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American Journal of Ophthalmology

2017
177巻

他覚屈折度の測定における調節と利き目の重要性

American Journal of Ophthalmology 177巻 (5号) 2017

 Importance of Accommodation and Eye Dominance for Measuring Objective Refractions.
Tsuneyoshi Y, Negishi K, Tsubota K.(慶応大)
Am J Ophthalmol. 2017 May; 177: 69-76.
・健常ボランティア29名58眼、25-60(平均38.4)歳
・Nidek ARK-730Aにて片眼屈折度数(MR)、Grand Seiko WAM-5500にて両眼開放下での屈折度数(BR)と調節幅(AA)を測定、hole-in-cardテストにて利き目を調査、プリズムカバーテストにて遠見/近見の斜位角を計測
【結果】BRの等価球面度数(SE)はMRより有意に遠視傾向を示した(0.51±0.33, P<0.001)
・両条件の差(BR-MR)は年齢が上がるほど減少(r=-0.231, P=0.08)し、AAが減弱するほど減少(r=0.223, P=0.092)する傾向を示した
・年齢と両条件のSE差は優位眼では有意差みられる(r=-0.372, P=0.047)も、非優位眼では有意差がみられなかった(r=-0.102, P=0.60)
・非優位眼では、近見斜位角はSE差と有意に関連しており(r=0.403, P=0.03)、この関連はAAが3D以上の群で殊に強かった(r=0.598, P=0.01)
【結論】両眼開放下での屈折度数を評価することは、適切な屈折矯正治療を行うために重要である(MK)

2017
176巻

細菌性角膜炎に対するポビドンヨードの効果

American Journal of Ophthalmology 176巻 (4号) 2017

Prospective, randomized clinical trial of povidone-iodine 1.25% solution versus topical antibiotics for treatment of bacterial keratitis.
Isenberg SJ et al(CA USA)
Amer J Ophthalmol 176(4): 244-253, 2017
・多くの抗生剤点眼薬が使用できない地区で、172眼の細菌性角膜炎に対して、1.25% povidone-iodine(PI)と抗生剤点眼とを比較した。
・使用した抗生剤点眼はneomycin-polymyxin B-Gramicidin(フィリピン)か ciprofloxacin0.3%(インド)である。
・判定は治癒(角膜上皮欠損消失)、軽快(上皮欠損が1mm2以内で炎症所見微度)とした。
・フィリピンでは治癒までの中間値はPI、抗生剤ともに7日、インドではPIは12日、抗生剤は17日であった。
・安価でどこでも手に入るPIを使ってみることも良いだろう(TY)

2017
173巻

乳幼児の角膜内皮密度

American Journal of Ophthalmology 173巻 (1号) 2017

 Corneal Endothelial Cell Density in Children: Normative Data From Birth to 5 Years Old
Uri Elbaz, Kamiar Mireskandari, Nasrin Tehrani, Carl Shen, Muhammad Saad Khan, Sara Williams, Asim Ali (Canada)
Am J Ophthalmol 2017;173(1):134-138
・出生~5歳児の角膜内皮膚密度(ECD)をスペキュラーマイクロスコピーで測定 
・全麻下測定の子には角膜径も測定
・118名、平均2.6±1.4歳、平均ECDは3760±370個/mm2(3145-5013個/mm2)
・2歳児までは、ECDは年齢よりも角膜径と強い逆相関
・2歳を超えると、ECDは年齢と有意な逆相関、角膜径とは有意な相関関係なし
・ECD減少率は最初の二年(8.2%, 334個/mm2/年)の方が2-5歳(2.7%, 100個/mm2/年)よりも有意に大きい
・生後二年間で急速なECD減少がみられるが、角膜径および表面積の増加に伴うもののよう、角膜径が成人並みに達すると成人でのECD減少率に近づく(MK)

