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Journal of Cataract & Refractive Surgery

2013
39巻

トリパンブルーは後発白内障を抑制するか

Journal of Cataract & Refractive Surgery 39巻 (5号) 2013

Tripan blue injection into the capsular bag during phacoemulsification: Initial postoperative posterior capsule opacification results.
Sharma P et al(India)
J Cataract Refract Surg: 39(5): 699-704, 2013
・0.1%tripan blue(TB)を嚢内に注入すると、術後の後嚢混濁(PCO)の予防になるかどうかを検討した。
・0.2mlのTBを、CCC→hydrodissection→核回転後に後嚢前に注入し、眼底反射が消失するのを確認し、超音波乳化吸引を開始した。
・PCOは0-4までに分類し、占有面積との積としてPCO値を求めた。
・TB群150眼とコントロール群150眼で比較した。
・術後6ヶ月、12ヶ月目の平均PCO値はTB群では、0.10と0.15、Ctrl群では0.21と0.25で、6ヶ月目、12ヶ月目ともに優位差があった(p=0.042とp=0.0227)。
・YAG後嚢切開が必要になったものは、TB群では2/150眼、Ctrl群では6/150眼であった。
・TBは角膜内皮細胞には悪影響はないが、水晶体上皮細胞(LECs)の複製過程の有糸分裂過程に影響するからであろう。

2013
39巻

25G硝子体手術+トーリックIOLの成績

Journal of Cataract & Refractive Surgery 39巻 (5号) 2013

Combined 25-gauge vitrectomy and cataract surgery with toric intraocular lens with idiopathic epiretinal membrane
Y Nakano et. al  香川大
J Cataract Refract Surg. 39(5):686-93, 2013
ERMに対する25G硝子体手術+白内障同時手術
術前0.75D以上の角膜乱視にToric IOL(SN6AT3-5)、non Toric IOL(SN60WF IQ)と比較
術後IOLの平均回転角度 3.67±3.13°
術後6M 矯正視力、術後網膜厚は有意差なし、
裸眼視力で有意差あり(0.57 logMAR vs 0.35 logMAR)(MM)

2013
39巻

トリパンブルーが後発白内障を抑える?

Journal of Cataract & Refractive Surgery 39巻 (5号) 2013

Trypan blue injection into the capsular bag during phacoemulsification: Initial postoperative posterior capsule opacification result
P Sharma et. al     Jaipur, India
J Cataract Refract Surg. 39(5):699-704, 2013
Hydrodissectionの後で0.2mlのTrypan blueを注入、BSS注入のコントロール群と比較
102眼:103眼
マスクされた検者がPCO score=∑(%area x PCO grade) で6,12カ月に比較
術後視力に有意差なし
6M, 12MのスコアはそれぞれTrypan blue 0.10, 0.15 /  control 0.21, 0.25
およそ30秒程度カプセルの赤道部にトリパンブルーが作用することでLECsの増殖が抑制されるのかもしれない(MM)

2013
39巻

強膜内固定時の鑷子の使用法の一案

Journal of Cataract & Refractive Surgery 39巻 (3号) 2013

Handshake technique for glued intrascleral haptic fixation of a posterior chamber intraocular lens.
Agarwal A et al(India)
J Cataract Refract Surg 39(3): 317-322, 2013
・IOL強膜内固定時の把持鑷子の安全な使用法を考案した。
・IOLカートリッジから前方hapticが少し出た時点で鑷子で把持し、強膜外へ出す。
・眼外に出たままの後方hapticを右手鑷子で前房内に入れ、角膜サイドポートから挿入した左手鑷子で受け、再度、右手鑷子を強膜創から前房内へ挿入して、左手鑷子との間でhapticの受け渡しを行う。

