Role of Static and Dynamic Ocular Biometrics Measured in the Dark and Light as Risk Factors for Angle Closure Progression.
Cho A et al
Am J Ophthalmol. 256(12) :27-34., 2023
目的:暗所と明所で測定された眼の静的および動的バイオメトリックパラメータが、原発閉塞隅角疑い(PACS)から原発閉塞隅角(PAC)への進行を予測する役割を評価した。
方法:未治療の対照眼からの前向きランダム化比較試験データを用いたレトロスペクティブコホート研究。
Zhongshan Angle Closure Prevention Trial(中山隅角閉塞予防試験)の被験者が前眼部光干渉断層撮影(AS-OCT)に施行、静的バイオメトリックパラメータおよび動的変化パラメータが測定され、原発閉塞隅角症(PACD)進行の危険因子を評価するためにCox比例ハザード回帰モデルを使用した。
結果:861人の参加者が分析され、そのうち36人が進行した。単変量解析では、明るい場所と暗い場所でのTISA500測定値が進行と関連していたが、動的変化パラメータは関連性が見られなかった。
主要な多変量モデルでは、高齢や眼圧の上昇、明るい場所でのTISA500の減少が進行リスクの増加と有意に関連していた。また、暗い場所でのTISA500は明るい場所での測定値と同様の有意性を持っていた。
特に、明るい場所でのTISA500測定値の最低でも25%位の眼は、暗い場所での測定値と比較しても進行リスクの予測においてより高い値を示した。
結論:明るい場所で測定された静的パラメータは、暗い場所で測定されたものと同程度、またはそれ以上に閉塞隅角の進行を予測する能力があることが示された。
さらに、明るい場所と暗い場所での眼のバイオメトリックパラメーターは、閉塞隅角進行に関する患者のリスク分類に有用な情報を提供する可能性がある。
・AOD500:角膜後面の強膜岬から500μmの点から虹彩までの距離(mm)
・TISA500:AOD500、角膜後面、強膜岬からAODと平行に引いた線、虹彩表面の4つの線で囲んだ面積(mm2)
・ACA:角膜後面と虹彩表面の角度(deg)(KK)
Risk Factors for Flat Anterior Chamber Requiring Intervention After Glaucoma Drainage Implant: A Retrospective Case-Controlled Study.
Sheheitli H, et al
Am J Ophthalmol. 256(12):39-45., 2023
目的は、合併症のないBaerveldt緑内障インプラント(BGI)手術後の90日間において、前房平坦化に関連するリスク要因を特定する。
方法:2011年2月1日から2019年1月1日までの間にAnne Bates Leach Eye HospitalでBGI手術を受けた42例を対象とし、各症例に対してマッチした84の対照を設定したレトロスペクティブな症例対照研究。
性別、診断、糖尿病、高血圧、術前および術後の緑内障治療薬、眼の状態、眼圧(IOP)などの変数が、多変量条件付きロジスティック回帰によって独立した予測因子のオッズ比(OR)が算出された。
結果:症例患者は女性である可能性が高く、チューブ開放時に経口炭酸脱水酵素阻害剤(CAI)の服用歴があることや、他の人種・民族 (not White, Black, Hispanic, or Asian)であること、偽性落屑の存在、ベースラインでのコリン作動薬(副交感神経作動薬:アトロピン)の不使用、原発開放隅角緑内障である可能性が低いことが示された。
さらに、症例患者の平均年齢は高く、チューブ開放時期は早く、チューブ開放後のIOPは低い一方で、開放前のIOPは高いことが観察された。
特に独立した予測因子としては、高齢(10年ごとにOR=3.59、P<.0001)、チューブ開放時の経口CAI使用(OR=5.65、P=0.009)、チューブ開放前の高IOP(3 mm HgごとにOR=1.30、P=0.018)が特定された。
結論:平坦前房のリスク因子は高齢、チューブ開放時の経口CAIの使用、及びチューブ開放前のIOPの上昇である。
このことから、チューブ開放前に経口CAIを中止するなど、急激なIOP低下を抑えることが推奨される。(KK)
The Sensitivity of Ultra-Widefield Fundus Photography Versus Scleral Depressed Examination for Detection of Retinal Horseshoe Tears
ANDREW C. LIN,et al. (California, USA)
Am J Ophthalmol 2023(11);255: 155– 160.
