Anticoagulation and clinically significant postoperative vitreous hemorrhage in diabetic vitrectomy.
Brown JS et al(MI USA)
Retina 31(10): 1983-7, 2011
・糖尿病網膜症に対する20Gあるいは23G硝子体手術で、抗凝固薬を内服していると周術期に出血しやすいかどうかを検討した。
・88例97眼の内50眼はアスピリン、ワーファリンなどの抗凝固薬治療を受けていたが、この内27眼は内服継続のまま硝子体手術を行い、23眼は術前3-21日前から内服を中止して手術を行った。
・27眼のうち14眼はアスピリン、2眼はアスピリン+ワーファリン、10眼はアスピリン+プラビックス、1眼はプラビックスであった。
・結果は、抗凝固剤に由来する出血は1例もなかく、全身合併症を避けるために継続することが良いと考えた
Comparison of choroidal thickness among patients with healthy eyes, early age-ralated maculopathy, neovascular age-erlated macular degeneration, central serous chorioretinopathy, and polypoidal choroidal vasculopathy.
Kim SW et al(Korea)
Retina 31(9): 1904-11, 2011
・37眼のRPE変化とドルーゼンのみの初期加齢黄斑症、24眼の新生血管加齢黄斑症、12眼のPCV、31眼の中心性網脈絡膜症を対象として、脈絡膜厚を測定し、29名の正常者をコントロールとした。
・性、屈折異常は脈絡膜厚と相関はなく、年齢だけが強い負の相関があった(中心窩:F=12.0 p=0.001)。
・中心窩の脈絡膜厚は、厚い順に中心性網脈絡膜症 367.8±105.6→PCV 319.9±68.7→正常者 242.0±66.4→新生血管加齢黄斑症 226.5±102.9→初期加齢黄斑症 186.6±64.0であった。
A systematic review of the adverse events of intravitreal anti-vascular endothelial growth factor injections.
Reis MIVD et al(Netherlands)
Retina 31(8): 1449-69, 2011
・抗VEGF薬の硝子体内注入の全身的副作用について調査した。
・2009年4月にPubMed、Embase、Toxline、Cochrane libraryに登録された論文を検索した。
・4342の論文の中から278論文を選択し、結果を纏めた。
・重篤な眼あるいは眼外合併症は約1%弱、軽度の眼合併症は5%弱であり、bevacizumab(IVB)、ranibizumab(IVR)、pegaptanib(IVP)間には大きな差は検出されなかった。
・眼内炎発症率は、IVBでは0.05% (95%CI=0.03-0.10)、IVRでは0.04% (95%CI=0.02-0.08)、IVPでは0.11 (95%CI=0.07-0.18)で、平均0.04 (95%CI=0.02-0.14)。
・心血管合併症の発生率はIVBでは0.05% (95%CI=0.01-0.10)、IVRでは0.09 (95%CI=0.05-0.14)、IVPでは0.34 (95%CI=0.26-0.44)であった。
Macular features from spectral-domain optical coherence tomography as an adjunct to indirect ophthalmoscopy in retinopathy of prematurity.
Lee AC et al(NC USA)
Retina 31(8): 1470-82, 2011
・手持ちSD-OCT検査を38例76眼の未熟児網膜症において、118回検査を行った。
・倒像鏡検査では見つからなかった網膜の嚢腫様構造が38%、網膜前膜が32%のOCT検査でみつかった。
・ただ、OCT検査では検眼鏡でみつかる未熟児網膜症の検出はできず、検眼鏡に代わるものではない。
Endophthalmitis in microincision vitrectomy. Outcomes of gas-filled eyes.
Chiang A et al(PA USA)
Retina 31(8): 1513-7, 2011
・硝子体手術終了時に空気あるいはガス注入が眼内炎発症率に影響を与えるかどうかを、多施設、retrospectiveに調査した。
・2008/1から2009/12月までに行われた23 or 25ゲージ硝子体手術後にSF6ガスかC3F8ガスが注入された黄斑円孔の2336眼を対象とし、術後6週間未満に急性術後眼内炎を発症した率を調査した所、1眼(0.04%)で術後眼内炎を発症しており、他の合併症もなかった。
・Microincision無縫合硝子体手術のメタ分析では、12457例中22例(0.18%)の術後眼内炎の報告があり、ガス注入は有意に術後眼内炎リスクを減らすと考えられた。
Endophthalmitis after intravitreal injection. The importance of viridans streptococci.
