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その他のジャーナル

2023
94巻

点眼された薬物の後眼部及び全身への移行

その他のジャーナル 94巻(4号)2023

点眼された薬物の後眼部及び全身への移行
新家 眞
日本の眼科 94(4): 466-473, 2023
・強力な血管収縮作用を有するET-1(Endothelin 1)阻害作用をもつニプラジロール(ハイパジール)点眼はこの阻害作用を持たないチモロール点眼と違い、硝子体注射されたET-1による網膜血管収縮を部分的に阻害している。

・PG関連薬でもET-1阻害作用があり、その強さはタプロス点眼>トラバタンズ点眼=ラタノプロスト点眼である。
・作用経路は結膜嚢→テノン下腔・テノン嚢→球後組織→後部強膜→脈絡膜→網膜への経路である。
・炭酸脱水素酵素阻害剤はRPEに作用し、水の硝子体→脈絡膜への移送を増大させるため、エイゾプト点眼は黄斑部浮腫を軽快させている。
・前房から後房への薬物移行をブロックしているIris-lens diaphragmが消失したIOL眼ではエイベリス点眼が高率にCMEを発症するのもこの例である。
・視神経乳頭組織血流量はベトプチック点眼、ニプラジロール点眼、ラタノプロスト点眼、タプロス点眼、トラバタンズ点眼、カルテオロール点眼、ウノプロストン点眼後に有意に増加するが、α1刺激剤であるフェニレフリン点眼では低下する。
・結膜嚢には8μLの涙液があり、点眼1滴40μLのうち30μLは嚢内に留まり、30秒以内に80%(25μL)は鼻涙管を通して鼻腔内へ排出される。
・点眼後の血漿内濃度は全身投与後の数%であるが、全身的副作用に直結する受容体占有率は80~30と血漿内濃度比に対して、比較にならないほど高い。
・薬効を発揮する受容体占有率はアンタゴニストでは80%程度必要であるが、アゴニストでは5-10%程度で反応が生じると考えられている。

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