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British Journal of Ophthalmology

2019
103巻

EB視神経症の早期検出にGC-IPLを利用する

British Journal of Ophthalmology 103巻 (3号) 2019

Diagnostic value of ganglion cell-inner plexiform layer for early detection of ethambutol-induced optic neuropathy
Ju-Yeun Lee, et al (Korea)
Br J Ophthalmol 103(3): 379-384, 2019
EBはRGC障害性がありとくに小口径のpapillomacular bundle axonに作用する。ミトコンドリアの機能不全により軸索輸送障害が生じるのではないかと考えられている。これまでEONでpRNFLとmGCIPLが傷害されるという報告はあるが、初期の診断に使えるか検討。
3週間以内に発症した15例28眼のEB視神経症(Ethambutol-induced optic neuropathy(EON))と53例100眼の正常コントロールを比較。CirrusSD-OCTで測定したpRNFLとmGCIPL厚をAU-ROC曲線と感度を検討した。
EON群:平均年齢61.4±14.5(34-81)歳、女性が60%、症状出現から受診まで平均8.9±5.6(1-17)日、初診時の矯正視力は有意に悪い(LogMAR:0.49±1.54)、
OCT測定値:
平均mGCIPL thickness  73.5±12.4 µm (EON) vs 83.7±5.3 µm (control), (p<0.001).
検出能力:
すべてのmGCIPLと下方以外のpRNFL、でAUROCは0.5以上となったが、mGCIPL特にminimum thicknessのAUROCが最大で0.863であった。
初期のEONではmGCIPL、特にその最小値が診断能力が高い(MM)

2019
103巻

硬い核に対する核分割についての新方法

British Journal of Ophthalmology 103巻 (2号) 2019

Microinterventional endocapsular nucleus disassembly: novel technique and results of first-in-human randomised controlled study.
Lanchulev T, Chang DF et al(NY USA)
Brit J Ophthalmol 103(2): 176-180, 2019
・101名101眼のGrade3-4+の白内障に対して行った結果を報告する。
・Ctrl群はtorsional PEAのみで、miLOOP群は手動のnitinol(ニッケルとチタン合金)製の細いル-プ器具を使用した。
・白内障は進行したものだけを対象とし、85%以上の症例では術前の視力は0.1以下のものとした。
・平均的な積算PEAエネルギ-はCtrl群では32.8±24.9、miLOOP群では21.4±13.1であり、Ctrl群で53%大きかった。
・内皮細胞消失率は両群とも7-8%で有意差はなかった。
・miLOOP使用時の前後嚢破損例は0%、PEA中の後嚢破損はmiLOOP群で4/53(7.5%)、Ctrl群では5/48(10.4%)であった。(TY)

2019
103巻

非典型的な網膜前膜について

British Journal of Ophthalmology 103巻 (2号) 2019

Atypical epiretinal tissue in full-thickness macular holes: pathogenic and prognostic significance.
Bae K et al(Korea)
Brit J Ophthalmol 103(2): 251-256, 2019
・211例225眼の黄斑円孔症例で、非典型的な網膜前膜AET(atypical epiretinal tissue)を持ったもの26眼(11.6%)とAETを持たないもの199眼とで術後成績を比較した。
・手術1年後の円孔閉鎖はAET群では92.3%、非AET群では99.5%であった(p=0.003)。
・1年後のlogMARはAET群では0.38(小数点0.42)、非AET群では0.21(小数点0.61)で有意差があった(p=0.046)。
・AET群では術後成績が悪かったが、これはAETが慢性的に黄斑部に重篤な障害を与える病的な変化であることを示している。(TY)

2019
103巻

黄斑部が剥がれていない網膜剥離の黄斑機能低下

British Journal of Ophthalmology 103巻 (2号) 2019

Macular dysfunction in patients with macula-on rhegmatogenous retinal detachments
Kunihiko Akiyama et al (Japan)
Br J Ophthalmol 103(2): 404-409, 2019
Macula-on のRRDで、術後視力良好であっても視機能低下を訴える患者がいる。コントラスト感度を用いた研究で血流障害が示唆されたものはあるが、本研究ではfocal macular ERGを用いた機能評価を行った
黄斑部を含まない連続32症例32眼の網膜剥離患者
RRDの範囲(象限)、裂孔の象限、アーケード血管を含む剥離の有無、3時間以上のgiant tearの有無の4つのstatusに分けて評価
黄斑部に15°の刺激を与えてFMERGを2回以上記録しノイズの少ないデータを採用
a波、b波、OPsについて患眼と僚眼で比較し、RRDのstatusが各コンポーネントに影響を与えるかを観察
結果:27眼で解析可能であった
僚眼と比べ患眼では各コンポーネントの振幅低下がみられたが、潜時は変化がなかった
RRDの部位での低酸素がエンドセリンを介して黄斑部血流量の低下をきたした可能性(MM)