2013
39巻

新しい緑内障手術の安全性プロファイル

Journal of Cataract & Refractive Surgery 39巻 (3号) 2013

Early postoperative safety and surgical outcomes after implantation of a suprachoroidal micro-stent for the treatment of open-angle glaucoma concomitant with cataract surgery
H Hoeh, IK Ahmed et. al カナダ、アメリカ
J Cataract Refract Surg. 39(3):431-7, 2013
Transcend MedicalのCypassを使用したMIGS(micro invasive glaucoma surgery)の安全性プロファイル
白内障と同時手術 n=184 91/93
IOP control群 57例(6M)  IOP:37%▼ med:>50%▼
IOP control群 41例(6M)                           med: 71.4%▼
一過性低眼圧:13.8%
一過性眼圧上昇:10.5%
追加手術 9例(5%) 他明らかなadverse event(-)(MM)

2013
39巻

Cypass の安全性プロファイル 6か月

Journal of Cataract & Refractive Surgery 39巻 (3号) 2013

Early postoperative safety and surgical outcomes after implantation of a suprachoroidal micro-stent for the treatment of open-angle glaucoma concomitant with cataract surgery
T Ianchulev et al (UCSF)
J Cataract Refract Surg 39(3): 431-437, 2013
白内障と同時手術での成績でのsafety profile (N=184, 91/93)
IOP uncontrol群 57例(6M)                IOP: 37%▼ med:>50%▼
IOP control 群 41例(6M)                                med: 71.4%▼
Transient early hypotony 13.8%
Transient IOP increase 10.5%
追加手術9例(5%), 他あきらかなadverse event(-)(MM)

2013
39巻

残存水晶体皮質は術後眼内炎の危険因子になるか

Journal of Cataract & Refractive Surgery 39巻 (2号) 2013

Residual lens cortex material: potential risk factor for endophthalmitis after phacoemulsification cataract surgery.
Lou B et al(China)
J Cataract Refract Surg 39(2): 250-257, 2013
・超音波乳化吸引後に水晶体皮質が残存していることが細菌増殖による眼内炎発症の危険因子になるかどうかを家兎で実験検討した。
・白内障患者から採取した前房水あるいは水晶体皮質を生食で希釈した液(1:1から1:16)に、10**5CFU (colony-forming unit)/mlの黄色ブ菌と表皮ブ菌を混ぜて24時間培養したところ、いずれの菌も皮質を希釈した培地の方が2桁から3桁増殖数が多かった(p<0.01)。
・家兎で完全に皮質を吸引した40頭と、1/4の皮質を残した40頭に黄色ブ菌を32.0, 56.3, 108.6CFU摂取した72時間後の眼内炎の発症をみると、皮質を完全に吸引した群では、0/10, 3/10, 10/10に発症したのに対し、皮質を残した群では、6/10, 9/10, 10/10に眼内炎を発症していた。
・術中に細菌の混入があったとすると、皮質が残っていた方が眼内炎が発症しやすいと考えられた(TY)

2012
38巻

LASIK後5年の角膜内皮細胞変化

Journal of Cataract & Refractive Surgery 38巻 (12号) 2012

Corneal endothelial cell changes 5 years after laser in situ keratomileusis
Klingler KN et al.  (USA)
J Cataract Refract Surg.  38:2125-2130,2012
・フェムトセカンドレーザーによって作られたフラップ眼とマイクロケラトームによって作られたフラップ眼のLASIK5年後の内皮細胞の変化(内皮細胞密度、六角形細胞出現率、CV値)を比較した。
・また、内皮細胞損失とコンタクトレンズの使用、残りの角膜ベッドの厚さと 手術前の屈折異常との関係を評価した。
・内皮細胞データは3年目で35眼(18人)、5年で39眼(20人)が利用可能だった。
・内皮細胞密度、六角形細胞出現率、CV値で相違はなかった。
・LASIK5年後の平均内皮細胞損失率はフェムトセカンドレーザーで-0.8±5.8%、マイクロケラトームで-0.4±5.0%で、有意差はなかった。
・角膜の内皮細胞損失の平均年率はフェムトセカンドレーザーで-0.1±1.2%、マイクロケラトームで-0.1±1.0%であった。
・内皮細胞喪失はコンタクトレンズ装用、角膜ベッドの厚さ、手術前の屈折異常と関連はなかった。
・マイクロケラトームと比較されるとき、フェムトセカンドレーザーレーザーによって角膜に運ばれたエネルギーはLASIKの5年後でも角膜内皮に影響を与えなかった。
・LASIKを受けた眼は、どちらの方法でフラップを作っていても、内皮角膜移植術のために提供者の組織として受け入れられると思われる。(CH)

