Rapid reduction of macular edema due to retinal vein occlusion with low-dose normobaric hyperoxia.
Arroyo JG et al(MA USA)
Graefe Arch Clin Exp Ophthalmol 259(8): 2113-2118, 2021
・網膜静脈閉塞症による黄斑浮腫に対する低濃度酸素治療の効果について検討した。
・酸素濃度40%としたfacemaskを3時間装着した効果をみた。
・5リットル/分で酸素マスクを使用すると酸素濃度は約40%となる。
・中心窩に浮腫がない症例は1ヶ月後に浮腫がでたときに酸素療法を行った。
・45名の症例では、非治療眼12眼と比較して、最高黄斑部網膜厚maximum macular thickness(MMT)は平均7.10%減少し(p<0.001)、中心黄斑厚CMTは平均4.64%(p<0.001)減少した。
・1か月後に治療した群でも有意に減少していた。
・この方法は簡単で安価であり、抗VEGF治療が無効あるいは適応にならない人に対する有効な治療である。(TY)
Intraocular pressure responses to walking with surgical and FFP2/N95 face masks in primary open-angle glaucoma patients.
Janicijevic D et al(China)
Graefe Arch Clin Exp Ophthalmol 259(8): 2373-2378, 2021
・COVID-19に対して効果的なマスクによる眼圧上昇について検討した。
・13例21眼のPOAGの患者にサージカルマスクあるいはFFP2/N95マスクを装着して400m歩いてもらい、眼圧変化を調べた。
・安静時にはマスク装着は眼圧に全く影響がなかった。
・運動時にはサージカルマスクやCtrlに比較して、FFP2/N95マスクは1-2mmHg程度の軽度だが有意に上昇していた(p<0.05)。
・軽度の運動は眼圧低下作用があるので、緑内障患者には勧められているが、高炭酸症が眼圧を上昇させることが報告されていることから、マスクのタイプや慢性肺疾患があるとか、心疾患があるとかにもよるが、マスクによってガス濃度とか呼吸時の抵抗などによって、眼圧が上昇する可能性は十分にあるだろう。(TY)
Preoperative ocular characteristics predicting the development of intraoperative floppy isis syndrome regardless of alpha-antagonist exposure status.
Safir M et al(Israel)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 259(5): 1209-1214, 2021
・IFISが発生する構造的なリスク因子について、2019/7-9のカルテを調査した。
・50歳未満、瞳孔径や前房深度に影響を及ぼす症例は除外して、394例394眼を調査。
・平均年齢72.48±8.63歳、女性が58.4%であった。
・18眼(4.6%)がIFISを発症し、そのうち7眼(38.9%)はα遮断剤の服用既往があった。
・IFIS発症例は非発症例よりやや高齢であった(78.1±6.7:72.2±8.6 p=0.005)。
・瞳孔径はIFIS群で有意に小さく(5.73±1.16:6.97±1.03mm p<0.001)、水晶体厚LTは有意に大きかった(4.93±0.42:4.49±0.42mm p=0.001)。
・前房深度は水晶体厚と逆比例し(r=-0.613 p<0.001)、瞳孔径と有意に相関していた(r=0.252 p<0.001)。
・単相関では前房深度はIFIS群で有意に浅かった(2.88±0.49:3.14±0.39mm p=0.008)(TY)
Is the axial length a risk factor for post-LASIK myopic regression?
Gab-Alla AA(Egypt)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 259(3): 777-786, 2021
・近視に対するLASIK後のmyopic regressionと眼軸長について2016/1~2018/1迄の1219例2316眼の症例について、1年経過観察できたものについて検討した。
・術前の屈折度は-4.3±2.1D(-0.5~-10.0D)、26.4±6.8才(21-50才)、女性が69.5%である。
・Myopic regressionは582/2316眼(25.12%)に発生した。
・内訳は6D以上の高度近視眼で52.6%、3Dまでの中等度近視眼で34%、3D未満の軽度近視眼で13.4%に発生した。
・Myopic regressionの発生した眼の眼軸長は26.6±0.73mm(26.0-27.86)、普遍であった眼では24.38±0.73mm (22.9-25.9)であった(p<0.001)。(TY)
Preoperative central macular thickness as a risk factor for psudophakic macular edema.