・目的:超広角走査型レーザー検眼鏡(UWF)は、強膜圧迫を併用した双眼倒像検眼鏡下眼底検査(SDE)と併用して網膜周辺疾患の評価に使用されている。
・眼科の遠隔診療ではこの検査への依存度が高まっているため、UWF単独で実施した場合の網膜周辺部の疾患の検出に対する有効性を評価することは重要である。
・今回、網膜馬蹄形裂孔(HST)の検出におけるUWF画像の感度を評価する。
・対象と方法:2020年1月1日から2022年12月31日までにSDEでHSTと診断され、レーザー治療を受けた患者を対象とした。
・123人(男性64人(52.0%)、女性59人(47.9%)、平均年齢57.3±13.1歳)、右眼69例(51.1%)、左眼66例(48.9%)。HSTに対するUWF画像診断を網膜専門医によるSDEと比較した。
・結果:SDEで確認されたHSTのうちUWF確認されたのは左右合わせて69 例(51.1%) だった。
・上方、下方、鼻側、耳惻でそれぞれ7/41例(17.1%)、8/25例(32.0%)、7/14例(50.0%)、47/55例(85.5%)だった。
・結論:HSTの半数近くがUWF画像では見逃された。特に上方での感度が低いことを示している。
・主な原因として、熟練した撮影者の確保、アーチファクト(睫毛、眼瞼縁、フェイスマスク、まぶしさ)、真の色調ではないことが考えられる。
・ HSTの治療の緊急性とRDによる重大な視覚障害の可能性を考慮すると、PVDまたはHSTを示す症状の評価において眼底検査の代替として UWF 画像に依存すべきではない。(CH)
A Systematic Review and Meta-analysis of Systemic Antihypertensive Medications With Intraocular Pressure and Glaucoma.
Leung G, et al
Am J Ophthalmol. 255(11):7-17. 2023
目的:全身性降圧薬と眼圧(IOP)、および緑内障との関連性を調査した文献を解析する。
降圧薬には、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、利尿薬が含まれる。
方法:研究のデザインは系統的レビューとメタ分析で、2022年12月5日までに関連する研究をデータベースで検索し、全身性降圧薬と緑内障との関連性、または緑内障や眼圧上昇のない患者における全身性降圧薬とIOPとの関連性を調べた研究が対象となった。
結果:合計11件の研究がレビューに含まれ、10件がメタ分析に組み込まれた。
IOPに関する3件の研究は横断的であり、一方で緑内障に関する8件は主に縦断的研究だった。
メタ分析の結果、β遮断薬は緑内障のオッズを低下さ、IOPも低下することが確認された。
一方、カルシウムチャネル遮断薬は緑内障のオッズを上昇させるが、IOPには関連しなかった。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、利尿薬に関しては、緑内障やIOPとの一貫した関連は認められなかった。
結論:全身性降圧薬は緑内障およびIOPに対して不均一な影響を及ぼすことが示された。
は、これらの薬剤がIOP上昇を隠す可能性や、緑内障のリスクに対してプラスまたはマイナスの影響を与えることに注意を払う必要がある。(KK)
Amer J Ophthalmol 254(10):104-113, 2023
Itoh K(室蘭)
Stainability of acrylic intraocular lens with Brilliant blue G: An in vitro study.
