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Journal of Cataract & Refractive Surgery

2023
49巻

着色IOLと睡眠障害

Journal of Cataract & Refractive Surgery 49巻 (7号) 2023

Association of clear vs blue-light filtering intraocular lenses with mental and behavioral disorders and diseases of the nervous system among patients receiving bilateral cataract surgery.
Karesvuo M et al(Finland)
J Cataract Refract Surg 49(7): 679-685, 2023
・両眼に透明(non blue light filtering:non BLF)IOLを挿入した2609例と、BLF IOLを挿入した2377例の患者の計4986例(男1707、女3279)で、精神的障害や神経系疾患の発症について検討した。
・2007/9~2018/12で手術を行ない、2021/12まで経過を追った症例である。
・1眼の手術前あるいは2眼目の手術の前の状態を基準とし、両眼手術後の新規に発症した精神的あるいは行動異常、神経系疾患についてICD-10コードで検討した。
・年齢は初回手術時は73.2±8.6歳、2眼眼の手術時は74.3±8.8歳である。
・単相関log-rankテスト(2群の生存曲線に差があるか検定)では、疾患の発症については有意差はなく、睡眠障害(code G47)だけがBLF IOLで有利だったが(p=0.003)、年齢や性で調整した多相関Cox回帰分析では睡眠障害(code G47)にはBLF IOLがnon-BLF IOLよりも有利という結果はでなかった(睡眠障害 HR=0.756 95%CI=0.534-1.070 p=0.114)。(TY)

2023
49巻

白内障手術前後の瞬目の変化

Journal of Cataract & Refractive Surgery 49巻 (2号) 2023

Effects of cataract surgery on blinking.
Talens-Estarelles C et al(Spain)
J Cataract Refract Surg 49(2): 177-183, 2023
・自発的な瞬目パターンと動態に対する角膜切開での白内障手術の影響を50名で検討した。
・超音波白内障手術前(V1)、手術1ヶ月後(V2)、3か月後(V3)に瞬目を視線追跡装置で90秒間測定した。
・瞬目比率、完全と不完全瞬目数、不完全瞬目の比率、瞬目パラメータとして大きさや時間、スピードについても検討した。
・瞬目比率はV3ではV1やV2に比較して有意に小さかった(p=0.03, p=0.001)。
・V3ではV1に比較すると、完全瞬目の数は有意に少なく(p=0.02)、不完全瞬目の比率は有意に高かったが(p=0.01)、V2とは有意差がなかった(P>0.05)。
・瞬目パラメータには有意差はみられなかった(p=0.12)。
・白内障手術時に角膜周辺部で放射状の実質内神経を切断すると、切開創から離れた部位でも角膜感度が低下し、術後、最低3か月は持続する。
・角膜感度と瞬目頻度は有意に関連しており、角膜神経支配が障害されると、保護的な瞬目反射が障害され、角膜乾燥のリスクが増す。
・瞬目の障害は、涙液排出にも影響し、涙液クリアランスが下がることにより結膜嚢に起炎物質が蓄積する可能性もある。
・眼表面の状況を検討する場合に、術後の瞬目についても考慮すべきである(TY)

