Early peripheral laser photocoagulation of nonperfused retina improves vision in patients with central retinal vein occlusion (Results of a proof of concept study)
Matus Rehak, et al. (Germany)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 252(6); 745-752, 2014
・CRVO患者の周辺網膜の無灌流域に早期レーザー治療+ ranibizumab硝子体注射とranibizumab硝子体注射のみの治療効果を比較する。
・RLグループ(レーザー治療+ ranibizumab硝子体注射 10例)
controlRグループ(ranibizumab硝子体注射 12例)
すべての患者は最初の3ヶ月間は月1回ranibizumab硝子体注射を受けた。その後はPRNで経過観察。
ranibizumab硝子体注射追加基準:最も良い矯正視力から5文字以上低下した時、最も低いCRTと比較し50 µm以上増加した時、CRT 250 µm以上になった時
・視力 RLグループ baselineBCVA ETDRS 65文字 → 6ヶ月後 70文字
controlRグループbaselineBCVA ETDRS 61文字 → 6ヶ月後 61文字
網膜中心窩厚 RLグループ baseline 547 µm → 6ヶ月後246.5 µm
controlRグループ baseline 637.5 µm → 6ヶ月後423 µm
グループ間の患者数が少ないので有意差はでなかったが、RLグループでの視力は著明な改善がみられた。
レーザー治療 平均2.1回、平均578スポット
RLグループ ranibizumab硝子体注射 3.5回
controlRグループ ranibizumab硝子体注射 4.0回
controlRグループのうち1人が、5ヶ月目でNVDが出たので脱落した。
RLグループでは5ヶ月、6ヶ月目で視力改善が見られた。
controlRでは5ヶ月、6ヶ月目で視力低下した。
・無灌流域をなくす事が抗VEGF再注入の頻度を減らす事を意味する。
VEGFの減少と無灌流域で生み出される他の炎症要因の減少が黄斑浮腫減少につながった。
周辺網膜の無灌流域に対する早期のレーザー治療はCRVO患者の視力改善を導くと思われた。(CH)
Topical 0.03% tacrolimus for subepithelial infiltrates secondary to adenoviral keratoconjunctivitis
Eliya Levinger, et al. (Israel)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 252(5): 811-8l6, 2014
・アデノウイルス角結膜炎の二次的な角膜上皮下混濁に対する0.03%タクロリムス軟膏の効果を評価する。
・症例は11人11眼、すべての患者は少なくとも13ヶ月間0.1%デキサメタゾン点眼で治療されていた。他の抗炎症薬は使用していなかった。緑内障点眼を使用している人もいなかった。
0.03%タクロリウム軟膏1日2回6週間使用、角膜上皮下混濁を評価後4週wash out、さらに12週間使用した。
・視力 0.34±0.09 → 0.08±0.04に改善した。すべての症例で改善。
異物感、グレアなど他の症状もかなり減少した。
最初の2週間、11人がタクロリウム軟膏による若干の違和感を訴えたが、中止しなくてはいけないほどの副作用はなかった。
・他の治療では反応しない症例やステロイド治療が出来ない症例に0.03%タクロリウム軟膏は安全で効果的な代替え治療となる。(CH)
The effect of previous surgery and topical eye drops for primary open-angle glaucoma on cytokine expression in aqueous humor
Lisa A. Engel et al (Germany)
Graefe Arch Clin Exp Ophthalmol 252(5): 791-799, 2014
・Group A: 手術既往歴なし、点眼治療あり、緑内障手術となったPOAG患者 13眼
・Group B: 手術既往歴あり、点眼治療あり、緑内障手術となったPOAG患者 19眼
(6カ月以内に手術しているものは除く)
・Group C: 緑内障のない、白内障手術患者
・各手術の術前に前房水を100μl採取し、30種類のサイトカインを調べた