・アクリルIOLのbrilliant blue G(BBG)への染まりやすさについてin vitroで調査した。
・親水性アクリルIOLとしてLentis Comfort(LS313)を、疎水性アクリルIOLとしてX70、W60R、CP2.2R、YP2.2R、XC1、XY1を用いた。
・BBG濃度は、0.025, 0.25, 2.5, 25 mg/mlを使用 (当院では0.5mg/ml濃度のBBGを使用)
・すべてのIOLは時間と濃度に比例して内部までBBGに染色され、ほとんど脱色されなかった。
・親水性アクリルIOLで顕著であった。(TY)
Amer J Ophthalmol 254(10):161-176, 2023
Baek MS et al(Korea)
Morning blood pressure surge and glaucomatous visual field progression in normal-tension glaucoma petients with systemic hypertenision.
・高血圧の内服薬を使用中で、正常眼圧緑内障患者(NTG)と新規に診断された127名127眼において、ベースライン時に早朝血圧急上昇(MBPS)がある患者の視野変化について、最低2年間経過をみた。
・対象者全員はベースライン時に24時間血圧モニター(ABPM)検査を受け、経過中に最低5回の視野検査を受けた。
・視野進行はEarly Manifest Glaucoma Trial criteriaで判断した。
・平均5.2年の経過観察で38眼(29.9%)で視野進行があった。
・多変量Cox回帰分析では、ベースライン時のMBPSが大きいほど(HR=1.033 p=0.024)、夜間の平均動脈圧(MAP)の最低値が低いほど(HP=0.965 p=0.031)、有意で独立した視野進行の予測因子であった。
・生命表分析では、視野進行の予測見込みは、ベースライン時のMBPSがより高いことであった(p=0.021)。(TY)
Safety and Efficacy of Twice-Daily Pilocarpine HCl in Presbyopia
SHANE KANNARR, et al. (Kansas, USA)
Am J Ophthalmol 2023(9);253: 189–200.
・目的:老眼患者を対象に、ピロカルピン塩酸塩1.25%点眼液を1日2回(6時間間隔)、14日間両眼投与したときの安全性、有効性、薬物動態を対象と比較して評価する。
・対象と方法:日常生活に影響を及ぼす近見視力低下の訴えを有し、薄暗くても明るくても両眼近見視力が20/40~20/100である健康状態の良好な成人(40~55歳)を対象とした。ピロカルピン塩酸塩1.25%点眼液を1日2回投与群と非投与群に無作為に割り付けた(1:1)。主要エンドポイントは14日目2回目点眼の3時間後において、遠見視力をほぼ低下なしに、両眼近見視力が3 line以上改善とした。第2エンドポイントは遠見視力をほぼ低下なしに、両眼近見視力が2 line以上改善とした。
・ピロカルピンの血中レベルは、参加者の約 10% で評価された。
・結果:主要エンドポイントと第2エンドポイントを達成した参加者の割合は、対象よりも ピロカルピン投与群の方が統計的に有意に高く、群間差はそれぞれ 27.3% (P < .01) と 26.4% (P < .01)だった。
・最も一般的な副作用は頭痛で、投与群10 人 (8.8%) と 非投与群4 人(3.4%) で認めたれた。網膜剥離、硝子体剥離、網膜裂孔、硝子体黄斑牽引の報告はなかった。
・薬物動態は14日目の1日2回目の投与後、蓄積指数はC maxあたり1.11、AUC 0-tauあたり1.03であり、投与期間中の全身への影響は最小限であった。
・結論:ピロカルピンは2つのメカニズムで近見視力を増強する。(1)虹彩括約筋の収縮によるピンホール効果(2)毛様体筋の収縮に関与し、水晶体の中心がsteepになり、近方物体への焦点を改善する。
・ピロカルピン塩酸塩1.25%点眼液1日2回投与は、遠見視力を損なうことなく、近見視力の有意な改善を示した。 投与期間中、ピロカルピンの全身蓄積はほとんど認められなかった。(CH)
An association between large optic cupping and total and regional brain volume: The Women’s Health Initiative.
