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Journal of Cataract & Refractive Surgery

2018
44巻

眼内レンズ計算結果の違い

Journal of Cataract & Refractive Surgery 44巻 (6号) 2018

Refractive outcomes of intraocular lens power calculation using different corneal power measurements with a new optical biometer.
Savini G et al(Italy)
J Cataract Ref Surg44(6): 701-708, 2018
・Scheimpflug analyzerとPlacido disk topographerを用いて、眼軸長が24.19±1.31(21.63~28.65)mmの118眼で眼内レンズの度数計算を行った結果を報告する。
・度数計算はBarrett Universal II、Haigis、Hoffer Q、Holladay 1、SRK/T式を用いた。
・角膜曲率は角膜前面曲率だけから求めたK値と、光線追跡法を用いた角膜前面後面の全角膜屈折度(TCP1、TCP2、TCP-IOL)を求めた。
・K値は43.74±1.40、TCP1は43.13±1.35、TCP2は41.87±1.30、TCP-IOLは42.62±1.35で有意差があった(p<0.0001)。
・通常のK値での予測が一番よく、誤差は0.22から0.29以内であり、計算式にもよるが、76.2%から84.7%では0.5D以内の誤差であった。
・常数を最適化すれば、すべての測定法に有意差はなくなった。(TY)

2018
44巻

眼科用器具の洗浄ガイドライン

Journal of Cataract & Refractive Surgery 44巻 (6号) 2018

Guidlines for the cleaning and sterilization of intraocular surgical instruments.
Chang DF et al(UT USA)
J Cataract Ref Surg 44(6): 765-773, 2018
・ASCRS、AAO、外来眼科手術組織の要請で、Ophthalmic Instrument Cleaning & Sterilizatio (OICS) Task Forceが記載したガイドラインである。
・OICS Task Forceは同日の連続する手術での器具の使いまわしの安全性を2007年に報告しているが、他の報告では通常の酵素洗浄でもTASSを引き起こす微細な残留物を取り除けないとされている。
・実際の安全面での利益のない、費用や労力がかかり、2酸化炭素排出量を増やす手術室の手続きの多様性についての将来の検討が必要である。
・眼科手術では他科手術では問題にならないようなほんの僅かな洗浄剤や汚染化学物質がTASSを引き起こすことがある。
・TASSは2006年に大発生し、その後、2007‐2009年と、2009‐2012年のTASSの1454症例(69000眼の連続する白内障手術)の検討から、TASSの原因はハンドピースの不十分な洗浄とすすぎ、酵素洗剤の使用、超音波洗浄だとされた。
・2014年の調査では、前年の1年間で行われた608,117眼の手術で感染は0.02%に発生し、TASSは0.01%で発生していた。
・酵素洗浄は全ての場合に行うべきではないと考えている。
・その理由は、酵素洗剤はsubtilisinあるいはαアミラーゼ外毒素を含んでおり、いずれもオートクレブでは変性されない事、酵素洗剤で角膜内皮が痛むことが報告されていることなどであるり、酵素洗剤の不十分なすすぎがTASSの大量発生に関連したと考えられている。
・超音波チップの再使用については製造会社によって差がある。
・全チップの使い捨てはAlconであり、50回の再使用を認めているのはMicroSurgical Technology、20回の再使用チップを出しているのはAMO、Johnson & Johnsonである。
・これらの8種類のチップを10回再使用した報告では電顕でもX線検査EDSでも形態的な変化は見られなかったとの報告があり、チタン製のチップをディスポにするかどうかは任意で、臨床的な判断で決めればよいと考えられる。
・滅菌については、全ての使用説明書IFUを忠実に守ることは難しい。なぜなら、滅菌時にIFUに従って滅菌物を分けることは実際的ではないからである。
・同日の短時間サイクルでの器具使用をやっている施設は52.3%で、そのうち、49.7%がSTERISのAMSCOを使用し、44.3%がSciCanのSTATIMを使用していた。
・2酸化炭素排出量は英国では白内障手術1件当たり180KgCO2排出に相当し、これは米国車が430マイル走行と同じである。この過半数の要因はディスポ製品の使用である。
・インドではこの排出量は10分の1以下であるが、この理由は器具の再使用にある。
・ここに記したガイドラインは、科学的ならびに教育的な観点からのものであり、法的、規制的なものを順守したものではないので、個々の医師が正当性を独自で判断してほしい。(TY)