2019
103巻

耳側と鼻側角膜切開白内障手術での全体および後面角膜形状の変化

British Journal of Ophthalmology 103巻 (2号) 2019

Corneal shape changes of the total and posterior cornea after temporal versus nasal clear corneal incision cataract surgery
Ken Hayashi et al (JAPAN)
Br J Ophthalmol 103(2): 181-185, 2019
過去の報告では2.8mmより大きな切開では鼻側切開のほうが耳側切開よりも惹起乱視が大きいとされている(術後6週で1.65D vs 0.74D:Barequet et al. :JCRS 2004)が、2.4mm切開の白内障手術において左眼の手術を上方に座って行うか、耳側に座って行うかの違いを検討する
100例100眼左眼の白内障手術をランダムに2.4mm耳側あるいは鼻側角膜切開で行い、角膜乱視の術前後の変化、術後2日、2,4,8週目の変化を比較検討
術後2日、8週目では両群の変化はなかったが、2,4週目の角膜乱視は鼻側切開群の方が大きかった
角膜全体としては楔状の平坦化が、角膜後面では局所的な急峻化を認め、4週までは差があったが8週目には0.17Dの差となり、両群で差を認めなかった。
2.4mm以下の切開創であれば、鼻側からの切開でも耳側からの切開でも術後2ヶ月後には差がなくなるため、角膜形状という観点からは術者の好みで良いと考えられる(MM)

2019
103巻

網膜静脈分枝閉塞症に対する抗VEGF硝子体内注射治療後の視力改善の短期予測因子としてのベースライン時脈絡膜厚

British Journal of Ophthalmology 103巻 (1号) 2019

Baseline choroidal thickness as a short-term predictor of visual acuity improvement following antivascular endothelial growth factor therapy in branch retinal vein occlusion.
Nadim Rayess, et al. (PA, USA)
Br J Ophthalmol 2019(1);103:55-59.
目的:網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)に続発する黄斑浮腫(ME)を有する患者における視力回復の予測因子としての初期脈絡膜厚を評価する。
対象と方法:未治療のBRVOと診断され、MEに対する3か月連続月1回の抗VEGF注射で治療された症例。
傍中心脈絡膜厚(SFCT)は、EDI-OCTの内蔵のキャリパーソフトウェアを使用して、網膜色素上皮(RPE)と考えられる高反射な線を基準線とし、RPE 底部から強膜との境界線までの距離とした。
BRVOの眼と他眼の両方について、ベースライン時と3ヶ月後の追跡調査時に脈絡膜厚測定値を記録した。そして抗VEGF注射治療のレスポンダー群およびノンレスポンダー群のベースライン特性を比較した。
結果:39人40眼。その内レスポンダー群23眼、ノンレスポンダー群17眼。
ベースライン時のSFCTは、ノンレスポンダー群(193.3±63.6μm;P=0.0036)および他眼(202.2±67.1μm; P=0.022)と比較して、レスポンダー群(240.4±73.1μm)においてより厚かった。
注射後3ヶ月で、レスポンダー群202.4±70.1μm、ノンレスポンダー群154.6±59.0μmと減少した。(共にp<0.001)
より高いベースライン時のSFCT(SFCTの100μmの増加ごとに)は、単変量解析ではレスポンダーの予測因子であるが多変量解析では予測因子ではなかった。
ベースライン時の視力はレスポンダー群1.15 ±0.55 logMARでノンレスポンダー群0.57 ±0.42 logMAR (p<0.001)と比較して有意に悪かった。
注射後3ヶ月で、レスポンダー群0.59±0.32 logMAR (p<0.001)に改善したが、ノンレスポンダー群では0.58±0.54 10gMARであった(p=0.962)
より悪いベースライン時視力(0.1 logMARの増加ごとに)は、多変量解析において視覚改善の予測因子であった。
結論:ベースライン時脈絡膜厚が厚いBRVOの未治療患者は、抗VEGF療法後の短期調査で視力改善する可能性が高かった。さらに、より悪いベースライン時視力はスネレン視力2ライン以上の視力改善と強く相関することがわかった。 BRVOにおける視力の予測因子としての脈絡膜厚の役割をさらに評価するためには、さらに大規模な前向き研究が必要である。(CH)