・AとCの比較ではIL-6とCCL2がCで上昇していたが他は差がなかった
→眼圧下降点眼のみで前房内のサイトカインが上昇するわけではない
・AとBの比較では、BにおいてIL-6,IL-8,CCL2,CXCL9,HGFが上昇、CCL5が減少
・Bで上昇、G-CSF,IL-8,IL-12,CXCL10,HGF/ G-CSF,IL-12,HGF:リンパ球の活動を反映
・Cで上昇、IL-17,CCL5,VEGF 炎症を反映
・結論:
・白内障手術であっても過去の内眼手術はその後のレクトミーに悪影響を及ぼす可能性がある
・緑内障点眼が眼内のサイトカインに与える影響は少ない。
・G-CSF: 網膜のガングリオン細胞や虚血再灌流の障害でneuro-protective factorとして働き、緑内障で多く発現する
・IL-6: レクトミーのnegative factorとして発現し、瘢痕を促進する 眼圧下降薬では変化がなかった
・IL-8: neurotoxin として働く。IOP上昇とも関係。TMのoutflow regulationに関与している可能性(まだ詳細不明)
・CCL2:モノサイトの遊走に関与 IL-8と同様に房水流出阻害に関与
・IL-12:緑内障眼で上昇するが、レクトミー失敗のリスクファクターではないという報告
・CXCL9: 緑内障眼で上昇 Th1型免疫応答に関与
・HGF:創傷治癒に関与(MM)
The efficacy of autologous serum eye drops for severe dry eye syndrome: a randomized double-blind crossover study.
Celebi ARC et al(Turkey)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 252(4): 619-626, 2014
・自己血清が重症ドライアイに効果があるかどうかを検討した。
・国際ドライアイワークショップで決めたOcular Surface Disease Index(眼表面疾患指数OSDI:12項目0-4点:計算結果0-100点)、涙液フィルムBUT(TBUT)、シルマーテスト、OXFORDスケール(角膜1か所、結膜2か所の生体染色スコア0-5点)で判定。
・20%自己血清ASと防腐剤非添加人工涙液PFAT治療を20例40眼の重症ドライアイ症例でそれぞれ1か月点眼後に比較した。
・ASでは有意にTBUT時間の延長(p<0.001)、OSDI値の減少(55.2%:19.5% p<0.001)があったが、シルマーテストやOXFORDスケールでは有意差はなかった(p>0.05)。(TY)
Long-term intraocular pressure changes after vitrectomy for epiretinal membrane and macular hole.
Fujikawa M et al(滋賀医大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 252(3): 389-393, 2014
・57眼のERMと61眼のMHについて、眼圧経過を追った。
・ERM群(66.0±9.4歳)の平均経過観察期間は29.3±15.7か月で、術眼の手術前眼圧は12.9±2.5mmHg、最終眼圧は13.2±2.9、他眼眼圧は13.0±2.5であったが、MH群(65.1±7.3歳)は25.6±14.1か月の平均経過観察期間で、術前眼圧は13.3±2.5、最終眼圧は14.0±3.2、他眼眼圧は12.9±3.2であった。
・黄斑円孔群では術眼と他眼との最終眼圧の差に有意差があったが(p<0.01)、ERM群では差はなく(p=0.40)、MH群では硝子体術後に有意に眼圧が上昇するリスクが高かった(p<0.01)。
・術中のERM群とMH群の差は、TA可視化は36.8%:82.0%、ICG染色は5.3%:83.6%、ILM剥離は15.8%:100%であった。
・TA残存の効果は1か月と言われているが、術後1か月目の眼圧は両群とも術前より低下しており、除外できるだろう。
・術後の炎症ストレスの差が炎症性サイトカインの増加あるいは液空気置換後に線維柱帯に細胞などが詰まる、あるいは術後のうつ伏せも影響している可能性もあるが、多変量解析ではこれらは影響が少なく、年齢と基礎眼圧が原因として抽出された。(TY)
Subfoveal choroidal thickness measurements with enhanced depth imaging optical coherence tomography in patients with nanophthalmos.
