眼科JOURNALトップ > American Journal of Ophthalmology

American Journal of Ophthalmology

2020
212巻

牽引性、滲出性、黄斑円孔でのCMEの形態の違い

American Journal of Ophthalmology 212巻 (4号) 2020

Distinctive mechanisms and patterns of exudative versus tractional intraretinal cystoid spaces as seen with multimodal imaging.
Govetto A et al(Italy)
Amer J Ophthalmol 212(4): 43-56, 2020
・牽引性と滲出性の嚢腫状黄斑浮腫の形態を分類した。
・OCT、FA、短波長自発蛍光BFAF、en face OCT、OCT-Aを用いて69例72眼を調査した。
・滲出性の36眼がen face OCT、FA、BFAFで花弁状CMEを示した。
・滲出性では、内顆粒層、外顆粒層ーヘンレ層に多数の嚢胞があり癒合しており、外境界膜までつながっている。
・滲出性では、毛細血管の破綻が浸出液を増やし、表層と深層の血管網から内顆粒層→外顆粒層やヘンレ層への流入を来し、Müller細胞の偏位を来す。
・牽引性の24眼が放射状の車軸状CMEを示し、FAでの漏出はなかった。
・牽引性では、嚢胞が癒合することはなく、ヘンレ層を乗り越えることもない。
・牽引性では、網膜前膜が網膜に機械的なストレスを与え、Müller細胞の偏位を来す。
・牽引性では、生理的な硝子体から脈絡膜への水分移動が途中で止まり、Müller細胞周囲に浮腫を来す。
・全層黄斑円孔FTMHの12眼がひまわり状CMEを示した。
・全層円孔では円孔壁の割れ目から液が細胞内に流入するが、RPEポンプで脈絡膜側へ流出しないために嚢腫状となる。(TY)

2020
210巻

AMDとアルツハイマー病

American Journal of Ophthalmology 210巻 (2号) 2020

Association of age-related macular degeneration on Alzheimer or Parkinson disease: a retrospective cohort study.
Choi S et al(Korea)
Amer J Ophthalmol 210(2): 41-47, 2020
・加齢黄斑変性症とアルツハイマー病ADあるいはパーキンソン病PDとの関連を調べた。
・韓国の50歳以上の308,340名について、2002年までにAMDであった人を除き、2003-2005年にAMDを発症した人について、2006/1から2013/12までにADあるいはPDを発症した人を調査した。
・AMD発症しなかった人と比較して、AMD者ではADの調整HR=1.48(95%CI=1.25-1.74)、PDの調整HR=1.46(95%CI=1.14-1.88)と高かった。
・非喫煙者でアルコールを飲まず定期的に運動している人で、ADの調整HR=2.25 (95%CI= 1.39-3.66)、PDの調整HR=2.02 (95%CI=1.00-4.08)と上昇していた。
・AMD者では健康的な生活をしている人たちでもADやPDのリスクが高いことが分かった。(TY)

2020
209巻

広角自発蛍光像でのクロロキン網膜症の評価

American Journal of Ophthalmology 209巻 (1号) 2020

Evaluation of hydroxychloroquine retinopathy using ultrawidefield fundus autofluorescence: peripheral findings in the retinopathy.
Ahn SJ et al(Korea)
Amer J Ophthalmol 209(1): 35-44, 2020
・広角眼底自発蛍光像(UWF-FAF)が網膜症の評価に有用かどうかを検討した。
・29例58眼(55.5±11.2歳)で、広角眼底自発蛍光と通常の自発蛍光検査を行ない、Humphrey 30-2と全視野120(FF-120)の結果と比較した。
・41/58眼(70.7%)で、通常のFAFで撮影できない周辺部でUWF-FAFでは低自発蛍光(23眼39.7%)、あるいは高自発蛍光(38眼65.5%)が確認できた。
・また5眼8.6%で、通常FAFとUWF-FAFとで網膜症の検出に違いがあった。
・重症の網膜症の多くでは鼻側周辺部に強い低自発蛍光がみられた。
・異常FAFの部位はFF120で見えなかった点の数や、30-2テストでのMDあるいはPSD結果と有意に相関していた(いずれもp<0.001)(TY)