2018
102巻

慢性CSCに対する黄色マイクロパルス光凝固と半量PDTとの比較

British Journal of Ophthalmology 102巻 (12号) 2018

Yellow (577 nm) micropulse laser versus half-dose verteporfin photodynamic therapy in eyes with chronic central serous chorioretinopathy: results of the Pan-American Collaborative Retina Study (PACORES) Group
Jose A Roca, Lihteh Wu, Jans Fromow-Guerra, Francisco J Rodríguez, Maria H Berrocal, Sergio Rojas, Luiz H Lima, Roberto Gallego-Pinazo, Jay Chhablani, J Fernando Arevalo, David Lozano-Rechy, Martin Serrano(USA-CA)
Br J Ophthal 2018;102(12):1696-1700

【対象と方法】159眼の慢性CSC患者(網膜下液>6か月)に対して、黄色マイクロパルス光凝固(MP)*を施行した92眼と半量PDT**を施行した67眼とをretrospectiveに比較
*IQ577(IRIDEX社)、波長577nm、duty cycle 5%、ゼロスペーシング、スポットサイズ100-200μm、出力320-660mW、凝固時間200msec
**ベルテポルフィン3mg/m2、照射エネルギー・時間は通常通り
【結果】12Mのフォローアップで、
MP群:視力(LogMAR)0.41→0.21(P<0.0001)、48.9%(45/92眼)で3段階以上の視力改善、48.9%(45/92眼)で視力維持、2.2%(2/92眼)で3段階以上の視力低下
中心網膜厚:baseline時402→1M後310→3M後263→6M後252→12M後310μm、視力と平行して改善
半量PDT群:視力(LogMAR)0.50→0.47(P=0.89)、19%(13/67眼)で3段階以上の視力改善、73%(49/67眼)で視力維持、7%(5/67眼)で3段階以上の視力低下
中心網膜厚:baseline時352→1M後293→3M後211→6M後207→12M後224μmと改善するも視力改善なし
12M後の網膜下液の残存:MP群7.6%(7/92眼)、半量PDT群4.5%(3/67眼)(P=0.2067)
再治療:MP群の17.4%(16/92眼)、半量PDT群の9%(6/67眼)
合併症:MP群なし、半量PDT群で1例にCNV出現
【結論】PDTとMPともに黄斑部の形態を解剖学的に改善させた。PDTのない施設では、黄色MPが十分な代替治療となりうる(MK)

2018
102巻

アイケアでの眼圧測定時、手で瞼を開けると眼圧が高く評価される

British Journal of Ophthalmology 102巻 (11号) 2018

Effect of manual eyelid manipulation on intraocular pressure measurement by rebound tonometry
Sung Uk Baek, Ahnul Ha, Young Kook Kim, Jin Wook Jeoung, Ki Ho Park(Korea)
Br J Ophthal
 2018;102(11):1515-1519

【目的】ふたつの異なる眼圧計;リバウンドトノメーター(RT)およびゴールドマン眼圧計(GAT)での眼圧測定時瞼を手で開く行為(LM)の影響について調査
【対象と方法】
・POAG患者103名、3つの方法で眼圧測定;①LMしてRT、②LMせず(瞼を触らず)RT、③GATで測定(必要時は手で瞼を開ける)*順番はランダムに決定
・上-下眼瞼の瞼裂幅を計測
【結果】
・③群の平均眼圧(13.97mmHg)は、②群の眼圧(13.75mmHg)と有意差ないが、①群の平均眼圧(15.21mmHg)より有意に低値
・Bland-Altman plotでは、①群の眼圧は②③群のそれより高く評価(それぞれ1.5および1.2mmHg)
・高眼圧(>20mmHg)の例では、②群は③群より有意に低値(P<0.001)
・瞼裂幅が狭い(<7mm)34例では、①群は③群よりさらに眼圧が過大評価(P=0.014)
【結論】RTでは、瞼を手で開いて測定すると眼圧が有意に過大評価される。瞼裂幅が狭い症例ではさらに強調される。一方、瞼を触らずRTで測定した場合はGATと良好な相関を示した。(MK)