Demircan A et al(Turkey)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 252(3): 345-349, 2014
・31例31眼の小眼球症(21.0±12.7歳)と31例31眼のコントロール(16.2±11.8歳)で中心窩下脈絡膜厚SFCTと中心黄斑厚CMTを測定した。
・中心角膜厚CCT、前房深度ACD、屈折値REも測定した。
・小眼球とCtrlのSFCTは551.3±87:330.5±46μ(p<0.001)であった。
・小眼球のBCVA=0.4±0.28 logMAR、RE=+10.6±3.06D、CMT=331.9±78μm、AL=18.8±1.5mm、ACD=2.42±0.4mm、CCT=577.2±32μmで、いずれもp<0.001で有意差があった。
・SFCTは以下と負の相関:AL(r=-0.836 p<0.001)、ACD(r=-0.597 p<0.001)であり、正の相関はCCT(r=0.471 p<0.001)、CMT(r=0.585 p<0.001)、RE(r=0.836 p<0.001)であった。(TY)
Long-term intraocular pressure changes after vitrectomy for epiretinal membrane and macular hole
Masato Fujikawa, et al. (滋賀医科大学)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 252(3); 389-393, 2014
・硝子体手術の中でもERMに対する手術は臨床的に最も侵襲が少ないと思われるので、ERMとMH治療の為の硝子体手術後の長期眼圧経過を調査した。
2005.5月〜2009.11月 ERM 57眼 MH 61眼
・ERMグループ(平均経過観察期間 29.3±15.7カ月)
術眼 術前 12.9±2.5mmHg → 最終受診時 13.2±2.9mmHg
他眼 術前 13.1±2.5mmHg → 最終受診時 13.0±2.5mmHg
有意差なし
MHグループ(平均経過観察期間 25.6±14.1カ月)
術眼 術前 13.3±2.4mmHg → 最終受診時 14.2±3.2mmHg
他眼 術前 13.3±2.5mmHg → 最終受診時 12.9±3.2mmHg
ベースライン時は有意差なかったが、最終受診時では術眼の方が際立って高かった。
・最終受診時、ベースライン時より4mmHgまたはそれ以上眼圧が上昇したのは、
ERMグループ 術眼 4眼、他眼 4眼
MHグループ 術眼 10眼、他眼 7眼
TA使用の有無では統計学的に有意差はなかった
・ERMグループの術眼では平均0.3mmHg上昇、MHグループの術眼では平均0.7mmHg上昇した。
この相違はMH術後の眼圧上昇の危険性と遅発型OAGになる危険性を示唆する。
ERMとMHの手後炎症のストレス、あるいは身体的な影響が炎症のサイトカインの濃度を増やしたか、あるいは液体-ガス置換の後に沈殿物で線維柱帯を詰まらせたと仮定した。
腹臥位も同じく潜在的な原因であるはず。
医師は硝子体切除術の眼圧上昇の潜在的な危険に気付いていて、そして、不可逆的な視力・視野障害が起きる前に治療を始めるべきである。(CH)
The effect of intracameral anesthesia on macular thickness and ganglion cell-inner plexiform layer thickness after uneventful phacoemulsification surgery: prospective and randomized controlled trial
Esin Sogutlu Sari et al (Turkey)
Graefe Arch Clin Exp Ophthalmol 252(3): 433-439, 2014
・眼内麻酔は広く使用されており、有効性や安全性が報告されているが、網膜への変化があるかOCTを用いて調査する
・1%のキシロカイン眼内麻酔0.5㏄を白内障手術時に使用 49眼
・同量のBSSを二重盲検で使用 50眼
・両群とも術後一時的にGC-IPLが厚くなるが、すべての比較時期において両群間に有意差はなかった。
・過去文献でリドカインの網膜毒性が報告されているが、合併症のない白内障手術では特に問題となることはない(MM)
Intravitreal triamcinolone injections in non-arteritic anterior ischemic optic neuropathy.
