスでスコア
重症度が高いか、進行のハイリスクを持つために頻繁な経過観察が必要な患者を抽出するため、臨床的特徴を決定。
過去3か月以内の観血的緑内障手術、1年間に高眼圧(>30mmHg)もしくは低眼圧(<6mmHg)、高度な視野障害やLast Eye(片眼0.5以上、反対眼0.25以下)の患者、HFAでMDが-12dB以下
合計スコア(Total core(TS)) GSとCSの合計 プラスであれば予約延期の方向、マイナスであれば予定通り受診の方向
閾値を0,25,50に分けてどの程度の患者が予約延期となるか決定
<検証>
緑内障部門で3/16-5/5まで電子カルテをチェックして3つのカテゴリーに分類
Tier 1(urgent) 既存の予約を維持する必要がある患者、または制限が部分解除後3週間以内に予約
Tier 2(semiurgent) 予約は延期、キャンセルされたが、3か月以内に予約
Tier 3(延期またはキャンセル) 制限解除後3か月以上して予約をするもの
TSが臨床医のTier割り振りとどの程度一致しているか評価
結果
ミシガン大学Kellogg Eye Centerで治療を受けていた1034名の患者が対象 平均(SD)年齢66.7(14.6)歳、女性575名(55.6%)、733名(71%)が白人、160名(15.5%)が黒人、90名(8.8%)がアジア環太平洋地域の人種。
緑内障の重症度及び進行スコア(GS)の平均(SD)は4.0(14.4)ポイント(-50から20ポイント
COVID-19の罹患リスクスコア(CS) 27.2(16.1)ポイント(0から55ポイント)
トータルスコア31.2(21.4)ポイント(-50から75ポイント)
パンデミック中での閾値を0,25,50とすると、970名(93.8%)、668名(64.6%)、275名(26.6%)が延期及び再スケジュールに該当。パンデミックからの回復期での優先順位決定にも役立った
外来受診を控えることで生じる緑内障の進行リスクと、COVID-19暴露による罹患リスクを検討するツールとして役に立つ
<検証>
3/16-5/8までの緑内障予約患者3030人の電子カルテから、TSが0以上のうち80.2%がTier 2 or 3の制限解除後3か月以降でも安全にフォローできると判断。
TSが25以上の82.5%、50以上の86.1%がTier 2 or 3と判断
TSが0未満は72名おり、55名(76.4%)が予定通りの予約もしくは制限解除後3週間以内の予約が必要なTier1と判断された。
<ディスカッション>
このツールは感染状況の急速な変化に応じ速やかに対応、修正、拡張ができるようになっている。制限が解除後、ソーシャルディスタンスの維持、クリニックでの待ち時間の最小化、優先順位の高い患者を安全にケアできるようにする臨床効率の向上などに役に立つ。
TSだけ絵はなく、トリアージにはGS,CSも同様に有用であった
全面的に信頼するのではなく、移動距離など別の要素も考慮が必要
緑内障以外の眼科疾患の場合は、TSよりもCSに基づいた方が良いし、たのアルゴリズムを検討した方が良いかもしれない(MM)

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