Detection of glaucoma and other vision-threatening ocular diseases in the population recruited at specific health checkups in Japan.
Yamada M, Hiratsuka Y Nakano T et al(Jpn): Clin Epidemiol 12: 1381-1388, 2020
・3つの自治体の16眼科施設で、2017/6~12月に、特定健診時に眼科検査を行なって緑内障有病率を調査した。
・対象者は1360名、年齢63.7±8.7歳(40-74歳)である。
・緑内障は168名(12.4%)、前視野緑内障は33名(2.4%)、症状のある白内障は77名(5.7%)、黄斑前膜39名(2.9%)などであった。
・緑内障のうち81.0%がNTG、12.5%がPOAGであり、年齢とともに有病率は高くなり、また、女性よりも男性の有病率が高かった。
・緑内障168名のなかで、既に診断を受けていた人は37名(22.0%)、新規に見つかった人は131名(78.0%)であった。
Incidence of endophthalmitis after intravitreal injection of an anti-VEGF agent with or without topical antibiotics.
Morioka, M., Takamura, Y., Nagai, K. et al. (福井大)
Sci Rep 10, 22122 (2020). https://doi.org/10.1038/s41598-020-79377-w
抗VEGF薬の硝子体注射(IVI)を受けた患者の記録をレトロスペクティブに分析
多施設共同研究(18施設)
ほとんどの施設でマスク、滅菌手袋、ドレープを使用
147,440眼、眼内炎の発生率は0.007%であった:
抗菌薬不使用で0.005%、
注射前のみ抗菌薬投与で0.009%、
注射後のみ抗菌薬投与で0.012%、
注射前後に抗菌薬投与で0.005%であった
4群間に統計学的有意差なし(カイ二乗検定、p=0.57)。
眼内炎を発症した10眼のうち9眼は局所抗生物質の投与を受けていた
感染眼はすべてプレフィルドシリンジではないアフリベルセプトによるIVIであった
複数回のIVIを受けた4例では、原因菌の検出から使用した抗生物質に対する耐性あり
【結論】この大規模な集団から得られたデータは、抗生物質の投与の有無にかかわらず、抗生物質の予防投与はIVI後の眼内炎の発生率を減少させないことを示唆している。(MK)
依藤 彰記、岡本 真奈、 粕本 愉美、五味 文(兵庫医大)
眼科 2019: 61 (13) 1527-1533
・ブリモニジン酒石酸塩点眼液(アイファガンⓇ,以下BT)の主な副作用として結膜充血,アレルギー性結膜炎などがあるが,角膜炎の報告は少ない
・BT使用の経過中に発症した角膜実質炎3例の報告
【症例1】62歳女性。4年前から両眼にBTならびに緑内障治療薬2剤を使用。右眼鼻下側角膜周辺部に実質深層の密な新生血管を伴う濃厚な半円状角膜混濁と結膜充血を認めた。副腎皮質ステロイド薬点眼と抗ヘルペス薬を使用し,BTを中止した。混濁は軽減したが残存し,矯正視力0.8と低下した。抗ヘルペス薬は中止したが再燃はない。
【症例2】79歳女性。6年前から両眼にBTほか2剤を使用。左眼鼻下側角膜周辺部に実質深層の新生血管を伴う濃厚な弧状角膜混濁を認めた。副腎皮質ステロイド薬点眼と抗ヘルペス薬を使用し,BTを中止した。混濁は軽減したが残存した。視力低下は認めなかった。
【症例3】76歳男性。3年前から両眼にBTとヒアルロン酸点眼液を使用。左眼耳下側角膜周辺部に実質深層の密な新生血管を伴う濃厚な半円状角膜混濁と結膜充血,濾胞を認めた。副腎皮質ステロイド薬点眼を使用し,BTを中止した。混濁は軽減したが残存した。
【結論】
・全例BT使用中に出現した角膜炎であること、角膜ヘルペスの既往はないこと、実質深層の新生血管を伴う角膜周辺部病変で,既報の所見*に類似していることから、BTが発症に関与した可能性のある角膜実質炎と診断した
・緑内障治療中の患者に周辺部角膜実質炎をみたら,BT使用歴の確認も必要である
【ポイント】
・本報・既報ともBT使用開始後数年経過してからの発症
・片眼発症、濾胞性結膜炎との関連みられず
・発症機序不明
・ステロイド点眼にて新生血管は消退するも角膜混濁は残存
*Manabe Y, et.al. Eur J Ophthalmol 2019 May 17: doi: 10.1177/1120672119850080(MK)