Radoi C et al(France)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 252(2): 339-345, 2014
・非動脈炎性前部虚血性視神経症(NA-AION)では今まで、視力改善に対する有効な治療は報告されていない。
・36例のNA-AIONに対し、21例に4mg/0.1mlのIVTAを行い、無治療の15例と比較した。
・6か月後の視力は治療群で優位に高かった(p=0.0036)。
・1ライン以上改善は15例(71%):2例(13%)、3ライン以上改善は6例(29%):1例(7%)。
・発症15日以内に注射した13例では、1ライン以上は12例(92%)、3ライン以上は5例(38.5%)、15日以降に行った8例では、1ライン以上は3例(37.5%)であった。
・治療群では治療開始までの期間が短いほどより視力がよかった(p<0.0083 r=-0.56)。
・6か月後の視野についても治療群で優位によかった(p<0.0028)。(TY)
Intraocular pressure reduction after initial failure of selective laser trabeculoplasty (SLT)
Marcelo Ayala (Sweden)
Graefes Arch Clin Exp Opthalmol 252(2): 315-320, 2014
目的:初回SLT加療で眼圧降下が得られなかった症例に線維柱帯(TM)の同じ部位と異なる部位にSLTを2回目に施行した眼圧につき考察する。
方法:繰り返すSLT治療による眼圧下降を調べる。
患者は全員がPOAG又はPE緑内障。全例初回SLTはTM下方半周180度にSLTを施行されている(SLT1)。
2回目のSLTは1回目と同じ治療されたTM領域か、未治療の上方TM領域のどちらかに施行(SLT2)。眼圧は術前とSLT2加療後、2時間後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後に測定。
結果:各群40名。術前両群間で年齢、性別、PEの有無、SLT1と2の間の時間、SLT1以前の眼圧、SLT2以前の眼圧において差は無かった。結果として、SLT2加療後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月での2群間に眼圧の差は無かった。
結論:SLTを2回施行する場合に2度目を同じ区域でも異なる区域に施行しても眼圧に差は無い。
ALTを繰り返す事は眼圧上昇。癒着等のため制限されるがSLTはALTよりもエネルギーが少なく組織損傷が少ないゆえに追加可能である。今回は波長が約532nmのYAGレザーを用いて、スポットサイズは約400㎛、TMの180度に上に約50発を施行した。エネルギーは0.9mJで開始し、気泡形成まで増減調節した。術後アプラクロニジンを一度のみ点眼し、スラロイドは使用していない。全患者に1度目は下方180以上にSLTを施行。SLT1後1,3,6,9,12,18,24ヶ月後の眼圧測定で術前の20%以上の下降が無い症例に再施行。前回と同じ下方又は新たに上方に施行するかは無作為に決定。術後2時間、1,3,6ヶ月後に眼圧を3回測定平均した。同時に炎症が出ていないかも確認した。SLT1の後1ヶ月で24から18㎜Hgであった眼圧は平均6㎜Hg下降し、SLT2の後1ヶ月でも同様に23から18㎜Hgであった眼圧は平均5㎜Hg下降し、これは区域に無関係であった。(YM)
Intravitreal triamcinolone injections in non-arteritic anterior ischemic optic neuropathy
Corina Radoi et al. (France)
Graefes Arch Clin Exp Opthalmol 252(2): 339-345, 2014
目的:非動脈炎性の前部虚血性視神経症(NA-AION)により視力低下と視神経乳頭腫脹をきたした36名のうち21名に4mgIVTAを行ない、無治療の15名と比較した。6ヶ月後に視力(VA)、網膜神経線維層厚、視野を評価した。
結果:治療群では無治療群よりも視力は良好(P=0.0035)。視野も同様(P<0.0028)。
結論:この後ろ向き研究により、NA-AIONの早期にIVTA治療を受けた患者は、6ヶ月後に視力と視野は改善した。
NA-AIONは、中高年に著しい視力低下をきたす急性の視神経の虚血病変であり、危険因子としてはHT,DM,高脂血症、動脈硬化、睡眠時無呼吸、視神経の解剖学的要因などがある。視神経の虚血は急性浮腫の数ヶ月後には視神経乳頭の軸索欠損から萎縮をきたす。
炎症を改善して虚血の連鎖を減らすためにはステロイドによる加療が最も有効と考えられる。ステロイド全身大量投与は全身合併症のある患者には危険な副作用があり、今回IVTAを検討した。(YM)
