福岡佐知子、中村友昭
IOL&RS 38(4): 560-583, 2024
・エンドトキシン(内毒素)はグラム陰性細菌の細胞壁成分であり、Toxic anterior segment syndrome(TASS)を引き起こすことがある。
・手術用滅菌手袋のエンドトキシン汚染について調査した所、4種類の手袋のうち3種類の手袋表面からエンドトキシンが検出されたが、手袋をエンドトキシンフリーの水で洗浄することにより、エンドトキシン量を減らすことができる。
・いったんエンドトキシン汚染が起こると、たとえ菌を死滅させてもエンドトキシンそのものは残存し、除去もしくは失活させることが困難である。
・失活させるためには250℃ 以上で30分以上の乾熱減菌が必要であり、通常の高圧蒸気減菌法ではエンドトキシン不活化率は89%であるとの報告もある。
・高圧蒸気減菌において、純水の使用は減菌プロセスの効率化と機器の保護において重要である。
・一般的な水に含まれるミネラル(例:CaやMg)は、蒸気生成時にオートクレーブ内部に蓄積すると、加熱効率が低下し、均一な滅菌を困難にし、TASSの要因となり得る。
・滅菌前の洗浄によって対象物の汚れが除去されることで、蒸気やガスが均―に浸透しやすくなり、減菌の効率が向上する。(TY)
Long-Term Risk of Steroid-Induced Ocular Hypertension/ Glaucoma With Topical Prednisolone Acetate 1% After Descemet Stripping Endothelial Keratoplasty
Marianne O. Price, et al. (IN USA)
Cornea 2024(3);43:323–326
目的:緑内障の既往のない患者において、酢酸プレドニゾロン1%点眼液の長期使用によるステロイド誘発性の眼圧上昇の長期リスクと緑内障治療の必要性を評価する。
対象と方法: DSEKを受け、移植片の拒絶反応を防ぐために酢酸プレドニゾロン1%点眼液を長期使用した緑内障の既往がない患者211人。
術後、酢酸プレドニゾロン1%点眼液を1日4回4ヵ月間点眼するよう指示し、その後1ヵ月ごとに1回ずつ漸減して1日1回点眼とし、眼圧が上昇しない限り無期限に継続した。主な転帰は眼圧上昇(眼圧24mmHg以上またはベースラインより10mmHg上昇と定義)と緑内障治療の開始であった。
眼圧をコントロールするために必要に応じて行われた方法は、緑内障点眼薬の投与開始、酢酸プレドニゾロン1%点眼液の中止、緑内障濾過手術(トラベクレクトミーまたはチューブシャント手術)。
結果:患者の平均年齢70歳(範囲:34~94歳)、平均経過観察期間7年(範囲、1~17年)。
術後1年、5年、10年の時点でのステロイド誘発眼圧上昇の累積リスクはそれぞれ29%、41%、49%だった。リスクは1日2~4回点眼していた最初の6ヵ月間で最も高く、その後は1日1回点眼が継続されるにつれて低下した。ステロイド誘発性の眼圧上昇は、拒絶反応エピソードを経験した眼でやや早く現れる傾向があった。緑内障治療を必要とするリスクは術後1年、5年、10年の時点でそれぞれ11%、17%、25%。緑内障の治療を受けた35眼のうち、28眼(80%)が点眼加療、7眼(20%)が濾過手術だった。
結論:酢酸プレドニゾロン1%点眼液を長期間使用した、緑内障の既往のないDSEKレシピエントの半数がステロイド誘発性の眼圧上昇を発症し、25%が緑内障治療を必要とした。1日1回点眼になっても、眼圧のモニタリングが必要である。角膜移植が必要な患者に対しては、長期的なステロイドの副作用を軽減するために、可能な限り拒絶反応のリスクの少ない移植方法を用いることが望ましい。(CH)
Fundus examination using a wide-angle viewing system and intraocular illumination through the corneal incision during cataract surgery: a case series.