2020
220巻

角膜内リングによる角膜実質壊死

American Journal of Ophthalmology 220巻 (12号) 2020

Biomicroscopic findings and management of anterior stromal necrosis after long-term impolantation of Intacs.
Abad JC et al(Peru)
Amer J Ophthalmol 220(12): 170-176, 2020
・Intacs角膜内リング(ICRS)を挿入し、角膜前実質の壊死(ASN)を発症した症例を検討した。
・2006-2011年に84例127眼に215個のICRSを移植し、5年以上の経過観察のできた98/127眼(77.16%)を対象とした。
・このうち7例9眼(9.18% 95%CI=4.29-16.72%)にASNを発症した。
・移植からASN発現迄の期間は10.5±1.3年であった(TY)

2020
219巻

硝子体手術後の視野欠損について

American Journal of Ophthalmology 219巻 (11号) 2020

Paracentral and cecocentral scotomas after pars plana vitrectomy for rhegmatogenous retinal detachment.
Khurana RN et al(CA USA)
Amer J Ophthalmol 219(11): 163-169, 2020
・裂孔原性網膜剥離RRDに対する硝子体手術後の傍中心ならびに中心暗点について検討した。
・2013/1から2018/12に一人の術者が23Gあるいは25GでPPVを行った140例の内、視野欠損を来した9症例(6.4% 平均61歳)をretrospectiveに検討した。
・9例全例が右眼の発症で、そのうち6例は黄斑剥離は発症していなかった。
・9例中7例は術後1週間で中心暗点を自覚しており、9例全例が耳下側視野の欠損が含まれており、OCT上では上鼻側神経節細胞の欠損がみられ、網膜外傷の可能性が示唆された。
・9例中2例は中心暗点による視力低下がみられた。
・原因として空気ガス置換中の還流針からの空気流による外傷が考えられ、空気置換後はゆっくりしたガス注入を心がけるべきだと考えた。(TY)

2020
219巻

シェーグレン症候群の調査

American Journal of Ophthalmology 219巻 (11号) 2020

Ocular Manifestations and Burden Related to Sjögren Syndrome: Results of a Patient Survey
American J Ophthal 219(11): 40-48, 2020
https://doi.org/10.1016/j.ajo.2020.05.043.
シェーグレン症候群患者のほとんどは人口涙液等使用していて継続率も高い
QOL への影響は全身症状が最も強くドライアイは2 番目
米国のシェーグレン症候群患者2961 名を調査
女性96%、男性4%
⚫ Table2. 1 年間の重症感のある症状
➢ ドライアイ 53%
➢ ドライマウス 48%
➢ 倦怠感 45%
➢ 睡眠障害 19%
➢ 皮膚乾燥・掻痒感 17%
➢ 朝のこわばり 15%
⚫ Table3. ドライアイに対する治療
➢ 人工涙液 91%使用中、97%使用歴あり
➢ 自己血清点眼 6%使用中、21%使用歴あり
➢ 涙点プラグ等 29%使用中、55%使用歴あり
➢ 抗菌薬軟膏 10%使用中、54%使用歴あり
➢ その他補助治療 25%使用中、50%使用歴あり
⚫ Table4― 自覚症状による生活困難度
➢ 倦怠感が最も影響強い
➢ 次にドライアイ
人口涙液点眼は導入率、継続率ともに非常に高かった。
診断基準に含まれていないが、倦怠感が最もつらい症状であるよう。
眼科症状のみで受診した場合でも、シェーグレン症候群は全身合併症もあるので内科への受診勧奨が重要。
全身症状に対してヒドロキシクロロキンが使用される可能性(適応外)がある(THY)

2020
217巻

近視性中心窩分離症と特発性網膜前膜網膜分離症との違い

American Journal of Ophthalmology 217巻 (9号) 2020

Comparison of vitreomacular interface changes in myopic foveoschisis and idiopathic epiretinal membrane foveoschisis.
Vogt D et al(Germany)
Amer J Ophthalmol 217(9): 152-161, 2020
・黄斑部の硝子体接触面(vitreomacular interface:VMI)を近視性の中心窩網膜分離(mFS)と特発性網膜前膜網膜分離(iERM-FS)に分けて検討した。
・mFSとiERM-FS、それぞれ5例の網膜前膜とILM組織を取り、immunocytochemistryと透過電顕で調べた。
・mFSとiERM-FSの細胞とコラーゲンは殆ど同じであった。
・mFSの3例では、うねった網膜の薄いILMと断片的な網膜神経線維層がみられたが、iERM-FSではそのような所見はなかった。
・黄斑前膜の組織は両者ともよく似ているが、高度近視によるmFSではILMの病的な異常所見が特異的であるため、ILM剥離の際の網膜障害のリスクがある。(TY)