2018
102巻

眼還流圧、血圧、眼圧とPOAGの相互関係

British Journal of Ophthalmology 102巻 (10号) 2018

Inter-relationship between ocular perfusion pressure, blood pressure, intraocular pressure profiles and primary open-angle glaucoma: the Singapore Epidemiology of Eye Diseases study
Yih-Chung Tham, et al. (Singapore)
Br J Ophthalmol 102(10):1402–1406, 2018
シンガポールで行われたSingapore Epidemiology of Eye Diseases Studyの参加者で213例293眼を含む9877例、19587眼の血圧(BP)、眼圧(IOP)、眼還流圧(OPP)を調査
収縮期OPP(SOPP)<110mmHgの群では123-137mmHgの群と比べ1.85倍POAGがある可能性があった
収縮期BP(SBP)<124mmHgの群では138-153mmHgの群と比べ1.69倍であった。特にSBPがPOAGに及ぼす影響はIOPが21mmHg以上で3.9倍高かった。
Mean arterial pressure (MAP)=DBP+1/3(SBP,DBP)
Mean OPP (MOPP)=2/3(MAP)-IOP
Systolic OPP (SOPP)= SBP-IOP
Diastolic OPP (DOPP)=DBP-IOP
既報ではMOPPやDOPPがPOAGと関係しているとあるが、眼圧下降治療、眼圧でさらに調整すると、有意差はなくなった。
SBPの低下と高眼圧によるSOPPの低下がPOAGと関与している(MM)

2018
102巻

フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)に対する4分の1角膜内皮移植術(Quarter-DMEK)

British Journal of Ophthalmology 102巻 (10号) 2018

Quarter-Descemet membrane endothelial keratoplasty (Quarter-DMEK) for Fuchs endothelial corneal dystrophy: 6 months clinical outcome
Vasiliki Zygoura, et al. (Netherlands)
Br J Ophthalmol 2018(10);102:1425-1430.
目的:FECDに対するQuarter-DMEKの最初の症例群を評価し、技術の実現可能性、臨床転帰および合併症を評価した。
対象と方法:FECDのためにQuarter-DMEKを受けた12人12眼(平均年齢67±8歳;範囲58-82歳)。偽水晶体眼9眼、有水晶体眼3眼。
Quarter-DMEKドナー組織は8人9眼、死亡から手術までの平均期間は15.2±2日(範囲13-18日)、平均保存期間は14.3±1.5日(範囲13-17日)、Quarter-DMEK移植片は直径11.5mmの1/4で推定面積は約34 mm 2。これは標準的な円形8.5 mm DMEK移植片の面積の約半分である。
術後2週間の抗菌点眼剤および術後4週間1日4回の0.1%デキサメタゾン点眼、その後1日4回の0.1%フルオロメトロン点眼に切り替え、術後9ヶ月までに1日1回にした。
結果:術後6ヶ月で、視力は全例20/40(0.5)以上に改善した。11眼(92%)は20/25(0.8)以上、6眼(50%)は20/20(1.0)以上に達した。
平均中心角膜内皮細胞密度(ECD)は術前 2855±161 cells/ mm2、術後1か月1255±514 cells/ mm2、3ヶ月で1058±455 cells/ mm2、6ヶ月で968±427 cells/ mm2と減少した。
平均中心角膜厚は、術前662±100 μm、術後1ヶ月 601±79 μm、3ヶ月 546±46 μm、6ヶ月 545±40 μmだった。
4眼(33%)で部分的な移植片剥離を示し、そして前房内空気再注入を受けた。眼圧上昇は3眼で認めた。
結論:Quarter-DMEKは、従来のDMEKと同様の手術結果を可能にする実行可能な手術である。術後1ヶ月以内のECDの比較的大きな低下は、より広範囲の内皮細胞遊走または測定誤差(移植片の端で)から生じた可能性がある。長期的な結果が従来のDMEKの結果と似ている場合、Quarter-DMEKは内皮移植片の有用性を4倍にする可能性がある。(CH)