2022
48巻

AcrySof IQ Vivityについて

Journal of Cataract & Refractive Surgery 48巻 (12号) 2022

Visual disturbances produced after the implantation of 3 EDOF intraocular lenses vs 1 monofocal intraocular lens.
Guarro M et al(Spain)
J Cataract Refract Surg 48(12): 1354-1359, 2022
・3種の焦点深度拡張型EDOF IOLと単焦点IOL移植後3か月後の見にくさをdoble blindで調査した。
・AcrySof IQ Vivity群(2020開発)、AT Lara 829MO群、TECNIS Symfony ZXR00群と単焦点IOL群(AcrySof IQ SN60WF)をそれぞれ22例について調査した。
・調査項目は光弯曲指数light distortion index(LDI)、最適円の半径(BFC)、自覚症状質問票(QoV)である。
・LDIは1個のLEDで発生するハローで消える点の比率、BFCは各経線上で求められた歪みの位置にあてはめた円の半径、QoVは変視症についての10項目のMcAlinden testであるが、そのうちの関係する項目を選択して行った。
・単眼での調査ではLDIとBFCには各群間で有意差はみられなかった。
・両眼視ではLDIとBFCの両検査で、単焦点群の方がSymfony群(p=0.025 p=0.024)、AT Lara群(p=0.002, p=0.002)よりも良かった。
・Vivity群は両検査とも、Symfony群(p=0.015 p=0.014)、At Lara群(p=0.001 p=0.001)よりも良かった。
・ハローが報告されなかったのはVivity群では81.8%(18例)、単焦点群では90.9%(20例)、AT Lara群では50%(11例)、Symfony群では59%(13例)であった。
・回折型EDOF IOLは、非回折型EDOF IOL(Vivity)や単焦点IOLよりも見にくさが強かった。
・Vivity IOLは、Xwaveテクノロジーを使用しており、光の損失がないため眼疾患者でも使用できる。
・Vivity IOLは、1.5D程度までの加算となるが、日本では未承認(TY)

2022
48巻

両眼同時白内障手術

Journal of Cataract & Refractive Surgery 48巻 (11号) 2022

Immediate sequential bilateral cataract surgery: time for wider adoption.
Srinivasan S(Scotland)
J Cataract Ref Surg 48(11): 1231-1232, 2022
・WHOは2025年には世界の白内障による失明者は高齢者が増えることにより、4000万人を越えると推定している。
・白内障の両眼同時手術 immediately sequential bilateral cataract surgery(ISBCS)と日をおいて両眼の手術を行なう delayed sequential bilateral cataract suregery(SSBCS)。
・ISBCSは最初に1952年に報告され、Finlandでは1996年からはISBCSは常識的になってきており、2008年にはInternational Society of Bilatara Cataract Surgeons(iSBCS)が設立された。
・COVIDの流行がこのISBCSを後押ししている(TY)

2022
48巻

眼軸長検査に対する散瞳の効果

Journal of Cataract & Refractive Surgery 48巻 (11号) 2022

Advantageous effect of pupil dilatation on the quality of optical biometry axial length measurement in individuals with dense cataract.
Bettacj E et al(Israel)
J Cataract Ref Surg 48(11): 1248-1252, 2022
・白内障が強く、前房深度測定が不安定な場合の散瞳検査の有用性について検討した。
・2076名の内、177名(8.52%)では白内障が強く、散瞳前のSS-OCTでは前房深度測定が不安定であった。
・177名の内79名(44.63%, 72.53±13.27才)は散瞳後にSS-OCT再検査を行い、60/79名(75.95%)では前房深度が十分に測れ、散瞳前検査と比較すると0.03±0.07mm短くなっていた(TY)

2022
48巻

TECNIS SynergyとAcrySof PanOptixの比較

Journal of Cataract & Refractive Surgery 48巻 (11号) 2022

Comparison of 3-month visual outcomes of a new multifocal intraocular lens vs a trifocal intraocular lens.
Dick HB et al(Germany)
J Cataract Ref Surg 48(11): 1270-1276, 2022
・TECNIS Synergy多焦点IOL(ZFR00V)群95例とAcrySof PanOptix3焦点IOLを両眼に移植した群52例とで、3か月後の視機能を比較した。
・視機能としては、両眼の遠見矯正時の近見視力(DCNVA)40cmと、33cmでのDCNVA、低コントラストでの明所視と薄明視での遠見矯正視力(CDVA)、見え方の質問票である。
・ZFR00V群とPanOptix群の両眼視で20/25以上者は、CDVAでは100%:96.2%、40cmでのDCNVAでは88.4%:75.0%、33cmでのDCNVAでは78.9%:51.9%であり、ZFR00V群の方がPanOptix群よりも良い結果が得られた(TY)

