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American Journal of Ophthalmology

2020
217巻

デスメ膜角膜内皮移植:10年間の移植片の生存と臨床転帰

American Journal of Ophthalmology 217巻 (9号) 2020

Descemet Membrane Endothel ial Keratoplasty: Ten-Year Graft Survival and Clinical Outcomes
I Vasiiiauskaite et al. (Germany)
Am J Ophthalmol 2020(9);217:114-120.
・Descemet膜内皮角膜移植(DMEK)後10年の移植片生存と臨床経過を評価する。
・技術の学習曲線として定義された最初の25眼のDMEK眼を除外した後、次の連続した100眼のDMEK眼(88人)を対象とした。生存率、最高矯正視力[BCVA]、中心内皮細胞密度[ECD]、および中心角膜厚[CCT]、術後合併症を術後10年まで評価した。
・フックス角膜ジストロフィ(94%)、移植片不全(4%)、水疱性角膜症(2%)。
・DMEKの5年後と10年後で、100眼のうちそれぞれ68眼と57眼が分析に利用できた。これらの症例のうち、術後5年82%と術後10年89%が術後20/25以上のBCVAに達した。術前ECDは術後5年で59%、10年で68%減少した(平均術前ドナーECDは2,593±178 cells / mm2、術後5年1,083±432 cells / mm2、術後10年で845±342 cells / mm2)。 CCTは、術前平均668±74μm、術後5年および10年でそれぞれ540±33μm、553±43μmだった。CCTは術前CCTと比較して10年で16%減少したが、5年と10年の追跡期間で2±6%の有意な増加を示した(P <0.023)。
・10年以内に4%が拒絶反応を起こした。
・移植片の生存確率は、術後5年および10年でそれぞれ0.83および0.79だった。
・移植片不全は6眼(術後平均60±33ヶ月)だった。再処置は前房内空気再注入7眼、再移植は19眼(術後平均29±34か月)だった。
・DMEKは、術後合併症の発生率が低く、移植片の寿命が期待できる安定した臨床結果を示した。(CH)

2020
216巻

COVID19に対するクロロキン治療

American Journal of Ophthalmology 216巻 (8号) 2020

COVID-19 and chloroquine/hydroxychloroquine: Is there ophthalmological concern?
Marmor MF(CA USA)
Amer J Ophthalmol 216(8): A1-A2, 2020
・Chloroquine(CQ)やhydroxychloroquine(HCQ)は重篤な呼吸器症候群SARSウイルス感染に有効であり、COVID-19感染に対する有効性に対し、各国で少なくとも10種の試験が行なわれている。
・中国ではCQの500mgを1日2回10日間、あるいはHCQの400mgを1日4回の試験がなされているが、網膜障害についての問題がある。
・SLEやリウマチ性疾患に対しての長期投与は5mg/Kg/day以下が推奨されているが、COVID-19に対する治療量はこの4-5倍に当たる。
・短期間の1000~1200mg/day投与という方法も検討されており、推奨量の5-6倍量で2週間未満、あるいは3-4倍量で数ヶ月未満なら大丈夫との考えもあるが、眼科医の眼底管理の下で行われるべきだろう。(TY)

2020
216巻

緑内障眼における前部強膜孔

American Journal of Ophthalmology 216巻 (8号) 2020

Clinical assessment of scleral canal area in glaucoma using spectral-domain optical coherence tomography.
Sawada Y et al(秋田大)
Amer J Ophthalmol 216(8): 28-36, 2020
・緑内障患者に対し、SD-OCTを用いて前部強膜孔ASC(anterior scleral canal) を調べた。
・緑内障患者103名206眼を片眼緑内障33名と両眼性緑内障70名に分けて調査した。
・視神経乳頭を中心にしてenhanced depth ED-OCTを行い、ASC開口面積、ASCの最大面積を求めた。
・片眼緑内障者ではASC開口面積、最大面積ともに緑内障眼では健常眼よりも有意に大きかった(いずれもp<0.001)。
・両眼緑内障者では、この両者は、視野欠損が強い眼では少ない眼より有意に大きかった(p=0.008とp=0.0018)。
・これらの値の個人差は緑内障者では正常者よりも有意に大きく、緑内障であっても、篩板が前方に移動し、ASCが小さくなっている緑内障もあることが電顕での結果から分かっている。
・このASC面積と緑内障との関連については更なる検討が必要である。(TY)