2018
102巻

白内障手術終了時の抗生剤前房内注入効果

British Journal of Ophthalmology 102巻 (9号) 2018

Comparative analysis of the safety and efficacy of intracameral cefuroxime, moxifloxacin and vancomycin at the end of cataract surgery: a meta-analysis.
Bowen RC et al(WI USA)
Brit J Ophthalmol 102(9): 1268-1276, 2018
・白内障術終了時に前房内へcefuroxime(1~10mg/0.1ml), moxifloxacin(15~500μg/0.1ml), vancomycin(0.0375~1mg/0.1ml)を注入した効果をMeta-analysisで解析した。
・moxifloxacin(ベガモックス点眼:5mg/1ml)
・Databaseから4849報告を抽出し、その中から解析に耐えうる17報告90万眼を超えるデ-タを利用した。
・前房内注入により術後眼内炎のリスクはOR=0.20(95%CI=0.13-0.32 p<0.00001)と減少した。
・眼内炎の発症頻度はcefuroximeでは0.0332%、moxifloxacinでは0.0153%、vancomycinでは0.0106%であった。
・前房内注入に加えて抗生剤点眼薬を使用しても、その効果はなかった(p>0.3)。
・前房内注入の合併症はmoxifloxacinで最小であった。
・Cefuroximeでは濃度間違いによる合併症があり、vancomycinでは網膜毒性の合併症があった。(TY)

2018
102巻

サイトメガロウイルスにより誘発された水疱性角膜症患者のための角膜内皮移植術後のガンシクロビル点眼治療

British Journal of Ophthalmology 102巻 (9号) 2018

Topical ganciclovir treatment post-Descemet’s stripping automated endothelial keratoplasty for patients with bullous keratopathy induced by cytomegalovirus
Koji Kitazawa, et al. (京都府立医大)
Br J Ophthalmol 2018(9);102: 1293-1297.
目的:サイトメガロウイルス(CMV)角膜内皮炎患者に対する、再発防止および角膜内皮移植術(DSAEK)後の術後結果に対するガンシクロビル(GCV)点眼の有効性を調査する。
対象と方法:DSAEKを受けたCMV角膜内皮炎による内皮機能不全の6人6眼。1日4〜6回、0.5% GCV点眼を続けた。術前および術後の検査(DSAEK後のCMV角膜内皮炎の再発を含む)、視力、眼圧、移植片生存率および角膜内皮細胞密度(ECD)を調べた。
平均患者年齢は63.8歳(範囲:41〜82歳)であり、そして6人のうち5人(83.3%)が男性であった。
眼房水中のCMV-DNAの検出前に4眼はPosner-Schlossman症候群(PSS)と診断され、他の2眼は慢性前部ブドウ膜炎と診断されていた。
結果:DSAEK後にCMV内皮炎の再発はなかった。平均経過観察期間は40ヶ月(範囲、12〜60ヶ月)。
平均術前BCVAは1.52±0.68 logMAR(0.52〜2.40logMAR)であったが、術後1年までに0.15±0.16 logMAR(-0.08〜0.30 logMAR)まで有意に改善した(P <0.01)。
平均術前ドナーECDは2692±177細胞/ mm 2であり、平均術後ECDは6、12および36ヶ月で26%、33%および54%の損失が認められた。
全例IOPは術後によくコントロールされていた(10〜20 mm Hg)。
GCVの長期局所投与に関連した有害作用は観察されなかった。
結論:DSAEK後のCMVの再発を予防するためのGCV点眼の継続使用は、ECDの維持、IOP制御、および視力の維持をもたらす。(CH)

