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Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology

2013
251巻

IOLMasterのデータ読み違い

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 251巻 (1号) 2013

Misleading axial length measurements with the IOLMaster due to a dense posterior vitreous surface membrane and a macular edema in a diabetic patients.
Mayer CF et al(Austria)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(1): 387-389, 2013
・IOLMaster(Ver 3.01.0294)で糖尿病黄斑症を持つ人の眼軸長を測定したら、21.25mm(SNR=3.4)、21.96(SNR=3.1)、22.57(SNR=4.2)の3種のデータが得られた。
・一つは濃い後部硝子体剥離部から、もう一つは黄斑浮腫の内境界膜面から、もう一つが網膜色素上皮面であった。
・この様な場合には最も大きな値を選択すべきである。(TY)

2013
251巻

虹彩色による視機能の違い

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 251巻 (1号) 2013

Iris color and visual functions.
Nischler C et al(Austria)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(1): 195-202, 2013
・虹彩色が眼内散乱(IOSL)、コントラスト感度(CS)、最高視力(BCVA)に影響するかどうかを検討した。
・20歳から80歳の眼手術の既往や白内障などの眼病のない583名で検討した。
・虹彩色によって4群に分けた:light-blue, blue-grey, green-hazel, brownである。
・年齢によらずIOSLは、light-blueでは1.14 log(95%CI=1.11-1.17)と、blue-greyの1.07(1.05-1.09)、green-hazelの1.06(1.04-1.08)、brownの1.06(1.04-1.08)よりも有意に高かった(いずれもp<0.0001)。
・CSもlight-blueでは1.60 log(95%CI=1.58-1.62)と他の群よりも高かったが、有意差のあったのはbrownの1.64(1.63-1.65)だけであった(p=0.013)。
・BCVAではいずれも有意差はなかった。light-blueの虹彩色をもった人ではIOSLが高いので、夜間の運転時等、グレアを感じる可能性が高い。 (TY)

2013
251巻

慢性腎不全患者の血液透析による眼圧・眼表面・黄斑の変化

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 251巻 (1号) 2013

Effect of hemodialysis (HD) on intraocular pressure, ocular surface, and macular change in patients with chronic renal failure
Effect of hemodialysis on the ophthalmologic findings
Jung JW, Chin HS, et al.(Korea)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(1):153–162, 2013
・慢性腎不全患者30名、血液透析(HD)直前・直後に眼科的検査を施行しその変化および全身変化との関連を検索
・HDによる体液補正により血漿浸透圧が変化。眼圧は2.4±2.1mmHg下降、中心角膜厚は6.9±5.5μm減少。TBUTとShirmer’s テスト値はHD後に有意に減少、角膜上皮障害スコアは増加。SD-OCTによる網膜厚はHD後に減少、中心窩網膜厚は7.4±9.9μm減少。眼表面の変化は視力と検査精度にも影響。
・HDによる全身的な変化(体重・膠質浸透圧など)とこれらの変化とは(網膜厚の変化を除いて)有意な関連がみられた
【結論】すべてのCRF患者でHD後の眼科的所見の変化がみられた。これらの変化は血漿の膠質浸透圧の上昇と関連していた。HD患者に眼科的検査を施行するにはHDを施行しない日かHDの前の方が良い。さらにはこれらの患者の診察結果を正確に比較するには、HDと眼科検査との間隔を考慮すべきである。(MK)