Wang C et al(IL USA)
Amer J Ophthalmol 249(5): 21-28, 2023
・視神経乳頭陥凹と脳容積との関連を検討した。
・Women’s Health Initiative (WHI) Sight Examination研究で、cup-to-disc ratio(CDR)測定を行ない、WIH Memory研究でMRI検査で脳容積を測定した65~79歳の緑内障を持たない471名の女性(69.2±3.6歳、92.8%が白人)を対象とした。
・CDR値は両眼の立体写真をとり、縦のCDR値を求めた。
・どちらかの眼で、CDR値が0.6以上のものを大きなCDRと規定して解析した。
・471名の女性のうち、34名(7.2%)が大きなCDRであった。
・MRIでの側脳室の大きさは、大きなCDRの人はそれ以下のCDRの人と比較して、3.01cc大きかった(95%CI=0.02~5.99 p=0.048)。
・また、大きなCDRの人は、前頭葉の大きさが4.78cc小さく(95%CI=-8.71~0.84 p=0.02)、後頭葉の大きさが1.86cc小さかった(95%CI=-3.39~-0.3 p=0.02)。
・大きなCDRの人は視神経や脳の加齢を示している可能性がある。(TY)
Paracentral Acute Middle Maculopathy as a Specific Sign of Arteritic Anterior Ischemic Optic Neuropathy (France)
Kevin M. et al, Am J Ophthalmol 248(4),1-7: 2023
・動脈炎性AION(A-AION)と非動脈炎性AION(NA-AION)の鑑別においてParacentral acute middle maculopathy(PAMM)の診断的有用性を調べた。
・PAMMは巨細胞性動脈炎(GCA)でしばしば見られることが報告されており、A-AION50名のうち、7名は同側に、1名は対側にPAMMを認めたとの報告がある。
・2人に1人がcentral retinal artery(CRA)とposterior ciliary artery(PCA)が共通の幹を持ち、その部分が病変となるとA-AIONとPAMM両方の原因となる。
・診断名を知らない3人のドタクターが、45名のAION(A-AION 17, NA-AION 28)のOCTを調べ、PAMMの感度、特異度、陽性および陰性的中率を調べることを目的とした。
・結果:PAMMはA-AIONのみで認めた(N=4)
・特異度(GCA陰性時にPAMM陰性)100%、陽性的中率(PAMM陽性時にGCA陽性) 100% であったが、感度(GCA陽性時にPAMM陽性)19.1%、陰性的中率(PAMM陰性時にGCA陰性) 63.0%であった。
・PAMMはA-AIONに特異的な所見であった。
・PAMMは網膜毛細血管叢の中層〜深層にかけての血流低下による網膜中層の虚血所見である
・結論:PAMMはA-AIONで特異的な所見であり、どのようなAIONでも黄斑部のOCTを撮影しPAMMの有無を確認すべき(MM)
Spectacle lenses with highly aspherical lenslets for slowing myopia: a randomized, double-blind, cross-over clinical trial.
Sankaridurg P et al(Australia)
Amer J Ophthalmol 247(3): 18-24, 2023
・高度に非球面化した小型レンズ眼鏡(HAL)と通常の単一視眼鏡(SV)とで、近視の進行度を調査した。
・対象は119名の7ー13歳の球面等価度数-0.75~-4.75Dのベトナムの小児である。
・HALかSVをランダムに割り当て、6か月後(Stage1)にレンズを交換し、6か月後(Stage2)に今度は両群にHALを割り当て、それぞれ、Group1(HAL-SV-HAL:HSH)、Group2(SV-HAL-HAL:SHH)として調査した。
・HSH群:SHH群は全て初期値との比較であるが、Stage1では度数変化は-0.21:-0.27D p=0.317、眼軸は0.07:0.14mm p=0.004であり、Stage2では度数変化は-0.32:-0.05D p<0.001、眼軸は0.16:-0.04mm p<0.001、Stage3では度数変化は-0.18:-0.27D p=0.203、眼軸は0.07:0.08mm p=0.65であった。
・このことからHALは近視の進行度をゆっくりにすると考えらえた。(TY)
Analysis of facial features of patients with sagging eye syndrome and intermittent exotropia compared to controls.