2018
44巻

多焦点IOL挿入後に生じたCarles Bonet症候群

Journal of Cataract & Refractive Surgery 44巻 (5号) 2018

Charles Bonnet syndrome secondary to multifocal intraocular lens implantation.
Kim US.
J Cataract Refract Surg. 2018 May;44(5):665. 
・69歳女性、両眼とも視力20/30、白内障以外の眼合併症、高血圧以外の全身合併症なし
・まず左眼の白内障を手術、多焦点IOL(Tecnis Symfony ZXR100)を挿入
・手術翌日から幻視を自覚(人の顔が半分ダリの絵の様に溶けている、波のようなものが動くなど)
・左眼を隠すと症状消失
・単焦点IOLに交換したのち症状治まる(MK)

2018
44巻

YAGレーザー後発白内障手術後にトーリックIOLが回転

Journal of Cataract & Refractive Surgery 44巻 (4号) 2018

Rotation of a toric intraocular lens from neodymium:YAG laser posterior capsulotomy.
Kaindlstorfer C, Kneifl M, Reinelt P, Schönherr U. (Austria)
J Cataract Refract Surg. 2018 Apr;44(4):510-511. 
・77歳男性
・白内障手術2w後にYAGレーザー後発白内障手術を施行(*視力20/16、後発白内障なし)
・YAG後に患者はハロー、二重輪郭像、霧視を自覚
・トーリックIOLが163°→45°(115°以上)回転していた
・眼軸長26.2mm(MK)

2018
44巻

年齢および疾患が一致した眼における深層層状角膜移植(DALK)および全層角膜移植(PKP)後の白内障手術

Journal of Cataract & Refractive Surgery 44巻 (4号) 2018

Cataract surgery after deep anterior lamellar keratoplasty and penetrating keratoplasty in age- and disease-matched eyes
Seika Den, et al. (東京歯科大学市川総合病院)
J Cataract Refract Surg. 2018;44(4):496-503.
目的:DALK後の白内障手術の有効性と安全性を評価し、PKP後の結果とを比較検討した。
対象と方法:DALK30眼(角膜実質瘢痕22眼、格子状角膜変性2眼、円錐角膜2眼、ヘルペス性角膜炎4眼)、
PKP30眼。
白内障手術後の内皮細胞密度(ECD)、矯正視力(CDVA)、等価球面度数、および屈折値を2群間で比較した。
結果:両群とも白内障手術中に重大な合併症は起こらなかった。後嚢破裂はPKP群のみで4眼に生じた。
DALK群では、4眼でPEA中にDescemet膜が部分的に剥離した。しかし、すべて手術終了時まで自然に再付着していた。
移植片の透明性は同様に高かった。DALK群(90.0%)とPKP群(80.0%)(P = 0.47)。
両群とも早期のECD損失を認め、手術後1ヶ月で差はなかった。しかし、PKP群のECDは時間の経過とともに徐々に減少したが、DALK群のそれは変化しなかった(1年経過観察中)。 2群間のECD減少率の差は、6ヶ月および12ヶ月で統計的に有意であった。
平均視力は、DALK群では術前0.1±3.4から1ヶ月で0.5±1.7に、PKP群ではそれぞれ0.1±3.9から0.5±1.9に有意に改善した(いずれもP=0.001)。術後1年間、同様のレベルにとどまった。測定時間ごとの両群の差は統計的に有意ではなかった。
屈折率誤差はDALK群では3ヶ月目で±1.0D以内、±2.0D以内それぞれ51.7%(29/9)、79.3%(29/29)、PKP群では48.1%(27/13) 、77.8%(21/27)であり、両群間で統計的に有意ではなかった。結果は、手術後1ヶ月、6ヶ月、および12ヶ月で同様であった。
結論:白内障手術は、DALKまたはPKP後でも安全に行うことが出来た。また、良好な視力および屈折の結果を得た。白内障および角膜病変を併せ持ち、角膜内皮の損傷がない場合はDALKに続いて白内障手術を行うと、PKP後に白内障手術を行うより内皮損傷がより少なくなる。(CH)