Doncel-Fernandez et al(Spain)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 259(1): 37-43, 2021
・白内障手術前の中心黄斑厚(CMT)と術後の嚢胞様黄斑浮腫CMEや黄斑部の網膜チストとの関連を調査した。
・CMEの発症リスクがなく、術中合併症のない179例で術前、術後1日、1M,3MでCirrus-OCTで黄斑部を調査した。
・術前のCMTは257.75±0.60μmで、1か月後は277.86±45.29、3か月後は267.86±20.17であった。
・10.34%で術後に網膜チストがあった。
・術前のCMTが260.5を越えた症例ではCMEを発症するリスクはbinary logistic modelでは、9.08倍であった。(TY)
Characteristics of dry eye patients with thick tear film lipid layers evaluated by a LipiView II interferometer
Yunjin Lee, et al. (Korea)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol (2021)(1) 259:1235–1241
・涙液の油層の厚さ(LLT)を測定したドライアイ患者(DED)の特性を調査する。
・LipiView II眼球表面干渉計(TearScience Inc. アメリカノースカロライナ)は、涙液膜の干渉計パターンを分析することにより、ナノメートルの精度で涙液層のLLTを自動測定できる。
・102人のDED患者(女性88人で、男性14人、平均年齢56.4±11.8歳)の合計201眼は、平均LLTに従って3つのグループに分類された。薄いLLT(<60nm、n = 49)、通常のLLT(60〜99 nm、n = 77)、厚いLLT(>100 nm、n = 75)。LLT、meiboscore(マイボーム腺の消失面積)、Schirmer Iテスト、涙液層破壊時間(TBUT)、眼表面染色(OSS)、およびドライアイ疾患特異的質問紙票(OSDI)を評価した(正常: 0-12点、軽症: 13-22点、中等症: 23-32点、重症: 33-100点)。
・OSSとTBUTは、通常のLLTグループよりも厚いLLTグループの方が有意に悪かった(それぞれp = 0.020とp = 0.028)。
OSDIは、薄いLLTグループよりも厚いLLTグループの方が有意に高かった(p = 0.006)。
Schirmer I値は、通常のLLTグループ(11.56±7.20 mm)の方が薄いLLT(10.44±7.20 mm; p = 0.99、)および厚いLLTグループ(10.59±8.64mm; p = 0.99)よりも高かった。
meiboscoreは3つのグループ間で違いはなかった(p = 0.33)。
・年齢、OSS、OSDIは、LLTと正の相関を示した(それぞれr = 0.16、p = 0.023; r = 0.213、p = 0.003;およびr = 0.338、p = 0.001)。角膜びらんのある眼は、ない眼よりも有意に高い平均LLT(p = 0.015)、高いOSDI(p = 0.009)、短いTBUT(p <0.001)、および短いシルマーI値(p = 0.024)を示した。
・以前の研究では、薄い涙液膜脂質層が涙液膜の不安定性と重度のドライアイ症状に関連していることが報告されていたが、今回の調査では厚いLLTのドライアイでは、涙液層の破壊時間が大幅に短く、染色スコアが高く、重度のドライアイ症状があることを示した。角膜びらんのある眼の平均LLTは、ない角膜よりも厚いことが明らかになった。厚い LLTは安定した生理学的状態と見なされるべきではないことを示唆している。(CH)
Intrastrolmal bevacizumab in the management of corneal neovascularization: a retrospetive review.