Saito S et al(愛知医大)
Jpn J Ophthalmol 68(2): 112-116, 2024
・広角眼底観察システムと硝子体経由でない眼内照明を用いた新しい眼底観察方法を報告する。
・アトピー性皮膚炎に関連した白内障手術を行った連続13例(平均年齢26.8歳、9例が男性)で行った。
・超音波乳化吸引後に前後房を粘弾物質で満たし、27G眼内照明プローブを角膜切開創から前房に挿入し、広角眼底観察システム下で強膜圧迫しながら眼底周辺部を観察した。
・それで網膜裂孔や剥離が見つかったら処置を行い、最後に眼内レンズを挿入した。
・13眼中5眼(38%)で網膜裂孔がみつかり、そのうち2例(15%)は網膜剥離も発症していた。
・3眼は冷凍凝固処置を行い、網膜剥離を発症していた2例では強膜バックルを行った。
・手術時間は処置をしなかった症例では平均22分、冷凍凝固例では28分、バックル例では80分であり、合併症はなかった。(TY)
三村治(兵庫医大)
眼科手術 37(2): 175-180, 2024
・局所麻酔薬は全て多少とも外眼筋毒性を有しており、なかでもブピバカインは最も筋毒性が強い。
・筋内に注射すると低濃度でも外眼筋の肥厚・拘縮をきたし、長期あるいは恒久的な眼球運動障害や機械的斜視を起こす可能性がある。
・ボツリヌス毒素を注射した筋の拮抗筋に対して、斜視の非観血的治療として行うこともある。
・ブピバカインは眼科手術の局所麻酔薬として使用すべきではない。(TY)
Ocular Surface Disease in Patients With Atopic Dermatitis Treated With Dupilumab: A Prospective Case–Control Study
Paola Marolo, et al. (Italy)
Cornea 2024(2);43:221–227
2018年に承認されたアトピー性皮膚炎の治療薬であるデュピルマブは、炎症を引き起こす物質であるインターロイキン4とインターロイキン13の働きを抑えることで症状を改善する。
しかし、その一方で、デュピルマブによる眼表面疾患(dupilumab-induced ocular surface disease;DIOSD)という副作用が報告されている。
DIOSDは、結膜炎、角膜炎、眼瞼炎、ドライアイ、流涙など、さまざまな眼の症状を引き起こす。
目的:デュピルマブで治療された AD 患者の 6 ヵ月後の DED 有病率の変化を評価すること。
対象と方法: 2021年5月から12月の間にデュピルマブの投与が予定されていた中等症から重症のAD患者と健常者を対象とした。DED有病率、Ocular Surface Disease Index (OSDI)、涙液層破壊時間、涙液浸透圧、染色スコア、シルマー試験の結果をベースライン時、治療1ヵ月後、6ヵ月後に評価した。皮膚のEczema Area and Severity Index(湿疹面積と重症度指標)はベースライン時に評価された。
結果:デュピルマブ治療を受けたAD患者36人と健常対照者36人の72眼を対象とした。
DEDの有病率はデュピルマブ群でベースライン時の16.7%から治療開始6ヵ月後には33.3%に増加した(P = 0.001)のに対し、対照群では横ばいであった(P = 0.110)。6ヵ月後、デュピルマブ群でOSDIと染色スコアは増加し(8.5 ± 9.8 から11.0 ± 13.0へ、P = 0.068、0.1 ± 0.5 から0.3± 0.6へ、P = 0.050)、涙液層破壊時間とSchirmer試験は減少したが(7.8 ± 2.6秒から7.1 ± 2.7秒へ、P<0.001、15.4 ± 9.6mmから13.2 ±7.9mmへ、P = 0.036、)、対照群では変化はなかった。両群とも涙液浸透圧は変化しなかった(デュピルマブ群P = 0.987、対照群P = 0.073)。治療開始6ヵ月後で、結膜炎42%、眼瞼炎36%、角膜炎2.8%が認められた。重篤な副作用ではなく、デュピルマブを中止した患者はいなかった。湿疹面積および重症度指数とDED有病率との関連は示されなかった。
結論:デュピルマブ治療を受けたAD患者では、6ヵ月後にDED有病率が増加した。しかし、重篤な眼の副作用は認められず、治療を中止した患者はいなかった。
デュピルマブがIL-13をブロックすることでゴブレット細胞(粘液を分泌する細胞)が減少し、ムチン分泌低下と粘膜上皮バリア機能不全を引き起こす可能性や、Th2細胞(アレルギー反応に関与する免疫応答)の抑制によりTh1細胞(細胞性免疫に関与する免疫応答)が亢進することが関与している可能性が示唆された。(CH)
眼臨紀 17(1):20-25, 2024
蔵並藍他(東京女子医大)
・中心性漿液性脈絡網膜症CSCに対して、網膜光凝固治療後の漿液性網膜剥離SRD消失直後の視力低下と網膜視細胞外節PROSの伸長との関連を88例91眼(平均52.2歳)について検討した。
・LP後のSRD消失直後に視力が0.1以上低下した低下群12例12眼(13.2%)、不変群49例51眼(56.0%)、0.1以上改善した改善群27例28眼(30.8%)に分けて、LP後のPROS長を評価した。
・LP前視力は改善群で低下群、不変群より有意に不良であったが(p<0.05)、各群とも、LP前よりは有意に改善した(p<0.05)。
・LP時のPROS長は、低下群で11.7±4.0μで、不変群8.14±2.5、改善群8.04±2.2μより有意に延長していた(p<0.01とp=0.01)。
・PROS伸長があるCSCに対してLPを行うと、SRD消失直後に一過性視力低下おきたす可能性がある。
・SRDが遷延化すると、RPEによるPROSの代謝が阻害され、PROSが伸長すると考えられる。(TY)
Tajima A, Sassa Y, Ishio D, et al. Clinical features of 26 cases of COVID-19-associated conjunctivitis. Jpn J Ophthalmol 2024; 68: 57-63.