2020
216巻

前眼部OCTによる前房炎症評価の試み

American Journal of Ophthalmology 216巻 (8号) 2020

Quantitative analysis of anterior chamber inflammation using the novel CASIA2 optical coherence tomography.
Lu M et al(China)
Amer J Ophthalmol 216(8): 59-68, 2020
・CASIA2を用いて、ぶどう膜炎の前房炎症所見(セル、フレア、KP)を評価できないかを検討した。
・KPは角膜後面の平坦さを用いて評価した。
・前房セルはImage J softwareを用い、フレアはAdobe Photoshop CS6 softwareを用い、KPも新規に開発したソフトを用いて解析した。(TY)

2020
216巻

線維柱帯切除術におけるMMC投与法の違い

American Journal of Ophthalmology 216巻 (8号) 2020

A comparison of trabeculectomy surgery outcomes with mitomycin-C applied by intra-tenon injection versus sponge.
Lim M et al(CA USA)
Amer J Ophthalmol 216(8): 243-256, 2020
・マイトマイシンC(MMC)をテノン内注射で投与した場合とスポンジで投与した場合を比較した。
・症例は566名の原発ならびに併発緑内障で、18歳未満、光覚なし眼、緑内障手術の既往などは除外したため、316眼で調査した。
・131眼がスポンジ、185眼がテノン注射である。
・注射方法は30G針でMMC濃度は0.05-0.4mg/ml(平均0.1mg/ml)で、0.1ml注入した。
・テノン嚢下を開放後に生食で洗浄した。
・スポンジの場合は0.1-0.4mg/mlのMMCを2-4分接触させた後、生食で洗浄した。
・術後24か月後の経過はスポンジ(23.2→11.0:10.9減)、注射(20.7→11.6:8.5減)で、眼圧には有意差がなかったが、変化量はスポンジの方が有意に大きかった(p=0.038)。ただし、baseline眼圧はスポンジ群が高かった。
・濾過胞の出来具合はスポンジ群ではピンと張ったり、血管新入があったり、encapsulatedになった率が有意に高かった(p=0.046)。
・生命表分析ではFornix-basedよりもLimbus-basedの方が有意に長期間、眼圧コントロールが良かったが、MMC投与法については有意差はなかった(TY)

2020
214巻

正常者の脈絡膜厚と最高視力

American Journal of Ophthalmology 214巻 (6号) 2020

Choroidal thickenss in youg adults and its association with visual acuity.
Lee SSY et al(Australia)
Amer J Ophthalmol 214(6): 40-51, 2020
・脈絡膜厚と最高矯正視力BCVAとの関係を若い正常者で検討した。
・19歳から30歳の741名の若い正常者(男が49%)でBCVA、調節麻痺後の屈折力、眼軸など、EDI-OCTなどを測定した。
・中心窩1mm径(central)、1-3mm径(inner)、3-5mm径(outer)の脈絡膜厚を測定した。
・中心窩1mm径の脈絡膜厚は中央値370(312-406)μであり、上inner、下inner、centralで最も厚く(370-373μ)、鼻側outer(256μ)で最も薄かった。
・Centerの脈絡膜厚が薄いことは、より若い、女性、非白人、近視と相関があった(p<0.013)。
・BCVAが良い事とcenter脈絡膜厚が厚いことの間には、年齢、性、人種や眼軸などで補正した後でも相関があった(p<0.001)。
・但し、この関係はcentral脈絡膜厚が300μ以下の場合で、300μを越えた場合にはみられなかった。(TY)