2013
251巻

近視性脈絡膜新生血管の視力や網脈絡膜変性の進行に対する抗VEGF薬の長期結果

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 251巻 (1号) 2013

Long-term effect of intravitreal injection of anti- VEGF agent for visual acuity and chorioretinal atrophy progression in myopic choroidal neovascularization
Akio Oishi, et al. (京都大)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 251(1):1-7, 2013
・抗VEGF治療を受けたmCNV患者の長期の視力予後を調査した。
そして、同時にCRAの拡大はどのぐらいの頻度で起こるのか、CRAの有無での違いを調査した。
・(1)subfoneal またはjuxtrafovealのCNV、(2)-6D以上の近視または眼軸長26.5mm以上(3)白内障以外の手術を受けていない20人20眼(男性7人、女性15人)平均年齢64.1±9.6歳(47~81歳)
平均眼軸長28.9±1.6mm (26.28~32.63mm)、平均屈折値-11.9±3.7D (-7~-21D)
注射前、FA、OCT、眼底カメラ検査を行った。
経過観察は注射後1、3、6、12、18、24、30、36、48ヶ月
受診毎に視力、診察、OCT検査をした。自覚症状が悪化した時FAを行った。
必要に応じて追加治療を行った。再治療は自覚的/他覚的に視力低下、OCTで滲出性変化、FAでleakが認められた時に行った。
平均眼軸長28.9±1.6mm (26.28~32.63mm)、平均屈折値-11.9±3.7D (-7~-21D)
平均注射回数 2.1±1.9回 (1~7回) ベバシズマブ41回、ラニビズマブ6回
・最初の1年で9眼(40.9%)のCRAが拡大した。2年で14眼(63.6%)、3~4年で16眼(72.7%)
治療後3年は視力改善した。治療前0.76、治療1年後0.52、2年後0.48、3年後0.54、4年後0.59(表5)
4年目以降はほとんど変化がなかった。
視力の改善はCRAの拡大ない人で多かった。より大きなCNVでは視力はあまり改善しなかった。
・抗VEGF治療はmCNVの標準的な治療になっている。この研究では長期の効果を確認した。
抗VEGF治療が4年間の間、満足いく視力改善できた事を示した。
しかし、CRAの治療は不明である。
より治療効果を上げるためにCRAの原因とマネージメントを調査する必要がある。(CH)

2012
250巻

高度近視眼への有水晶体眼内レンズ移植の後の網膜剝離

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (12号) 2012

Retinal detachment after phakic intraocular lens implantation in severe myopic eyes
Jiang T et al. (China)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 250:1725-1730,2012
・高度近視眼への有水晶体眼内レンズ移植の後の網膜剝離の発生率と治療を検討。
・2003年〜2009年PIOL移植を受け、少なくとも2年間経過観察できた299人530眼を対象とした。
・網膜剥離になったのは7人8眼(1.5%、男性6人、女性1人)
術後平均23.63±18.12ヶ月(術後2日〜51ヶ月)で発症した。
術前平均屈折値-17.53±3.86D
平均眼軸長32.32±1.49mm、その他の患者の平均眼軸長29.98±2.13mm
眼軸長のみ有意差あり(p<0.05)
・flap tear4眼、atrophic hole2眼、 giant tear2眼
・強膜内陥術2眼、硝子体手術+C3F8 またはシリコンオイルタンポナーデ5眼
強膜内陥術+硝子体手術+シリコンオイルタンポナーデ1眼
・7眼が1回の手術で復位し、1眼が2回の手術で復位した。
・PIOL後の平均視力20/40、RD術後平均視力20/80
・RD発生率は1.5%だった。
PIOL後のRD発生率は近視眼での自然発生率と差はなかった。
PIOLがRDのリスクを増やすとは考えにくい。(CH)

2012
250巻

閉塞性睡眠時無呼吸症候群における早期視神経障害の検出

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (11号) 2012

Evaluation of the visual function in obstructive sleep apnea syndrome patients and normal-tension glaucoma by means of the multifocal visual evoked potentials.
Gutierrez-Diaz E et al(Spain)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 250(11): 1681-1688, 2012
・20名の閉塞性睡眠時無呼吸症候群OSASで、OSASと視神経機能障害との関連を、正常眼圧緑内障NTGのあるなしで、VERISの多局所VEP(mfVEP)で調べた。
・ハンフリー視野30-2と、トプコンOCTも同時に検査した。
・mfVEPでの振幅異常と潜時延長は非緑内障群では40%と30%に、NTG群では90%と60%にみられた。
・NTG群では視野異常、RNFL厚の異常が全例にみられたが、NTGの極早期の異常を検出しているmfVEPの振幅や潜時異常との間には相関がなかった。
・mfVEPの振幅や潜時と有意に相関していたものは、収縮期血圧(p=0.007 p=0.01) 、睡眠効率(p=0.006 p=0.017)、覚醒指数(p=0.002 p=0.002)、平均動脈SaO2(p<0.001 p=0.013)、最低動脈SaO2(p<0.001 p=0.033)、SaO2<90%時間(p<0.001 p=0.033)、酸化ヘモグロビン不飽和指数(p=0.001 p=0.062)、無呼吸の数(p=0.01 p=0.8)、無呼吸低呼吸指数(p=0.001 p=0.037)であった。
・構造的あるいは心理物理的な臨床所見に現れる前の視神経障害がmfVEPで有意にとらえられることが分かった。