Kunimi K et al(静岡)
Amer J Ophthalmol 246(2): 51-57, 2023
・Sagging Eye症候群(SES)と他の疾患との顔貌を比較した。
・60歳以上の23名のSES、28名の間欠性外斜視(IXT)と35名の正常者の顔貌を3名の眼科医が評価した。
・平均年齢は72.7±7.4才である。
・評価内容は上眼瞼の沈み具合、眼瞼下垂、下眼瞼の弛みについてスコアをつけた。
・緑内障、視力が悪い人、6△以上の上下斜視、正位状態を保てないIXT、眼筋麻痺の既往者、眼手術既往者やプロスタグランディン使用者などは除外した。
・上眼瞼の沈み具合はSESではCtrl群やIXT群より有意に高かったが(p<0.001)、下眼瞼の弛みはIXT群でCtrl群より有意に高かった(p<0.05)。
・加齢性の眼窩結合織の退化はSESでは上眼瞼で、IXTでは下眼瞼で強いことがわかった(TY)
Intraocular Lens Calcification After Pseudophakic Endothelial Keratoplasty
Benjamin Memmi, et al. (France)
Am J Ophthalmol 2023(2);246: 86– 95.
・目的:最近報告されている角膜内皮移植(EK)の合併症は眼内レンズ(IOL)の石灰化である。その発生率や危険因子を調査する。
・対象と方法:1992 年 12 月から 2022 年 6 月の間に施行された 2,700 例の連続した角膜移植術症例を対象とした。
・全てのEK症例では、術後の瞳孔ブロックを回避するために、6 時に虹彩切開術を施行し、前房内に100%空気または空気 80% + SF6ガス 20% を注入した。
・手術後 24 時間は厳密な仰臥位を維持するように指示した。
・結果:2700 例の角膜移植手術のうち、全層角膜移植術(PK)1772例、 EK588例、表層移植術(LKP)340例だった。
・IOL 石灰化は14 例で認められた。13 例はEK後、1 例PK後に発生した。
・EK後の IOL 石灰化の発生率は、術後12か月で 0.4%±0.3%、36か月で 3.1%±0.9%、60か月で 4.5%±1.3% だった。
・IOL 石灰化の発生は、IOLの材質と有意に関連していた。
・13 例のうち 11例 (84.6%) が親水性アクリル IOL 、 1例 ( 0.3%) 疎水性アクリル IOL、1 例 (0.6%) の材質不明の IOLだった。
・DSAEK 眼と比較して DMEK眼で石灰化率が有意に高かった (P < .001)。
・ DMEK後12か月で 0.0±0.0%、36か月で 15.6±5.9% 、 DSAEK後12か月で 0.6%±0.4%、36か月で 0.9%±0.5%。
・また、前房タンポナーデで 80% 空気 + 20% SF6ガスを注入した症例の方が、100% 空気の症例と比較して有意に高かった (P < .001)。
・前房内空気、20% SF6ガス再注入症例では有意差を認めなかった。
・結論:前房内の空気またはSF6ガスは、IOL の表面を変化させるか、IOL 表面の近くでミネラルの過飽和を引き起こすことにより、石灰化を促進する可能性があると仮定されている。
・また空気注入や再注入は血液 – 房水関門の破壊する可能性も考えられる。
・DMEK後の IOL 石灰化が多いことが判明したが、これはDMEK眼の前房内に SF6ガス注入をより頻繁に使用することに関連していると思われる。
・角膜内皮障害のある患者に親水性アクリル IOL を使用しないように注意する。
・患者がすでに親水性の IOLを使用している場合は、SF6ガスを避け、100% 空気を使用する必要がある。(CH)
Full-thickness macular hole: Are supra-RPE granular deposits remnants of photoreceptors outer segments? Clinical implications.