2018
102巻

糖尿病網膜症からの硝子体出血に対する硝子体手術終了時の硝子体内トリアムシノロンアセトニド注射の効果

British Journal of Ophthalmology 102巻 (9号) 2018

Effect of intravitreal triamcinolone acetonide injection at the end of vitrectomy for vitreous haemorrhage related to proliferative diabetic retinopathy
Yoshihiro Takamura, et al. (福井大学)
Br J Ophthalmol 2018(9):1351-1357.
目的:硝子体切除術(VIT)と組み合わせたトリアムシノロンアセトニド硝子体内注射(IVTA)は、増殖糖尿病網膜症(PDR)による硝子体出血(VH)患者の術後炎症を予防するかどうかを調べた。
対象と方法:PDRによるVHと診断された患者のVIT終了時に、IVTAを伴うIVTA + VIT群または伴わないVIT群に分けた。IVTA + VIT群では、手術終了時に30ゲージ針を通してTA 0.1 ml(4 mg)を硝子体腔に注射した。
術前および術後3日、1週間、1、3、6ヶ月目に前房フレア強度(AFI)、中心網膜厚(CRT)、最高矯正視力(BCVA)および眼圧(IOP)を測定し比較検討した。
結果:6か月以上経過観察できたのはVIT + IVTA群41眼、VIT群40眼。
前方フレア強度(AFI)は両群とも3日目に急激に増加し、その後徐々に減少した。 3日目(P = 0.033)、1週間(P = 0.019)および1ヶ月(P = 0.037)で、VIT群よりもIVTA + VIT群において有意に低かった。
BCVAは両群とも術後3日目以降に改善し、最終BCVAはVIT群とIVTA + VIT群でそれぞれ0.195±0.048logMARと0.251±0.059logMARであった。
レーザーショット数は、VIT群で術後1週間目のAFIと有意に相関していた(P = 0.024)。一方、IVTA + VIT群では相関は認められなかった。
術後3日目の平均CRT値はVIT群とVIT + IVTA群でそれぞれ328±19μmと330±14μm。両群ともCRTは徐々に減少し、ベースラインからの差は手術後6ヶ月目で有意になった。 3日目に>350μmと測定された黄斑浮腫患者の割合は、VIT群とVIT + IVTA群でそれぞれ42.5%(17/40)と43.9%(18/41)であった。これらの症例では、術後1ヵ月目のCRTはVIT群よりもIVTA + VIT群の方が有意に低かった(P = 0.041)。
観察期間を通して、群間でBCVAおよびIOPに有意差はなかった。
結論:IVTAと硝子体切除術の併用はCRTの減少に寄与する可能性があるが、その効果は手術後の初期段階では限られているようである。(CH)

2018
102巻

開瞼器を使わない、最小限の消毒による硝子体注射

British Journal of Ophthalmology 102巻 (8号) 2018

Lid splinting eyelid retraction technique: a minimised sterile approach for intravitreal injections

Monique Munro, Geoff R Williams, Anna Ells, Michael Fielden, Amin Kherani, Patrick Mitchell, JessicaRuzicki, Feisal A Adatia (Canada)

British Journal of Ophthalmology 2018;102(8):1254-1258.

・点眼麻酔(0.5% alcaine)→ 5%ポピドンヨード点眼 → 2%リドカイン結膜下注射 → 2~5分待ってもう一度5%ポピドンヨード点眼 → 硝子体注射

・開瞼器使用せず、反対の手で瞼を押さえるのみ

・抗菌剤の点眼、マスク・ドレープ着用なし、清潔手袋は6名の術者のうち1名のみ使用

・2010-2015年、78,009眼(アバスチン22,207眼、ルセンティス55,802眼)中、12眼(0.015%)で眼内炎(MK)

2018
102巻

TAGS:新規発見進行期緑内障に対する初期治療として、点眼治療とレクトミーの比較

British Journal of Ophthalmology 102巻 (7号) 2018

Treatment of Advanced Glaucoma Study: a multicentre randomised controlled trial comparing primary medical treatment with primary trabeculectomy for people with newly diagnosed advanced glaucoma—study protocol
Anthony J King, et al. (UK)
Br J Ophthalmol 102(7):922–928, 2018
初診時にすでに進行期緑内障というのは失明の大きな要因である。
過去に行われた4つの大規模RCTを含むレビューでは初期治療として手術と点眼では、点眼の方で不成功が高い。RCTでは5年後の患者申告の結果では大きな差がないとされるが、これらには進行期緑内障が含まれていない。
UKの27病院で3年にわたり440例の初診時進行期緑内障患者をリクルートし、2年後の評価を行う。
First outcome: vision-related QOL(NEI-VFQ25)
Secondary outcomesとして、Clinical, economic, Patient-centeredの指標(table2)
患者のQOLをアウトカムにした大規模なRCTは初めてである。(MM)