2017
173巻

水晶体亜脱臼に対するFLACS

American Journal of Ophthalmology 173巻 (1号) 2017

 Management of Severely Subluxated Cataracts Using Femtosecond Laser–Assisted Cataract Surgery
Soon-Phaik Chee, Melissa H.Y. Wong, Aliza Jap (Singapore)
Am J Ophthalmol 2017;173(1):7-15
・180度以上Zinn小帯が脆弱な47眼
・フェムトセカンドレーザーでCCCおよび核分割、水晶体嚢拡張デバイスを併用して白内障手術
・43眼(91.5%)で水晶体嚢が保存、43眼(91.5%)でIOLが中心安定
・6眼で前嚢に亀裂(すべて核硬度3以上)うち3眼が後嚢にまわる
・前嚢の亀裂なく後嚢破損1眼
(結論:症例を選べばフェムトセカンドレーザーでCCCと核分割が可能、9割以上の症例で水晶体嚢の保存が可能であった)
*除外例19眼
水晶体変位が高度でOCT画像より外れる(8眼)、浅前房(4眼)、角膜混濁(2眼)、その他の理由でフェムト使用不可(5眼、過熟白内障・斜視角大・進行緑内障・眼窩骨折・経済的事由)(MK)

2016
169巻

合併症のない白内障手術後でもIOLにバイオフィルム

American Journal of Ophthalmology 169巻 (169号) 2016

Analysis of Intraocular Lens Biofilms and Fluids After Long-Term Uncomplicated Cataract Surgery.
Mazoteras P, Quiles MG, Martins Bispo PJ, Höfling-Lima AL, Pignatari AC, Casaroli-Marano RP. (Spain)
Am J Ophthalmol. 2016 ;169:46-57. 
【目的】
・長期間合併症がみられなかったIOL眼の眼内環境および水晶体嚢・IOL表面を調査
【対象と方法】
・角膜移植のドナー眼、後房IOL挿入後に炎症を含む合併症の記録のない69眼
・前房水・硝子体液を従来の細菌培養および分子生物学的検査で菌の存在を調査
・走査電子顕微鏡でIOL表面のバイオフィルム形成を、透過型電子顕微鏡でcapsule残存物質中のバイオフィルム形成を検索
【結果】
・従来の細菌培養検査では眼内液中に細菌は検出されず
・13眼(18.8%)でIOL光学面にバイオフィルム形成がみられた
・うち3眼の眼内液PCRで16S rDNA陽性
【結論】
・合併症のない正常眼でも、眼内液や臨床所見が陰性にかかわらずIOL表面にバイオフィルムが形成されている可能性がある(MK)

2016
168巻

緑内障のOCTA所見

American Journal of Ophthalmology 168巻 (168号) 2016

Microvascular Density in Glaucomatous Eyes With Hemifield Visual Field Defects: An Optical Coherence Tomography Angiography Study.
Akagi T, Iida Y, Nakanishi H, Terada N, Morooka S, Yamada H, Hasegawa T, Yokota S, Yoshikawa M, Yoshimura N.(京都大)
Am J Ophthalmol. 2016 ;168:237-49.
【目的】
・半側視野異常がある緑内障患者の視神経乳頭とその周囲の微小循環を評価
【対象と方法】
・POAG患者60眼(上方視野欠損41眼、下方視野欠損19眼)
・OCT angiography(RTVue-XR, 3×3mm cube)で視神経乳頭周囲の血管密度を測定
・SD-OCT (Spectoralis)にて乳頭周囲RNFLを測定
【結果】
・傍乳頭の網膜血管密度は、非高度近視眼・高度近視眼ともに、視野欠損に対応する領域で有意に減少
・視神経乳頭の網膜血管密度は、非高度近視眼の下方視野欠損群のみ、視野欠損に関連する部位に有意な減少
・傍乳頭の網膜血管密度は対応する部位の視野検査のtotal deviationと有意に関連
・傍乳頭の脈絡膜血管の密度の減少は、β-PPA領域のみならずα-PPA領域にも広がっていた
【結論】
・視野障害の領域に一致して、傍乳頭および一部の視神経乳頭領域の微小血管の減少がみられた
・OCTAでの調査で、微小血管の消失はβ-PPA領域のみならずγ領域やα領域にわたっていることがわかった
・OCTAのこれらの知見が、緑内障の病態を理解する新たな発見につながるかもしれない
*NFLDは視野障害に対応した領域以上に広がっているが、血管密度の減少は視野欠損に対応する領域のみ
→傍乳頭の微小血管減少はNFL菲薄化に続いて起こり、血管密度が視機能と関係している可能性(MK)