2020
217巻

緑内障による黄斑部視野障害は顔の認識障害に関係する

American Journal of Ophthalmology 217巻 (9号) 2020

Macular Damage in Glaucoma is Associated With Deficits in Facial Recognition
Sitara H. Hirji et al (USA)
Am J Ophthalmol 217(9):1-9,2020
72名144眼(平均年齢67.0±11.6歳、68.1%がヨーロッパ人、56.9%が女性)を対象
視力、コントラスト感度、視野検査(SITA 10-2と24-2)、OCT、屈折値、レンズの状態、眼軸長を測定。OCTと一致する視野障害患者
中心10°の視野障害の程度でbetter eyeとworse eyeに分け、Cambridge Face Memory Test (CFMT)で顔の認識テストを行った。すべての患者に認知機能テストを実施。

 

 

<結果>
Better eye
44眼(61%)は黄斑部ダメージあり 28眼(39%)はダメージなし
視力、白内障の程度、眼軸、等価球面、乱視に差は無し
黄斑部にダメージがある群の方が無い群と比べて顔認識に有意な低下を認めた
多変量解析で10-2のMD、年齢、コントラスト感度、βブロッカーの使用が顔認識の低下と関連していた
Worse eye
63眼(87.50%)は黄斑部ダメージあり 9眼(12.50%)はダメージなし
視力、白内障の程度、眼軸、等価球面、乱視に差は無し
黄斑部にダメージがある群の方が無い群と比べて顔認識に有意な低下を認めた
多変量解析で10-2のMD、年齢が顔認識の低下と関連していた

緑内障性の黄斑部ダメージがあると、中心部の視力が良好であっても顔を認識する能力が低下している。これはコントラスト感度によって一部仲介されているようであるが、10-2のMDは重要な予測因子であった。(MM)

2020
217巻

デスメ膜角膜内皮移植:10年間の移植片の生存と臨床転帰

American Journal of Ophthalmology 217巻 (9号) 2020

Descemet Membrane Endothel ial Keratoplasty: Ten-Year Graft Survival and Clinical Outcomes
I Vasiiiauskaite et al. (Germany)
Am J Ophthalmol 2020(9);217:114-120.
・Descemet膜内皮角膜移植(DMEK)後10年の移植片生存と臨床経過を評価する。
・技術の学習曲線として定義された最初の25眼のDMEK眼を除外した後、次の連続した100眼のDMEK眼(88人)を対象とした。生存率、最高矯正視力[BCVA]、中心内皮細胞密度[ECD]、および中心角膜厚[CCT]、術後合併症を術後10年まで評価した。
・フックス角膜ジストロフィ(94%)、移植片不全(4%)、水疱性角膜症(2%)。
・DMEKの5年後と10年後で、100眼のうちそれぞれ68眼と57眼が分析に利用できた。これらの症例のうち、術後5年82%と術後10年89%が術後20/25以上のBCVAに達した。術前ECDは術後5年で59%、10年で68%減少した(平均術前ドナーECDは2,593±178 cells / mm2、術後5年1,083±432 cells / mm2、術後10年で845±342 cells / mm2)。 CCTは、術前平均668±74μm、術後5年および10年でそれぞれ540±33μm、553±43μmだった。CCTは術前CCTと比較して10年で16%減少したが、5年と10年の追跡期間で2±6%の有意な増加を示した(P <0.023)。
・10年以内に4%が拒絶反応を起こした。
・移植片の生存確率は、術後5年および10年でそれぞれ0.83および0.79だった。
・移植片不全は6眼(術後平均60±33ヶ月)だった。再処置は前房内空気再注入7眼、再移植は19眼(術後平均29±34か月)だった。
・DMEKは、術後合併症の発生率が低く、移植片の寿命が期待できる安定した臨床結果を示した。(CH)