2018
102巻

黄斑部の色素が緑内障患者のグレアによる視機能と中心視野の低下に関係

British Journal of Ophthalmology 102巻 (7号) 2018

Macular pigment is associated with glare-affected visual function and central visual field loss in glaucoma
We Fong Siah, et al.
Br J Ophthalmol 102(7):929–935, 2018
Macular Pigment and Glaucoma Trialから88例のOAGをリクルート。黄斑色素密度(MPOD)を中心0.25°,0.5°,1°の位置でheterochromatic flicker photometryにより測定
それぞれ、69例(78.4%)、81例(92%)、59例(67%)で測定可能であった
Mesopic contrast sensitivity with glare (mCSg), photostress recovery time (PRT),自己申告のグレアの症状との関連を調べ、黄斑部の障害についてはOCTでGCCをチェック、HFAは10-2を調べた。
0.25°,0.5°での低空間周波数のmCSgとMPODが相関
グレア症状を訴える患者はMPODが低い(Figure1)
FoveaのGCCが少ないものはMPODも少なく、mCSgは低下し、PRTの延長を認めた
中心10°の視野欠損の程度はすべての部位でのMPODと相関あり

MPODレベルの低下は、A)緑内障視野欠損の重症度、B) 低空間周波数でのCSの低下、C) 自己申告のグレアと相関していた(MM)

2018
102巻

角膜新生血管のOCTA画像

British Journal of Ophthalmology 102巻 (7号) 2018

Comparison of anterior segment optical coherence tomography angiography systems for corneal vascularisation.
Ang M et al(Singapore)
Brit J Ophthalmol 102(7): 873-877, 2018
・AngioVue(split-spctrum amplitude decorrelation algorithm angiography system:SSADA、Optovue)
・Angioscan(SD OCT、RS3000、Nidek)の2台のOCT-Aで角膜の血管をen faceで撮影した。
・眼球表面疾患で角膜輪部から1mm以上角膜表層と深層に血管が発生した人を対象とした。
・AngioVueではlong corneal adaptor moduleを使用し、オ-トフォ-カス機能をOFFとし、レンズを角膜表面に非常に近づけ、フォ-カスをマニュアルで行った
・Angioscanでも同様の方法で行った
・両者の相関性は高かったが(r=0.721)、SSADAの方がSD OCTよりも平均血管濃度は高かった(20.3±4.9%:15.1±4.2% p<0.001) (TY)

2018
102巻

白内障手術における前房内散瞳剤の評価

British Journal of Ophthalmology 102巻 (6号) 2018

An evaluation of intracameral mydriasis for routine cataract surgery
Christopher B Schulz, et al. (UK)
Br J Ophthalmal 2018(6);102:784-789.
目的:術中のMydrane(トロピカミド0.02%、フェニレフリン0.31%、リドカイン1%)の使用は、現在の散瞳方法を置き換えるための1つの可能性のある選択肢である。
(1)満足度、術前不安および術後視力(2)時間、コストおよび人員への影響(3)瞳孔の大きさ、機械的瞳孔拡張の必要性、術中虹彩緊張低下症候群(IFIS)の発生率および合併症について検討した。
対象と方法:今まで通りの術前散瞳薬点眼使用群(シクロペントレート1%およびフェニレフリン2.5%の各3回投与)(1群; n = 60)
Mydrane使用群(2群; n = 60)0.2mLのMydrane前房内に注入した。CCCを行う前に十分な瞳孔拡張する為に45-60秒を要した。
結果:術後VAは群間で同等であった(2群0.09±0.16対1群0.08±0.15、 p = 0.59)。
2群の瞳孔の大きさは、CCCの前は7.0±1.0mmで、皮質吸引後に6.5±0.29mmだった。α1ブロッカー使用者ではより小さかった(4.7±1.1mm、 p = 0.004)。2群と1群を比較すると、2群で術前待機時間は短く(2群87分、1群146分、p <0.0001)、満足度はより高かった。(2群76.0±11.2対1群66.3±8.6 、p <0.0001)。
1群では3.3%がIFLSを発症し、α1ブロッカー使用者では14.3%と上昇した。2群のIFISの率は6.7%(であり、α1ブロッカー使用者では37.5%に上昇した。
術前待機時間と満足度の間には弱い負の相関が認められた。
術前待機時間と術前不安との間には、さらに弱い負の相関が認められた。
この施設では費用効果がなかった。
結論:Mydraneは、白内障手術を受けているほとんどの患者において臨床的に有効であった。(CH)