Chen E et al(IL USA)
Retina 31(8): 1525-33, 2011
・硝子体注入後の眼内炎の発症率、起炎菌、外来での発症率と手術室での発症率の比較を行った。
・2000/7~2010/7までのHuston網膜外来での眼内炎を、白内障や角膜移植術後などの術後のものと、硝子体注射後のものに分けて検討した。
・ただし、緑内障や外傷などは除外した。
・眼内炎は109例あり、術後が88例、注射後が21例であった。
・他施設の物などを除くと、Huston網膜外来では、33580回中13例の発症(0.04% 95%CI=0.02-0.07%)であった。
・最も多い起炎菌はブドウ球菌であったが、ヒト口腔内常在菌であるviridans streptococci(緑色連鎖球菌)の比率は注射群で手術群よりも3倍検出されており、この菌による注射後の眼内炎は、他の菌による注射後眼内炎より早期に発症し(p<0.001)、そして重篤な予後であった(p=0.004)。
– 参照–
Meta-analysis of endophthalmitis after intravitreal injection of anti-vascular endothelial growth factor agents. Causative organisms and possible prevention stratergies. McCannel CA(CA USA) Retina 31(4):654,2011
VEGF抗体注射後ではブドウ球菌が眼内手術後よりも約3倍多く、術中にマスクをすることによって避けうるのではないか。
Same-day versus delayed vitrectomy with lensectomy for the management of retained lens fragments.
Colyer MH et al(MD USA)
Retina 31(8): 1534-40, 2011
・白内障手術中に水晶体片が硝子体内に残存した時、当日、硝子体手術を行った方がいいか、日を改めた方がいいかを、2005-2008年の171例172眼について、6ヶ月後の視力、CME、眼圧上昇、網膜剥離、硝子体出血、脈絡膜出血、眼内炎などを検討した。
・年齢は75±0.8歳、後日手術の平均日は15±2日である。
・最高矯正視力は当日手術が0.73±0.09、他日手術が0.72±0.06で有意差なし。
・当日手術をおこなった59眼中、17眼(29%)で術後合併症が発症したが、他日手術では113眼中38眼(38%)で有意差がなかった。
・最も多い合併症はCMEで、25/172(15%)に発症した。
Feasibility of intrasurgical spectral-domain optical coherence tomography.
Binder S et al(Germany)
Retina 31(7): 1332-6, 2011
・Zeiss OPMI VISU 200の手術用顕微鏡の光路にZeissのCirrus HD-OCTを取りつけ、術中に512×128 macular cube scansのできるOCTシステムを作った。
Comparative in vitro safety analysis of dyes for chromovitrectmy. Indocyanine Green(ICG), Brilliant Blue Green(BBG), Bromophenol Blue(BPB), and Infracyanine Green(IfCG).
Balaiya S et al(FL USA)
Retina 31(6): 1128-36, 2011
・ICG, BBG, BPB, IfCGの網膜色素上皮、神経節細胞に与える毒性を試験管内で検査した。
・BBG, BPB, IfCGはいずれも、ICGよりは毒性が低く、中でもIfCGが最も少なかった
Rebound of macular edema after intravitreal bevacizumab therapy in eyes with macular edema secondary to branch retinal vein occlusion.
Yasuda S et al(名大)
Retina 31(6): 1075-82, 2011
・65例65眼のBRVOによる黄斑浮腫に対するbevacizumab硝子体注射後の黄斑浮腫再発について検討。
・再発とは中心窩厚が ≧110%と定義すると、7例(10.8%)に再発。
・処置前の中心窩厚が薄いほど、症状発現からbevacizumab処置までの期間が短いほど再発が多く(p<0.01)、再発した7例全例で処置までの期間は8週未満であった。
・BRVOによる黄斑浮腫が最高に達する前に処置をすると再発しやすいと考えられ、bevacizumab処置はBRVO発症から8週間は待った方が良いと考えた。
Does vitrectomy increase the risk of glaucoma? (Editorial)
Thompson JT(MD USA)
Retina 31(6): 1007-8, 2011
・Chang(AJO 141:1033,2006)とLuk(Retina 29:218,2009)は硝子体手術は特に偽無水晶体眼では緑内障を発症しやすいと報告し、Yu(Graefes Arch Clin Ex Ophthal 248:1407,2010)とLalezary(Retina 31:679,2011)は緑内障発症のリスクは増加しないと報告している。
・Changは硝子体術後の緑内障発症リスクは15-20%で、原因は線維柱帯への酸化障害だとしている。
・Lukは有水晶体眼では2%、偽水晶体眼では13%に緑内障が発症するとした。
・Yuは術眼では緑内障4.3%、高眼圧症4.3%、他眼では緑内障2.5%、高眼圧症3.0%で傾向はあるが、有意差はないとした。
・Lalezaryの症例は多くが糖尿病眼で、元来虚血性の糖尿病眼では線維柱帯に酸化障害は起きにくいと考えられる。
・結論は得られていないが、硝子体手術を行った眼は緑内障についての経過観察が大切であろう。
Peripheral areas of nonperfusion in treated central retinal vein occlusion as imaged by wide-field fluoerscein angiography.