2012
250巻

mfVEPを使った睡眠時無呼吸症候群患者と正常眼圧緑内障患者の視機能評価

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (11号) 2012

Evaluation of the visual function in obstructive sleep apnea syndrome patients and normal-tension glaucoma by means of the multifocal visual evoked potentials
Gutierrez-Dfaz E et al. (Spain)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 250:1681-1688,2012
・正常眼圧緑内障(NTG)の有無にかかわらず睡眠時無呼吸症候群(OSAS)患者の視機能を多巣性視覚誘発電位(mfVEP)を使って客観的に評価する。
・最近診断された閉塞性睡眠時無呼吸を持っている20人の患者を評価した。
 非緑内障群10人、NTG群10人、コントロール10人、
・mfVEP振幅欠陥は非緑内障群4例40%、NTG群9例90%、mfVEP潜時の延長は非緑内障3例30%、NTG群の6例60%で認められた。
・RNFL平均の厚さはコントロール群と非緑内障群と比べ、NTG群で有意に減少していた。また、ハンフリー視野検査では、非緑内障群では異常は認められなかったが、NTG群は全例で異常を認めた。
・しかし、mfVEP振幅と潜時は、視野とRNFLの厚さと関連はなかった。
これは、mfVEPはこれらの患者で早く段階で視覚の異常を検出することが可能だからと考えられる。
・他の検査で検出されない無症状の視神経の関与がmfVEPを使って認められた。mfVEPはOSAS患者での視神経機能異常の早期発見の有用な診断ツールであるかもしれない。(CH)

2012
250巻

近視性中心窩網膜分離に対するガスタンポナーデなしの硝子体手術+内境界膜剝離

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (11号) 2012

Vitrectomy and internal limiting membrane peeling without gas tamponade for myopic foveoschisis
Lim SJ et al. (Korea)
Graefes Arch elin Exp Ophthalmol 250:1573-1577,2012
・近視性中心窩網膜分離に対するガスタンポナーデなしの硝子体手術+ILM peelingの効果を検討した。
・13人15眼、平均年齢60.3±12.5歳、平均視力0.78±0.53logMAR、平均屈折値-11.0±8.2D、平均眼軸長30.8±2.6mm、平均網膜中心厚(CMT)405±143 µm、
平均経過観察期間11、8±3、9ヶ月(7〜18ヶ月)
・術後平均視力0.61±0.75logMARと改善。(15例中改善11例、不変2例、悪化2例)
視力の改善率はガスタンポナーデを行った場合と同等であった。
・術後平均網膜中心厚(CMT)342±90 µm。
・OCTにて中心窩の再付着は術後1〜6ヶ月の間に全例で達成されたことを確認した。
1ヶ月で3眼、3ヶ月で8眼、6ヶ月で15眼。術前のCMTや眼軸とは関係なかった。
・MFの原因と思われる黄斑部の牽引を完全に除去する必要がある。
ガスタンポナーデなしのILMピーリングが中心窩の解剖学的、そして視覚の改善をもたらす。ガスタンポナーデなしのILMピーリングは黄斑円孔のないMFに対する治療の選択肢である。(CH)

2012
250巻

糖尿病黄斑症に対する硝子体手術後の視力予後の予測

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (10号) 2012

External limiting membrane as a predictor of visual improvement in diabetic macular edema after pars plana vitrectomy.
Chhablani JK et al(CA USA)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 250(10): 1415-1420, 2012
・糖尿病黄斑症の人の硝子体手術後の視力予後の予測には何がいいかを検討した。
・SD-OCTでのIS/OS、外境界膜ELMの整合性、中心黄斑厚を34眼のDME患者の硝子体手術前後で調査した。
・術後視力の最も良い予測因子は術前のELMの障害度(p=0.0277)で、次は、IS/OSであった(p=0.03)。
・術前の中心黄斑厚は予測因子とはならなかった(p=0.18)。
・中心1mm内のELMの整合性が1%上がるごとに、ETDRS視力は0.13文字上昇していた。
・ELMの整合性は、術後視力改善の16%を説明でき、中心黄斑厚を加味すると21%まで説明できた。
・IS/OSはELMと関連していたため、このモデルでは追加しても視力改善の予測には役立たなかった。