Gupta AA et al(MN USA)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 258(1): 167-173, 2020
・角膜移植の際、リスクの高い角膜深層の新生血管に実質内へbevacizumabを注入した14例14眼の長期成績について検討した。
・実質内へ0.05-0.1mlの2.5mg/0.1mlのbevacizumabを4~8週おきに1~3回注入した後に8例に角膜移植(全層6例あるいは深層表層移植2例)を行った。
・この8例の内、注射後に3例は新生血管は消失し、5例は中等度に緩解した症例である。
・全体の64.2%がヘルペス後のものであり、視軸にかかっていた例は50%で、傍中心が42.8%であった。
・注射後14.2%は完全緩解し、角膜移植は不要となった。
・21.4%では新生血管の変化はなかった。
・注射の副作用は3眼/14眼(21%)で発生した。
・2例は注射後の上皮剥離で自然緩解、1例は実質内出血で5週間で緩解。(TY)
Preoperative aniseikonia is a prognostic factor for postoperative stereopsis in patients with unilateral epiretinal membrane
Okamoto F, Morikawa S, Sugiura Y, Hoshi S, Hiraoka T, Oshika T(筑波大)
Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology 2020; 258, 743–749
DOI https://doi.org/10.1007/s00417-020-04625-8
【目的】
片眼性網膜上膜(ERM)患者における立体視とその他の視覚機能を調査し、立体視に影響を与える視覚関連パラメータを同定
【対象と方法】
・片側の特発性ERMに対して硝子体手術が予定された、連続63名を前向きに調査
・術前と術後6か月に、チトマスステレオテスト(TST)および TNOステレオテスト(TNO)による立体視、最高矯正視力(BCVA)、コントラスト感度、変視の重症度、不等像視の程度を調査
【結果】
・術前は、TSTスコアと変視症以外の視力関連パラメータの間、TNOスコアとすべての視力関連パラメータとの間に有意な相関が認められた
・重回帰分析では、術前のTSTスコアとTNOスコアは不等像視の程度と有意に関連(いずれもP<0.01)
・手術にて、立体視・BCVA・コントラスト感度・変視症は有意に改善したが、不等像視は改善せず
・術後、TSTはBCVAと有意に関連し、TNOはBCVAおよび不等像視と関連を示した
・術後のTSTおよびTNOスコアは、術前の不等像視と有意な相関(それぞれP < 0.005, P < 0.001)
【結論】
片側 ERM 患者の立体視障害は、網膜に起因する不等像視によるものであると考えられた。また、不等像視は手術では改善せず、術前の不等像視は術後立体視の予後因子となりうる.(MK)
Multimodal imaging for detecting metamorphopsia after successful retinal detachment repair.
Schawkat M et al(Switzerland)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 258(1): 57-61, 2020
・黄斑剥離のあった網膜剥離の成功した硝子体手術後の変視症について検討した。
・術後3,6週間後の視力、眼底写真、アムスラーチャート、SD-OCT、自発蛍光FAFを検査した。
・連続する49例50眼のうち、12眼(24%)で変視症を訴えており、その主因は網膜剥離治癒後の網膜偏位(p<0.001)と黄斑雛壁(p=0.03)であった。
・網膜偏位はFAF検査で陽性の過蛍光としてみられる網膜血管影像から判断した。(TY)
Incorrect sleeping position and eye rubbing in patients with unilateral or highly asymmetric keratoconus: a case-control study.
Mazharian A et al(France)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 258(11): 2431-2439, 2020
・左右差が強い円錐角膜(Unilateral or Highly Asymmetric Keratoconus:UHAKC)患者について、眼球の擦りと睡眠時体位について、33名の患者と64名のCtrl者にアンケート調査を行い、その結果を検討した。
・平均年齢はいずれも28歳から29歳である。
・アンケート内容は、円錐角膜の家族歴、眼球を擦るかどうか、寝る時の体位である。
・UHAKCに有意に多かったのは、単変数解析と多変数解析では、昼間の眼球擦り(OR=173とOR=135)、朝の眼球擦り(OR=24とOR=25)、KCが強い方の眼を擦る(OR=22とOR=28)、アレルギーがある(単OR=2.9)、朝充血がある(単OR=6.4)、腹ばいで寝る(OR=14とOR=65)、KCが強い方の眼を下にして寝る(OR=95とOR=144)であった。(TY)
Intraocular pressure increases during dynamic resistance training exercises according to the exercise phase in healthy young adults.
Vera J et al(Spain)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 258(8): 1795-1801, 2020
・下半身、上半身の筋肉トレーニングと眼圧変化について検討した。
・コンセントリック運動Concent:重力に逆らった運動、エキセントリックEccen:下ろす運動。
・運動中は有意に眼圧が上昇し(p<0.001)、特に、立ってバーベルを乗せてのバックスクワットのEccent運動や上腕2頭筋運動のConcent運動で眼圧上昇が強く、バックスクワットがより強かった(p<0.001)。
・筋肉のサイズが大きいほど、時間が長くなるほど強くなった。
・バックスクワットのEccent:15→30、Concent:15→20、上腕2頭筋のConcent:15→25、Eccent:15→22mmHgまで上昇。(TY)
A Trinity regimen with aflibercept for treatment-naïve neovascular age-related macular degeneration: 2-year outcomes
Wakuta M, Nomi N, Ogata T, Ota M, Yamashiro C, Hatano M, Yanai R, Tokuda K, Kimura K(山口大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 2020 Aug;258(8):1663-1670. doi: 10.1007/s00417-020-04745-1.