2020
211巻

運動するとOCTAでCNVが見つけやすくなる

American Journal of Ophthalmology 211巻 (3号) 2020

Chronic Neovascular Central Serous Chorioretinopathy: A Stress/Rest Optical Coherence Tomography Angiography Study
Lupidi, Marco et al.(Italy)
Amer J Ophthalmol 211(3) : 63 – 75, 2020
【目的】
慢性中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)患者における脈絡膜新生血管(CNV)の画像化において、運動時と安静時との光干渉断層計血管造影(OCTA)所見を比較。
【デザイン】
プロスペクティブ、コホート研究
【方法】
多施設共同研究、慢性CSCで扁平かつ不規則な色素上皮剥離(FIPED)を有する連続した29人の患者を対象
全患者に安静時およびストレス時(ハンドグリップテスト[HGT])のOCTAを実施
全身の血行動態データを検査中に記録
安静時およびストレス時のOCTAのen-face画像および断面図を定性的に比較、CNVによるフローシグナルの程度を確認
en-face OCTAは、ストレス状態における新生血管パラメータの変化率を評価するために、さらに自動化された定量分析を施行
【結果】
血圧はHGT中に有意に増加(P = 0.001)
en-face画像と断面像の両方を考慮すると、安静時OCT-Aで13眼、ストレスOCT-Aで22眼にCNVが同定された(P = 0.001)
断面像は、安静時(P = 0.125)とストレス(P = 0.001)時の両方の条件の下でCNVシグナルを検出する上で、en-face画像よりも感度が高かった
定量分析では、ストレス時のOCT-Aで有意に大きい新生血管面積とフラクタル次元を示した(P = 0.002)
【結論】
HGT中にOCT-A検査を行うことで、慢性CSCにおけるCNVの検出感度が向上する
血圧上昇に伴う血管新生血管灌流の増加は、この疾患における脈絡膜循環障害と矛盾せず、この疾患におけるCNVに関する新たな議論の余地を示す(MK)

2020
211巻

ルセンティスでDM患者の硬性白斑は引くが、浮腫の無い眼では視力改善しない

American Journal of Ophthalmology 211巻 (3号) 2020

Effect of Intravitreal Ranibizumab on Intraretinal Hard Exudates in Eyes with Diabetic Macular Edema
Srinivas, Sowmya et al.(US-CA)
Amer J Ophthalmol 211(3), 183 – 190, 2020
【目的】
糖尿病黄斑浮腫(DME)を有する眼において、0.3mgのラニビズマブを毎月1回、眼内に注射(IVR)することで、硬性白斑(HE)に対する効果を検討し、黄斑厚との相関を検討
【対象と方法】
DMEを有する24名24眼、プロスペクティブ縦断研究
以下の二群に無作為に割り付け;①黄斑浮腫が消失するまで毎月IVRを受ける群、②黄斑浮腫とHEの両方が消失するまで毎月IVRを受ける群
すべての被験者は、ベースライン時と12ヵ月間毎月、SD-OCT(Cirrus OCT)を受けた
ベースライン時と12ヵ月目の平均黄斑浮腫面積と平均黄斑厚をpaired t検定を用いて比較し、ピアソン分析で相関関係を調査
【結果】
平均年齢65(±8.55)歳
ベースライン(0.48±0.43mm2)から12ヵ月目(0.17±0.19mm2)までの平均HE面積に有意な減少(P=0.001)
最良矯正視力は、ベースライン時63.38(±7.92)文字から12ヵ月目の76.38(±8.93)文字まで有意に増加(P<0.001)
黄斑部肥厚がない場合に、持続性HEに対して月1回の注射治療を継続することによる追加的な視力改善効果は認められず
【結論】
DMEを有する眼において、毎月のラニビズマブの眼内注射により、黄斑部の厚さと体積の減少と平行して、網膜内HEが有意に減少した
ベースライン時の中心窩HEは視力の悪化と関連しており、浮腫がない状態で持続的なHEに対して治療を継続しても視力の改善にはつながらなかった(MK)