2012
250巻

網膜血管内酸素飽和度

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (10号) 2012

Regional differences in oxygen saturatiopn in retinal arterioles and venules.
Heitmar R et al(UK)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 250(10): 1429-1434, 2012
・12名の健康な成人(30±6歳)で網膜血管内酸素飽和度を計279血管で測定した。
・連続3回測定し、短時間の時間変動についても検討した。
・網膜動脈と静脈の第1枝、黄斑部近くの動脈と静脈(Macular Feeder:MF、M.Drainer:MD)、黄斑部に灌流しない30度以内の動脈と静脈(Peripheral Feefer:PF、P.Drainer:PD)で酸素飽和度を測定した。
・酸素飽和度は、動脈第1枝:95.9±5.6%、静脈第1枝:58.3±8.4、MF:98.6±6.1とPF:94.9±6.1では有意差(p=0.0003)、MD:90.2±8.1とPD:65.1±7.2で有意差(p<0.00001)であった。
・短時間内の時間変動、変動係数は動脈では1.2-1.8%、静脈では2.9-4.9%であり、やや静脈で大きかったが、いずれにおいても少なかった。

2012
250巻

アバスチン硝子体内注射後の眼圧上昇

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (10号) 2012

Sustained elevation of intraocular pressure after intravitreal injections of bevacizumab in eyes with neovascular age-related macular degeneration.
Mathalone N et al(Israel)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 250(10): 1435-1440, 2012
・174例201眼のAMDに対してbevacizumab 1.2mg/0.05mlを硝子体内へ注入した後の、30日以上継続した眼圧上昇(IOPが22mmHg以上でbaselineから6mmHg以上)を来たした症例を検討した。
・眼圧上昇は22/201眼(11%、平均最高眼圧=25.9±3.3)で発生したが、全例で点眼薬で眼圧はコントロールできた。
・眼圧上昇例は男性(OR=3.1 95%CI=1.1-8.5 p=0.029)、8週間未満の再注入(OR=3.0 95%CI=f1.1-7.9 p=0.028)で多かった。
・8週間未満:8週間以上では、17.6%:6%であり、有意差がみられた(p=0.09)が、緑内障であることとは相関がなかった(p=0.9)。
・眼圧上昇のメカニズムは不明であるが、院外薬局でのプラスチック注射器への詰替えやその後の保管時の蛋白の凝集や非蛋白物質が影響しているのではないかと考えた。
・8週間未満の再注射で多かったことから、この様な症例では眼圧のモニターが重要と考えた。

2012
250巻

黄斑色素濃度の簡易測定法

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (9号) 2012

Short- and mild-term repeatability of macular pigment optical density measurements using spectral fundus reflectance.
Dragostinoff N et al(Austraria)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 250(9): 1261-1266, 2012
・黄斑色素濃度MPODの測定方法は何種類も報告されているが、gold standardは見つかっていない。
・今回、reflectometryを用いて、正常者12名、AMD37名でMPODを測定したので、その測定誤差を含めて報告した。
・測定はデンシトメータで行い、視野2.3度で、大体95%の色素を腿色させ、1回の測定は約1秒で、6回測定した。
・変動係数は、正常者で6.2±2.4%、AMD者で8.0±5.5%で、いずれも測定誤差は少なく、MPODの最大偏位量は正常者で0.07(22.6%)、AMDで0.17(51.5%)であった。

2012
250巻

Bevacizumab硝子体注入の脈絡膜血行への影響

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (9号) 2012

Formation of immune complexes and thrombotic microangiopathy after intravitreal injection of bevacizumab in the primate eye.
Schraermeyer U et al(Germany)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 250(9): 1303-1313, 2012
・bevacizumab硝子体内注射が脈絡膜血管に与える影響について4頭のカニクイザル眼で検討した。
・1.25mgのbevacizumabを硝子体内注射し、1,4,7,14日目に両眼球を摘出した。
・1眼はparaffin固定し、他眼は電顕用に固定した。
・全8眼で脈絡膜毛細血管と脈絡膜血管に閉塞性毛細血管症が見つかった。
・これは、微細構造では血管内皮の浮腫、fenestrationの消失、毛細血管の完全な虚脱で特徴づけられるものである。
・bevacizumabの硝子体内注射は血小板を活性化し、血小板や好中球の脱顆粒を来たし、免疫複合体を形成し、閉塞性毛細血管症や脈絡膜の血流を変化させることが分かった。