・佐賀県の好生館病院で2020年3月から2021年3月までの期間に新型コロナウイルス感染症で入院した患者282名の結膜炎の発症状況とその背景要因を調べた。
・282名中26名(9.8%)に結膜炎の発症があった。症状としては結膜充血のみがほとんどで、眼瞼腫脹を来した者が2名、眼痛、眼掻痒感、眼脂が各1名だった。
・26名中新型コロナウイルス感染症発症時に結膜充血のあった者は4名だったが、実際にこれが単独の初発症状だったかどうかは本文からは読み取れなかった。また、新型コロナウイルス感染症発症から結膜炎所見出現までの期間は平均3日間(1~5日)だった。
・結膜炎の発症と新型コロナウイルス感染症の重症度とは関連性がなかったが、結膜炎のない患者と結膜炎のある患者を比較すると、平均年齢は51.00歳に対しては35.00歳、男性の割合は51.6%に対して77.8%、喫煙者20.3%に対して44.4%で、若年、男性、喫煙の3つが結膜炎発症の要因として有意であった。(KH)
依藤彰記、細谷友雅、岡本真奈他. ブリモニジン点眼液使用経過中に発症した角膜実質炎の3例. 眼科2019; 61: 1527-1533.
篠崎友治、溝上志朗、細川寛子他. ブリモニジン関連角膜実質混濁の臨床経過~自験3症例からの考察. あたらしい眼科2024; 41: 82-88.
・世界で初の報告は”Maruyama Y, et al. Cornea 2017; 36: 1567-1569” である。
・海外での報告例はほとんどなく、2024年4月現在、Purgert RJ, et al. Can J Ophthalmol 2020; 55: e172-173. があるのみ。なぜ日本ばかりが多いのかは不明。海外の方がブリモニジンの濃度が濃く(一般に0.2%、わが国は0.1%)、添加物にも差異はない。
・臨床的特徴としては、①長期間のブリモニジン使用歴、②角膜周辺部に生じる、③実質深層への血管侵入を伴って角膜浸潤をきたすが上皮欠損は伴わない、④経過が長くなると脂肪変性をきたす、⑤発症前または発症時に顕著な充血がある、⑥ステロイド薬で浸潤は消退するが沈着や瘢痕による混濁は残る。
・機序としては、ブリモニジンの組織移行性が高く、角膜実質に移行して何らかの免疫反応(III型アレルギー反応?)をきたしているのではないかと考えられる。(KH)
Tsukahara-Kawamura T, Hanaoka N, Uchio E. Evaluation of anti-adenoviral effects of the polyvinyl alchol iodine ophthalmic solution. Jpn J Ophthalmol 2024; 68: 64-69.
・ヒトアデノウイルスは眼、呼吸器、消化管、尿路等への感染が知られており、これらの原因として報告されている16型(HAdV-1, -2, -3, -4, -5, -6, -7, -8, -11, -37, -53, -54, -56, -64, -81, -85)に対するPVA iodine(サンヨード)の抗ウイルス効果を検討した。
・in vitroでの検討で16型すべてにおいて殺ウイルス効果(virucidal effect)が確認された。
・ちなみに、ヒトアデノウイルス(HAdV)はアデノウイルス科マストアデノウイルス属(mastadenovirus)に属する。エンベロープを持たない2本鎖DNAウイルスで、現時点で7種(A~G)の亜属に、さらに血清型によって現在は100を超える型が報告されている。
・EKCの原因となるのはHAdV-D (-8, -37, -53,-54, -56, -64, かつては-19aも)およびHAdV-E (-4)が知られている。
・咽頭結膜熱(PCF)の原因としてはHAdV-B (-3, -7)が挙げられている。(KH)
A novel bleb revision technique: lining with tenon’s patch graft for treatment of large, ischemic, leaking blebs with severe conjunctival scarring after trabeculectomy.