2018
44巻

散瞳剤と麻酔剤の合剤(Mydrane)の効果

Journal of Cataract & Refractive Surgery 44巻 (3号) 2018

Pupil dilation dynamics with an intracameral fixed combination of mydriatics and anesthetic during cataract surgery.
Chiambaretta F et al(France)
J Cataract Refract Surg 44(3): 341-347, 2018
・Phase 2(139例)と3(591例)のrandomized studyとして、散瞳剤と麻酔剤の合剤(Mydrane:tropicamide 0.02%+phenylephrine 0.31%+lidocaine 1.0%)を前房内注入した後の散瞳状況をビデオ撮影した。
・95%散瞳が28.6±4.6秒で得られた。
・Omidria(phenylephrine 1.0%+ketorolac 0.3%)もFDA承認薬である。(TY)

2018
44巻

緑内障眼における眼内レンズの度ずれ

Journal of Cataract & Refractive Surgery 44巻 (3号) 2018

Refractive outcome of phacoemulsification cataract surgery in glaucoma patients.
Manoharan N et al(CO USA)
J Cataract Refract Surg 44(3): 348-354, 2018
・緑内障眼でのIOL移植後の屈折誤差について検討した。
・緑内障206眼とCtrl 1,162眼で検討した。
・緑内障眼ではPEAのみが80眼、Microbypass Stentが25眼、endocyclophotocoagulation(ECP)が81眼、Microbypass Stent+ECPが20眼である。
・屈折誤差が±0.5Dと±1.0D以上は、Ctrl眼では29.9%と4.9%、緑内障眼では40.3%(p=0.061)と11.2%(p=0.011)であった
・屈折誤差±1.0D以上のORは、POAG(154眼)で1.90(p=0.176)、PACG(18眼)で14.54(p=0.006)、PE緑内障(23眼)で7.27(p=0.0138)であった
・眼軸長が25.0mm以上のPOAGで発現率が高かった(p=0.0298)
・緑内障眼では術後の矯正logMARが0.1088(小数点0.78)、Ctrl眼では0.0358(小数点0.92)で有意差があった(p=0.01)。(TY)

2018
44巻

前房内に投与する、散瞳薬と麻酔薬との合剤

Journal of Cataract & Refractive Surgery 44巻 (3号) 2018

Pupil dilation dynamics with an intracameral fixed combination of mydriatics and anesthetic during cataract surgery.
Chiambaretta F, Pleyer U, Behndig A, Pisella PJ, Mertens E, Limao A, Fasce F, Fernandez J, Benmoussa SE, Labetoulle M, Cochener B; Intracameral Mydrane (ICMA) and Ethics Group.(France)
J Cataract Refract Surg. 2018 Mar;44(3):341-347. 
【目的】散瞳剤2種と麻酔薬1種との合剤(Midrane®)の前房内投与と、従来の散瞳剤点眼との瞳孔動態を比較
【対象と方法】2つのランダム化比較試験(phase2,3、前向き多施設マスク化)にて瞳孔径を比較
Phase2:散瞳までの時間
Phase3:散瞳の持続性
【結果】Phase2で139例、Phase3で559例が完遂
・投与後に術者が散瞳十分と評価した時間:Midrane®前房内投与群で20±7秒、散瞳剤点眼群で35±27秒
・Midrane®前房内投与にて、95%散瞳までに要する時間:28.6±4.6秒
・両群ともCCC開始時には7.0mm以上の散瞳を確保
・術中の散瞳維持:Midrane®前房内投与群は維持(-0.22±0.72mm)、散瞳剤点眼群は次第に縮瞳(-1.67±0.98mm)
・手術終了時までに1mm以上縮瞳しなかった頻度:Midrane®前房内投与群で89.3%、散瞳剤点眼群で26.8%
【結論】白内障手術において、Midrane®の前房内投与は散瞳剤の点眼の代わりとなりうる。迅速な散瞳とその維持は、IOL挿入などの重要な手術操作における環境を改善させる(MK)