【目的】
未治療の新生血管加齢黄斑変性(nAMD)に対するTrinityレジメンの優位性を評価
【方法】
・未治療のnAMD患者31眼を対象に、TrinityレジメンによるAfribercept硝子体内注射(IVA)を行い、24か月後に評価
・再発の頻度に応じて、pro re nata(PRN)、treat and extend(TAE)、固定レジメンの3つの治療法を変更
・初回導入後、再発間隔に応じてPRNまたはTAE(4週または8週後で開始)を選択
・その後、絶えず再発する場合は、TAEから固定レジメンに移行
・再発頻度が不規則になった場合は、TAEに変更
【結果】
・初回治療後、
15眼(48.4%)がPRN群に、
12眼(38.7%)がTAE8週間群に、
4眼(12.9%)がTAE4週間群に割付け
・平均視力(logMAR)は、
ベースライン時0.53±0.40→24ヵ月時0.36±0.34(p<0.01)、
PRN群(0.63±0.46→0.42±0.43,p<0.01)、
TAE8週間群(0.44±0.29→0.27±0.19,p<0.05)において全例で有意に改善
・TAE4週間群のLogMARは維持
・PRN群、TAE8週群、TAE4週群の全平均注射回数はそれぞれ9.7回、5.3回、13.1回、15.8回であり、PRN群が有意に少なかった(p<0.01)
【結論】
Trinityレジメンは、PRN・TAE・固定レジメンの利点を提供しながら、視力低下なく治療初期段階での注射を最小限に抑えることができた。(MK)
Efficacy of bevacizumab injection after pterygium excision and limbal conjunctival autograft with limbal fixation suture.
Yang HK, Lee YJ, Hyon JY, Kim KG, Han SB.(Korea)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2020 Jul;258(7):1451-1457.
doi: 10.1007/s00417-020-04704-w. Epub 2020 Apr 24. PMID: 32333103.
【目的】
・翼状片切除術後の、結膜下ベバシズマブ注射の有効性を検討
【対象と方法】
・原発性の翼状片患者150名のうち、結膜切除後に3種類の手技を受けた患者をレトロスペクティブに比較
(A群)遊離結膜移植を行った49眼、
(B群)A群の方法に加えて輪部結膜固定縫合(を行った48眼、
(C群)B群の方法に加えてベバシズマブ結膜下注射を行った53眼
・術前の前眼部写真を用いて画像解析を行い、相対的な長さ・相対的な幅・相対的な面積・血管性指標などのパラメータを測定
【結果】
・1年後の再発率は、A群で18.4%(9/49)、B群で8.3%(4/48)、C群で1.9%(1/53)(P = 0.004)
・多変量解析の結果、
C群の患者はA群と比較して再発リスクが有意に低下した(P=0.009)のに対し、A群とB群では再発リスクに有意な差はなく(P=0.227)、B群とC群では再発リスクに有意差はなかった(P=0.068)、血管性指数が高いほど再発リスクの増加と有意な相関があった(P = 0.008)
【結論】
・遊離結膜移植および輪部結膜固定縫合とベバシズマブ注射の併用は、翼状片切除後の再発を効果的に減少させる可能性がある
・翼状片の血管性は再発リスクの高さと関連していた
*ベバシズマブはgraftの上・下・鼻側にそれぞれ1.25mg/0.05ml結膜下注(MK)
Diagnostic power of scleral spur length in primary open-angle glaucoma.
Li M et al(China)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 258(6): 1253 -1260, 2020
・POAGと正常眼とをscleral spur(強膜岬、強膜棘突起)の長さで鑑別できるかを検討した。
・78例78眼のPOAGと年齢、性、眼軸長をマッチさせた正常眼93例93眼で検討した。
・SS-OCTで調べたSS長は、POAG眼では正常眼に比して有意に短かった。
・測定法Ⅰでは164.91±23.36:197.60±25.32、測定法Ⅱでは145.15±16.59:166.95±19.31、測定法Ⅲでは162.33±22.83:185.12±23.58μm(いずれもp<0.001)。
・測定法Ⅰでは、シュレム管面積とSS長とは、POAGでも正常者でも有意に相関していた。
・SS長はPOAGと正常者を有意に区別しうる生体指標となりうると考えた。
・測定法Ⅰ:scleral spurを形成する強膜の前後中央部から棘突起先端までの距離(a)、Ⅱ:棘突起先端からシュレム管後壁へ下ろした垂線の距離(b)、Ⅲ:棘突起先端からSCの後端までの距離(C)、SS開口幅:SC後端からSS後端までの距離(d)、SC面積:freehandで描いたSCの面積。
・SSを形成する弾性線維は毛様体筋やTMの弾性線維と共にSC内壁周囲組織を形成しており、SSはSCを支える組織で房水流出能を支援する組織と考えられており、SS長が短いと毛様体筋が少なく、TMの接着も少ないことが知られている。
・このため、毛様体筋の収縮がSSを牽引する力が少なく、SC腔が十分開かない。
・ROC曲線(受信者動作特性曲線)での解析では、測定法Ⅰが最良。(TY)
Influence of epinephrine contained in local anesthetics on upper eyelid height in transconjunctival blepharoptosis surgery.