2020
211巻

80歳以上のドナーからの角膜を用いたデスメ膜内皮角膜移植の結果

American Journal of Ophthalmology 211巻 (3号) 2020

Outcome of Descemet Membrane Endothelial Keratoplasty Using Corneas from Donors≧80 Years of Age
FRIEDERIKE SCHAUB ,et al. (Germany)
Am J Ophthalmol. 2020(3);211:200-206.
目的: 80歳以上のドナーからの角膜がデスメ膜角膜内皮移植術(DMEK)に適しているかどうかを調査する。
対象と方法:高齢ドナー(80歳以上)を若いドナー(<80歳)と比較した。 DMEK術後3および6か月、1、2、および3年の最高眼鏡矯正視力(BSCVA)、内皮細胞密度(ECD)、角膜中心厚(CCT)と前房内再空気注入率。
DMEKの適応には、FEDが86.6%、PBKが8.9%、ジストロフィー(先天性遺伝性内皮ジストロフィー、後部多形性角膜ジストロフィーを含む)0.9%、および以前に実施されたDMEKまたはDSAEK後の移植片不全1.1%、全層角膜移植術後の移植片不全2.5%。
結果:DMEK 術後1,748 眼の内、284眼(16.2%)は高齢ドナー組織(平均ドナー年齢83.96±3.19歳)を使用、1,464眼(83.7%)は若いドナー組織(平均ドナー年齢65.27±9.57歳)を使用した。ドナー組織術前平均ECDはそれぞれ2,678.27±181.36cells / mm2、2,715.49±223.79cells / mm2だった。
BSCVAの結果は、術後のすべての時点で同等だった。若いドナーのCCTは、術後早期でより厚かったが、中期では両グループで同等だった。 ECD値は、術前および術後2年間で80歳未満のドナーで有意に高かった(P<0.024)。再空気注入率は両グループで同等だった。
結論:80歳以上の高齢のドナーは、若いドナーと比較してDMEK手術後に同等の結果をもたらす。DMEK手術のために80歳以上のドナーからの角膜を使用することは、世界的なドナー不足に有効である。(CH)

2020
209巻

悪性緑内障に有効な治療と回復までの時間

American Journal of Ophthalmology 209巻 (1号) 2020

Atalie C et al (USA)
Am J Ophthalmolo 209(1):141-150, 2020
・2007-2017年にDuke Glaucoma Serviceにて悪性緑内障(MG)と診断された55名64眼をレトロスペクティブに調査し、どのような因子が有効であるかを調査
・過去の手術内容と回数、MGの既往、緑内障病歴の有無、ある場合は緑内障の病型、レンズの状態、術前眼圧、点眼・内服状態、MGに対する治療内容、術後の前眼部所見、視力、眼圧を調査
・Anatomic resolution(AR) : 散瞳薬を用いずに中央、周辺部の前房が深くなった状態
・Complete resolution(CR) : anatomic resolutionに加えて、IOP<22mmHg
・およそ3/4の症例がACGであり、MGを生じた手術は緑内障手術であったが、2例はVitrectomy術後であった(1例はRD,もう1例は角膜移植+Tubeインプラント硝子体挿入)
・60.94%(n=39/64)は手術後30日以内にMGと診断
・1例を除くすべてで最初は保存治療(1例は術中診断のためその場でPPVを実施)
・YAGを含めた保存治療は12.5%(8/64)で有効だったが、87.5%(56/64)は手術治療が必要であった
・98.4%(63/64)で最終的にCRとなったが1例は眼球摘出となった
・Vitを行ってもMGを発症した症例があり、またVitを行っても追加手術が必要となる症例があった
・影響する因子
・3回未満の術前手術、3剤未満の術前点眼、30mmHg以下の術前眼圧の場合、VitrectomyがCRとなりやすかった
・レンズの状態、以前のYAG治療歴は有意差なし
・診断から30日以内のVitではCRとなりやすいようだが有意差は出なかった
・外来でのYAG治療、CAIの内服は有効
・Vitrectomy治療:30日以内の手術;視力改善は有意差ありだが、眼圧、点眼数は有意差なし(改善までの期間は有意差あり:後述)
・PPVでもCore Vitでも視力、眼圧、点眼数に有意差なし
・回復までの期間
・解剖学的構造(12.7±22.9週)、IOP(23.8±66.5週)、最終視力(28.8±45.8週) 有意差あり
・治療方法での差は無し
・術後炎症によるものや、前眼部の構造回復とTMの機能回復に差があるためか。
・クリニックでのHealonによる前房形成、YAGによる前部硝子体膜切除、点眼と散瞳薬に加えてCAIの内服はMGの回復を速めた
・CAI内服は房水産生とともに、硝子体腔の脱水効果によってMGに対して有効であったと考えられる
・前房形成は硝子体のレクトミーWindowへの嵌頓や浅前房によりTM閉塞し機能低下をきたすのを予防するためか?
・解剖学的構造は3剤未満の点眼群、CAIの内服が有意に短期間に改善した
・閉塞隅角緑内障はリスク高い
・レクトミー術後は構造、眼圧、視力ともに回復が遅い
・30日以内のVit:視力、眼圧、構造変化ともに有意に短縮したがCRへの影響は少ない(MM)