Govetto A et al(Italy)
Amer J Ophthalmol 245(1): 86-101, 2023
・連続する143例149眼の黄斑全層円孔の最低12か月後の術後視力について、形態から検討した。
・RPE上の顆粒状の沈着物は149眼中121眼(81.2%)で見られた。
・円孔縁がスムーズなものは58眼(38.9%)で、凸凹なものは91眼(61.1%)であった。
・また、手術前の経過観察中にスムーズな辺縁から凸凹の辺縁に変化したものは8%にみられた。
・単相関分析では、RPE上の顆粒状沈着物の存在が術後視力の不良に関連していた(p<0.001)。
・単相関と多変量解析で、凸凹の辺縁が術後視力不良に有意に関連していた(p<0.001)。
・また、辺縁の凸凹の症例では術後の形態の回復が有意に不良であった(p<0.001)。
・RPE上の顆粒状沈着物や辺縁の凸凹は黄斑円孔での視細胞の破壊の指標であり、辺縁の凸凹は深層の視細胞の不可逆的な障害を意味しているだろう(TY)
Intraocular Pressure changes Following Stand-Alone Phacoemulsification: An IRIS Registry Analysis
Adam L. Rothman, et al. Am J Ophthalmol 245(1): 25-36, 2023 (USA)
・2013年1月から2019年9月までの期間でIRIS(Intelligent Research in Sight)Registryから1,334,868名の患者(緑内障患者336,060名、非緑内障患者 99,808名)を抽出
・片眼白内障単独手術術後90日まで左右の眼圧を比較
・結果:術後最初は眼圧スパイクのため手術眼が高いが、術後13日目からは手術眼の方が術後90日まで有意にコントロールよりも眼圧が低くなった。
・全体でも、緑内障群、非緑内障群でも術後90日の時点では術前よりも眼圧が低かった。(MM)
Association Between E-Cigarette Use and Visual Impairment in the United States,
Abhinav Golla, Angela Chen, Victoria L. Tseng, Samuel Y. Lee, Deyu Pan, Fei Yu, Anne L. Coleman(US-CA)
Am J Ophthalmol 2022; 235:229-240
DOI https://doi.org/10.1016/j.ajo.2021.09.014.
【目的】
米国の成人集団において、電子タバコの使用と視覚障害との間に関連があるかどうかを明らかにする
【対象と方法】
・米国疾病対策予防センターの行動危険因子サーベイランスシステム(BRFSS)
・2016-2018年次の電話調査に回答した、米国50州および3準州の18歳以上の成人1,173,646人
・下記の質問によって電子タバコの使用(現在、以前、または一度もない)を調査
“これまでの人生で、1回でも電子タバコを使用したことがありますか?”
“現在、電子タバコをどう使用していますか?“ ⇒ ”毎日・数日に1回・全く使用しない”
・主要アウトカムは視覚障害
“あなたは目が見えないか、メガネをかけていても目が見えにくいか?” という質問に対する
”はい “または “いいえ ” で定義
【結果】
・電子タバコを使用したことがない人と比較して、
現在の電子タバコ使用者の視覚障害の調整オッズ比:1.34(95%CI 1.20-1.48)
以前の電子タバコ使用者:1.14(95%CI 1.06-1.22)
・紙タバコの使用経験がない662,033人のサブグループでは、電子タバコの使用経験がない人と比較して、
現在の電子タバコ使用者の視覚障害の調整オッズ比:1.96(95%CI 1.48-2.61)、
以前の電子タバコ使用者:1.02(95%CI 0.89-1.18)
【結論】
BRFSS 2016-2018集団において、電子タバコの使用経験がない場合と比較した現在の電子タバコ使用者は、紙タバコの喫煙状況とは無関係に、視覚障害の高いオッズと関連していた。(MK)
Effect of Blue Light-Filtering Intraocular Lenses on Age-Related Macular Degeneration:
A Nationwide Cohort Study With 10-Year Follow-up
Jiahn-Shing Lee, Pei-Ru Li, Chiun-Ho Hou, Ken-Kuo Lin, Chang-Fu Kuo, Lai-Chu See(Taiwan)
Am J Ophthalmol 2022;234: 138-146
DOI https://doi.org/10.1016/j.ajo.2021.08.002.