Matsuda H et al(慈恵医大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 258(6): 1287-1292, 2020
・94例164眼の経結膜眼瞼下垂手術時のエピネフリン含有麻酔薬の影響を検討した。
・10万倍エピネフリンが含有されている麻酔薬を使用したA群(108眼)と非含有薬を使用したB群(56眼)で調査した。
・角膜反射と上眼瞼縁距離:margin reflex distance 1(MRD-1)を局所麻酔薬使用前後(⊿MRD-1a)、手術前、手術中と手術3か月後(⊿MRD-1b)で調べた。
・⊿MRD-1aは使用群Aでは+(0.57±0.63mm)、非使用群Bでは-(-0.50±0.45mm p<0.001)、⊿MRD-1bは使用群Aでは-(-0.86±0.63 p<0.001)と有意に減少していたが、非使用群Bでは(-0.23±0.26 p=0.255)で有意差がなかった。
・エピネフリン非含有の麻酔薬を使用することが推奨される。(TY)
Influence of epinephrine contained in local anesthetics on upper eyelid height in transconjunctival blepharoptosis surgery.
Matsuda H, Kabata Y, Takahashi Y, Hanzawa Y, Nakano T. (慈恵医大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2020 Jun;258(6):1287-1292.
doi: 10.1007/s00417-020-04627-6. Epub 2020 Feb 26. PMID: 32103334.
【目的】
・局所麻酔薬に含まれるエピネフリンの上眼瞼高への影響を、腱膜性眼瞼下垂に対する経結膜修復術で検討
【対象と方法】
・94 例164 眼の腱膜性眼瞼下垂症患者をレトロスペクティブに研究
・局所麻酔薬に
1:100000000エピネフリンを添加した場合(A群、n=108)と、添加しない場合(B群、n=56)とによって群分け(1%リドカイン0.3mLを結膜円蓋部に注入)
・局所麻酔の前後、術前、術中、術後3ヶ月後にMRD-1を測定
MRD-1の変化a(∆MRD-1a)は麻酔前のMRD-1値から麻酔後のMRD-1の値を差し引いて算出、
∆MRD-1bは術中のMRD-1値から術後3ヶ月のMRD-1の値を差し引いて算出
【結果】
・∆MRD-1aはA群で正(0.57±0.63mm)、B群で負(-0.50±0.45mm;p<0.001)であった
・術後MRD-1は、A群では術中MRD-1に比べて有意に減少したが(P<0.001)、B群では術中・術後で有意差はなかった(P=0.255)
・A群の∆MRD-1b(-0.86±0.63)はB群のそれよりも有意に大きかった(-0.23±0.26;p<0.001)
【結論】
・エピネフリンは手術中にミュラー筋を刺激し、効果が消失した後の術後上眼瞼下垂を引き起こす
・エピネフリンを添加しない局所麻酔薬を使用することで、腱膜性眼瞼下垂症に対する修復術において術後上眼瞼高をより正確に推定できる可能性がある(MK)
Corticosteroid eyedrops induced blepharoptosis and atrophy of levator muscle.