2022
48巻

両眼同時白内障手術についてのオランダの実情

Journal of Cataract & Refractive Surgery 48巻 (9号) 2022

Ophthalmologists’ attitudes toward immediate sequential bilateral cataract surgery: Dutch national survey.
Spekreijse LS et al(Netherlands)
J Cataract Refract Surg 48(9): 1044-1049, 2022
・白内障同時手術(Immediate Sequential Bilateral Cataract Surgey:ISBCS)について、現在のオランダの実情と意見を調査した。
・520医師に調査票を送り237医師(45.6%)から回答を得た。
・有効票227例のうち、62眼科医(27.3%)は現在、ISBCSを行なっていた。
・但し、IABCSを行なっていた眼科医の90.3%は月の手術数が1-5例の眼科医である。
・また、108例(47.6%)の眼科医は将来、IABCSは普通の手術になると回答していた。
・ISBCSを行なっていない理由は術後眼内炎とか、術後屈折誤差とか法的な観点からの反対であった。(TY)

2022
48巻

屈折矯正手術眼におけるBarrett True-Kの精度

Journal of Cataract & Refractive Surgery 48巻 (7号) 2022

IOL power calculations after LASIK or PRK: Barrett True-K biometer-only calculation strategy yields equivalent outcomes as a multiple formula approach.
Ferguson TJ et al(OH USA)
J Cataract Refract Surg 48(7): 784-789, 2022
・以前に近視あるいは遠視の屈折矯正手術をうけた人の眼内レンズ度数計算のBarrett True-Kの精度を調査した。
・96眼の近視矯正手術眼と47例の遠視矯正手術眼について調査した。
・結果は、近視矯正眼ではBarrett True-Kが平均絶対誤差(MAE)が最低(0.36D)であり、その次にHaigis-Lが続いた(0.41D)。
・誤差が±0.25D以内の精度についてもBarrett True-Kが44.8%と最高であり、Haigis-Lは34.4%であった。
・遠視矯正眼でもBarrett True-KのMAEが最低(0.41D)であり、その次にASCRS-meanが続いた(0.46D)。
・誤差が±0.25D以内の精度についてもBarrett True-Kが42.6%と最高であり、ASCRS-meanが続いた(38.3%)。
・測定器具に導入されているBarrett True-Kは使いやすいと考えた。(TY)

2022
48巻

白内障手術後の防腐剤を含まない非ステロイド性抗炎症点眼と防腐剤を含まないコルチコステロイド点眼の比較

Journal of Cataract & Refractive Surgery 48巻 (6号) 2022

Comparison of a preservative-free nonsteroidal anti-inflammatory drug and preservative-free corticosteroid after uneventful cataract surgery: multicenter, randomized, evaluator-blinded clinical trial
Seonjoo Kim, et al. (Korea)
J Cataract Refract Surg. 2022 Jun; 48(6): 710–716.
・目的: 白内障手術後の炎症管理における非ステロイド性点眼薬 (NSAIDs) とステロイド点眼薬の有効性を比較する。
・対象と方法:白内障手術患者 (グレード 3 ~4)125 人250 眼(平均年齢70.10±8.45歳)に対し、手術後に片眼にはブロムフェナクナトリウム0.1%点眼剤(NSAIDs群)を 1 日 2 回、もう片眼にはフルオロメトロン 0.1%点眼剤(ステロイド群)を 1 日 4 回点眼した。術後 1 週間での前房細胞およびフレア、術後4~8 週の前房炎症細胞とフレア、矯正遠見視力、角膜中心厚、結膜充血、ドライアイのパラメーター、網膜中心窩厚、眼と視覚の不快感が評価された。
・結果:1 週目での残留前房炎症は、グループ間で統計的に有意な差はなかった(NSAIDs群;-1.03 ± 1.27 対 ステロイド群;-0.95 ± 1.24、P = .4850)。
・しかし、NSAIDs群はステロイド群よりも早く結膜充血から回復した(0.30 ± 0.52 vs 0.44 ± 0.81、1週目でP = .0144)。
・NSAIDs群の角膜中心厚の増加は、術後 1 週間でステロイド群よりも少なかった (7.87 ± 22.46 対 29.47 ± 46.60 μm、P < .0001)。
・NSAIDs群における網膜中心窩厚の増加は、ステロイド群よりも有意に小さかった(18.11 ± 68.19 vs 22.25 ± 42.37 μm、P = .0002)。
・治療中、ステロイド群よりもNSAIDs群で、術後の眼および視覚の不快感のレベルが低いことがわかった。
・角膜染色、TBUT、遠見矯正視力、および後嚢混濁の発生率に関して、両群間に有意差はなかった。
・疼痛の発生率は、ステロイド群に比べて NSAIDs群で有意に少なかった (26.26% [26 眼] vs 35.35% [35 眼]。P = .0290)。投与期間中の薬物コンプライアンスは、ステロイド群よりも NSAIDs群の方が高かった (96.93 ± 11.23% vs 96.30 ± 11.34%; P < .0001)。
・副作用は、1人の患者の両眼ドライアイの悪化 (0.80%) が認められた。
・CMEはステロイド群で1例 (0.80%)認められた。
・結論:ブロムフェナク 0.1% 点眼剤は、フルオロメトロン 0.1% 点眼剤と同等レベルの抗炎症作用を有するが、白内障手術後の角結膜のさまざまな徴候や症状の改善に優れた効果があり、コンプライアンスも優れている簡単な白内障手術後の炎症治療である。(CH)