2018
44巻

落屑症候群の白内障手術後の眼圧上昇とダイアモックス内服の効果

Journal of Cataract & Refractive Surgery 44巻 (2号) 2018

Intraccular pressure elevation after cataract surgery and its prevention by oral acetazolamide in eyes with pseudoexfoliation syndrome.
Hayashi K et al(福岡)
J Cataract Refract Surg 44(2): 175-181, 2018
・落屑症候群PXFの白内障手術後の眼圧上昇について検討した。
・PXFのある白内障手術患者96例96眼を3群に分けた。
・G1:手術1時間前にacetazolamide 500mg内服、G2:手術3時間後に内服、G3:内服なし。
・緑内障点眼薬治療中のものも含まれているが、3群間で治療薬数に有意差はなかった。
・全群で術後3,5,7時間後に眼圧上昇があった
・術後1、3時間では、眼圧はG1でG2,G3に比較して有意に低かった(p<0.001)。
・術後5,7,24時間では、眼圧はG1とG2でG3に比較して有意に低かった(p<0.045)。
・眼圧が25mmHgを超えるspikeはG2とG3に比して、G1では有意に頻度が低かった(p=0.038) (TY)

2018
44巻

PE患者の白内障手術後の眼圧上昇とその予防

Journal of Cataract & Refractive Surgery 44巻 (2号) 2018

Intraocular pressure elevation after cataract surgery and its prevention by oral acetazolamide in eyes with pseudoexfoliation syndrome.
Hayashi K, Yoshida M, Sato T, Manabe SI, Yoshimura K.
J Cataract Refract Surg. 2018 Feb;44(2):175-181.
【対象と方法】偽落屑(PE)症候群に対する白内障手術患者102例(102眼)をランダムに3群に割付け;①手術1h前にアセタゾラミド(ダイアモックス500mg)内服(術前投薬群)、②手術3h後に内服(術後投薬群)、③アセタゾラミド投薬なし
【結果】96例(96眼)、すべての群で平均眼圧(IOP)は術後3,5,7時間とも上昇
・術後1,3時間において、①術前投薬群は他の2群より有意にIOP低値(P≦0.001)
・術後5,7,24時間において、①術前投薬群と②術後投薬群が、③投薬なし群より有意にIOP低値(P≦0.045)
・IOP>25mmHgの眼圧上昇スパイクの頻度:①術前投薬群が他の2群より有意に低頻度(P=0.038)
【結論】PE患者の眼では、白内障手術3,5,7時間後に眼圧が上昇する。手術1h前のアセタゾラミド内服は術後24時間の眼圧上昇を減少させる。手術3h後のアセタゾラミド内服は手術5h以降の眼圧上昇を減少させる(MK)