2020
216巻

COVID19に対するクロロキン治療

American Journal of Ophthalmology 216巻 (8号) 2020

COVID-19 and chloroquine/hydroxychloroquine: Is there ophthalmological concern?
Marmor MF(CA USA)
Amer J Ophthalmol 216(8): A1-A2, 2020
・Chloroquine(CQ)やhydroxychloroquine(HCQ)は重篤な呼吸器症候群SARSウイルス感染に有効であり、COVID-19感染に対する有効性に対し、各国で少なくとも10種の試験が行なわれている。
・中国ではCQの500mgを1日2回10日間、あるいはHCQの400mgを1日4回の試験がなされているが、網膜障害についての問題がある。
・SLEやリウマチ性疾患に対しての長期投与は5mg/Kg/day以下が推奨されているが、COVID-19に対する治療量はこの4-5倍に当たる。
・短期間の1000~1200mg/day投与という方法も検討されており、推奨量の5-6倍量で2週間未満、あるいは3-4倍量で数ヶ月未満なら大丈夫との考えもあるが、眼科医の眼底管理の下で行われるべきだろう。(TY)

2020
216巻

緑内障眼における前部強膜孔

American Journal of Ophthalmology 216巻 (8号) 2020

Clinical assessment of scleral canal area in glaucoma using spectral-domain optical coherence tomography.
Sawada Y et al(秋田大)
Amer J Ophthalmol 216(8): 28-36, 2020
・緑内障患者に対し、SD-OCTを用いて前部強膜孔ASC(anterior scleral canal) を調べた。
・緑内障患者103名206眼を片眼緑内障33名と両眼性緑内障70名に分けて調査した。
・視神経乳頭を中心にしてenhanced depth ED-OCTを行い、ASC開口面積、ASCの最大面積を求めた。
・片眼緑内障者ではASC開口面積、最大面積ともに緑内障眼では健常眼よりも有意に大きかった(いずれもp<0.001)。
・両眼緑内障者では、この両者は、視野欠損が強い眼では少ない眼より有意に大きかった(p=0.008とp=0.0018)。
・これらの値の個人差は緑内障者では正常者よりも有意に大きく、緑内障であっても、篩板が前方に移動し、ASCが小さくなっている緑内障もあることが電顕での結果から分かっている。
・このASC面積と緑内障との関連については更なる検討が必要である。(TY)

2020
216巻

前眼部OCTによる前房炎症評価の試み

American Journal of Ophthalmology 216巻 (8号) 2020

Quantitative analysis of anterior chamber inflammation using the novel CASIA2 optical coherence tomography.
Lu M et al(China)
Amer J Ophthalmol 216(8): 59-68, 2020
・CASIA2を用いて、ぶどう膜炎の前房炎症所見(セル、フレア、KP)を評価できないかを検討した。
・KPは角膜後面の平坦さを用いて評価した。
・前房セルはImage J softwareを用い、フレアはAdobe Photoshop CS6 softwareを用い、KPも新規に開発したソフトを用いて解析した。(TY)

2020
216巻

線維柱帯切除術におけるMMC投与法の違い

American Journal of Ophthalmology 216巻 (8号) 2020

A comparison of trabeculectomy surgery outcomes with mitomycin-C applied by intra-tenon injection versus sponge.
Lim M et al(CA USA)
Amer J Ophthalmol 216(8): 243-256, 2020
・マイトマイシンC(MMC)をテノン内注射で投与した場合とスポンジで投与した場合を比較した。
・症例は566名の原発ならびに併発緑内障で、18歳未満、光覚なし眼、緑内障手術の既往などは除外したため、316眼で調査した。
・131眼がスポンジ、185眼がテノン注射である。
・注射方法は30G針でMMC濃度は0.05-0.4mg/ml(平均0.1mg/ml)で、0.1ml注入した。
・テノン嚢下を開放後に生食で洗浄した。
・スポンジの場合は0.1-0.4mg/mlのMMCを2-4分接触させた後、生食で洗浄した。
・術後24か月後の経過はスポンジ(23.2→11.0:10.9減)、注射(20.7→11.6:8.5減)で、眼圧には有意差がなかったが、変化量はスポンジの方が有意に大きかった(p=0.038)。ただし、baseline眼圧はスポンジ群が高かった。
・濾過胞の出来具合はスポンジ群ではピンと張ったり、血管新入があったり、encapsulatedになった率が有意に高かった(p=0.046)。
・生命表分析ではFornix-basedよりもLimbus-basedの方が有意に長期間、眼圧コントロールが良かったが、MMC投与法については有意差はなかった(TY)