【目的】
白内障手術後の加齢黄斑変性症(AMD)の発症率を明らかにし、ブルーライトフィルター付き眼内レンズ(BF-IOL)と非BF-IOLを使用したAMD発症率を比較
【対象と方法】
・台湾国民健康保険研究データベースを用いて実施した、全国規模のコホート研究
・2008年~2013年に両眼の白内障手術を受けた患者186,591人
・最初の白内障手術日から、AMD発症・死亡・追跡不能・2017/12/31に達する、のいずれか先に発生するまで追跡調査
・BF-IOL群と非BF-IOL群間のベースラインのバランスをとるために、傾向スコア・マッチング(propensity score matching、PSM)を使用
【結果】
・BF-IOLは21,126人(11.3%)、非BF-IOLは165,465人(88.7%)の患者に移植
・BF-IOL群の患者は、非BF-IOL群と比較して、
若年層が多く、男性が少なく、白内障手術年数が異なり、
高収入、非肉体労働者が多く、都市部や郊外の患者が多く、慢性疾患が少ない傾向がみられた
・白内障手術後の平均追跡期間が6.1年(範囲:1~10年)で、
非滲出型AMDと滲出型AMDをそれぞれ12,533人と1655人で発症
・非滲出型AMDと滲出型AMDの発症率(1000人年当たり)は、
BF-IOL群でそれぞれ9.95と1.22
非BF-IOL群で11.13と1.44
・PSM後もAMDの発生率はBF-IOL群と非BF-IOL群の間で統計的差異は観察されず
非滲出型AMD(ハザード比、0.95;95%CI、0.88-1.03)
滲出型AMD(ハザード比、0.96;95%CI、0.77-1.18)
【結論】
台湾では、白内障手術後のAMDの発生率は1000人年あたり11.59人であった。BF-IOLを10年まで使用しても、AMDの発生率において非BF-IOLに対する明らかな利点はなかった。(MK)
Randomized controlled trial of intraocular lens orientation for dysphotopsia.
Pamulapati SV et al(IL USA)
Amer J Ophthalmol 243(11): 28-33, 2022
・IOLのoptic-haptic接合部の方向について、Positive とNegative dysphotopsia(PDとND)の発症頻度を163例326眼で調査した。
・使用したIOLはTecnis単焦点IOL(ZCB00)で、接合部を垂直82眼、水平72眼、上鼻側94眼、下鼻側78眼に挿入した。
・視野欠損のある患者や最高視力が20/80未満の患者は除外し、術後1週間と4-6週間後に調査した。
・術後1週目と4-6週目のdysphotopsiaの全体の頻度は、Positive Dが20.8%と20.8%、Negative Dが14.4%と10.4%であった。
・接合部の挿入方向別でみると、NDについては、上鼻側挿入群は1週(22.3%)、4-6週後(17.0%)のいずれでも発症率が高く、水平挿入群は1週(13.9%)であったが、4-6週では2.8%であり、有意に発症が少なかった。
・PDについては、有意差はみられなかった(TY)
Corneal stifness and modulus of normal-tension glaucoma in Chinese.
Xu Y et al(China)
Amer J Ophthalmol 242(10): 131-138, 2022
・正常眼圧緑内障(NTG)108眼、高眼圧の緑内障(HTG)113眼、正常者113眼で角膜の生体力学的解析を行ない、中心角膜厚(CCT)、視野、網膜神経線維層厚(RNFL厚)も同時に評価した。
・角膜解析は開発したCorneal indentation device(CID)とCorvis STを用いた。
・CIDは角膜に接触させた器具で、1mm間隔に角膜をindentして解析するものである。
・角膜硬はNTGでは71.0±10.9N/mで、HTGの77.3±15.6(p=0.001)、正常者の75.6±11.0(p=0.023)より有意に低かった。
・NTGでは角膜硬とCCTは正の相関がみられた(p=0.028)が、HTGでは相関がなかった(p=0.5)。(TY)
Retinal detachments associated with topical pilocarpine use for presbyopia.