2012
250巻

術後眼内炎の治療における23ゲージ経結膜無縫合硝子体手術(TSV)

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (9号) 2012

23-gauge transconjunctival sutureless vitrectomy in treatment of post-operative endophthalmitis
Ahmed M. Almanjoumi et al (Grenoble ,France)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol (2012) 250 :1367-1371
・23G TSVを行なった術後眼内炎10名の患者(5名は濾過手術、5名は白内障)。
・術前全例視力は手動弁か、それ以下であった。眼所見は前房蓄膿(80%)、瞳孔フィブリン膜(80%)、高濃度硝子体炎症(100%)、細菌検出は60%にグラム陽性球菌、10%にグラム陰性桿菌。TSVで合併症は全例に無かったが、2名はRDを発症し、再手術となった。
・最終視力は2名は0.05、その他は0.4か、それ以上だった。
・23GTSVの注意点①強膜圧迫は特に鼻例で注意を要する(4名で結膜裂傷がおこって縫合を要した) ②脈絡膜剥離があると強膜に穴があく ③術後低眼圧
・23GTSVは治療として有効で、20Gと同様に施行できる。また結膜と濾過胞を温存できる利点がある。(YM)

2012
250巻

長期にわたる姿勢による眼内圧の変化におけるトラベクレクトミーの効果

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (9号) 2012

Effects of trabeculectomy on posture-induced intraocular pressure changes over time
Akira Sawada et al (Gifu University ,Japan)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol (2012) 250 :1361-1366
・36人36眼のPOAGで、MMC使用トラベクレクトミー患者を調査。座位と側臥位での眼圧を術前と、1,3,12ヶ月後で測定。
・術前平均眼圧は座位で17.4±4.9㎜Hg、側臥位で21.3±5.6㎜Hg(P<0.001)。この差3.9㎜Hgは、トラベクレクトミーから1ヶ月後に1.3±1.7㎜Hg、3ヶ月で0.8±1.5㎜Hgへ減少した。(P<0.001とP=0.004)
・緑内障での視神経萎縮には、眼圧の数値のみでなく、その変動が影響しうると言われている。ゆえに、姿勢による眼圧の変動は視野の悪化につながりうる。トラベクレクトミーは大きく眼圧を下げるが、飲水試験での上昇巾も減少し、乳頭出血も減らす。
・トラベクレクトミーは、眼圧の数値を減少させるのみでなく、姿勢による変動巾も減少する。この変化は、濾過胞が機能していれば、術後少なくとも1年は続く。
・姿勢による変動の機序は明瞭ではないが、仮設として、脈絡膜血管の過密と上強膜圧の上昇によるものであり、房水産生は関係無いであろうと言われている。トラベクレクトミーは、濾過胞を通して新しい房水流出路を作ることが原理で、上強膜静脈とは関係無い。ゆえに、レクトミーが姿勢による眼圧の変動を抑制することは理論通りであると思われた。(YM)

2012
250巻

先天性遺伝性内皮ジストロフィー(CHED)の子供へのDSEKの試行と1年後の結果

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (9号) 2012

Descemet’s stripping endothelial keratoplasty(DSEK) for children with congenital hereditary endothelial dystrophy :surgical challenges and 1-year outcomes
Jatin N. Ashar et al (Hyderabad ,India)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol (2012) 250:1341-1345
・3名の男児と2名の女児で、平均年令7.8才(5~12才)。CHEDを有し、全例一人の医師がDSEKを施行。術後視力、屈折、角膜透明度、眼圧、水晶体の状態を測定。前眼部OCTと共焦点顕微鏡検査は可能な場合に実施。
・1年の経過観察で、角膜透明度は次第に上昇。前眼部OCTでは角膜の中心とグラフトの厚みが徐々に減少した。
・CHEDは早期に発症する内皮の機能低下で、強い角膜浮腫とデスメ膜の肥厚が特徴。常染色体優性と劣性の遺伝形式があり、視機能の低下は様々な程度がある。インドでは子供の全角膜移植の21%を占める。PKPがCHED患者の標準的な術式であるが、合併症として縫合への感染、術後乱視由来の弱視がある。DSEKはCHEDの患者には、PKPに変わって良好な結果が望め、利点として術後乱視と術後合併症の減少が期待できる。(YM)