Outcomes of Descemet Stripping Endothelial Keratoplasty in Eyes With Pars Plana Versus Anterior Chamber Glaucoma Drainage Devices
Joann J. Kang, (NY, USA)
Cornea 2019(11);38:1364–1369
目的:前房タイプ(AC)または毛様体扁平部(PP)タイプの緑内障ドレナージ装置(GDD)のある症例に角膜内皮移植術(DSEK)を施行し、術後結果を比較する。
対象と方法:2007年1月から2017年12月の間に、GDDの存在下でDSEKを受けた患者83人85眼で、合計122回DSEK を行なった。
ACチューブ37眼、PPチューブ48眼、平均年齢71.1(SD = 13.4)歳
原因疾患はフックス角膜内皮変性症、他の角膜移植後の移植片不全だった。
結果:術前平均視力 AC グループ1.50 LogMAR、 PPグループ1.37 LogMAR(P = 0.36)、術後平均視力 AC グループ0.88 LogMAR、 PPグループ1.20 LogMAR(P = 0.06)と改善した。
ACグループ:視力の改善70.3%、不変10.8%、低下18.9%。 PPグループで視力改善54.2、不変16.7%、悪化29.2%。悪化の原因は、移植片不全、緑内障の進行、および網膜疾患が最も一般的だった。
術前眼圧 AC グループ 13.4mmHg、PPグループ 14.6 mmHg、術後眼圧 AC グループ 14.5mmHg、PPグループ 11.5 mmHg
合併症 移植片解離はAC 35.1% (13/37)、PPグループ 29.2 % (14/48)。
移植片不全の症例はACグループ 18.9%(7/37眼)、PPグループ41.7%(20/48眼)、不全に至るまでの平均期間はACグループ17.1か月(4.6–32.1)およびPPグループ27.9か月(15.1–34.7)だった。
移植片解離または移植片不全に関連する要因(チューブの位置、年齢、性別、同時チューブ修正など)は見つからなかった。
結論:チューブの移植片への近接度が低下するという理論上の利点にもかかわらず、PPチューブの症例での利点はなかった。GDDの場所に関係なく、移植片不全なる確率は高く、今までの文献と一致している。(CH)
Mechanism and Current State of Treatment for Filamentary Keratitis with Dry Eye
青木崇倫 他(京都府立医大)
日眼会誌123:1065-1070,2019(11)
・ドライアイ外来にて経過観察、治療中のドライアイのうち糸状角膜炎を伴う症例の背景および、その治療と経過についてレトロスペクテイブに検討した。
・対象と方法:糸状角膜炎に対して治療開始後少なくとも3か月以上経過観察できた53例53眼(男性7例7眼,女性46例46眼、両眼性の場合は症状の強いほうの眼を採用)。年齢は39-88歳(平均値±標準偏差: 69.8± 10.5歳)で,観察期間3-46か月(平均21.3か月)。
・FK発見時のドライアイ診断は、ドライアイ確定46例(87%)で最も多く(87%)、推定される機序は涙液減少39例(74%)が多かった。推定される機序によらず、発見時にジクアホソルナトリウム点眼液を使用している例が多かった(涙液減少: 39%,摩擦克進: 30%,複合機序: 75%)。涙液減少が主な機序と考えられるFKでは、その改善のため上・下涙点プラグの挿入を要した例が多く(71%)、摩擦克進が主な機序と考えられるFKでは、パミピド懸濁点眼液での改善が最も多かった(63%)。
・糸状角膜炎の機序は,多岐にわたるが,最も一般的な機序として涙液減少型ドライアイがあり、その他、摩擦関連疾患などいくつかの疾患や病態が複合的に関与すると考えられた。また, 戻液減少を機序とする糸状角膜炎には戻点プラグ治療が最も効果的であり、摩擦充進が主たる機序と考えられる糸状角膜炎に対しては、 RMが有効と考えられた。一方、ドライアイに合併する糸状角膜炎の発症に、 DQSが関与している可能性があり、ムチン/水分比の増加、涙液の粘性の増加を促し、結巣として摩擦の増加を招いて角膜糸状物が形成されやすくなると推察される。(CH)
Predictive Genes for the Prognosis of Central Serous Chorioretinopathy
Yoshikatsu Hosoda, Kenji Yamashiro, et al.(京都大)