Al-Khrsan H et al(FL USA)
Amer J Ophthalmol 242(10): 52-55, 2022
・老視に対してピロカルピン点眼を使用していた2例3眼の網膜剥離について検討した。
・第1例は47歳男性で、老眼に対して1.25%ピロカルピン点眼を両眼に使用し始めた3日後から閃光と飛蚊症が発生しており、1か月後に右眼の下耳側の網膜裂孔と網膜剥離が発見された。
・左眼も上方の網膜裂孔と網膜剥離が見つかった。
・第2例は46歳男性で、1.25%ピロカルピン点眼開始5週間後に左眼の視野欠損を自覚し上方の網膜剥離が見つかった。
・ピロカルピンは網膜剥離のリスクが高くなることが知られているので、老眼に対して処方する前にその旨を話をし、殊に近視がある人では散瞳検査をすべきである。(TY)
Risk Factors for Repeat Keratoplasty After Endothelial Keratoplasty
HYECK-SOO SON, et al. (MD USA)
Am J Ophthalmol 2022(10);242: 77-87.
・目的: 角膜内皮移植術(EK) 後の再手術の危険因子を評価すること。
・対象と方法:IRIS レジストリ (Intelligent Research in Sight) で2013 年から 2018 年の間にEKを受けた18歳以上の患者59,344人が特定され、そのうち 30,600眼(平均年齢72.8±10.5歳)が EK 手術基準を満たしていた。
・フックス角膜内皮変性症(FECD)が最も一般的な疾患(n=14,305; 46.8%) で、その他は水疱性角膜症(BK)、他の原因による角膜浮腫 (n=6714; 21.9%)、再移植 (n=2086; 6.8%) だった。最も多い合併疾患は緑内障 (n=6349; 20.7%)、その他黄斑変性症 (n=2955; 9.7%) 、糖尿病性網膜症 (n=1080; 3.5%)だった。
・結果:再移植の確率は、術後1 年目で8.7%、5 年で 17.4% だった。
・5 年後の移植片の生存率は FECDで 89.0% であったのに対し、BK 72.2%、以前の角膜移植片不全63.4%と低かった。
・最も多い合併症は前房内空気再注入だった。
・再移植の危険因子はBK およびその他の角膜浮腫 (HR 1.4 7.95% CI 1.33-1.61) 、以前の角膜移植片不全 (HR 2.07、95% CI 1.84-2.32)、黒人 (HR 1.25、95% CI 1.11-1.40)、喫煙(HR 1.16、95% CI 1.05-1.27)、保険加入者 (HR 1.29、95% CI 1.03-1.60)、術後の前房内空気再注入(HR 2.24、95% CI 2.05-2.45)、眼内炎 (HR 1.35、95% CI 1.05-1.75)、感染性角膜炎 (HR 1.60、95% CI 1.39-1.84)、嚢胞様黄斑浮腫 (HR 1.39、95% CI 1.21-1.59)、緑内障の既往(HR 1.24、95% CI 1.14-1.35)、移植前または同時の緑内障手術(HR 1.23、95% CI 1.11-1.36)、移植後の緑内障手術(HR 1.53、95% CI 1.39-1.69)だった。
・結論:水疱性角膜症、緑内障の病歴、緑内障手術、以前の角膜移植片不全、黒人、保険プラン、喫煙などが再移植に関連する危険因子として特定された。
・以前の研究で報告されていた性差(男性が多い)は認められなかった。
・4、1型糖尿病は2型糖尿病よりも角膜内皮細胞密度とパキメトリーに大きな影響を与える(CH)