2020
214巻

正常者の脈絡膜厚と最高視力

American Journal of Ophthalmology 214巻 (6号) 2020

Choroidal thickenss in youg adults and its association with visual acuity.
Lee SSY et al(Australia)
Amer J Ophthalmol 214(6): 40-51, 2020
・脈絡膜厚と最高矯正視力BCVAとの関係を若い正常者で検討した。
・19歳から30歳の741名の若い正常者(男が49%)でBCVA、調節麻痺後の屈折力、眼軸など、EDI-OCTなどを測定した。
・中心窩1mm径(central)、1-3mm径(inner)、3-5mm径(outer)の脈絡膜厚を測定した。
・中心窩1mm径の脈絡膜厚は中央値370(312-406)μであり、上inner、下inner、centralで最も厚く(370-373μ)、鼻側outer(256μ)で最も薄かった。
・Centerの脈絡膜厚が薄いことは、より若い、女性、非白人、近視と相関があった(p<0.013)。
・BCVAが良い事とcenter脈絡膜厚が厚いことの間には、年齢、性、人種や眼軸などで補正した後でも相関があった(p<0.001)。
・但し、この関係はcentral脈絡膜厚が300μ以下の場合で、300μを越えた場合にはみられなかった。(TY)

2020
211巻

運動するとOCTAでCNVが見つけやすくなる

American Journal of Ophthalmology 211巻 (3号) 2020

Chronic Neovascular Central Serous Chorioretinopathy: A Stress/Rest Optical Coherence Tomography Angiography Study
Lupidi, Marco et al.(Italy)
Amer J Ophthalmol 211(3) : 63 – 75, 2020
【目的】
慢性中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)患者における脈絡膜新生血管(CNV)の画像化において、運動時と安静時との光干渉断層計血管造影(OCTA)所見を比較。
【デザイン】
プロスペクティブ、コホート研究
【方法】
多施設共同研究、慢性CSCで扁平かつ不規則な色素上皮剥離(FIPED)を有する連続した29人の患者を対象
全患者に安静時およびストレス時(ハンドグリップテスト[HGT])のOCTAを実施
全身の血行動態データを検査中に記録
安静時およびストレス時のOCTAのen-face画像および断面図を定性的に比較、CNVによるフローシグナルの程度を確認
en-face OCTAは、ストレス状態における新生血管パラメータの変化率を評価するために、さらに自動化された定量分析を施行
【結果】
血圧はHGT中に有意に増加(P = 0.001)
en-face画像と断面像の両方を考慮すると、安静時OCT-Aで13眼、ストレスOCT-Aで22眼にCNVが同定された(P = 0.001)
断面像は、安静時(P = 0.125)とストレス(P = 0.001)時の両方の条件の下でCNVシグナルを検出する上で、en-face画像よりも感度が高かった
定量分析では、ストレス時のOCT-Aで有意に大きい新生血管面積とフラクタル次元を示した(P = 0.002)
【結論】
HGT中にOCT-A検査を行うことで、慢性CSCにおけるCNVの検出感度が向上する
血圧上昇に伴う血管新生血管灌流の増加は、この疾患における脈絡膜循環障害と矛盾せず、この疾患におけるCNVに関する新たな議論の余地を示す(MK)

2020
211巻

ルセンティスでDM患者の硬性白斑は引くが、浮腫の無い眼では視力改善しない

American Journal of Ophthalmology 211巻 (3号) 2020

Effect of Intravitreal Ranibizumab on Intraretinal Hard Exudates in Eyes with Diabetic Macular Edema
Srinivas, Sowmya et al.(US-CA)
Amer J Ophthalmol 211(3), 183 – 190, 2020
【目的】
糖尿病黄斑浮腫(DME)を有する眼において、0.3mgのラニビズマブを毎月1回、眼内に注射(IVR)することで、硬性白斑(HE)に対する効果を検討し、黄斑厚との相関を検討
【対象と方法】
DMEを有する24名24眼、プロスペクティブ縦断研究
以下の二群に無作為に割り付け;①黄斑浮腫が消失するまで毎月IVRを受ける群、②黄斑浮腫とHEの両方が消失するまで毎月IVRを受ける群
すべての被験者は、ベースライン時と12ヵ月間毎月、SD-OCT(Cirrus OCT)を受けた
ベースライン時と12ヵ月目の平均黄斑浮腫面積と平均黄斑厚をpaired t検定を用いて比較し、ピアソン分析で相関関係を調査
【結果】
平均年齢65(±8.55)歳
ベースライン(0.48±0.43mm2)から12ヵ月目(0.17±0.19mm2)までの平均HE面積に有意な減少(P=0.001)
最良矯正視力は、ベースライン時63.38(±7.92)文字から12ヵ月目の76.38(±8.93)文字まで有意に増加(P<0.001)
黄斑部肥厚がない場合に、持続性HEに対して月1回の注射治療を継続することによる追加的な視力改善効果は認められず
【結論】
DMEを有する眼において、毎月のラニビズマブの眼内注射により、黄斑部の厚さと体積の減少と平行して、網膜内HEが有意に減少した
ベースライン時の中心窩HEは視力の悪化と関連しており、浮腫がない状態で持続的なHEに対して治療を継続しても視力の改善にはつながらなかった(MK)