2012
38巻

結膜下ゲンタマイシンによる白内障手術後の中毒性前眼部症候群

Journal of Cataract & Refractive Surgery 38巻 (12号) 2012

Toxic anterior segment syndrome after cataract surgery secondary to subconjunctval gentamicin
Litwin AS et al. (USA)
J Cataract Refract Surg  38:2196-2197,2012
・白内障術後の結膜下ゲンタマイシンが眼内に流入した事が中毒性前眼部症候群(TASS)と関係あると思われる2例の報告。
・症例1:62歳女性、アクリルレンズ、ペニシリンアレルギーあり
  結膜下ゲンタマイシン20mg/0.5ml注入
  術後1週間後から眼痛(+)、角膜浮腫、前房cell(+)、瞳孔散瞳(+)
  11ヶ月後 視力20/30、瞳孔径7mm
・症例2:85歳女性、アクリルレンズ、ペニシリンアレルギーあり
  術後2週間後から砂が入ったような違和感(+)、角膜浮腫、前房cell(+)、 
  瞳孔散瞳(+)
  5ヶ月後、視力20/30、瞳孔径7mm
・ゲンタマイシンは白内障の手術で広く使われる。眼内炎の治療で前房内にゲンタマイシンを注入してよい結果が得られたという報告もある。
ゲンタマイシンとTASSの間に関連が有るかどうかは証明されていないが、今回と類似のケースを避けるため、注意が必要である。(CH)

2012
38巻

白内障術後嚢胞様黄斑浮腫の発生率

Journal of Cataract & Refractive Surgery 38巻 (12号) 2012

Incidence of acute postoperative cystoid macular edema in clinical practice
Packer M et al. (USA)
J Cataract Refract Surg  38:2108-2111,2012
・術後早期(90日以内)の嚢胞様黄斑浮腫(CME)の発生率を調べた。
・2007年3月1日〜2012年3月31日までにオレゴン州にある4件のクリニックで施行されたPEA+IOL 2862件を対象とした。
・術後90日以内に3例(0.1%)がCMEを発症した。1例は後嚢破損の症例、1例は糖尿病あり、1例は不明。
・2例とも、術後1ヶ月で点眼治療を中止したところ、その3週間後にCMEを認めた。そのため、点眼治療を再開し、術後6ヶ月まで続けた。
・術後早期(90日以内)嚢胞様黄斑浮腫(CME)の発生率は0.1%だった。(CH)

2012
38巻

手術時の眼瞼ドレーピングの一考案

Journal of Cataract & Refractive Surgery 38巻 (11号) 2012

Technique to exclude temporal lash incursion in phacoemulsification surgery.
Fox OJK et al(Australia)
J Cataract Refract Surg 38(11): 1885-1887, 2012
・術野に入ってくる睫毛をSteri-Stripで隠す方法を紹介する。
・3MのSteri-Stripを1cm角に切り、織り繊維を眼瞼と並行にして、睫毛を隠した。

2012
38巻

IOLのピロカルピン点眼による後方移動

Journal of Cataract & Refractive Surgery 38巻 (11号) 2012

Effect of primary posterior continuous curvilinear capsulorrhexis with posterior optic buttonholing on pilocarpine-induced IOL shift.
Leydolt C et al(Austria)
J Cataract Refract Surg 38(11): 1895-1901, 2012
・白内障手術後のピロカルピン使用による毛様体筋の収縮によるIOLの移動について20例40眼で検討した。
・通常の眼内レンズ(HOYA YA60BB)を、1眼は後嚢CCC+Captureで挿入、他眼は通常の嚢内固定とし、術後6カ月以降に、2%ピロカルピン点眼前後、1%サイプレジン点眼前後の前房深度(角膜後面からIOL表面まで)をACMaster(Zeiss)で測定した。
・ピロカルピン点眼後には後嚢CCC眼では78±78μmのIOLの後方移動、コントロール眼では118±117μmの後方移動があったが(いずれも p<0.05)、両群間に差はなかった(p=0.19)。

