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その他のジャーナル

2016
70巻

海外ドナープレカット角膜および国内ドナー角膜を用いた角膜内皮移植術の術後短期成績

その他のジャーナル 70巻(6号)2016

稲用絢 他(東京大学)
臨床眼科 70 (6) :911-914,2016
目的:海外アイバンクのプレカット角膜および術直前にカットした国内ドナー角膜を用いたDSAEKの術後短期成績を比較検討した。
対象と方法:2011年1月-2015年7月に東京大学病院でDSAEKを施行された76眼。
海外プレカット角膜を使用した海外群と術直前にカットした国内ドナー角膜を用いた国内群間で視力、角膜内皮細胞密度(ECD)、primary graft failure (PGF)、移植片接着不良、拒絶反応の有無、ドナー年齢を比較検討した。
海外プレカット角膜と国内ドナー角膜どちらを使用するかは患者の希望により決定された。
結果:海外群20例22眼(女性15眠男性7眼) Fuchs角膜ジストロフィ32%、レーザー周辺虹彩切開後27%、白内障術後 9%、角膜内皮炎4%、落屑症候群5%、その他(外傷、原因不明、ICE症候群、急性緑内障発作後)23%。
国内群45例54眼(女性28 眼、男性26眼)、Fuchs角膜ジストロフィ26%、レーザー周辺虹彩切開後25%、白内障術後18%、角膜内皮炎7%、落屑症候群2%、角膜内皮移植片不全9%、その他13%。
国内群のドナ一年齢が高齢であった。
術前平均視力 海外群0.91 国内群1.11
術後視力 海外群 術後1ヶ月0.36、3ヶ月0.27、6ヶ月0.24
     国内群 術後1ヶ月0.60、3ヶ月0.42、6ヶ月0.38
ECD    海外群 術前2784 cells/mm2、術後6ヶ月1994 cells/mm2、術後6ヶ月のECD減少率は31%だった。
          国内群 術前2745 cells/mm2、術後6ヶ月1707 cells/mm2、術後6ヶ月のECD減少率は 37%だった。
視力およびECDの経過は海外群のほうが良好な傾向があるものの,統計学的に有意差があったのは術後1か月の視力のみであった。(p=0.01)
合併症は海外群でPGF 0眼、移植片接着不良1眼(4.6%)、拒絶反応0眼、国内群はPGF 5眼(9.3%)、移植片接着不良5眼(9.3%)、拒絶反応1眼(1.8%)だった。各合併症とも国内群群で発生率が高い傾向にあるが、いずれも統計学的有意差はなかった。
結論:輸送時間がプレカットされた移植片に与える影響は小さいことが推定される。
海外アイバンクでプレカット角膜を購入した場合、ミスカット角膜やプレカット後ECDが大幅に減少した角膜は除外される。また、プレカット精度の差によるグラフトの厚みや切断面の滑らかさが術後早期の角膜透明性回復および術後の高次収差に影響した可能性が推測された。海外プレカット角膜を用いたほうが術後の視力改善は早いが、術後のECDと合併症発生頻度には有意差がなかった。(CH)

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