Ophthalmol Retina. 2019;3(11)985-992
・CSC患者のSRD自然吸収やCNV発生を予測しうる遺伝子を検索
・CSC患者カルテを後ろ向きに調査、SRD消失をOCTで確認
・SRD消失までの期間をKaplan-Meyer法で解析
・CFH I62V、ARMS2 A69S、VIPR2 rs3793217の遺伝子多型とSRD消失期間・CNV発生との関連を評価
・196眼中105眼でフォローアップ期間中にSRD消失
・68眼が治療受け、23眼がSRD消失のため受診中断
・3種の遺伝子多型のうち、CFH I62VのみがSRD自然吸収と関連(P=0.017);genotypeごとにAA(126.6±115.5日)、AG(157.7±243.1日)、GG(242.7±198.0日)→GアレルがSRD遷延と有意に関連(P=0.035)
・14眼でCNV発生、CFH I62VのGアレルとARMS2 A69SのTアレルが有意に関連(P=0.0023、P=0.019)
・・CFH I62VとARMS2 A69Sの遺伝子多型はCSCの進行を予測しうる。CSC患者の遺伝学的状態をしることで早期治療の必要性やCNVの発生を判断する助けになる。(MK)
A Simple 60-Second Swelling Technique for More Consistent Ultrathin DSAEK Graft Preparation
Farbman, Neil H. et al. (CA,USA)
Cornea 2019(10);38:1209-1214
目的:極薄DSAEK(UT-DSAEK)は文献で定義されていないが、最も一般的には約100μm以下の移植片を指す。今までの手法では均一の極薄組織を作れるわけではなく、組織の損失や準備時間を増やし、組織処理にかなりの経済的コストがかかる可能性がある。
今回、単純だが新しい60秒間の膨張技術を使用することにより、移植片の品質を損なうことなく、安定してより薄い移植片を作れる事を実証する。
対象と方法:ML7 Microkeratome Donor Cornea System(Med-Logics Inc、Athens、TX)を使用した標準DSAEK移植片30眼と、角膜上皮の除去後の緩衝塩類溶液(BSS: Balanced Salt Solution)に角膜実質を60秒間浸した後ML7 Microkeratome Donor Cornea Systemでカットした移植片30眼。
結果: 膨張させた組織の平均移植片厚さは83.3μmで、標準移植片96.4μmよりも13.1μm薄かった。 100μm未満の移植片の割合は、標準移植片では63.3%、膨張移植片 では93.3%だった。角膜内皮細胞数は2つのグループ間に有意差はなかった。合併症は認められなかった。
結論:単純な60秒間の膨張技術により、内皮細胞数に大きな影響を与えることなく、安定した薄いDSAEK組織が得られる。(CH)
Interferon Alpha-2b Eye Drops Prevent Recurrence of Pterygium After the Bare Sclera Technique
Mingyang Yin, et al. (China)
Cornea 2019(10);38: 1239–1244
目的:翼状片再発防止のためのIFNα-2b点眼薬の有効性と安全性を調査すること。
対象と方法: 43人51の眼、平均年齢は56±9歳
対照群ではグレード1: 3眼、グレード2: 11眼、およびグレード3: 10眼
治療群ではグレード1: 3眼、グレード2: 13眼、およびグレード3: 11眼
術後、レボフロキサシン点眼と0.1%フルオロメトロン点眼液は両群3か月間、1日4回使用した。さらに治療群ではIFNα-2b点眼薬(100万IU / 5 mL)を3か月間、1日4回使用した。
結果:手術後、どちらの群も1ヶ月以内に再発は認められなかった。
術後3か月、対照群でグレード3の再発3眼、治療群ではグレード3の再発1眼を認めたが、統計的に有意差はなかった(P> 0.05)。
術後6ヵ月、対照群で7眼(グレード3:6眼、1眼グレード2:1眼)の再発、治療群では1症例のままだった。対照群と治療群の再発率はそれぞれ29.2%と3.7%だった(P = 0.019)。
術後12ヵ月、対照群で8眼(グレード3:6眼、グレード2:2眼)、治療群では2眼(グレード3:1眼、グレード2:1眼)で再発が認められた。再発率はそれぞれ33.3%と7.4%だった(P = 0.048)。