Spaide RF(NY USA)
Retina 31(5): 829-37, 2011
・Optos P200 Scanning Laser Ophthalmoscopeを用いた広角蛍光眼底撮影により、ranibizumab治療を受けた網膜中心静脈閉塞症の灌流障害について検討した。
・22例全例で、網膜周辺部に16~242 乳頭面積の非灌流領域がみられた。
・この面積は視力と負の相関があった(r=-0.52 p=0.013)。
Meta-analysis of endophthalmitis after intravitreal injection of anti-vascular endothelial growth factor agents. Causative organisms and possible prevention stratergies.
McCannel CA(CA USA)
Retina 31(4): 654-61, 2011
・全米の2005年から2009年までに報告されたVEGF抗体注射後と眼内手術後の眼内炎で、細菌の分離培養を行っている報告をまとめたもの。
・硝子体注射では 52/105,536回、頻度0.049%(95%CI=0.038-0.065%)で発生し、50眼の分離培養では24眼で陰性、26眼で培養陽性であった。
・26眼の内訳は、ブドウ球菌が17眼(65.4% 95%CI=46.0-80.6%)、連鎖球菌が8眼(30.8% 95%CI= 16.5-50.2%)、Cereus桿菌が1眼(3.8% 95%CI=0.9-19.0%)であり、ブドウ球菌が有意に多かった。
・Endophthalmitis Vitrectomy Studyでは 22/226例(9.0% 95%CI=6.3-12.6%、p=0.005)、角膜切開白内障手術では 6/73例(8.2% 95%CI=3.9-16.8、p=0.022)、硝子体手術後ではブドウ球菌の報告はなかった。
・ブドウ球菌は硝子体注射後では眼内手術後よりも約3倍多く、これは、術中に話をすることや、咳やくしゃみを抑えること、あるいはマスクをすることによって避けうるのではないかと考えた。
・Retina 31(4):662-8, 2011論文では、VEGF抗体注射後の発生率は 12/60,322(0.02% 95%CI= 0.0114-0.0348%)で、分離培養は7/12例で、5/7例がブドウ球菌であったとの報告。
Effect of intravitreal gas tamponade for sutureless vitrectomy wounds. Three-dimensional corneal and anterior segment optical coherence tomography study.
Yamane S et al(横浜)
Retina 31(4): 702-6, 2011
・24眼で25G無縫合硝子体を行い、この72個の強膜創を術後3時間、1,3,7,14日後にOCTで検索し、創口の閉鎖具合を空気置換したものとしなかったもので比較調査した。
・閉鎖とは強膜外側の離開がなくなったものと定義している。
・3時間後、1,3,7,14日後の、ガス置換しなかった群の閉鎖率は、26.2%, 28.6%, 35.7%, 52.4%, 85.7%であったが、ガス置換群では、53.5%, 73.3%, 76.7%, 83.3%, 93.3%と有意に高かった。
Visual outcome after intravitreal triamcinolone acetonide depends on optical coherence tomographic patterns in patients with diffuse diabetic macular edema.
Shimura M et al(宮城)
Retina 31(4): 748-54, 2011
・過去に治療歴のない糖尿病黄斑浮腫の135眼につき、トリアムシノロン(4mg/0.1ml)を硝子体内注入IVTAし、その効果を検討した。
・処置前のOCTによる黄斑浮腫の形状を、スポンジ様瀰漫性網膜肥厚SDRT:49眼、CME:45眼、漿液性網膜剥離SRD:26眼、混合型FULL:15眼の4種に分けて検討した。
・注入後の中心黄斑厚の減少は、SDRT:31.0±15.9%、CME:40.7±14.2%、SRD:23.4±15.0%、FULL:25.8±14.8%であり(p<0.001)、視力はlogMARでの改善は、SDRT:-0.26±0.21%、CME:-0.32±0.20%、SRD:-0.17±0.20%、FULL:-0.14±0.22%であった(p=0.018)。
・以上から、ITVAの効果はCMEでより効果があり、SRDでは効果が薄いことが分かった。
Subfoveal choroidal thickness after treatment of Vogt-Koyanagi-Harada disease.