2020
211巻

80歳以上のドナーからの角膜を用いたデスメ膜内皮角膜移植の結果

American Journal of Ophthalmology 211巻 (3号) 2020

Outcome of Descemet Membrane Endothelial Keratoplasty Using Corneas from Donors≧80 Years of Age
FRIEDERIKE SCHAUB ,et al. (Germany)
Am J Ophthalmol. 2020(3);211:200-206.
目的: 80歳以上のドナーからの角膜がデスメ膜角膜内皮移植術(DMEK)に適しているかどうかを調査する。
対象と方法:高齢ドナー(80歳以上)を若いドナー(<80歳)と比較した。 DMEK術後3および6か月、1、2、および3年の最高眼鏡矯正視力(BSCVA)、内皮細胞密度(ECD)、角膜中心厚(CCT)と前房内再空気注入率。
DMEKの適応には、FEDが86.6%、PBKが8.9%、ジストロフィー(先天性遺伝性内皮ジストロフィー、後部多形性角膜ジストロフィーを含む)0.9%、および以前に実施されたDMEKまたはDSAEK後の移植片不全1.1%、全層角膜移植術後の移植片不全2.5%。
結果:DMEK 術後1,748 眼の内、284眼(16.2%)は高齢ドナー組織(平均ドナー年齢83.96±3.19歳)を使用、1,464眼(83.7%)は若いドナー組織(平均ドナー年齢65.27±9.57歳)を使用した。ドナー組織術前平均ECDはそれぞれ2,678.27±181.36cells / mm2、2,715.49±223.79cells / mm2だった。
BSCVAの結果は、術後のすべての時点で同等だった。若いドナーのCCTは、術後早期でより厚かったが、中期では両グループで同等だった。 ECD値は、術前および術後2年間で80歳未満のドナーで有意に高かった(P<0.024)。再空気注入率は両グループで同等だった。
結論:80歳以上の高齢のドナーは、若いドナーと比較してDMEK手術後に同等の結果をもたらす。DMEK手術のために80歳以上のドナーからの角膜を使用することは、世界的なドナー不足に有効である。(CH)