結膜の発赤と厚さは3ヶ月以内は両軍間で有意差はなかった。重篤な視力や全身性への副作用はなかった。
結論:IFN alpha-2bの点眼薬は、翼状片術後の再発率を大幅に低下させ、安全であると実証した。(CH)
Longitudinal Analysis of Bruch Membrane Opening Morphometry in Myopic Glaucoma
Mahadev Bhalla et al (Canada)
J Glaucoma 28(10):889-895, 2019
正常近視眼(9名17眼)、緑内障疑い(5名6眼)、安定した緑内障(14名20眼)、進行している緑内障(8名10眼)でBMOの形態変化をベースライン、1.5年以内、6.5年以内の3回で調査
BMOの面積、楕円性は変化ないが、非平面性は緑内障眼で増加、BM基準面からのBMO depthは疑い群以外で増加した
BMO-MRWは視神経乳頭評価として注目され、これまでBMOは変化しないと考えられていたが、正常群でもわずかながら変化している
年齢による眼圧、脳脊髄圧の変化、あるいは脈絡膜が薄くなることでBM基準面が変動した可能性が考えられた(MM)
星状神経節光線療法による視神経乳頭・篩状板領域の血流改善効果
森茂(長崎)
眼臨紀 12(8): 604-608, 2019
・東京医研製スーパーライザー1800mW(波長600-1600nm)を用いて星状神経節光線療法SGLを行った。
・OCTAで篩状板部を検査すると、15分後には篩状板部、殊に下側と耳側の血流量が増加しており、SGLが正常眼圧緑内障などでは有効な治療法になりうることを示している。(TY)
高分子量のヒアルロン酸からなる眼科用手術補助剤の物性評価―2019
渡邊一平他(生化学工業)
YAKUGAKU ZASSHI 139(8): 1121-1128, 2019
・OVDは凝集型製剤と分散型製剤の2つに大別されている。
・天秤に乗せた0.5mgの粘弾性物質を直径0.5mmのピペットチップを装着させたアスピレーターによって吸引除去する際、100mmHg当たりの除去率が30%以上であれば凝集型OVD、30%未満であれば分散型OVDとされている。
・各製品の規格が同一であっても製品間で異なる物性を示している。
・プレート上に約 300μLの試料を滴状に排出し、0.5mm間隙のパラレルプレートにより、ずり速度を変速させ、見かけ粘度を測定した。
・ずり速度が0.1~1/secの場合、各製品の見かけ粘度は顕著に異なったが、高ずり速度10/secでは見かけ粘度はほぼ一定値となった。
・製品間の見掛け粘度の差異はヒアルロン酸の分子量の違いに起因していた。(TY)
Difference in Topographic Pattern of Prelaminar and Neuroretinal Rim Thinning Between Nonarteritic Anterior Ischemic Optic Neuropathy and Glaucoma
Eun Jung Lee, et al (Korea)
Invest Ophthalmol Vis Sci 60(7):2461-67, 2019
NAION(A群)、NTG(B群)、Control(C群)各12眼で視神経乳頭断面24枚のEDIOCTから最も乳頭リムが薄い断面を選び各パラメータを計測
NFLの障害側はA群が上方11眼、B群が下方11眼であったが、他の背景因子に有意差なし
BMO-MRW,BMO-HRW、屈曲点での水平厚、中心部の前篩状板組織はA群で有意に厚かった
乳頭リム厚は屈曲点で最大の差を認めた
HVratio(BMO-HRW/BMO-VRWで定義)はA群1.63、B群0.83、C群1.06であった
前篩状板組織の菲薄化はNAIONとNTGで異なり診断に有用となる可能性(MM)
Nicotinamide Deficiency in Primary Open-Angle Glaucoma
Judith Kouassi Nzoughet, et al(Frace)
Invest Ophthalmol Vis Sci 60(7), 2509-2514:2019
視神経は眼内では無髄のためたくさんのエネルギーを要するが、緑内障でミトコンドリアの機能不全が生じているのかという疑問がある。
マウスの高眼圧緑内障モデルでミトコンドリアの機能不全が示され、網膜での酸化還元反応の補酵素であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドレベルの低下と、その前駆体であるニコチンアミドを高容量経口摂取することで、構造的機能的にRGCの減少を防止したとの報告あり。