2022
48巻

Nd:YAGレーザーと網膜剥離の頻度

Journal of Cataract & Refractive Surgery 48巻 (2号) 2022

Effect of Nd:YAG laser capsulotomy on the risk for retinal detachment after cataract surgery: systematic review and meta-analysis.
Liu H et al(China)
J Cataract Refract Surg 48(2): 238-244, 2022
・Nd:YAGレーザーが偽水晶体眼網膜剥離RDの発症に影響するかどうかを、PubMedとEmbaseデータベースを基に検討した。
・65,117眼の白内障手術後の309例の網膜剥離例についての11論文を解析した。
・このうち、Nd:YAGレーザー施行例は8,232眼である。
・解析では、Nd:YAGレーザー施行例ではRDの発症率は増加。
・Rerative risk(RR)=1.57 95%CI=1.17-2.12 p=0.003。Hazard ratio=1.64 95%CI=1.03-2.62 p=0.04であった。
・地域別の解析では、アジア人では強い関連があり、RR=4.54 95%CI=2.20-9.38 p<0.001であったのに対し、米国人ではp=0.12、欧米人などではp=0.21で、相関がなかった。
・手法の解析では、囊外摘出ではRR=2.97 95%CI=1.83-4.83 p<0.001であったのに対し、PEAではp=0.95と、相関がみられなかった。(TY)

2022
48巻

白内障手術終了時の抗生剤の使用状況

Journal of Cataract & Refractive Surgery 48巻 (1号) 2022

Antibiotic prophylaxis of postoperative endophthalmitis after cataract surgery: results of the 2021 ASCRS member survey.
Chang DF et al(CA USA)
J Cataract Refract Surg 48(1): 3-7, 2022
・2021年2月に5052名のASCRSメンバーにアンケート調査を行ない、1205名の白内障術者から回答を得た。
・米国からが76%である。
・前房内へ予防的抗生剤投与は、2007年は30%、2014年は50%であったが、今回は66%で行なっており、投与経路は、灌流液内への抗生剤投与が5%、前房内注入が95%であった。
・バンコマイシンは米国では2014年は52%であったが、今回は6%に減っていた。
・モキシフロキサシンは2014年は31%であったが、今回は83%であった。
・抗生剤点眼薬の術前投与は85%から73%に減り、術後投与は97%から86%に減っていた。(TY)

2022
48巻

水晶体形状の毛様体麻痺剤に対する効果の加齢変化

Journal of Cataract & Refractive Surgery 48巻 (1号) 2022

Effect of age and cycloplegia on the morphology of the human crystalline lens: swept-source OCT study.
Li Z et al(China)
J Cataract Refract Surg 48(1): 8-15, 2022
・SS-OCTを使用して水晶体の形状に対する年齢あるいは毛様体麻痺剤の効果を18歳から86歳の76名において検討した。
・水晶体前面曲率半径ALRと前房深度ACDは年齢と負の相関があり(p<0.02)、水晶体厚LT、強膜岬面からの水晶体膨隆度LV、水晶体赤道部直径LEDは年齢と正の相関があった(p<0.04)。
・60歳以下の人では毛様体麻痺剤によって、水晶体前面曲率ALRと前房深度ACDは有意に増加し、水晶体膨隆度LVと水晶体厚LTは有意に減少した(いずれもp<0.001)。(TY)