2012
38巻

狭隅角緑内障に対する早期白内障手術

Journal of Cataract & Refractive Surgery 38巻 (10号) 2012

Timely cataract surgery for improved glaucoma management.
Chang RT et al(consultant)
J Cataract Refract Surg 38(10): 1709-1710, 2012
・Ocular hypertension Treatment Studyは白内障手術で眼圧は最低3年間は眼圧を平均3mmHg下げることが示された。
・現在、視力が良好な緑内障の人には白内障手術を早期に行うことを躊躇する場合が多いが、落屑緑内障や狭隅角緑内障に対しては積極的に白内障手術を行う方法も検討すべきである。

2012
38巻

IOL挿入スピードの検討

Journal of Cataract & Refractive Surgery 38巻 (10号) 2012

Effect of intraocular lens insertion speed on surgical wound structure.
Ouchi M(府立医大)
J Cataract Refract Surg 38(10): 1771-1776, 2012
・角膜切開で眼内レンズ(Acrysof IQ)をスクリュー式インジェクターで挿入する場合、1秒で1回転で早く挿入したF群と、1秒1/4回転でゆっくり挿入したS群とで創口径の変化、角膜hydrationの必要性、術後乱視、OCTでの角膜創口の変化を80例で検討した。
・創口の大きさはS群で有意に大きく(0.097±0.051:0.0028±0.045、p=0.02)、角膜hydrationはS群は21/40(52.7%)、F群は11/40(27.5%)とS群で有意に多く(p=0.04)、創口のOCT上の変化はS群で有意であったが(p=0.003)、術後乱視には有意差はなかった。
・角膜切開でインジェクターを使用する場合には早く挿入した方が創口構造を変えない事が分かった。

2012
38巻

慢性ぶどう膜炎の病歴を有する患者への前房眼内レンズ移植の長期の安全性と視力結果

Journal of Cataract & Refractive Surgery 38巻 (10号) 2012

Long-term safety and visual outcomes of anterior chamber intraocular lens implantation in patients with a history of chronic uveitis
Ans M. Suelves et al (Massachusetts, USA)
J Cataract Refract Surg 2012; 38: 1777-1782
・超音波白内障術後、活動性の無いぶどう膜炎を有する患者の視力と長期間の合併症の予測を、眼内レンズを従来通り嚢内固定した場合と、一次的又は二次的に不十分な水晶体嚢の支持ゆえ前房内に固定した場合とで比較する。
・非活動性ぶどう膜炎患者でAC-IOL移植群18名と年齢が一致するPC-IOL移植群18名で術後合併症を術前、術後1,3,6か月、1,2,3,4年の視力で比較した。
・術後合併症は、PC-IOL群で後発白内障が進行した以外は差は無かった(P=0.071)。視力は術後3か月でAC-IOL群の9例(50.0%)とPC-IOL群の15例(83.3%)で視力は0.3以上であった。術後3年で両群で明らかに改善し、差は無かった。
・十分な水晶体嚢の支持の無いぶどう膜炎でAC-IOL移植は安全で有効である。PC-IOLの眼と比較しても満足な視力の改善があり、長期合併症の増加も無い。(YM)