水溶性のニコチンアミド(ビタミンB3)は欠乏すると下痢、皮膚炎、認知症を来たし死に至るペラグラをきたす。
まず34例のPOAGと30例のコントロールでnontargeted metabolomics studyを実施、その中でニコチンアミドの欠乏を見つけた。
その後second cohortとして20例のPOAGと15例のコントロールでニコチンアミドをターゲットとして調査した。
二つの集団の背景、採血時間帯には有意差無し
ビタミンB3は高脂血症の治療に使われるが、調査集団で該当するものはいなかった
結果
中央値
initial cohort:POAG : control= 0.12(0.06-0.28)μM : 0.18(0.08-0.47)μM (30%, P=0.022)
second cohort:POAG : control= 0.14(0.09-0.25)μM : 0.21(0.09-0.26)μM (33%, P=0.011)
平均値
initial cohort:POAG : control= 0.14μM : 0.19μM
second cohort:POAG : control= 0.14μM : 0.19μM
より大規模なスタディが必要であるが、ニコチンアミドの補充療法は将来の治療方法になる可能性がある(MM)
Risk Factors for Cystoid Macular Edema After Descemet Membrane Endothelial Keratoplasty
Inoda Satoru, et al. (自治医科大学)
Cornea 2019(7);38:820-824
目的:アジア人でのDMEK後のCMEの発症の危険因子と発症率を調査した。
対象と方法:DMEKを受けた65人77眼、平均年齢72.4歳(範囲、48〜85歳)、53眼はDMEK + 6ヶ月前に白内障手術、24眼はDMEKのみを受けた。すべての患者はアジア人(日本人)。
中心網膜厚、CMEの発生率、術後の最高矯正視力、中心角膜厚、および角膜内皮細胞密度を、手術後1、3、および6ヶ月で評価した。
術後治療は1.5%レボフロキサシン点眼、ベタメタゾン点眼1日4回3か月間投与し、その後漸減した。
結果:77眼中12眼(15.6%)でCMEが発生した。すべてのCMEは1か月以内に発症した。単独DMEKグループのCME発生率は25%(24眼中6眼)、段階DMEKグループの発生率は11.3%(53眼中6眼)だった(P = 0.13)。病因とCMEの発生との間に関連はなかった(P = 0.72)。多変量解析により、DMEK前後の虹彩損傷スコアの差(P <0.001、オッズ比(OR)= 16)、前房内の空気量(P = 0.012、OR = 2.3×10-4)、単独DMEK (P = 0.020、OR = 14、CME (+)6眼(25%)、CME(-) 18眼(75%))、および空気再注入(P = 0.036、OR = 18、CME (+)4眼(31%)、CME(-)9眼(69%))はCMEの発生と有意に関連していた。今回の調査でのCMEの発生率は、以前に白人で報告された発生率よりも高かった(7%〜13.8%)。
BCVAは術前0.81±0.53 logMARから術後6か月で0.080±0.15 logMARに有意に改善した(P <0.001)。術後ECDは6ヵ月で1493±492cells/ mm2だった(6ヵ月でのECD損失率:44.6±17.1%)。
前房内空気再注入を必要とするグラフトの部分的な剥離は、手術後7日以内に13眼で認められたが、すべての眼で再注入した直後に完全に接着した。
結論:DMEK後CME発生率は15.6%で、虹彩損傷はCMEの発生の主要な危険因子だった。手術時は虹彩にできるだけ損傷を与えないようにする必要がある。診断として、DMEK後の6か月間はOCTを頻繁に使用することを勧める。(CH)
杉浦弘幸ほか(国府台病院)
眼臨紀 12(7)532-535, 2019
・15歳女性
【初回受傷】
・友人のジャージにて左眼打撲、頭痛・嘔気・視力低下・眼痛・複視
・視力 右0.6(0.9×-1.75D) 左0.02(0.15×-0.5D)*他覚屈折値 右-11.0D、左-9.0D
対光反射は正常、内斜視、左眼の外転下転障害、左眼に求心性の視野狭窄
CFFは右↓49/↑49、左↓46/↑23
(外傷性視神経症を疑いステロイド内服)
・1w後 右0.6(0.8×-2.5D) 左0.03(0.4p×-11.0D)*他覚屈折値 右-3.0D、左-12.0D
眼球運動正常になるも正面視での内斜視と複視のこる