2018
102巻

メルボルンにおけるアカントアメーバ角膜炎の危険因子、人口統計および臨床像

British Journal of Ophthalmology 102巻 (5号) 2018

Risk factors, demographics and clinical profile of Acanthamoeba keratitis in Melbourne: an 18-year retrospective study
Matthew Hao Lee, et al. (Australia)
BrJ Ophthalmol 2018(5);102:687-691.
目的:オーストラリア、メルボルンのRoyal Victorian Eye and Ear Hospital(RVEEH)で治療されたアカントアメーバ角膜炎(AK)患者の発生率、危険因子、臨床像および最終的な視力を評価する。
対象と方法:1998年1月から2016年5月にRVEEHで管理されたAKのすべての症例。
診断は角膜検体の染色、培養、CL保存液、バイオプシーなど。
結果:調査期間中にAKと診断されたのは34人36眼、平均年齢38.9歳(範囲:19-79歳)、男性と女性は同数だった。早期に診断されたのは26例(症状発生から診断まで30日未満)であり、後期診断されたのは10例(症状発生から診断まで30日以上) 。早期診断と後期診断の間の年齢、性別、左右およびCLの点で有意差はなかった
経過観察の平均時間は220.6日であった。
CL装用は31眼(86.1%)、その内、6眼(19.3%)の患者がCLしたまま水泳をし、7眼(22.6%))はCLを水道水ですすいだ事を認めた。また、消毒を怠る(22.6%、n = 7)、長期のCL使用(38.7%、n = 12)、長期のケース使用(16.1%、n = 5)など、CL使用法に問題があった。
患者の早期診断は角膜上皮下浸潤(p<0.05)を呈する傾向があり、後期診断の患者はブドウ膜炎の兆候、輪状浸潤、内皮プラークおよび角膜菲薄化だった(p<O.O5)。
VAが改善されたのは29眼(80.6%)であった。早期診断の患者のVA(logMAR 0.4、p = 0.01)と比較して後期診断の患者のVAは(logMAR 0.8)は悪かった。
最も一般的な治療は、プロパミジンとポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)(n = 14)、プロパミジンとクロルヘキシジン(n = 6)およびプロパミジンとPHMBとクロルヘキシジン(n = 4)の組み合わせであった。
その他、上記の薬剤と、ネオマイシン、オフロキサシンおよびボリコナゾールなどの他の抗菌剤との組み合わせであった。
外科的治療は7眼で行われた。全層角膜移植5眼、羊膜移植3眼、治療用CL1眼、角膜クロスリンキング1眼。
結論:AKは重度の角膜炎の稀な原因であり、CL使用と関連していた。より遅い診断を受けた患者は、症状と視力も悪く、治療期間も長くなった。より早期の診断および治療が必要であることを示す。
現在の治療は、併用療法は単独療法より効果的であると示唆するエビデンスはない。これを確立するために更なる研究が必要である(CH)

2018
102巻

アルツハイマ-痴呆症とOCT-A

British Journal of Ophthalmology 102巻 (2号) 2018

Evaluation of optical coherence tomography angiographic findings in Alzheimer’s type dementia.
Bulut M et al(Turkey)
Brit J Ophthalmol 102(2): 233-237, 2018
・26名のアルツハイマ-痴呆症(ATD)と年齢性を合致させた26名のCtrl群とでOCTA結果を検討した。
・OCTAは6x6mmを用い、測定は午前9時から11時の間に行った
・OCTAでの網膜血管濃度は全域でCtrl群よりも有意に低く(p<0.05)、中心窩無血管野(FAZ)は有意に大きくなっていた(p=0.001)。
・脈絡膜厚も有意に薄く(p<0.001)、網膜外層や脈絡膜の血流は低かったが有意差はなかった
・これらのことから、OCTAはATDの新しいbiomakerになりうるもので、進行度合いや治療効果の判定に役立つ可能性がある。(TY)

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