2018
44巻

単純ヘルペスウイルス角膜内皮炎による角膜機能不全のためのDMEK

Journal of Cataract & Refractive Surgery 44巻 (1号) 2018

Descemet membrane endothelial keratoplasty for corneal decompensation caused by herpes simplex virus endotheliitis
Paterna Asi, et al. (Germany)
J Cataract Refract Surg 2018(1); 44:106-108
・DMEKで治療に成功した再発性単純ヘルペスウイルス角膜内皮炎に起因する角膜機能不全の1例の報告。
・62歳女性、5年間の右角膜のヘルペス感染の再発の病歴があった。
・初診時、角膜中心および傍中心の内皮機能不全、顕著な皮質核白内障、および活動性感染はない角膜実質瘢痕を認めた。眼圧は12mmHg、角膜感度は低下していた。中心角膜厚(CCT)は608μm。
・アシクロビル(800mg)内服1日5回、デキサメタゾン点眼薬1日4回、ガンシクロビル眼科用ゲル1日4回、塩化ナトリウム点眼薬(オムニソーブ)1日5回5ヵ月間投与した。治療後、CCTは521μm、視力は0.16(20/125)で、IOPは17mmHg。より明確な皮質核白内障と角膜上皮浮腫を伴う角膜機能不全を認めた。
・PEA+IOL+ DMEKを施行。
・術後2週目、視力0.3(20/60)6ヶ月0.8(20/25)、1年で1.0(20/20)であった。 CCTは6ヶ月423μm、1年425μmであり、拒絶反応またはヘルペス再発の兆候は見られなかった。
・結論:ウイルス性内皮炎は、多くのウイルス(HSV-1、CMV、EBV、水痘帯状疱疹)によって引き起こされる。
・瘢痕化や血管新生の病因は不明であるが、様々なサイトカイン、ケモカイン、および成長因子の複雑な相互作用であると考えられている。この相互作用は内皮機能障害を引き起こし、内皮損傷は内皮機能不全に続く角膜浮腫を引き起こす可能性がある。ウイルス性角膜炎は依然として全層角膜移植(PKP)によって治療されている。
・しかし、白内障手術併用DMEKは再発性単純ヘルペス角膜内皮炎後の角膜内皮機能不全の治療において好ましい外科的選択肢であると思われる。(CH)

2017
43巻

星状硝子体症に伴ったシリコンIOL混濁の除去

Journal of Cataract & Refractive Surgery 43巻 (12号) 2017

Surgical removal of dystrophic calcification on a silicone intraocular lens in association with asteroid hyalosis.
Platt SM et al(MN USA)
J Cataract Refract Surg 43(12): 1608-1610, 2017
・星状硝子体症を伴った眼で、シリコンIOLの後部表面のカルシウム沈着を手術的に除去したので報告する。
・経毛様体硝子体手術で光源付きのピックと先端がシリコンのカニューラを使用し、完全に除去することが可能であった。
・術前視力は20/60で、術後視力は20/20と改善。
・IOL挿入(Bausch & Lomb LI61)は2008年8月、YAG切開は効果がなく、沈着除去手術は2016年9月である。
・星状硝子体症眼でのシリコンIOL挿入では85%に同様の混濁が発生するので要注意である(TY)

2017
43巻

術後眼内炎と術中のIOL下洗浄

Journal of Cataract & Refractive Surgery 43巻 (11号) 2017

Endophthalmitis after cataract surgery: effect of behind-the-lens washout.
Oshika T et al(筑波大)
J Cataract Refract Surg 43(11): 1399-1405, 2017
・93施設で行われた9720眼のうち、2か月間経過観察のできた9100眼について、術後眼内炎の発症を検討した。
・3眼で術後眼内炎を発症したが、IOL下の粘弾物質を洗浄したものは0/6147眼、しなかったものは3/3570眼であった。
・術後眼内炎の予防にはIOL下の洗浄が大切であろう。
・切開部位でみると、角膜切開は2/2320眼、強角膜切開は0/4218眼、経結膜強角膜切開は1/2562眼。(TY)