2012
250巻

レジデントが行なったPEA白内障手術での合併症の割合と術中合併症の危険因子

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (9号) 2012

Complication rate and risk factors for intraoperative complications in resident-performed phacoemulsification surgery
Andrea Briszi et al (Regensburg ,Germany)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol (2012) 250 :1315-1320
・6人のレジデントが行なった最初の100眼のPEA手術、600手術中23例(3.8%)に合併症が発生。23眼(3.8%)後嚢破損、17眼(2.8%)硝子体脱出、7眼(1.2%)硝子体内核落下。591眼でIOLを移植できた。558眼(94.4%)は嚢内に移植、33眼(5.6%)は毛様溝に固定。
・この調査では、PEAの機械は2種類を使用した。1つは1994年モデルのストルツ・プレミア、もう1つは2008年アルコン・アキュラス。IA時の合併症は前者で400例中4件、後者で200例中ゼロ。有意差なし。
・過熱白内障(P=0.019)と硬い核(P=0.002)は後嚢破損と硝子体脱出の危険因子となる(P=0.007とP=0.027)。高度近視・水晶体落屑症候群も言われているが、今回は明らかではなかった。(YM)

2012
250巻

サルコイドーシスに起因すると思われる後眼部炎症での硝子体生検の診断への有用性

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (9号) 2012

Diagnostic yield of vitreous biopsy in presumed sarcoidosis-related posterior segment inflammation
Adrienne W. Scott et al (USA)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol (2012) 250: 1379-1385
・病歴、臨床所見、血液検査等で診断できないサルコイドーシスに起因すると思われる後眼部炎症の患者150名のうち63眼(42%)で硝子体液の分析で診断を確定した。
・肉芽腫性炎症の存在と、真菌、マイコバクテリア、他の微生物が陰性であって、臨床所見が成立していれば、サルコイドーシスの診断ができる。診断のための硝子体手術は時に有効で、炎症と悪性腫瘍を否定できる。
・他の肉芽腫形成の原因には、マイコバクテリア、真菌、寄生虫、慢性ベリリウム病、ウエジェナー肉芽腫があり、これらは臨床所見から除外されねばならない。
・診断が困難な症例は硝子体生検での病理検査を勧める。サルコイドーシスの診断基準にはないが、有効である。(YM)

2012
250巻

黄斑手術後の傍黄斑円孔の形成

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (8号) 2012

Paracentral retinal holes occurring after macular surgery: incidence, clinical features, and evolution.
Sandali O et al(France)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 250(8): 1137-1142, 2012
・2004年から2009年までの間に行った909例の黄斑手術の解析を行った所、6例(0.6%)に傍中心部の黄斑円孔が発生していた。
・傍中心部黄斑円孔の発生時期は、術後約5週間で発生(2-12週)しており、全例で無症候性であった。
・5例ではILM剥離後に発生していた。
・術後の最高視力の平均は20/40であったが、中心窩に近い所の、1乳頭径下方に開いた症例では、視力が不良であった。
・平均経過観察期間は2年であったが、裂孔原性の合併症や脈絡膜新生血管などは発生しなかった。

2012
250巻

NTGにおける視神経鞘直径の重要性

Graefe's Archives for Clinical and Experimental Ophthalmology 250巻 (7号) 2012

Intraocular pressure correlates with optic nerve sheath diameter in patients with normal tension glaucoma.
Pinto LA et al(Portugal)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 250(7): 1075-80, 2012
・頭蓋内圧(ICP)の間接的指標としての超音波での視神経鞘直径(ONSD)を61例のPOAG、46例のNTG、42例の正常者のいずれも片眼で測定した。
・ONSDは正常者6.09±0.78、NTG 6.03±0.69、POAG 5.71±0.83mmで、有意差がなかった(p=0.08)。
・ONSDは、POAGでもNTGでも視野欠損や角膜中心厚CCCとは相関がなかった。
・NTGでは、OSNDは眼圧と相関していた(r=0.53 p<0.001)が、POAGや正常者では相関がなかった(p=0.86 p=0.46)。
・このことは、NTGでは篩板前後の圧差が重要であることを示唆している。

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