Akagi T, et al
Jpn J Ophthalmol. 68(1):32-36. 2024
目的:線維柱帯切除術後に結膜の可動化が困難で、重度の瘢痕を伴う大きな虚血性ブレブからの遅発性漏出に対して、テノン嚢移植を用いた新しいブレブライニング法を報告する。
方法:症例シリーズをレトロスペクティブに調査し、対象は大きな虚血性ブレブからの遅発性漏出が見られた6例。
具体的な方法は、小さなテノン嚢組織を切開部位から切除し、ブレブの漏出領域までの通路を作成するためにブレブナイフまたはマイクロはさみを使用し、インドシアニングリーンで染色したテノン嚢組織を虚血性ブレブの結膜の下に挿入し、漏出部位を横切って結膜経圧迫縫合を施し、テノン嚢移植の位置を固定した。
結果:すべての症例において術後すぐにブレブ漏出が完全に封鎖され、4例では術後6~17か月の追跡期間中にその状態が維持された。
2例においては、術後7か月または9.5か月で異なる漏出点から再発したが、テノンパッチライニングの繰り返し修正により正常に封鎖された。
最終的な診察時の眼圧は、緑内障薬や追加の緑内障手術なしで5~13 mmHg(中央値10 mmHg)した。
結論:テノンパッチライニング法は、大きな虚血性ブレブと結膜可動化が困難なブレブ漏出に対して有望な治療法である。(KK)
Incidence of Graft Rejection in Descemet Membrane Endothelial Keratoplasty After COVID-19 mRNA Vaccination
Ami Igarashi, et al. (日本大学)
Cornea 2023(10) ; 42:1286–1292
・目的:mRNA ワクチンであるCOVID-19 ワクチン接種後のデスメ膜角膜内皮移植術 (DMEK) の拒絶率を調査する。
・DMEKは低侵襲手術であり、拒絶反応率も低い。しかし、COVID-19の世界的流行後に拒絶反応の症例が報告されている。
・このワクチンには予防効果があるにもかかわらず、心筋炎、ギラン・バレー症候群、自己免疫性筋炎などの全身性の副作用の報告がある。
・このような炎症の影響がCOVID-19ワクチン接種と角膜移植後の拒絶反応に関する免疫耐性に関与している可能性があるという仮説を立てた。
・対象と方法:2006年1月から2020年12月までにDMEKを受けたアジア人患者210例のうち基準を満たした198例(非接種124例、接種74例)を対象とした。
・ワクチン接種群は、2021年にCOVID-19ワクチンを1回以上接種した患者とした。
・角膜移植片拒絶反応は、角膜浮腫、前房炎症、拒絶線、角膜血管新生、周辺虹彩前癒着、角膜浮腫の有無に関わらず新たな内皮沈殿物が生じたものと定義した。
・結果:拒絶反応は198例中6例(非接種群1例、接種群5例)認められ、移植片不全に至った症例は5例(接種群5例6.7%)で、全例再移植を要した。
・パンデミック期以前の過去の報告によると、DMEK後の移植片拒絶反応のリスクは1%と低く、拒絶反応後の再移植の必要性はさらに低かった。
・結論:これまでの報告では、mRNA ベースのワクチンが体液性免疫応答と細胞性免疫応答の両方を活性化することが示されている 。
・mRNA ベースのワクチンは角膜内皮細胞とウイルス抗原の間の交差反応を誘発する。
・その結果、インターフェロン ガンマなどのサイトカインのレベルが上昇し、免疫抑制性の眼内微小環境に影響を与える可能性がある。
・COVID-19 mRNAワクチン接種がDMEKにおける角膜移植片拒絶反応率を上昇させる可能性を示唆している。
・ワクチン接種を受ける前に、患者にこのような影響の可能性について説明し、典型的な症状について警告しておく必要がある。(CH)
Why not to pick your nose: Association between nose picking and SARS-CoV-2 incidence, a cohort study in hospital health care workers.