Intraocular pressure reduction after initial failure of selective laser trabeculoplasty (SLT)
Marcelo Ayala (Sweden)
Grafes Arch Clin Exp Ophthalmol 252(2): 315-320, 2014
下方半周SLT(SLT1)後の眼圧再上昇に対して、同一部位あるいは上方半周のSLT(SLT2)の効果の比較
POAGあるいはPE患者、 SLT1後1ヶ月以降で20%以上の眼圧下降が得られた患者
最長24ヶ月のフォローアップ 20%の眼圧下降が得られなくなったらSLT2
フォローアップ SLT1: before, 2h, 1, 3, 6, 9, 12, 18 and 24 months
SLT2: before, 2h, 1, 3 and 6 months
結果:各群40例患者背景に有意差なし
PE患者62.5% 北欧に多い
SLT1後の眼圧下降:-6mmHg (24→18)
SLT2一ヶ月後 IOP: 同一部位群 -5 mmHg(22→17) 別部位群 -5mmHg(23→18)
2時間後,1,3,6ヶ月後の眼圧下降に有意差なし 術後炎症も有意差なし
術後6ヶ月までの短期では再治療部位の違いで効果に差はない
SLT後のTMの修復は6-18ヶ月で起きると報告され、この調査でも6ヶ月以降は点眼を変更したり、再度SLTを行ったりしたため、6ヶ月までの成績となっている(MM)
The effect of intravitreal bevacizumab injection as the initial treatment for Coats’ disease
Xiao-Xue Zheng et al. (China)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalrnol 252(1): 35-42, 2014
・子供と成人のコーツ病に対する最初の治療としてのbevacizumab硝子体注射の効果を評価する。
2010.4月〜2012.5月の間、少なくとも6ヶ月以上経過観察できた子供14例、成人5例。
子供:14例(男児13例、女児1例、平均年齢6.9 歳)
シールズ分類 stage2 1例、stage3a 9例、stage3b 4例
網膜剝離 13例、毛細血管拡張14例、網膜前線維増殖2例
平均注射回数2.9回
全例で網膜下液と滲出物の減少と毛細血管拡張の回復が認められた。視力はベースライン時と比べ、注射後6、 12、24週後に改善した。(表2)
レーザー追加5例、cryo追加3例、TA硝子体注射追加1例、手術追加1例
bevacizumab硝子体内注射後1例のみ網膜前線維増殖が増えた。
成人:5例(男性4例、女性1例、平均年齢33.6 歳)
シールズ分類 stage3a 2例、stage3b 3例
網膜剝離 5例、毛細血管拡張5例、網膜下線維増殖2例
平均注射回数2.0回
全例で網膜下液と滲出物の減少と毛細血管拡張の回復が認められた。視力変化はなかった。(表2)
レーザー追加3例、cryo追加0例、TA硝子体注射追加1例、手術追加0例
・コーツ病のスタンダードな治療に追加して行われるbevacizumab硝子体注射が網膜下線維増殖や潜在的に牽引性網膜剥離に発展する可能性があるとする報告もある。
・今回の研究の場合、網膜線維増殖はコーツ病の自然経過かもしれないし、bevacizumabのためかは不明。
しかし、bevacizumab硝子体注射は比較的安全と推測する。
bevacizumab硝子体注射は従来の治療の前の付属治療として有効であり、視力維持、改善する可能性を持っている。
Coats disease classification
stage 1, telangiectasia only
stage 2, telangiectasia and exudation (2A, extrafoveal exudation; 2B, foveal exudation)
stage 3, exudative retinal detachment (3A, subtotal; 3B, total)
stage 4, total detachment and secondary glaucoma
stage 5, advanced end-stage disease(CH)
Spectral domain optical coherence tomography analysis in deprivational amblyopia: a pilot study with unilateral pediatric cataract patients.