2022
48巻

IOL術後のDead Bag Syndrome

Journal of Cataract & Refractive Surgery 48巻 (1号) 2022

J Cataract Refract Surg 48(1): 177-184, 2022
Culp C et al(UT USA)
Clinical and histopathological findings in the dead bag syndrome.
・Dead Bag Syndromeについて症例を報告する。
・Dead Bag Syndromeとは、Masket Sが名付けた症候群で、術後何年にも渡って嚢が透明でひらひらしており、嚢内にIOLをしっかりと保持できない形でIOLが脱臼いているものをいう。
・10例のDBSのなかで、IOL偏位が見られた8例のIOLを摘出し、そのうち7例では嚢も摘出し光顕で調査した。
・嚢は薄く、分離しているものもあり、2例では水晶体上皮細胞(LECs)は完全に消失していたが、5例ではLECsは嚢の内側に僅かに残っていた。
・摘出したIOLは3-piece silicone IOLとsingle-pieceの疎水性アクリルIOLである。
・IOLの1例では少量の色素沈着がみられたが、他の4例のIOLでは特に変化はなかった。
・原因は2次的なLECsの増殖がなく、線維化もないことによると思われた。
・チン氏帯の嚢への接着も弱かった。(TY)

2021
47巻

円錐角膜に対する角膜屈折矯正手術併用角膜クロスリンキング

Journal of Cataract & Refractive Surgery 47巻 (11号) 2021

Selective transepithelial ablation with simultaneous accelerated corneal crosslinking for corneal regularization of keratoconus: STARE-X protocol.
Rechichi M et al(Italy)
J Cataract Refract Surg 47(11): 1403-1410, 2021
・中心あるいは傍中心部の円錐角膜に対して、Selective transepithelial topography-guided photorefractive keratectomy combined with accelerated corneal crosslinking (STARE-X)を行った時の角膜屈折度の変化や角膜収差について検討した。
・角膜実質の平均除去厚は45.4±12.6μで角膜屈折矯正手術を行った後に角膜クロスリンキングを行った。
・円錐角膜の突出部が中心3mm以内にあるGroup1の50眼と、傍中心部にあるGroup2の50眼について、STARE-Xを行った2年後の成績について検討した。
・両群ともUDVA、CDVAは上昇し、角膜形状も有意に改善しており、高次収差も改善していた(いずれも p<0.001)。
・ただ、CDVAの改善はGp1の方がGp2よりも有意に改善していた(p<0.02)。(TY)

2021
47巻

円錐角膜に対する角膜屈折矯正手術併用角膜クロスリンキングと円形窓を持つIOL挿入

Journal of Cataract & Refractive Surgery 47巻 (11号) 2021

New treatment algorithm for keratoconus and cataract: small-aperture IOL insertion with sequential topography-guided photorefractive keratectomy and simultaneous accelerated corneal crosslinking.
Northey LC et al(Australia)
J Cataract Refract Surg 47(11): 1411-1416, 2021
・円錐角膜と白内障のある4眼について、小さな円形窓のあるIOL(IC-8 IOL AcuFocus製)を角膜切開での白内障手術後に挿入し、同時にtopography-photorefractive keratectomy(T-PRK)と角膜クロスリンキングCXLを行った。
・IC-8の中心の円形窓は1.36mmで、円錐角膜、角膜移植後、RK眼や角膜瘢痕などによる角膜不整のある人に対して、ピンホール効果を狙って作製されたものである。(TY)