Lavell AHA, Tijdink J, Buis DTP, Smulders YM, Bomers MK, Sikkens JJ (Nigeria)
PLoS ONE 2023; 18(8): e0288352. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0288352
【目的】
病院の医療従事者(HCW)はSARS-CoV-2に感染するリスクが高い
特定の行動的・身体的特徴とSARS-CoV-2感染の発生率との関連を評価
【対象と方法】
オランダの2つの大学病院で404人のHCWを対象
パンデミックの第1期にSARS-CoV-2特異的抗体を前向きに測定
行動的特徴(鼻をほじること、爪をかむこと)と身体的特徴(眼鏡をかけること、ひげを生やすこと)に関するレトロスペクティブ調査
【結果】
219人のHCWが調査に回答(回答率52%)
2020年3月から2020年10月までの追跡期間中に、34/219人(15.5%)がSARS-CoV-2血清陽性
HCWの大多数(185/219、84.5%)が、少なくとも1回は偶発的に鼻をほじると回答し、頻度は月1回、週1回、毎日とさまざま
SARS-CoV-2発症率は、鼻をほじるHCWでは、鼻をほじらないHCWと比較して高かった
(32/185人:17.3% vs. 2/34人:5.9%、OR 3.80、95%CI 1.05~24.52)
爪かみ、眼鏡の着用、ひげの有無とSARS-CoV-2感染との関連は認められなかった
*眼鏡の着用はOR0.49(95%CI 0.23-1.06)とmarginal significance
【結論】
HCWの鼻ほじりは、SARS-CoV-2感染のリスク上昇と関連している。医療施設は、教育や感染予防ガイドラインにおける鼻ほじりの推奨の実施など、より多くの認識を持つことを推奨する。(MK)
堀口浩史(慈恵医大)
日本の眼科 94(7): 860-861, 2023
・Liu A et al. Encoding of environmental illumination by primate melanopsin neurons. Science 379:376-381,2023の紹介。
・マカクサルのipRGCの個々は対数で2.7±0.83の輝度範囲で反応するが、ipRGCの集団としては対数で5.2の輝度範囲をカバーしている。
・錐体細胞の神経順応と同じような性質を持っている。(TY)
Ab Externo SIBS Microshunt with Mitomycin C for Open-Angle Glaucoma
Three-Year Results as a Primary Surgical Intervention. Retrospective, interventional case series
James J. Armstrong, Iqbal Ike K. Ahmed. et al, Ophthalmology Glaucoma6(5),480-492: 2023
・2015年7月から2017年11月に一人の術者が、濾過手術や上脈絡膜シャント手術、網膜手術や角膜移植手術、CPCを受けていないPOAGにPreserflo単独手術を実施し少なくとも1ヶ月以上経過観察した症例135名252眼。
・3年間のフォローアップ率は75.5%
・42%女性、55%白人、58%ベースライン眼圧21mmH以上, 術前IOP20.0mmHg, 点眼数4
・Primary outcome:3年後のComplete successの割合
・術後1ヶ月以内の点眼や眼圧異常、フォロー中のニードリングは不成功とはカウントせず。
・Surgical revison, 再手術、光覚喪失はその時点で不成功
・Complete success: 2回連続で17mmHgを超えない、臨床的低眼圧(ベースラインから2段階以上の視力低下をきたす6mmHg未満の眼圧)、術前眼圧から20%以上の眼圧、眼圧下降薬なし
・Qualified success: 眼圧下降薬あり
・Surgical revision: 結膜を開いて瘢痕組織除去(MMC併用)
・Secondary outcome:点眼有無、20%眼圧下降の有無による14mmHgまたは21mmHgを閾値とした眼圧、不成功のリスク因子、平均眼圧・点眼数、術後介入、合併症、再手術
・結果:Complete success: 55.6%
・Qualified success: 74.8%
・点眼再開まで平均16.9ヶ月、59.4%は術後3年で点眼フリーであった
・不成功のリスク因子:<0.4%mg/mlのMMC使用(HR 2.42)、ベースラインIOP 21mmHg未満(HR1.79),
・合併症: 脈絡膜剥離7%, 前房出血 5%, 浅前房 5%
・Needling: 15.1% 術前眼圧が21mmHgより大きい場合より頻度が高い(HR3.21)
・Surgical revision: 7%, 再手術: 2.6% MMC濃度が0.4mg/ml未満ではより高頻度(OR 4.9)
・術後3年の平均眼圧12.4mmHg(IQR 10-15.5) 点眼数 0(IQR 0-2)
・点眼フリー:59.4%
・カットオフ 6mmHg-14/17/21mmHでの CS: 62.5%/71.7%/73.0%、QC: 77.6%/81.6%/84.2%
・MMC濃度
0.4mg/ml未満 術後3年の眼圧中央値14mmHg(11-16) 点眼数1(0-2)
0.4mg/ml以上 術後3年の中央値12mmHg(10-14),点眼数 0(0-1)
・結論:MMC濃度を0.4mg/ml以上で使用すると、CS,QSの割合が高く、合併症が少なく、術後点眼、手術介入、通院回数も少ない(MM)
Assessment of myopic rebound effect after discontinuation of treatment with 0.01% atropine eye drops in Japanese school‐age children
Osamu Hieda, et al. (京都府立医大)
Jpn J Ophthalmol. 2023 Sep;67(5):602-611.