2019
208巻

近赤外光での自発蛍光

American Journal of Ophthalmology 208巻 (12号) 2019

Improved diagnosis of retinal laser injuries using near-infrared autofluorescence.
De Silva SR et al(UK)
Amer J Ophthalmol 208(12): 87-93, 2019
・近赤外光を使用したの自発蛍光(NIR-AF)の有効性について12例のレーザー網膜外傷例を対象に検討した。
・SLOでは488 nm励起光と500 nmのバリアフイルター使用。
・Optosでは532 nmの緑色の励起光を使用、眼底カメラ型では580 nmの励起光と600 nmのバリアフィルターを使用しているが、このNIR-AFでは787nmの近赤外光を励起光として使用し、RPEや脈絡膜内のmelaninとmelanolipofuscinから発生した信号を受け取ると考えられる。
・NIR-AFでは中心が高輝度、周辺が低輝度の像が得られた。
・通常の眼底カメラでは色素変化としか映っていない。
・OCTではellipsoid zoneの欠損として描写されている。(TY)

2019
206巻

プロスタグランジン点眼で瞳孔間距離が狭くなる

American Journal of Ophthalmology 206巻 (22号) 2019

Shortening of Interpupillary Distance after Instillation of Topical Prostaglandin Analog Eye Drops
Ichiya Sano, et.al.(自治医大)
Am J Ophthalmol 2019; 206:11-16
・2004-2017、両眼にプロスタグランジン(PGA)点眼を開始した152例をretrospectiveに解析
・コントロール群としてPGA点眼未使用の緑内障患者61例
・PGA点眼は2-24M継続、瞳孔間距離(IPD)は点眼開始0-2M前および開始後3-24Mにオートレフラクトメーターを用いて測定
・IPDは治療後に有意に短縮;PGA群 -0.80±2.1mm(P<0.001)、コントロール群 0.05±0.96mm(P=0.69)

・ビマトプロスト点眼群(-2.20±0.97mm)が他のPGA群(-0.65±2.09mm)よりも有意に短縮量が大きい(P<0.001)
・IPD≧2mm短縮;ビマトプロスト85.7%、トラボプロスト20.0%、ラタノプロスト18.2%、タフルプロスト17.2%
・IPD≧3mm短縮;ビマトプロスト35.7%、トラボプロスト12.0%、ラタノプロスト14.5%、タフルプロスト12.1%
・PGA点眼で24M以内にIPDが有意に減少する。その効果はビマトプロストが他のPGAより大きい。オートレフラクトメーターは非侵襲的で迅速にプロスタグランジン関連眼窩周囲症(PAP)を数値化してくれる。(MK)

2019
205巻

角結膜化学熱傷を前眼部OCTAで評価

American Journal of Ophthalmology 205巻 (21号) 2019

Anterior Segment Optical Coherence Tomographic Angiography Assessment of Acute Chemical Injury
Simon S.M. Fung, et al. (UK)
Am J Ophthalmol 2019;205:165-174
・化学熱傷に続く輪部結膜の虚血を通常所見と前眼部OCTAで比較
・急性化学熱傷10例15眼
・前眼部写真で輪部結膜の上皮欠損と虚血を判定
・OCTA(Optovue社のAngio Vueに前眼部用アダプター装着)で撮影した結膜輪部の虚血と比較
・輪部虚血の範囲;臨床所見 2.3±3.6時間、OCTA 5.1±4.2時間(P=0.03)ともに結膜上皮欠損の範囲(7.3±5.1時間)より狭い
・OCTA縦断解析にて血管エリアは0.2±0.1%回復
・受傷3M後の視力は、輪部結膜フルオ染色(r=0.67, P=0.006)およびOCTAによる輪部結膜虚血(r=0.76, P=0.001)と有意に相関
・OCTAは急性化学熱傷に伴う輪部結膜虚血の範囲および改善を他覚的に明らかにすることが出来る。OCTAにり、臨床所見で予想されたより広範囲に輪部虚血があることが明らかになり、それは視力改善と高く相関した。OCTAは眼の化学熱傷のマネージメントに有用である。(MK)

