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その他のジャーナル

2021
125巻

角膜内皮移植と全層角膜移植術後の角膜感染症に関する比較検討

その他のジャーナル 125巻(1号)2021

奥 拓明(バプテスト眼科クリニック)
日眼会誌125 : 22-29, 2021(1)
・PKP術後角膜感染症の発症率は0.2-4.9%、DSAEK術後層間感染症の発症率は0.92%と報告されている。層間部位以外のDSAEK術後感染症の検討やDSAEKとPKP術後角膜感染症の比較検討については報告がないため、角膜移植後角膜感染症発症症例について検討した。
・2007年8月から2018年9月までにバプテスト眼科クリニックで角膜移植術を施行し、1年以上の経過観察が可能であった症例を対象とした。 発症率、起炎菌(ヘルペスなどのウイルス感染を除く)、発症時期、発症部位、発症時の局所副腎皮質ステロイド使用状況、予後について比較検討した.
・DSAEK術後639眼(男性287眼,女性352眼,平均年齢7l.7±11.3歳,術後経過観察期間51.4±20.8か月)および PKP術後616眼(男性317眼、女性299眼,平均年齢63.6± 16.7歳、術後経過観察期間57.3±32.3か月)を対象とした。
・DSAEK術後角膜感染症発症率は11眼(1.7%)、PKP術後39眼 (6.3%)であり、 DSAEKのほうがPKPよりも有意に発症率が低かった(p<0.001)。
・DSAEKでは細菌1眼(グラム陽性桿菌),真菌8眼(Candida属4眼、酵母型真菌4眼),不検出2眼であり, PKPでは細菌11眼,真菌18眼(Candida属6眼、酵母型真菌12眼),不検出10眼であった。発症時期はDSAEKでは術後24.9 ± 25,4か月, PKPでは術後36.9 ± 34.8か月。
・発症部位はDSAEKでは上皮のみの4眼,上皮および実質5眼,実質の2眼、 PKPでは上皮のみの6眼,上皮および実質33眼であった。発症時の0.1% フルオロメトロンおよび0.1% ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼使用はDSAEKではそれぞれ4眼、7眼、 PKPでは18眼、 21眼であった。保存的加療による治癒後に2段階以上の視力低下を認めた症例はDSAEKで4眼(40.0%)、 PKPで19眼(51.4%)であった(p =0.39)。
PKP術後感染症の原疾患では格子状角膜ジストロフィが28眼中7眼(25%)と突出していた。これは、術後も上皮が脆弱のためと考えられた。
・DSAEKはPKPと比べ、術後感染症の発症は低かった。真菌感染が多いのは、角膜保存液内に抗真菌薬を含んでいないこと、保存液内で競合する細菌数が減少することにより真菌数が楠加することなどが考えられる。
DSAEK術後感染症は層間感染がよく知られているが、今回の検討では上皮部位での感染が多く、上皮欠損、上皮接着不良、
カルシウム沈着などを背景として感染症が発症する可能性が示唆された。(CH)

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