・目的:近視の進行抑制を目的とした0.01% アトロピン点眼を中止した後に、近視のリバウンドが生じるかどうかを検討した。
・対象と方法:167名の学童を対象に、アトロピンまたはプラセボによる2年間の治療を終了した1ヵ月後および12ヵ月後の等価球面(SE)および眼軸長(AL)の群間変化を比較した。
・結果:治療中止1ヵ月後に149人、中止12ヵ月後に51人の追跡測定が可能であった。
・治療後1ヵ月の時点で、SEおよびALのアトロピン群とプラセボ群の治療前登録からの差は、それぞれ0.18D(95%CI:0.04、0.32;P = 0.01)および-0.10mm(95%CI:-0.17、-0.04;P = 0.003)で、治療中止1ヵ月後もアトロピン群の方がプラセボ群よりも有意に抑制されていた
・2年間の治療終了後からの1ヵ月後のSEとALのアトロピン群とプラセボ群の群間差は、それぞれ-0.06D(95%CI:-0.21、0.08;P = 0.39)と0.02mm(95%CI:-0.05、0.08;P = 0.60)であった。治療後12ヵ月のSEとALの群間差は、それぞれ-0.13D(95%CI:-0.35、0.10、P = 0.26)と-0.02mm(95%CI:-0.12、0.09、P = 0.75)で、変化はなかった。
・結論: 2年間で得られた抑制効果は12ヵ月後も維持されたことから、近視のリバウンドは起こらなかったと考えられる。
・アトロピン点眼薬は脈絡膜を厚くすることが知られている。治療を中止すると、アトロピンで厚くなった脈絡膜厚が減少し始め、その結果、眼軸の伸長し近視のリバウンドを引き起こす可能性がある。アトロピンの濃度が高いほど脈絡膜の変化が大きくなるが、0.01%アトロピン点眼を中止しても近視のリバウンドが起こりにくいのは、アトロピン濃度が低いため脈絡膜への影響が少なく、治療中止後も脈絡膜の厚さが変わらないためかもしれない。(CH)
Long-term effect of using hard contact lenses on corneal endothelial cell density and morphology in ophthalmologically healthy individuals in Japan
Takeshi Ono, et al. (宮田眼科病院)
Scientific Reports 2023(5); 13: 7649.