2017
43巻

レボフロキサシン点眼の結膜嚢細菌叢への影響

Journal of Cataract & Refractive Surgery 43巻 (9号) 2017

Long-term effects of cataract surgery with topical levofloxacin on ocular bacterial flora.
Ono T et al(北里大)
J Cataract Refract Surg 43(9): 1129-1134, 2017
・白内障手術を行った50眼で、手術3日前から術後1ヶ月目までlevofloxacin 1.5%点眼を行い、手術前後の結膜嚢細菌の動向をみた。
・結膜嚢培養検査は、術前、点眼終了後0か月目(手術後1ヶ月目)、3(同4)、6(同7)、9(同10)、12ヶ月目(同13ヶ月目)で行った。
・術前に採取した表皮ブ菌とP acne菌で最小発育阻止濃度MICを測定した。
・結膜嚢細菌の多様性は点眼開始後に減少し、3か月間持続した。
・表皮ブ菌に対するMICは術後上昇し、術前レベルに戻るのには6か月から12ヶ月必要であった。(TY)

2017
43巻

円錐角膜に対する角膜クロスリンキングの効果

Journal of Cataract & Refractive Surgery 43巻 (7号) 2017

Shift in progression rate of keratoconus before and after epithlim-off accelerated corneal collagen crosslinking.
Wang YM et al(China)
J Cataract Refract Surg 43(7): 929             936, 2017
・加速角膜上皮剥離を行った角膜クロスリンキング(CXL)前後の進行した円錐角膜38名47眼(27.6±6.5歳)の術前と術後1ヶ月以降の状況を検討した。steep K値、flat K値、平均K値、best-fit球面曲率(BFS)を指標とした。術前と術後の角膜前面平均K値の変化は0.063±0.138D/月から-0.022±0.029D/月に変化(p<0.001)、角膜後面平均K値はー0.011±0.025D/月から0.000±0.009D/月に変化(p<0.001)。単変数解析では、術前の角膜前面平均K値はCXL後の角膜前面平均K値の進行率に関連しており、多変量解析では、術前の角膜後面BFSの進行率は術後の角膜前面(p<0.001)と角膜後面(p<0.05)の平均K値の進行率に関連していた。加速角膜上皮剥離を行ったCXLは平均K値の進行率を有意に低下させており、この低下は術前の角膜前面平均K値と術前の角膜後面BFSの進行率に関連していた。(TY)

2017
43巻

SS-OCTを用いた、術後IOL傾きの予測

Journal of Cataract & Refractive Surgery 43巻 (6号) 2017

 Prediction of postoperative intraocular lens tilt using swept-source optical coherence tomography.
Hirnschall N, Buehren T, Bajramovic F, Trost M, Teuber T, Findl O.(Austria)
J Cataract Refract Surg. 2017 Jun;43(6):732-736. 

・62例62眼の白内障手術患者
・手術1w前と2M後にIOL-Master 700を用いて6経線(0,30,60,90,120,150度)のBモードを測定し、水晶体・IOLの傾きを測定
【結果】傾きの軸および程度は水晶体・IOLとも正規分布
・水晶体・IOLとも、傾きは(角度・程度とも)左右眼で垂直線を対称軸とした線対称
・傾きの平均度数および角度;術前は15.8°の軸で4.3°、術後は16.8°の軸で6.2°
・術前・術後の傾きの方向は強い相関をしめした(R=0.71)が、傾きの程度は弱い相関(R=0.37)
【結論】術前にSS-OCTで水晶体の傾きを測定することは、術後IOLの傾きを予測することの助けになる(MK)

2017
43巻

シングルピースフォールダブルIOLの縫着術後に生じた色素散布症候群

Journal of Cataract & Refractive Surgery 43巻 (5号) 2017

Pigment dispersion syndrome and pigmentary glaucoma after secondary sulcus transscleral fixation of single-piece foldable posterior chamber intraocular lenses in Chinese aphakic patients
Tong N, Liu F, Zhang T, Wang L, Zhou Z, Gong H, Yuan F.(China)
J Cataract Refract Surg. 2017 May;43(5):639-642. 