(輻輳痙攣を疑いステロイド中止、ミドリンP点眼開始)
・1M後 内斜位に改善、複視消失、他覚屈折値は不変
・4M後 右0.8(1.0×-0.5D) 左0.5(1.0p×-1.0D)*他覚屈折値 右-2.25D、左-5.0D
内斜視は完全に消失、正常視野
【二回目の受傷】
・初回受傷から半年後、サッカーボールが右眼に直撃、直後から頭痛・嘔気・右視力低下・眼痛・複視
・視力 右HM(n.c.) 左0.1(0.6×-2.0D)*他覚屈折値 右-5.0D、左-12.0D
対光反射は正常、内斜視、右眼の外転下転障害、眼振
CFFは右↓22/↑15、左↓自覚不能/↑23
(輻輳痙攣を疑いミドリンP点眼開始)
・3w後 右0.6(0.9p×-0.5D) 左0.5(0.4p×-0.75D)*他覚屈折値 右-0.75D、左-1.25D(MK)
Transient Intraocular Pressure Fluctuations: Source Magnitude, Frequency, and Associated Mechanical Energy
Daniel CT, et al(USA)
Invest Ophthalmol Vis Sci 60(7):2572-2582, 2019
4-6歳のアカゲザル6頭(雄4,雌2)にIOPセンサーを埋め込み、4週間後からバッテリーが切れる、もしくはセンサーに不具合が生じるまで、24時間意識下、制限無しの状態でIOP測定
同時にビデオカメラでモニター
IOPセンサー:
第一世代 2頭;unilateral IOP (500 Hz), blood pressure (250 Hz), electrocardiogram (500 Hz), and body temperature (50 Hz)
第二世代 4頭;bilateral IOP (500 Hz), bilateral electrooculogram (500 Hz), temperature (50 Hz), and blood pressure (250 Hz), via a transducer implanted directly in the aorta
2週毎にキャリブレーションを実施
結果
眼圧変動要因
ミリ秒~秒:瞬目、サッケード、脈波
数秒:呼吸や眼球の筋緊張などその他の要因
分~時間:防水の流入/流出量の変動、体位、血圧変動、睡眠などのリズム
変動幅
平均して1時間あたり1万回ほどの0.6mmHg以上のIOP変動
そのうち2000-5000回は5mmHg以上の変動
瞬目とサッケードでは最大14mmHgの眼圧上昇を認めた。固体によって異なるが、同一固体では同程度であった。
固体によって変動が大きく回数が多いもの、変動が少ないものなど様々であった:眼球の柔らかさに起因するのでは?
睡眠時は脈波に関連する2mmHg以下の変動が大部分を占め、覚醒時は瞬目やサッケードなどの変動が増える。全体として覚醒時の方が時間あたり5000回ほど0.6mmHg以上の変動が大きい
一過性眼圧上昇は全体の5-17%で生じている
平均して覚醒時の全IOPエネルギーの12%は一過性眼圧上昇に起因している。
眼圧はこれまで考えられていた以上にダイナミックに変動している(MM)
岩瀬愛子
眼科61(7):685-696, 2019
ハンフリー800シリーズからSITA Fasterと24-2Cプログラムが追加された
・測定方法の違い
<Double Bracketing法>
Full Threshold → SITA Standard(SS)(最尤法を用いて感度推定)(50%短縮)
<Single Staircase法>
Fastpack → SITA Fast(SF)(最尤法)(50%短縮) → さらに短縮したプログラムSITA Faster(SFR)(SSの50%、SFの30%の検査時間)
・繰り返し検査をすることが重要
SSで患者負担が大きく検査に抵抗があり、測定頻度が落ちるのであれば、SF/SFRで頻回の測定を行う方が良い
SSがうまくできないからと言って、SF/SFRに変更しただけで、測定回数を増やさないのであれば診療の質の低下?
・24-2C
24-2の配置点に10-2の検査点の中で早期異常の好発部位10点を追加したプログラム
SITA FasterとSITA Standardで使用可能
トレンド解析では従来の24-2の検査点を使用した数値表示になる
10-2の異常を追っていきたい場合はやはり10-2を測定すべきか(MM)
Do we need day-q postoperative follow-up after cataract surgery?