2019
204巻

眼表面症状のある患者のニキビダニの影響

American Journal of Ophthalmology 204巻 (20号) 2019

Demodex mite infestation and its associations with tear film and ocular surface parameters in patients with ocular discomfort
DF Rabensteiner, et al. (Austria)
Am J Ophthalmol 2019;204:7-12
【対象と方法】
・オーストリアのドライアイ眼科クリニックで眼表面の不調を訴えた連続229例
・睫毛を採取(眼瞼あたり4本、計16本)しデモデックスの存在を検索、ドライアイ症状および眼瞼パラメータとの関連を調査
【結果】
・92例(40.2%)の患者にデモデックスが存在、睫毛16本あたり平均3.3匹
・デモデックスに荒らされた患者は、’sleeves’(円柱状のフケ)の増加、Marxラインスコアの増加、マイボーム分泌物の質の低下が、健常者と比べて有意にみられた
・ドライアイのパラメータは有意差なし
【結論】
・デモデックスは眼表面の不快感を自覚する患者に頻度が高い
・本論分の患者あたりのデモデックスの数は、アジア発の既報のそれより低い
・デモデックスは瞼縁の変化と関連しており、眼瞼炎およびマイボーム腺機能不全の病態に関わっていることが示唆される(MK)

2019
208巻

レーザー網膜障害を疑ったら近赤外線画像を撮る

American Journal of Ophthalmology 208巻 (12号) 2019

Improved Diagnosis of Retinal Laser Injuries Using Near-Infrared Autofluorescence
De Silva, Samantha R. et al.(UK)
Amer J Ophthal 208(12):  87 – 93, 2019
【結論】
近年、携帯型レーザーによる網膜損傷の発生率が増加していることが報告されている
我々は、他の方法では結果が様々になる、網膜レーザー損傷の診断とその全容は、NIR-AFによって示されるのが最善であることを示した
我々は、携帯型レーザーによる二次的な黄斑損傷が疑われる患者の調査にNIR-AFを含めることを提案する。(MK)

2019
207巻

水晶体超音波乳化吸引術中の角膜内皮損傷の予防における水素の影響:前向き無作為化臨床試験

American Journal of Ophthalmology 207巻 (11号) 2019

Effects of Hydrogen in Prevention of Corneal Endothelial Damage During Phacoemulsification: A Prospective Randomized Clinical Trial
Tsutomu Igarashi, et al. (日本医科大学)
Am J Ophthalmol 207(11):10-17, 2019.
・水素(H2)は、フリーラジカル、特にヒドロキシルラジカル(・OH)を除去することが報告されている。水溶液中での超音波振動は、・OHを生成する。この研究では、灌流液にH2を溶解し、水晶体超音波乳化吸引術中の角膜内皮細胞に対する影響を調べた。
・対象と方法:両眼に同レベルの白内障(グレード3以上)がある32人(年齢:75.4±7.68歳、男性17人、女性15人)。
・水晶体超音波乳化吸引術は、片眼にH2の溶液を使用し、反対眼には従来の溶液を使用して行った。角膜の中心部の内皮細胞密度(ECD)は、術前および術後1日、1週間、3週間に非接触鏡面鏡を使用して測定された。ECDは、特に手術直後に自動測定が不正確になる可能性があるため、撮影された角膜内皮細胞(最低50個の細胞)の中心を手動でクリックする中心法を使用して測定された。
・表1の様に総手術時間、AVE、APT、EPT、使用した灌流液の量は2つのグループ間で有意差はなかった。深刻な術中合併症もなかった。
・手術前の2つのグループのECD(平均値±SD)は、対照グループでは2743±331 cells / mm2、H2グループでは2713±351 cells / mm2(P = 0.31)だった。
・ECDの減少率(平均±標準偏差)は、対照グループでは術後1日目16.0%±15.7%、1週間15.4%±16.1%、3週間18.4%±14.9%だった。 H2グループでは、術後1日目6.5%±8.7(P = .003)、1週目9.3%±11.0%(P = .039)、3週目8.5%±10.5%(P = .004)。すべての時点でH2グループで有意に小さかった。
・結論:灌流液に溶解したH2は、水晶体超音波乳化吸引中の角膜内皮損傷を軽減した。これは、水晶体超音波乳化吸引中の角膜内皮損傷のかなりの部分が酸化ストレスによって引き起こされること、およびH2が臨床的水晶体超音波乳化吸引術に有用であることを示唆している。(CH)