2021
47巻

角膜ヒステリシス(CH)の新しい解釈

Journal of Cataract & Refractive Surgery 47巻 (4号) 2021

Corneal hysteresis and beyond: Does it involve the sclera?
Roberts CJ et al(OH USA)
J Cat Refract Surg 47(4): 427-429, 2021
・角膜のヒステリシス(Hysteresis:CH)を測定するOcular Response Analyzer(ORA)は新しい生体力学の手段を提供した。
・良く誤解されるが、CHは剛性とか弾性係数とかとは違うものであるし、変形に対する弾性抵抗を示すものでもない。
・CH値が低いのは円錐角膜などの柔軟な角膜であったり、加齢とか高眼圧の時の硬い角膜であったりする。
・IOPとの逆相関は良く知られており、IOP上昇に伴いCHは低下する
・例えば、高眼圧の硬い眼は散逸エネルギーが少なく、その結果、CHが低くなる
・粘着性と弾性の反応はいずれもCHに影響し、これらの比率が異なっていても、同じCHになりうる。
・例えば、円錐角膜に対するクロスリンキングCXLを行った1年後にもCHは変わらない。
・CXL後には、圧迫する圧は上昇しているが、CHの定義となっている第1、第2の圧の差(P1-P2)は変わらない。
・例えば、LASIK術後に片眼のみectasiaを発症した症例の両眼の測定のピーク値は全く違うが、CH値は同じであることも知られている。
・CH値が低いことは緑内障性の障害が強く、緑内障進行の予測因子であるとの報告が多いが、どうして角膜の生体力学的なパラメータが視神経の障害と関連するのかがまだ不明瞭である。
・角膜の生体力学的な反応が後部眼球の生体力学的な反応を示している可能性があり、最近、角膜の反応に強膜が影響していることが分かってきた。
・例えば、強膜バックルを行った眼では僚眼よりも強膜が硬くなっており、両眼間には眼圧の差はないが、バックル眼ではCH値が有意に低くなっているが報告されている。
・これは、硬い強膜は押されたときの凹形から、通常の凸形への戻りが早いからである。
・硬い強膜は、角膜が凹になった時の液の移動に反応しにくいため、角膜が大きく変形しにくいと考えられるが、これが角膜が硬いために変形しなかったと誤解されている可能性がある。
・反対に、強膜が柔らかいと大きく変形するため、角膜の変形も大きく、角膜が柔らかいと誤解されやすい。
・つまり、強膜の状態が、CHと緑内障性の視神経障害の両者に係っていると考えられる。(TY)

2021
47巻

白内障手術後の術後の眼痛と炎症の制御におけるネパフェナク涙点プラグデリバリーシステムの安全性と有効性

Journal of Cataract & Refractive Surgery 47巻 (2号) 2021

Safety and efficacy of nepafenac punctal plug delivery system in controlling postoperative ocular pain and inflammation after cataract surgery.
Eric D. Donnenfeld,et al.(SC USA)
J Cataract Refract Surg 2021(2); 47: 158-164
・白内障手術後のネパフェナク涙点プラグデリバリーシステム(N-PPDS)の安全性と有効性を評価すること。
・ネパフェナク涙点プラグデリバリーシステム(N-PPDS)は、テキサス州オースティンのMati Therapeuticsによって開発された、最大6週間の持続的な一定のレベルの薬剤を提供するL字型涙点プラグ。
・白内障術後の遠方矯正視力が20/30以上で、涙点が1.0 mmまで拡大できると予想される56人(22歳以上)。ネパフェナク(N-PPDS群; n = 38眼)またはプラセボ(p-PPDSコントロール群; n = 18眼)のいずれかを投与された。
・予定された白内障手術の1日から2日前に、各患者の下涙点に涙点プラグ(N-PPDSまたはp-PPDS)を挿入した。
・白内障手術の1日後、3±1日後、7±1日後、および14±2日後に、プラグの保持、眼痛、および手術眼の炎症について評価された。14日目の受診時にすべての涙点プラグが取り外された。
・N-PPDS群は、p-PPDS群よりも無痛患者の割合が有意に高かった(22/32 [69%] 対 6/16 [38%] at 3 days, P = 0.038; and 24/36 [67%] 対 5/16 [31%] at 7 days, P = 0.018)。
・炎症スコアは、術後7日でN-PPDS群で良好だった(前房炎症細胞のない患者:N-PPDS 群18/36 [50%]対p-PPDS 群3/16 [19%]; P = 0.034)。
・プラグ保持率は術後14日で98%(55/56)だった。プラグの押し出しは、術後1日目にN-PPDS群の1例で発生した。
・術後平均裸眼視力は、術後7日目(N-PPDS 群20/25対p-PPDS群20/36)および14日目(N-PPDS群 20/25 vs p-PPDS 群20/32)でN-PPDS群で有意に優れていた。
・N-PPDSは、術後直後の眼の痛みと炎症を軽減するのに効果的であり、安全性と視力の結果はp-PPDSよりも優れていた。(CH)