2012
38巻

両手法小切開白内障手術における透明角膜切開;長期創傷治癒の構造

Journal of Cataract & Refractive Surgery 38巻 (10号) 2012

Clear corneal incisions in bimanual microincision cataract surgery: Long-term wound-healing architecture
Gian Maria Cavallini et al (Modena, Italy)
J Cataract Refract Surg 2012; 38: 1743-1748
・前眼部OCTを用いて両手法小切開白内障手術(MICS)透明角膜切開(CCI)の構造的な特徴を長期にわたり評価する。
・33名52眼。平均切開長と角度は、右手で1427.13㎛と31.27度、左手で1440.63㎛と31.54度。耳側では1474.13㎛と31.27度、鼻側では1394.41㎛と31.46度。構造的特徴としては、後方への創口のへこみ(PWR)のみを認めた。この発生率は2~3か月で7.10%、4~11か月で31.8%、12か月で33.3%であった。このうち53%は1.8㎜、47%は1.4㎜の創の長さで発生した。
・PEAの創の特徴は5つ
 ①創口上皮の大きな裂け目 ②創口内皮の大きな裂け目 ③内皮側での創口のずれ ④デスメ膜剥離 ⑤間質トンネルに沿った狭窄の欠損
これらはすべて術直後よりみられるが、1~3ヶ月後にはみられないと多く報告されている。一方、PWRは術後2~3週で普通にみられる。
・MICSの手技
 幅が1.4㎜から1.2㎜に測定されたダイヤモンドナイフを用いて10時と2時の透明角膜に1.4㎜の台形の切開を作製する。前嚢鑷子で直径5.0~6.0㎜のCCCを作り、26ゲージカニューラでハイドロダイセクション後20ゲージ30度スリーブなしプローブで右手創口よりPEAを行なう。IA後右手創口を1.8㎜に拡大しIOLを移植。
・MICSの利点
 ①創口作製が容易 ②術中前房を深く保てる ③出血が無い ④術後乱視の軽減 ⑤早期の視力改善 ⑥術後眼内炎の低危険度 ⑦角膜の保存 ⑧早い創口治癒 ⑨術中・術後合併症がより少ない
・2.0㎜以下の切開創のCCI・両手MICSでは角膜損傷を最小限にできる。PWRはよりまれで小さく、創口が大きめ(1.8㎜)でも小さめ(1.4㎜)でも無関係であった。これは1.8㎜でも十分に小さいからであると思われた。(YM)

2012
38巻

PEAでの角膜内皮細胞の損失に対する影響:BSSプラスと乳酸リンゲル液を使用した場合の比較

Journal of Cataract & Refractive Surgery 38巻 (9号) 2012

Effect on corneal endothelial cell loss during phacoemulsification :Fortified balanced salt solution versus Ringer lactate
Barun K. Nayak et al (Mumbai ,India)
J Cataract Refract Surg 2012 ;38 :1552-1558
・グレードⅢまでの老人性白内障でPEA、PC-IOLを施行した患者で、眼内灌流液にBSSプラスを使用した症例、乳酸リンゲル液を使用した症例各35眼で、術前と術後1週間、1ヶ月、6ヶ月での角膜内皮細胞数を比較。
・両群で、超音波時間、手術時間に差は無かったが、BSS群では平均灌流量が少なかった。術前、術後で角膜内皮細胞密度に両群間に明らかな差は無かった。
・角膜内皮細胞は1年間に約0.6%の割合で自然に失われるが、PEA中の角膜とその他の組織に対しては、灌流液のpH、浸透圧、組成、手術時間、灌流液の容量、眼内での操作、核片の動き、フリーラジカルの産生がダメージにつながる。PEAはECCEや硝子体手術と異なり、強い超音波のエネルギーによるフリーラジカルに影響されやすい。BSSプラスには重炭酸塩緩衝液があり、これが房水の自然な緩衝液で乳酸リンゲルにはこれが欠如している。今回、短時間で合併症の無いPEAでは、乳酸リンゲル液は、その30倍高価なBSSプラスと同様に使用しても問題ないという結果となった。(YM)