Kim YW et al(Korea)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(12): 2811-1819, 2013
・14名の視性刺激遮断弱視の小児と年齢をマッチさせた14名の正常小児(7.45±2.57歳)でCirrus OCT検査を行い、Macular、RNFL、黄斑部神経節細胞内網状層厚GCIPLを測定した。
・平均的なRNFL厚は弱視眼では99.64±10.11μmで、非弱視の他眼97.28±12.34や正常眼95.38±9.74よりも厚かったが、有意差は出なかった。
・ただ、鼻側のRNFL厚は弱視眼で75.84±19.22、他眼63.42±14.05(p=0.037)、正常眼62.38±9.65(p=0.043)より厚かった。
・中心黄斑厚、黄斑部GCIPL厚は有意差がみられなかった。(TY)
Long term effects of lutein, zeaxanthin and omega-3-LCPUFAs supplementation on optical density of macular pigment in AMD patients: the LUTEGA study.
Dawczynski J et al(Germany)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(12): 2711-2723, 2013
・172名の非滲出性AMD患者を3群に分けてサプリメントを12ヶ月投与した(完了時には145名)。
・D1(1日1回DHA:100mg, EPA:30mg)、D2(D1を1日2回)、プラセボー(P)。
・黄斑色素濃度(MPOD)は480nm光で測定した。
・MPODの変化量は平均濃度では、P群(-0.004±0.011 減少)、D1群(0.016±0.015 p<0.001)、D2群(0.025±0.022 p<0.001)で、D1群とD2群の間にも p=0.049で有意差があった。
・容積量では、P群(-0.031±0.082 減少)、D1群(0.265±0.151 p<0.001)、D2群(0.315±0.130 p<0.001)で、D1群とD2群との間には有意差がなかった(p=0.213)。
・視力は、P群(0.129<小数点0.74>→0.127<0.75> p=0.681)、D1群(0.134<0.73>→0.104<0.79> p=0.001)、D2群(0.104<0.79>→0.064<0.86> p<0.001)であった。(TY)
Light-dark changes in iris thickness and anterior chamber angle width in eyes with occludable angles.
Hirose F et al(神戸市)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(10): 2395-2402, 2013
・AS-OCTを用いて虹彩厚(IT)と隅角幅の明暗変化を検討した。
・対象はPACS:51、PAC:32、PACG:27、POAG:43の日本人153例153眼である。
・測定したのは瞳孔径、IT、500μm部の隅角幅AOD500と隅角面積TISA500を、明所、暗所で上下鼻耳の4方向で測定した。
・明暗差(明-暗)では、PACS-PAC-PACG:POAGは、IT差は-0.063_-0.063_-0.054:-0.078mm、AOD500差は0.060_0.071_0.048:0.093mm、TISA500差は0.024_0.028_0.020:0.035mm2で、いずれもp<0.005であった。
・この結果から暗所での虹彩根部の膨大が隅角閉塞機転に影響している事が分かった(TY)
Posterior vitreous detachment following intravitreal drug injection.
Geck U et al(Germany)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(7): 1691-1695, 2013
・硝子体注入後に後部硝子体剥離が発生するかどうかについて検討した。
・最初からPDVのできている眼は除外した61例61眼(72±10.3歳:36-95歳)の内訳は、滲出性AMD:47眼、RVO後のCME:8眼、他の原因によるCME:6眼である。
・注射した薬剤は、bevacizumab(1.25mg)B群:25眼、ranibizumab(0.5mg)R群:27眼、triamcinolone(4mg)T群:6眼、bevacizumab+triamcinolone(B+T群):3眼であり、注射後、最低4-6週間、経過観察した。
・平均11.1週の経過観察中に15/61眼でPVDが発生した(R群6例、B群7例、T群2例)。最初の注射後に3眼、2回目の注射後に3眼、3回目で7眼であり、PVD発生は70歳前後で比較すると70歳以上で多かった(p=0.008)。
・このことは、注射の効果にはPVDが発生した効果も影響していることを考慮すべきことを示唆している。(TY)
Intraoperative floppy iris syndrome (IFIS) in patients receiving tamsulosin or doxazosin – a UK-based comparison of incidence and complication rates.