2019
206巻

プロスタグランディン点眼薬と瞳孔間距離

American Journal of Ophthalmology 206巻 (10号) 2019

Shortening of interpupillary distance after instillation of topical prostaglandin analog eye drops.
Sano I et al(自治医大)
Amer J Ophthalmol 206(10): 11-16, 2019
・Prostaglandin analogs(PGAs)点眼薬の持続的な使用後に発生するprostaglandin-associated periorbitopathy(PAP)の客観的な視標として瞳孔間距離(IPD)の変化を調査した。
・視力が両眼とも0.5以上で、観察期間中に手術を受けなかった152名を対象とし、61名のCtrl眼と比較した。
・Bimatoprost, travoprost, latanoprost, tafluprostの両眼使用の前と後(2-24ヶ月)で自動屈折計で瞳孔間距離を測定した。
・IPDは使用前の63.1±3.0から62.3±3.2mmとなり、-0.80±2.1mm有意に短縮した(p<0.001)が、Ctrl眼では変化がなかった。
・Bimatoprost点眼(-2.20±0.97)では他のPGAs(-0.65±2.09)より有意に短縮度が大きかった(p<0.001)。
・2mm以上、あるいは3mm以上短縮した比率はbimatoprost: 85.7%と35.7%, travoprost: 20.0%と12.0%, latanoprost: 18.2%と14.5%, tafluprost: 17.2%と12.1%であった。 (TY)

2019
206巻

PEA後の持続する前眼部ぶどう膜炎

American Journal of Ophthalmology 206巻 (10号) 2019

Risk factors associated with persistent anterior uveitis after cataract surgery.
Reddy AK et al(CO USA)
Amer J Ophthalmol 206(10): 82-86, 2019
・ぶどう膜炎や自己免疫疾患の既往のない人で合併症のない超音波白内障手術後に持続的な前眼部ぶどう膜炎(persistent anterior uveitis:PAU)を発生するリスクファクターを検索した。
・2019例3013眼のうち、48例61眼(2.0%)でPAUを発生していたが、African Americansが白色人種よりもPAUを発生しやすかった(RR=11.3 95%CI=6.4-20.2 p<0.0001)。
・視力や眼圧には影響はなかったが、61眼中18眼(29.5%)でCMEを発生していた。(TY)

2019
206巻

緑内障手術既往眼での角膜内皮移植

American Journal of Ophthalmology 206巻 (10号) 2019

Comparison of endothelial keratoplasty techniques in patients with prior glaucoma surgery: A case-matched study.
Lin SR et al(CA USA)
Amer J Ophthalmol 206(10): 94-101, 2019
・緑内障手術の既往のある眼でDescemet membrane endothelial keratoplasty (DMEK)46眼とDescemet’s stripping endothelial keratoplasty (DSEK)46眼の術後成績を比較した。
・術前のBCVA最高矯正視力は両群でほぼ同じであったが、術後の最高矯正視力の改善速度はDMEKの方がDSEKより早く、1年後に20/20以上の視力がでたのはDMEKでは3眼(7%)であったがDSEKでは0眼、1年後に20/40以上の視力が得られたのはDMEKでは22眼(47%)であったがDSEKでは7眼(15%)で有意差があった(p=0.002)。
・Graft failureはDMEKが0%、DSEKが17%で、有意差があった(P=0.006)。(TY)

2019
205巻

網膜静脈閉塞とHDL-Cコレステロール(善玉)との関連

American Journal of Ophthalmology 205巻 (9号) 2019

Retinal vein occlusion is associated with low blood high-density lipoprotein cholesterol:  A nationwide cohort study.
Kim J et al(Korea)
Amer J Ophthalmol 205(9): 35-42, 2019
・網膜静脈閉塞RVOと血液のHDL-Cコレステロール(善玉)との関連を調べた。
・韓国のNational Health Screenig Programで検査した20歳以上の23,149,403名を対象とし、RVO群は2009-2015で最初に診断された117,639名である。
・RVO群は非RVO群に比較して、年配者が多く、body mass indexが高く、ウエストが太く、空腹時血糖値や血圧が高く、総-CとLDL-C(悪玉)、脂質が高く、糸球体濾過機能とHDL-Cが低く、糖尿病や高血圧者が多かった。
・HDL-Cの上位1/4群に比較して、HDL-Cの下位1/4群はRVOのhazard ratioは1.12 (95%CI= 1.10-1.14)であった。RVO発症とHDL-Cとの相関は若年者、男性、喫煙者、DM者、高コレステロール血症者で強かった。
・また、HDL-Cの低値は肥満あるいは高血圧と有意に相乗効果があった。(TY)

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