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Journal of Cataract & Refractive Surgery

2021
47巻

角膜ヒステリシス(CH)の新しい解釈

Journal of Cataract & Refractive Surgery 47巻(4号)2021

Corneal hysteresis and beyond: Does it involve the sclera?
Roberts CJ et al(OH USA)
J Cat Refract Surg 47(4): 427-429, 2021
・角膜のヒステリシス(Hysteresis:CH)を測定するOcular Response Analyzer(ORA)は新しい生体力学の手段を提供した。
・良く誤解されるが、CHは剛性とか弾性係数とかとは違うものであるし、変形に対する弾性抵抗を示すものでもない。
・CH値が低いのは円錐角膜などの柔軟な角膜であったり、加齢とか高眼圧の時の硬い角膜であったりする。
・IOPとの逆相関は良く知られており、IOP上昇に伴いCHは低下する
・例えば、高眼圧の硬い眼は散逸エネルギーが少なく、その結果、CHが低くなる
・粘着性と弾性の反応はいずれもCHに影響し、これらの比率が異なっていても、同じCHになりうる。
・例えば、円錐角膜に対するクロスリンキングCXLを行った1年後にもCHは変わらない。
・CXL後には、圧迫する圧は上昇しているが、CHの定義となっている第1、第2の圧の差(P1-P2)は変わらない。
・例えば、LASIK術後に片眼のみectasiaを発症した症例の両眼の測定のピーク値は全く違うが、CH値は同じであることも知られている。
・CH値が低いことは緑内障性の障害が強く、緑内障進行の予測因子であるとの報告が多いが、どうして角膜の生体力学的なパラメータが視神経の障害と関連するのかがまだ不明瞭である。
・角膜の生体力学的な反応が後部眼球の生体力学的な反応を示している可能性があり、最近、角膜の反応に強膜が影響していることが分かってきた。
・例えば、強膜バックルを行った眼では僚眼よりも強膜が硬くなっており、両眼間には眼圧の差はないが、バックル眼ではCH値が有意に低くなっているが報告されている。
・これは、硬い強膜は押されたときの凹形から、通常の凸形への戻りが早いからである。
・硬い強膜は、角膜が凹になった時の液の移動に反応しにくいため、角膜が大きく変形しにくいと考えられるが、これが角膜が硬いために変形しなかったと誤解されている可能性がある。
・反対に、強膜が柔らかいと大きく変形するため、角膜の変形も大きく、角膜が柔らかいと誤解されやすい。
・つまり、強膜の状態が、CHと緑内障性の視神経障害の両者に係っていると考えられる。(TY)

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