2020
209巻

悪性緑内障に有効な治療と回復までの時間

American Journal of Ophthalmology 209巻 (1号) 2020

Atalie C et al (USA)
Am J Ophthalmolo 209(1):141-150, 2020
・2007-2017年にDuke Glaucoma Serviceにて悪性緑内障(MG)と診断された55名64眼をレトロスペクティブに調査し、どのような因子が有効であるかを調査
・過去の手術内容と回数、MGの既往、緑内障病歴の有無、ある場合は緑内障の病型、レンズの状態、術前眼圧、点眼・内服状態、MGに対する治療内容、術後の前眼部所見、視力、眼圧を調査
・Anatomic resolution(AR) : 散瞳薬を用いずに中央、周辺部の前房が深くなった状態
・Complete resolution(CR) : anatomic resolutionに加えて、IOP<22mmHg
・およそ3/4の症例がACGであり、MGを生じた手術は緑内障手術であったが、2例はVitrectomy術後であった(1例はRD,もう1例は角膜移植+Tubeインプラント硝子体挿入)
・60.94%(n=39/64)は手術後30日以内にMGと診断
・1例を除くすべてで最初は保存治療(1例は術中診断のためその場でPPVを実施)
・YAGを含めた保存治療は12.5%(8/64)で有効だったが、87.5%(56/64)は手術治療が必要であった
・98.4%(63/64)で最終的にCRとなったが1例は眼球摘出となった
・Vitを行ってもMGを発症した症例があり、またVitを行っても追加手術が必要となる症例があった
・影響する因子
・3回未満の術前手術、3剤未満の術前点眼、30mmHg以下の術前眼圧の場合、VitrectomyがCRとなりやすかった
・レンズの状態、以前のYAG治療歴は有意差なし
・診断から30日以内のVitではCRとなりやすいようだが有意差は出なかった
・外来でのYAG治療、CAIの内服は有効
・Vitrectomy治療:30日以内の手術;視力改善は有意差ありだが、眼圧、点眼数は有意差なし(改善までの期間は有意差あり:後述)
・PPVでもCore Vitでも視力、眼圧、点眼数に有意差なし
・回復までの期間
・解剖学的構造(12.7±22.9週)、IOP(23.8±66.5週)、最終視力(28.8±45.8週) 有意差あり
・治療方法での差は無し
・術後炎症によるものや、前眼部の構造回復とTMの機能回復に差があるためか。
・クリニックでのHealonによる前房形成、YAGによる前部硝子体膜切除、点眼と散瞳薬に加えてCAIの内服はMGの回復を速めた
・CAI内服は房水産生とともに、硝子体腔の脱水効果によってMGに対して有効であったと考えられる
・前房形成は硝子体のレクトミーWindowへの嵌頓や浅前房によりTM閉塞し機能低下をきたすのを予防するためか?
・解剖学的構造は3剤未満の点眼群、CAIの内服が有意に短期間に改善した
・閉塞隅角緑内障はリスク高い
・レクトミー術後は構造、眼圧、視力ともに回復が遅い
・30日以内のVit:視力、眼圧、構造変化ともに有意に短縮したがCRへの影響は少ない(MM)

2019
208巻

近赤外光での自発蛍光

American Journal of Ophthalmology 208巻 (12号) 2019

Improved diagnosis of retinal laser injuries using near-infrared autofluorescence.
De Silva SR et al(UK)
Amer J Ophthalmol 208(12): 87-93, 2019
・近赤外光を使用したの自発蛍光(NIR-AF)の有効性について12例のレーザー網膜外傷例を対象に検討した。
・SLOでは488 nm励起光と500 nmのバリアフイルター使用。
・Optosでは532 nmの緑色の励起光を使用、眼底カメラ型では580 nmの励起光と600 nmのバリアフィルターを使用しているが、このNIR-AFでは787nmの近赤外光を励起光として使用し、RPEや脈絡膜内のmelaninとmelanolipofuscinから発生した信号を受け取ると考えられる。
・NIR-AFでは中心が高輝度、周辺が低輝度の像が得られた。
・通常の眼底カメラでは色素変化としか映っていない。
・OCTではellipsoid zoneの欠損として描写されている。(TY)

2019
206巻

プロスタグランジン点眼で瞳孔間距離が狭くなる

American Journal of Ophthalmology 206巻 (22号) 2019

Shortening of Interpupillary Distance after Instillation of Topical Prostaglandin Analog Eye Drops
Ichiya Sano, et.al.(自治医大)
Am J Ophthalmol 2019; 206:11-16
・2004-2017、両眼にプロスタグランジン(PGA)点眼を開始した152例をretrospectiveに解析
・コントロール群としてPGA点眼未使用の緑内障患者61例
・PGA点眼は2-24M継続、瞳孔間距離(IPD)は点眼開始0-2M前および開始後3-24Mにオートレフラクトメーターを用いて測定
・IPDは治療後に有意に短縮;PGA群 -0.80±2.1mm(P<0.001)、コントロール群 0.05±0.96mm(P=0.69)

・ビマトプロスト点眼群(-2.20±0.97mm)が他のPGA群(-0.65±2.09mm)よりも有意に短縮量が大きい(P<0.001)
・IPD≧2mm短縮;ビマトプロスト85.7%、トラボプロスト20.0%、ラタノプロスト18.2%、タフルプロスト17.2%
・IPD≧3mm短縮;ビマトプロスト35.7%、トラボプロスト12.0%、ラタノプロスト14.5%、タフルプロスト12.1%
・PGA点眼で24M以内にIPDが有意に減少する。その効果はビマトプロストが他のPGAより大きい。オートレフラクトメーターは非侵襲的で迅速にプロスタグランジン関連眼窩周囲症(PAP)を数値化してくれる。(MK)

過去のアーカイブ