・目的:健康な日本人を対象に、HCLの長期使用が角膜内皮細胞密度(ECD)と形態に及ぼす影響を解析した。
・対象と方法:4302例8604眼(男性:女性=837:3465)を対象とした。平均年齢35.6±10.0歳、HCLの平均使用期間は14.7±9.1年(1~50年)であった。
・使用したHCLの種類については、ポリメチルメタクリレート(PMMA)レンズ使用は18人中36眼、低Dk(酸素透過性)レンズ(Dk<60)357人中714眼、高Dkレンズ(Dk≧60)410人中820眼。その他の患者(7034眼)は複数の種類のHCLを使用していた。
・結果:ECDの加齢変化の影響を検討するために多変量解析を行ったところ、ECDは年齢と有意に相関したが(P<0.001)、使用期間とは相関しなかった。
・しかし、変動係数(CV)と六角形細胞出現率(6A)は年齢と使用期間の両方に有意に関連していた(P<0.001)。
・男性と高年齢がECD(ともにP<0.001)とCV(それぞれP=0.04と<0.001)に有意に関連していた。
・また、高年齢は6A(P<0.001)にも有意に関連していた。
・単変量解析の結果、CVと6Aは使用期間と相関していた(すべて、P<0.001)。
・HCL使用1年あたりのECDの変化は、低Dk群で-5.42(95%信頼区間、-6.88から-3.96)cells/mm2、高Dk群で-5.05(95%信頼区間、-6.64から-3.45)cells/mm2であった。
・結論:HCLの使用は角膜低酸素症を引き起こし、乳酸の蓄積、CO2濃度の上昇、細胞のpHの変化をもたらす。
・細胞でのこれらの持続的な変化は、形態学的変化、多形性(6Aの減少、CVの増加)をもたらす。
・年齢の影響を考慮した多変量解析では、HCLの使用年数がECDに直接影響しないことが示された。
・角膜内皮細胞の形態も加齢とともに変化するが、これらの変化を考慮した後でも、HCLの長期使用は角膜内皮の6AとCVに関連していた。
・したがって、HCL長期装用者の角膜内皮形態をモニターすることは重要である。(CH)
Alcohol Abuse Is Associated With Alterations in Corneal Endothelial Cell Morphology
Ranit Karmakar, et al. (US MD)
Cornea 42(4): 444-448, April 2023.
・目的:アルコール依存が角膜内皮形態の変化に関連しているかどうかを検討した。
・対象と方法: アイ バンクからの5624眼の角膜内皮密度(ECD)、変動係数 (CV)、六角形細胞出現率(HEX)を測定した。また患者の病歴は医療記録からアルコール依存症またはその後遺症が存在するかどうかを調査した。
・結果:5624 眼のドナーの平均ECDは 2785 (383.0) cell /mm2 だった。
・アルコール依存の指標は、1382 眼(24.5%)のドナーに存在した。
・1113 眼のドナー (19.8%) には喫煙歴、1271眼のドナー (22.6%) には糖尿病、および 585 眼のドナー (10.4%) は眼内レンズ眼であった。
・アルコール依存症の既往があるドナーは既往のないドナーと比較して、ECDは約 60.9 cell /mm2 の減少を示した (95% 信頼区間 (CI)、-83.0 ~ -38.7 cell /mm2、P = 7.6 × 10-8)。
・またCVが 0.0048 (95% CI、0.17–0.79、P = 0.002) 増加し、HEXが 0.93% 減少 (95% CI、-1.3 ~ -0.6、P = 4.5 × 10-7) していた。
・この研究の対象眼では、喫煙歴と白内障手術もそれぞれ内皮細胞数の減少に関与していることが分かり、ECDの減少はそれぞれ 36 (P = 0.003) および 88 cell /mm2 (P = 8.7 × 10-8) だった。
・結論:アルコールからアセトアルデヒドへの変換は、角膜内皮への直接的な細胞毒性をもたらす可能性があると仮定されている。
・また、アルコール依存による栄養失調や代謝変化を検討しなければならない。
・この研究では、ECDの減少に加えて、CV とHEX 値にもアルコールの大量摂取による変化が生じることを示唆している。(CH)
Occurrence of Herpes Viruses in Morphologically Normal Corneas
Eleanor N. Nche, et al. (Israel)
Cornea 42(4): 412-415, April 2023.