・2011-2014の間に同一施設でTechnis ZCB00を縫着した21例23眼
・16例17眼でpigment dispersion syndrome(PDS)を発症、6例7眼が色素性緑内障
・9例10眼に逆瞳孔ブロックがみられた
・UBMではIOLと虹彩裏面とが非常に接近
【結論】シングルピース疎水性アクリルIOLは、効率にPDSや色素性緑内障を発症させるので、縫着術には適さない(MK)

2017
43巻

白内障手術後の抗生剤点眼薬による耐性菌出現

Journal of Cataract & Refractive Surgery 43巻 (1号) 2017

Effect of the administration period of perioperative topical levofloxacin on normal conjunctival bacterial flora.
Nejima R et al(宮崎)
J Cataract Refract Surg 43(1): 42-48, 2017
・白内障手術後の抗生剤点眼による正常細菌叢の変化を104例で調査した。
・術前3日間1.5%レボフロキサシン点眼した患者について、術後1週間投薬群、術後1か月投薬群について、術前から術後3か月前結膜嚢培養検査を行い、表皮ブ菌にたいするレボフロキサシンのMICについて検討した。
・レボフロキサシンに対するMICは薬剤使用中は術前に比して上昇していた。
・3か月後のMICは、1か月投与群では1週間投与群の約2倍であった。
・薬剤感受性は、術前・薬剤終了時・3か月後で、1週間投与群では73.6%、63.0%、38.5%、1か月投与群では63.0%、0.0%、19.3%であった。
・薬剤中止後3か月間は、1か月投与群では1週間投与群より薬剤感受性が約20%低下していた。(TY)

2016
42巻

Negative dysphotopsiaに対するIOL部分切断

Journal of Cataract & Refractive Surgery 42巻 (12号) 2016

 In-the-bag nasal intraocular lens optic truncation for treatment of negative dysphotopsia
Neeti Meghnad Alapati, George J. Harocopos, Arsham Sheybani (US-MO)
J Cataract Reflact Surg 2016;42(12):1702-1706
・Negative dysphotopsiaを自覚する患者に対し、capsule内で鼻側のIOL光学部を約0.5mm切断することにより症状改善

IOLエッジに角度がつき、表面が不整になることで散乱光が増すのが有効か(MK)

2016
42巻

スピードオートとTASS発生の危険性

Journal of Cataract & Refractive Surgery 42巻 (11号) 2016

Toxic anterior segment syndrome caused by autoclave resorvoir wall biofilms and their residual toxins.
Sorenson AL et al(CA USA)
J Cataract Refract Surg 42(11): 1602-1614, 2016
・2014/1~2015/1に行った3,003例の内、10例にTASSが発生した。
・TASSはスピードオートが市販された後の1992年に最初に報告されている。
・2つのStatim 2000オートクレブの水タンク壁からBacillus類、Williamsia類、Mycobacterium、Candidaが培養された。
・ポリタンクの壁面を切り取り、走査電顕検査を行った所、biofilmが見つかった。
・この構造物は0.08mm四方に約460個で、タンク1個当たり90億個の微生物である。
・この水タンクを交換後、TASS発生はなくなった。
・この地区の23個の水タンクを調べたところ、18個から細菌biofilmの汚染が見つかった。
・微生物のbiofilmは耐久性があり、滅菌後も残存しうる熱に耐性のある炎症前抗原を形成する。
・オートクレブのガイドラインに沿った清掃やメンテナンスを行っても水タンク壁には、細菌biofilmが付着していることが多く、TASSの発生に関与しているだろう。
・化学物質や清浄薬品は障害を生む可能性があり、推奨できないので、われわれは以下の方法を推奨している。
1)水タンクを空にする。
2)沸騰した滅菌水で満たす。
3)135度10分で空焚きする。
4)水タンクを空にする。
5)再度、沸騰した滅菌水で満たし、10分間放置。
6)水タンクを空にし、乾燥させて一晩置く。
7)翌日、通常使用。
8)週に1回タンク壁の培養をし、2か月間培養陰性であれば、培養を月1回とする。
・Statim 7000では水タンクは取り外してオートクレブに掛けることができるようになった。(TY)

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