Haridas A et al(UK)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(6): 1541-1545, 2013
・tamsulosinあるいはdoxazosin内服者でのIFISの頻度と合併症を調査した。
・2年間で2028例2785眼の白内障があり、52例(1.9%)がtamsulosin内服、109例(3.9%)がdoxazosin内服をしていた。
(安間眼科での調査:男性5,650眼中745眼(13.2%)がα1遮断剤内服、
745眼中、主にtamsulosin内服者は431眼(58%)であった:日本人は多いのか?)
・Doxazosin群では17/106眼(16%)が少なくとも1種のIFISの特徴があり、6眼(6%)では追加処置が必要で、2眼(1.9%)で術中合併症が発生した。
・Tamsulosin群では25/52眼(48%)でIFISの1種以上の特徴があり、18眼(35%)で追加処置が必要で、7眼(13.5%)で術中合併症があり、いずれも、doxazosin群、コントロール群よりも有意に多かった。(TY)
Retinal and optic nerve evaluation by optical coheernce tomography in adults with obstructive sleep apnea-hypopnea syndrome (OSAHS).
Casas P et al(Spain)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(6): 1625-1634, 2013
・視神経乳頭周囲のRNFL厚、視神経乳頭(ONH)形状パラメータ、黄斑厚、黄斑容積を50名96眼(50.9±12.4歳)の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAHS)で調べ、年齢マッチさせた正常者33例64眼と比較した。
・全員、矯正視力は20/20以上、屈折度は±3D以内、眼圧21mmHg未満である。
・OSAHSでは鼻側乳頭周囲のRNFL厚が74.7±15.8μmで、Ctrlの81.1±16.6と比較し、有意に薄かった(p=0.047)が、OSAHSの病態の重症度には相関がなかった。
・垂直のRIM面積(VIRA)はOSAHS:Ctrl=0.67±0.41:0.55±0.29mm3(p=0.043)、水平方向のRIM幅(HIRW)は 1.87±0.31:1.80±0.25mm2(p=0.039)、視神経面積は 2.74±0.62mm2:2.48±0.42(p=0.002)で、いずれも有意にOSAHSで大きかった。
・殊に視神経面積では重症なOSAHSでは2.8±0.7mm2で、より大きいことが分かった。
・耳側の黄斑厚(1-3mm)の黄斑厚は軽中等度のOSAHSでは重度のものより有意に厚かった(270±12μm:260±19 p=0.021)。
・OSAHS患者で陽圧酸素治療を行うと脳容積が4%減少したとの報告もあり、虚血による細胞体、核の炎症性の浮腫は、VEGF、酸化窒素などを放出し、黄斑厚の増大を来たすが、いずれ、萎縮、神経死になっていくのではないかと推論した。
・乳頭周囲のRNFL厚や視神経乳頭面積などはOSAHSの早期診断になる可能性もあるだろう(TY)
Gas tanponade for myopic foveoschisis with foveal detachment.
Wu TY et al(Taiwan)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(5): 1319-1324, 2013
・近視性黄斑分離症があり、中心窩網膜剥離を伴った-7D以上の近視眼10例10眼に硝子体手術は行わず、C3F8ガス0.2-0.4mlを注入し、5日から7日間のうつ伏せ姿勢を行った効果を6ヶ月間経過観察した。
・術前の最高視力はlogMARで0.52(0.30)~2.0(0.01)であった。
・1ヶ月後には中心窩剥離は4眼で完全に消失、4眼は部分的に改善した。
・この部分的に改善した例の内、2眼は繰り返し治療で解剖学的に成功した。
・残りの2眼の内、1眼は15ヶ月後に剥離は消失し、もう1眼は剥離は継続したが剥離高さが減少した。
・硝子体手術は1眼で行われ、分離症、網膜剥離は消失した。
・最高視力は7眼で改善し、残り3眼も視力低下はなかった。