Zhang X et al(China)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 258(5): 1081 1086, 2020
・ステロイド点眼の長期間使用による眼瞼下垂について検討した。
・少なくとも2カ月以上、片眼のみステロイド点眼使用歴のある46症例について、瞼裂、角膜反射と上眼瞼縁距離:margin reflex distance 1(MRD1)、挙筋機能を調査した。
・46眼中40眼では眼瞼下垂がみられた。
・46例のステロイド点眼使用眼と未使用眼のMRD1値は2.2±1.6:3.9±1.0mm(p<0.0005)、瞼裂幅は7.6±1.9:9.3±1.1mm(p<0.0005)、挙筋機能は12.5±2.2:13.4±2.2mm(p=0.003)であった。
・9眼は下垂手術を受け、組織所見は血管線維、脂肪細胞が多く、筋線維は少なくなっていた。(TY)
Clinical and ASOCT evaluations of ‘bleb-sparing epithelial exchange’ in paediatric and adult dysfunctional blebs over 5 years
Ramanjit Sihota et al (India)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 258(2):367-377, 2020
・レクトミー術後丈の高い菲薄化したブレブはリーク、感染の原因となる。encapsulated blebに対してブレブ上の結膜だけトリパンブルーを用いて上皮を識別し剥離。本体を残したまま健常な結膜を前転して被覆を行うことで対処
・5年以上前にBleb revisionを受けて定期フォローアップ中の患者51名51眼(うち22名が子供)
・Complete success(CS): IOP 6-18mmHg, w/o med.
・Qualified success(QS): IOP 6-18mmHg w/ ≧1 med.
・Revision迄の期間:paediatric 4.54 years, adult 6.48 years
・Revision前の眼圧:paediatric 6.38 mmHg, adult 6.51 mmHg p=0.86
・3M後の眼圧:11.81 and 12.75mmHg
・5Y後の成績
・CS: 68.18%(paediatric)、72.41%(adult)
・QS: 31.87%(paediatric)、27.59%(adult)
・No Failures
・Children: 18mmHg以下 95.45%, 15以下63.64%, 12以下50%
・Adults: 18mmHg以下 93.10%, 15以下65.52%, 12以下41.38%
・菲薄化したブレブのリビジョンの方法として長期的に安全で(15mmHg以下の)眼圧コントロールが可能な方法と考えられる(MM)
Near reading speed changes after panretinal photocoagulation in diabetic retinopathy patients: a prospective study using an iPad application for the measurement of reading speed.
Kim, J., Kim, J., Kim, K. et al. (Korea)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 257(12): 2631–2638 (2019).
【目的】
糖尿病網膜症(DR)患者における汎網膜光凝固術(PRP)後の読書速度の変化を調べる
【方法】
非ランダム化プロスペクティブ臨床試験、2016年1月から2017年6月までにPRPを受けたDR患者が登録
読書速度の評価に iPad アプリケーションを使用、 PRP 前と 1 週間後,1ヵ月後,4ヵ月後に近距離読書速度を測定
近距離最良矯正視力(BCVA)と中心窩下脈絡膜厚(SFCT)も分析
年齢をマッチさせた健常者とDR患者の読書速度を比較
【結果】
47人の患者が登録
DR患者のベースラインの読書速度は、年齢をマッチさせた健常者よりも有意に遅かった
読書速度はPRP後1週間で低下したが,PRP後1ヵ月と4ヵ月で回復
近見BCVAはPRP後に同様のパターンを示した
SFCTはPRP後1週間で増加し、1ヶ月と4ヶ月後で有意に低下
【結論】
DR患者の読影速度は、年齢をマッチさせた健常者よりも有意に遅かった
PRP後1週間で一時的に低下したが、これは副交感神経の短期的な障害によるものである可能性がある(MK)
Long-term regular exercise and intraocular pressure: the Hisayama Study.
Fujiwara K et al(九州大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 257(11): 2461-2469, 2019
・日本人で長期の規則的な運動と5年間の眼圧変動とを調査した。
・1871名(男性801、女性1070)についてNCTで眼圧を測定し、運動頻度と運動時間との間に関連があるかどうかを直線回帰で検討した。
・5年間の平均眼圧変動は-0.84±1.9mmHgであった。
・年齢、性、収縮期圧、糖尿病、コレステロール値、肥満度、喫煙、飲酒、基準時の眼圧などで調整した眼圧の変動値は、運動頻度(回/週)が増えても、運動時間(分/週)が増えても、有意に眼圧は低下していた(いずれもp<0.05)。
・年齢と性だけでの調整と、全ての変数を調整した場合、1週間の運動数が3~6回群では、性年齢調整群が-1.12mmHg (95%CI=-1.32~-0.92 p=0.002)、全変数調整群が-1.03(-1.79~-0.27 p=0.01)、1週間の運動時間が210分超群ではそれぞれ-1.14(95%CI=-1.35~-0.92 p=0.002)と-1.00(-1.77~-0.24 P-0.02)で有意に眼圧が低下していた。(TY)