2012
38巻

子供と未成年者に対する2次的IOL移植術後早期の眼内圧の上昇

Journal of Cataract & Refractive Surgery 38巻 (9号) 2012

Intraocular pressure elevation during early postoperative period after secondary intraocular lens implantation in children and adolescents
Rupal H. Trivedi et al (South Carolina ,USA)
J Cataract Refract Surg 2012 ;38 :1633-1636
・85人133眼のうち、26㎜Hg以上の急激な眼内圧上昇は9眼にみられた。平均年令14.3才。その9眼のうち、6眼は無水晶体眼緑内障で術前投薬されていた。術前緑内障の22眼中6眼(27%)と、緑内障の無い111眼中の3眼(3%)は、術後眼圧が急上昇した(P<.001)。この9眼中の3眼(平均28㎜Hg)は無症状。症状のあった6眼は平均眼圧39㎜Hgで、疼痛、違和感、嘔気、嘔吐であった。
・術前緑内障の存在は、たとえ薬で良好にコントロールされていても、子供の2次IOL移植術後早期眼圧上昇の危険因子である。成人でも緑内障の存在は術後眼圧上昇の危険があるが、普通は一過性の上昇は影響ない。長く続いたり、極端に高いと角膜浮腫、疼痛、AION、CRVOをおこす。術後眼圧上昇は、房水の流れが高分子量の粘弾性物質によって遮断されるヒーロンブロック緑内障か、術前・術中の隅角の変形、出血、色素の散乱、水晶体物質の存在も影響する。1才前の子供の白内障手術では、無水晶体眼とするが、幼少期の白内障手術は無水晶体眼緑内障の危険因子であり、無水晶体眼でいるほど緑内障になりやすい。緑内障投薬中であれば薬を追加したり、注意深く眼圧測定をすべきである。十分粘弾性物質を除去し、一時的に経口アセタゾラミドを投与し、降眼圧剤の点眼を併用することを勧める。(YM)

2012
38巻

高度近視眼の前房深度の調節による変化を調べる

Journal of Cataract & Refractive Surgery 38巻 (8号) 2012

Accommodative changes in anterior chamber depth in patients with high myopia
Boris E. Malyugin et al (Moscow, Russian Federation)
J Cataract Refract Surg 2012 ;38 :1403-1407
・前眼部OCTを用いた高度近視眼の前房深度の調節による変化を調べる。
・36近視眼(平均年令27才)、31正視眼(平均年令26才)
・phakic IOL(pIOL)は、高度近視の矯正に有効だが、角膜内皮を傷つけること、水晶体の混濁の危険がある。この第1の危険因子は。継続して又は時折機械的にpIOLと水晶体又は角膜が接触することにある。ゆえに、前房深度はpIOLによる合併症を減らすために重要である。
・調節すると、前房深度(ACD)は、両群で減少。マイナスレンズを眼前に置いて調節する方法で測定し、最も明白なACD変化は、近視群で-0.14±0.07mm、正視群で-0.22±0.08mm(P<.0001)。10近視眼で調節時ACDは2.8㎜以下であり、2.8㎜が虹彩支持のpIOL使用の最低ACDと考えられた。(YM)

2012
38巻

ソユーズミッションでの宇宙飛行士のレーザー屈折矯正の視覚の安定性

Journal of Cataract & Refractive Surgery 38巻 (8号) 2012

Visual stability of laser vision correction in an astronaut on a Soyuz mission to the International Space Station
Gibson CR et al. (USA)
J Cataract Refract Surg  38:1486-1491,2012
・2008年の国際宇宙ステーションへの12日間のロシアのソユーズのミッションの間に宇宙飛行士にPRKの安定性の報告
・2007年9月、NASAは宇宙飛行士のPRKとLASIKを認可した。
・47歳男性。1994年両眼PRKを受けた。
術前 右眼-4.0、左眼-3.75
・視力経過は表3。
・ミッションの間の眼症状は表4。これらの症状は屈折矯正手術に特定された問題というより睡眠不足と関係があると解釈された。
・PRKが宇宙飛行の間の宇宙飛行士のために安全な、効果的な、耐性のある方法であることを示唆する。(CH)

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