2020
46巻

硝子体注射とPEA中の後嚢破損頻度

Journal of Cataract & Refractive Surgery 46巻 (2号) 2020

Risk of posterior capsular rupture during phacoemulsification cataract surgery in eyes with previous intravitreal antivascular endothelial growth factor injections.
Nagar AM et al(UK)
J Cataract Ref Surg 46(2): 204-208, 2020
・2016/8-2018/1の超音波乳化手術4047眼の内の4044眼について、硝子体注射IVIを受けていた108眼(2.7%)の種類や回数(10.4±8.1回)を調査した。
・抗VEGF治療を受けた例では後嚢破損PCRの率が高く(6.67%:1.88% OR=4.93 p<0.0001)、抗VEGF治療の回数とPCR発生には相関があり、1回のIVI毎にPCR発生リスクが8.6%上昇していた(OR=1.086 95%CI=1.040-1.135 p=0.0002)。
・10回以上のIVIではそれ以下のものに比較して有意に高かった(14.3%:6.1% p=0.18)。
・IVIは15名の研修を受けた眼科医が行い、手術は10名の熟練医と12名の研修医が行い、全体のPCR発生率は2.08%(84/4047)であった。
・術前に後嚢に構造的な障害がない場合でも、IVIを受けていた患者ではPCRのリスクが高いことを認識すべきである。(TY)

2020
46巻

NSAIDsとネオマイシン併用による角膜融解例

Journal of Cataract & Refractive Surgery 46巻 (1号) 2020

Severe corneal melting after cataract surgery in patients prescribed topical postoperative NSAIDs and dexamethasone/neomycin combination therapy.
Cabourne E et al(UK)
J Cataract Refract Surg 46(1): 138-142, 2020
・白内障手術後にKetrolac点眼(Acular)とneomycin/polymyxin B/dexamethason(Maxitrol)点眼を使用した3例に角膜症を発症した。
・ネオマイシンはフラジオマイシンと同じで、ネオメドロールEE眼軟膏はプレドニゾロンとフラジオマイシンの合剤である。
・同様の点眼を使用していた患者のカルテ970例をチェックした所、他の10例にも同様の角膜症を発症していたことが判明した(13/970=1.3%)。
・13例中5例で角膜融解がおこり、そのうち1例で角膜穿孔、眼内炎を発症した。
・13例中8例の最終視力は6/36以下であった。
・NSAIDs点眼とneomycinや塩化ベンザルコニウムの併用は重症な角膜症を発症しうることを喚起したい。(TY)

2020
46巻

IOL計算式の再検討

Journal of Cataract & Refractive Surgery 46巻 (1号) 2020

Comparison of formula accuracy for intraocular lens power calculation based on measurements by a swept-source optical coherence tomography optical biometer.
Savini G, Hoffer KJ et al(Italy,USA)
J Cataract Refract Surg 46(1): 27-33, 2020
・SS-OCT測定器を用いてIOL計算式結果を比較した。
・Tomey OA-2000を用いて、Acrysof SN60WFのIOLについて150眼で検討した。
・計算式はBarrett Universal2, EVO(Emmetropia Verifying Optical), Haigis, Hoffer Q, Holladay1, Holladay2, 眼軸長補正Holladay2, Kane, Olsen, Panacea, SRK/T, VRF(Voytsekhivskyy)を用い、術1か月後の屈折値と比較した。
・全計算式とも誤差の中間値は0.200-0.259D以内であったが、計算式毎に有意差があった(p=0.0004)。
・誤差中間値の少ないものがBarrett:0.202D, EVO:0.205, Kane:0.200, Olsen Standalone:0.209, RBF(Radial Bssis Function):0.205, T2(SRK/Tの修正版):0.200であった。
・予測誤差が±0.5D以内に入った率は80.0%-90.67%で、計算式毎に有意差があり(0<0.0001)、Barrett:88.0%,EVO:90.67%, 眼軸長調整Holladay2:89.33%, Kane:90.0%, RBF:90.67%, T2:88.67%が良かった。
・Tomey OA-2000:今のところ、Kane式の搭載の予定はないとのこと。(TY)

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