Maruko I et al(福島医大)
Retina 31(3): 510-7, 2011
・Enhanced depth imaging OCTを用いて、8例16眼の原田病の中心窩下の脈絡膜厚を測定した。
・急性期には脈絡膜は805±173μmと肥厚しており、3日後には524±151(p<0.001)、2週間後には341±70(p<0.001)と減少した。
・ステロイド治療後、1ヶ月で漿液性網膜剥離も消褪した。
・VKHの急性期では脈絡膜は肥厚しており、これは炎症による浸潤の他に、浸出も増加しているからであろう。
・EDI-OCTはVKHの病状把握の為には有効である。
Acute macular neuroretinopathy
Outer retinal abnormalities in acute macular neuroretinopathy.
Vance SK et al(NY USA)
Retina 31(3): 441-5, 2011
・OCTで検索されたAcute macular neuroretinopathyの4例を報告した。
・年齢は28~34歳で、2例は両眼発症であり、1~5ヶ月経過観察。
・検眼鏡的には暗い葉状の部位があり、視野欠損に一致し、視細胞外節の部分的欠損である。
・視力は20/20~20/25。
・この外節欠損は2例では治癒し、他の2例でも改善した。
・全例で該当部の外顆粒層が薄くなっていたが、経過観察中、改善もなかった。
・網膜外層の構造は回復するが、外顆粒層は薄いままである
Immersion B-guided versus contact A-mode biometry for accurate measurement of axial length and intraocular lens power calculation in siliconized eyes.
Einen KGAE et al(Egypt)
Retina 31(2): 262-5, 2011
・シリコンオイル眼60眼をAモードで測定したA群30眼と、浸水性Bモードで測定したB群30眼に分けて、術後3ヶ月目の眼軸長と比較した。
・B群では25眼83.3%が予定屈折度の±1D以内に入っていたが、A群では14眼46.4%だけであった。
・平均屈折偏位はBモードでは0.15±0.94であり、Aモード群 -0.95±1.16よりも有意に小さかった(p=0.024)。
・これは、Bモードではシリコンオイルと網膜間の空間が区別できる事によると考えられる。
・シリコンの後面は強い反射像を示し、網膜前面のスパイクと間違えられるのであろう
Influence of systemic steroids on subretinal fluid after scleral buckle surgery for macula-off retinal detachment.
Wu JS et al(Taiwan)
Retina 31(1): 99-104, 2011
・60名(年齢13-73歳:平均41.5歳)の黄斑部が剥がれた網膜剥離に対する初回の強膜内陥手術後の網膜下液の消失や視機能に対するステロイド内服の効果について検討した。
・術後3日間ステロイド内服治療を行ったGroup1と、しなかったGroup2で検討。
・G1は、0.5mg/体重Kgのプレドニゾロンを内服したGroup1Aと、1mg/体重KgのGroup1Bに分けた。
・術後1W, 2W, その後1カ月間隔で1年間経過観察。
・SRFの持続期間は、G1は218.1±122.1日、G2は286.5±141.0日(p=0.039)で有意差あり。
・1年後のBCVA(logMAR)は、G1は0.27±0.28、G2は0.29±0.31(p=0.709)で有意差なし。
・BCVA(logMAR)の改善は、G1は1.38±1.05、G2は0.74±0.78(p=0.026)で有意差あり。
・G1AとG1Bとは有意差がなかった。
・術後のステロイド内服はSRFの吸収や、BCVAの改善にも有効であった。
Intravitreal bevacizumab and/or macular photocoagulation as a primary treatment for diffuse diabetic macular edema.
Solaiman KAM et al(Egypt)
Retina 30(10): 1638-45, 2010
・48例62眼の糖尿病黄斑浮腫を、21眼の硝子体内bevacuzynab 1.25mg注入群(IVB群)、19眼のグリッド凝固群(MGP群)、22眼のIVB後にグリッド凝固を行った群(併用群)に分け、治療の効果を検討した。
・1,3,6か月後の中心黄斑厚(CMT)、BCVA、FA漏出の変化、合併症の有無で検討した。
・1ヶ月後では、CMTの改善は、MGPでは10.45%(p>0.05)、IVBでは31.30%(p<0.05)、併用群では23.77%(p<0.05)であり、BCVAの有意な改善(p<0.05)は、IVB群(0.84→0.52:小数点0.14→0.30)と併用群(0.83→0.65:小数点0.15→0.22)でみられた。
・3ヶ月目では、CMTの改善が有意(p<0.05)であったのは、併用群34.5%だけであり、BCVAの有意な改善(p<0.05)は、IVB群(→0.71:小数点0.19)と併用群(→0.62:小数点0.24)であった。
・6か月後では、CMTの有意な改善(p<0.05)は併用群21.85%だけで、BCVAはいずれの群でも有意差がなくなっていた。
・併用治療は瀰漫性のDMEの初期治療として有効であろう。