Andrzej Grzybowski, et al (Poland)Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 257(5): 855-861, 2019
AAOでは術翌日診察は片眼患者、術中合併症患者、IOP上昇など術後合併症に対するハイリスク患者は推奨し、それ以外の患者は48時間以内の術後診察を推奨している。UKでは翌日診察はあまり一般的でなく、合併症があった患者や緑内障・ぶどう膜炎などの併存する疾患のある患者に対して推奨されている。現在の小切開白内障手術術翌日診察での異常を評価し、どのような患者に対して必要か検討する。
白内障術後に関する1994年から2017年の45文献を解析
術後合併症の頻度(参照:Table1)
IOP: 術後眼圧上昇の頻度は0.31-2.57%、ハイリスク群で28mmHg以上に上昇したのは最大46.4%でリスクファクターはOVDの残存、レジデントの手術、緑内障、PE、25mm以上の眼軸、タムスロシンの内服、ステロイドレスポンダーに対するステロイド投与、術後炎症であった。
眼圧上昇は3-7時間後に上昇し、24時間ほど上昇する。視神経障害の患者や網膜の動脈硬化に伴う虚血のある患者はリスクがある。一過性眼圧上昇を抑えるため様々な点眼が評価されているが、ドルゾラミド/チモロール合剤、ブリンゾラミド点眼がこれらのハイリスク患者には敵していると思われる。
切開創閉鎖不全:小切開になり発生頻度は0.02-1.1%。タムスロシン内服はコントロールと比べ3.81倍発生率が高かった。術後低眼圧はリークによるものではなく術直後の房水の酸性と流出の不均衡によるものと考えられる。
術後炎症反応:術前3ヶ月は炎症がない状態での白内障手術が望ましいが、慢性あるいは再発性の炎症の患者は術前術後のステロイド内服、ステロイド注射が推奨され、翌日診察が望ましい
IOL偏位:Complete CCCができていればほとんどが術後3ヶ月以上経過してからの偏位
術中合併症:頻度は少ないが、どのような合併症であっても24時間以内に診察すべき
結論:翌日に問題があることはほとんどない。しかし術中合併症・経験の少ない術者、慢性/再発性のぶどう膜炎や虹彩後癒着患者は翌日診察をすべき。視神経障害のある患者は手術時に点眼を使うと良い。ほとんどの場合は翌日診察がなくても大きな問題なし。(MM)
Comparison of different combinations of maximum medical therapy for lowering intraocular pressure in primary open angle glaucoma: 12-month retrospective consecutive case series
Hee JJ et al (Korea)
Jpn J Ophthalmol ;63(4):322-327, 2019
82名82眼のPOAGに対して
配合剤を含む3種類の点眼で実質4剤(TMT):45名
タフルプロスト、ブリモニジン、ブリンゾラミド/チモプトール合剤
異なる種類の2種類の配合剤で実質4剤(DMT):37名
タフルプロスト/チモプトール合剤、ブリンゾラミド/ブリモニジン合剤(Simbrinza)
患者背景に有意差なし
12ヶ月後の眼圧下降率はTMT群がDMT群よりやや大きいが有意差なし
(35.3±4.5→16.7±2.6:52.7% vs 33.7±5.8→16.7±3.1:50.4%)
ベースライン眼圧がDMTの方が若干低いためか。
追加レーザー、手術を行った割合(22.2% vs 37.8%):有意差なし P=0.122
行うまでの平均期間(10.7±1.3 vs 10.3±1.5):有意差なし P=0.06
副作用:DMT群の方が結膜充血とドライアイの頻度が少なかった P=0.031/0.049
DMTはTMTと比べて劣ってはいない(MM)
柴田真帆・豊川紀子・黒田真一郎(永田眼科)
眼科手術2019;32(4):587-592
・硝子体カッターによる周辺虹彩切除術(PI)の効果と安全性の検討
・2013-2017、永田眼科、原発閉塞隅角症における瞳孔ブロック解除目的、角膜サイドポートより25G硝子体カッターを挿入しPIを施行した42例42眼
・術前後の眼圧、前眼部OCT、内皮細胞密度について診療録から後ろ向きに検討
・平均年齢57.1±8.5歳、男性4例・女性20例、APAC 5眼・PAC 9眼・PACS 18眼
・APACは術後2年まで全ての期間で有意な眼圧下降
・PACの術後点眼数はすべての期間で有意な減少
・APACの術後点眼数は0
・前眼部OCT:隅角底の角度が術後有意に増加、前房深度・隅角底距離・両隅角底を結ぶ直線と水晶体前面との距離は術前後で有意差なし
・1年後の内皮減少率:1.5%
・硝子体カッターによるPIはレーザー虹彩切開術と同様の眼圧下降効果・前眼部形状変化・内皮減少率を認めた。本法は、将来の緑内障手術の障害となる結膜瘢痕を残さず、瞳孔ブロック解除に有効な術式と考えられた。(MK)