・目的:ヘルペスウイルスによる角膜移植不全は再移植の原因の 1 つであり、感染がドナー組織に由来するのか、レシピエントの再活性化された潜伏ウイルスに由来するのかについては議論されている。
・ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) を使用して、移植片の単純ヘルペス ウイルス (HSV) 1 型および 2 型と水痘帯状疱疹ウイルス (VZV) DNAを検出し、関連を調査する。
・対象と方法:88眼 の強角膜片(平均年齢65 歳 )からのサンプルは、結膜、虹彩、および角膜内皮から採取され、PCR を使用して HSV-1、HSV-2、および VZV DNA についてテストされた。
・移植されたすべての症例を追跡調査した。
・全眼B 型肝炎、C 型肝炎、および HIVの感染を調べた。
・またCOVID-19 パンデミックの間のドナーは、鼻咽頭スワブから COVID-19 の PCR 検査を受けた。陽性のドナーは除外された。
・移植片はDMEK (59.1%)、PKP (38.6%)、 DLKP (2.3%)に使用された。
・結果:HSV-1は5 眼 (5.7%) で検出されたがHSV-2 は検出されなかった。
・VZV 1 眼(1.2%) で検出された。
・移植片陽性のレシピエントの平均年齢は 80 歳 (22 ~ 97 歳)、移植までの平均日数は 6.5 日、平均 ECD 2677.5 cell /mm2 だった。
・全例ヘルペス性眼疾患の既往歴はなかった。
・1人のレシピエントは、移植後12か月で樹状上皮症とHSVに典型的な角膜炎を発症したが、移植片は治療後も透明性を保っていた。
・結論:形態学的に正常なドナー角膜は、特に HSV-1 に対して PCR 陽性である可能性がある。
・ヘルペス陽性角膜移植片のレシピエントは、ヘルペス性眼疾患のリスクにさらされる可能性があるため、長い経過観察が必要である。(CH)
点眼された薬物の後眼部及び全身への移行
新家 眞
日本の眼科 94(4): 466-473, 2023
・強力な血管収縮作用を有するET-1(Endothelin 1)阻害作用をもつニプラジロール(ハイパジール)点眼はこの阻害作用を持たないチモロール点眼と違い、硝子体注射されたET-1による網膜血管収縮を部分的に阻害している。
・PG関連薬でもET-1阻害作用があり、その強さはタプロス点眼>トラバタンズ点眼=ラタノプロスト点眼である。
・作用経路は結膜嚢→テノン下腔・テノン嚢→球後組織→後部強膜→脈絡膜→網膜への経路である。
・炭酸脱水素酵素阻害剤はRPEに作用し、水の硝子体→脈絡膜への移送を増大させるため、エイゾプト点眼は黄斑部浮腫を軽快させている。
・前房から後房への薬物移行をブロックしているIris-lens diaphragmが消失したIOL眼ではエイベリス点眼が高率にCMEを発症するのもこの例である。
・視神経乳頭組織血流量はベトプチック点眼、ニプラジロール点眼、ラタノプロスト点眼、タプロス点眼、トラバタンズ点眼、カルテオロール点眼、ウノプロストン点眼後に有意に増加するが、α1刺激剤であるフェニレフリン点眼では低下する。
・結膜嚢には8μLの涙液があり、点眼1滴40μLのうち30μLは嚢内に留まり、30秒以内に80%(25μL)は鼻涙管を通して鼻腔内へ排出される。
・点眼後の血漿内濃度は全身投与後の数%であるが、全身的副作用に直結する受容体占有率は80~30と血漿内濃度比に対して、比較にならないほど高い。
・薬効を発揮する受容体占有率はアンタゴニストでは80%程度必要であるが、アゴニストでは5-10%程度で反応が生じると考えられている。
山田明子、堀寛爾、松井孝子、亀山尚美、清水朋実(国立障害者リハビリテーションセンター病院)
臨眼 2023; 77(4) : 491-498
80代男性
強度・病的近視
他院での白内障手術後、術前に裸眼での接近視や拡大鏡(24D)の併用で可能であった読み書きに困難を訴え受診
矯正視力:【術前】左右とも0.01【術後】右0.04左0.03
屈折値(等価球面値):【術前】右−20.00D,左−18.25D【術後】 右−0.75D,左−0.375D
術前のように接近視可能な眼鏡の処方を強く希望
+20Dメガネ⇒作業空間が狭いため書字ができない、読みにくい
+10D以下メガネ⇒見えない文字が多く使いにくい
拡大読書器⇒接近視の希望が強く、選定に難渋
複数回の試行で両眼+11.25Dのハイパワープラスレンズ眼鏡を処方し、近見作業困難が改善
【結論】
強度近視で得られていた最大視認力を、術後に眼鏡によって再現するには限界があることがわかった。術後もロービジョンとなる可能性のある強度・病的近視症例の白内障手術では、術前の最大視認力を考慮した近視を残した術後屈折値の選択が必要なことが示唆された。
*強度近視の白内障手術:
視力改善が望める⇒術後に軽度近視や正視でも満足度↑の可能性
裸眼接近視に慣れている症例⇒軽度・中等度近視の方が満足度上がる(高良ほか,臨眼2003)
視力改善が困難⇒術後-5Dくらいがベター(高良、眼科臨床プラクティス2006)
遠方合わせ⇒術直後は喜ばれるが、やがて近くが見にくいと不満(林、眼科2018)
*白内障術後のロービジョン患者:近見用視覚補助具の処方なし群が処方あり群と比較して低視力・高齢であるとの報告(清水ほか、臨眼2013)(MK)