2016
172巻

偽水晶体眼の角膜浮腫の視力に対する早期のDSEKの影響

American Journal of Ophthalmology 172巻 (12号) 2016

 Influence of Early Descemet Stripping Endothelial Keratoplasty on Visual Outcomes in Pseudophakic Corneal Edema
SARAH B. WEISSBART, et al. (PA, USA)
Am J Ophthalmol 2016(12);172:58-63.
目的:水疱性角膜症に対するDSEKを行うタイミングと術後視力結果の関連性を調査する。
対象と方法:114人120眼(男性54人、女性60人、平均年齢71.4歳)、87%がフックス角膜内皮変性症。
水疱性角膜症になってからDSEKまでの平均期間8.62ヶ月。
グループ① 白内障手術から6ヶ月以内にDSEK施行 44眼
グループ② 白内障手術から6ヶ月以後にDSEK施行 76眼
結果:術前視力 ① 0.54 logMAR  ② 0.24 logMAR
    術後6ヶ月 ① 0.18 logMAR  ② 0.30 logMAR
   術後12ヶ月 ① 0.18 logMAR  ② 0.26 logMAR
20/40より視力改善 ① 53%  ② 48%、20/25より視力改善 ① 25%  ② 9%
合併症 グラフト解離 ①2眼  ②2眼、拒絶反応 ①0眼  ②2眼、ステロイドレスポンダー ①2眼  ②4眼
結論:長期間の角膜浮腫は角膜の構造的変化をもたらすかもしれないので、角膜浮腫が発症してから早めに(6ヶ月以内)DSEKをした方が良いと思われる。(CH)

2016
171巻

硝子体手術中における静脈空気塞栓症(VAE)の動物モデル

American Journal of Ophthalmology 171巻 (11号) 2016

 In Vivo Porcine Model of Venous Air Embolism During Pars Plana Vitrectomy
Steven Gayer, Howard D. Palte, Thomas A. Albini, Harry W. Flynn Jr., Ricardo Martinez-Ruiz, Nelson Salas, Andrew J. McClellan, Nidhi Relhan, Jean-Marie Parel (US-FL)
AM J Ophthalmol 2016;171(11):139-144
・豚に全身麻酔をかけ、硝子体手術のインフュージョンカニューラを上脈絡膜腔に設置
・空気灌流を開始して硝子体切除を進めながらバイタルサインを監視
・3眼目の実験でVAE発生、灌流圧30→60mmHgに増加させると30秒以内に心臓内に空気の存在
・まずETCO2が低下、続いて血圧の減少と心電図変化
・SaO2はかなり後になって低下
・7分後にVAEにより死亡、剖検にて右心室に空気の存在
(結論:上脈絡膜腔に間違って設置されたカニューラより空気が圧出されると、目から全身循環に空気が移行して致死的なVAEが生ずることが豚の実験で証明された) (MK)

2016
170巻

緑内障眼の神経線維変化は視野変化を予測できるか

American Journal of Ophthalmology 170巻 (10号) 2016

Localized changes in retinal nerve fiber layer thickness as a predictor of localized functional change in glaucoma.
Gardiner SK et al(OR USA)
Amer J Ophthalmol 170: 75-82, 2016
・局所的なRNFL厚の変化速度がその対応部位の視野変化速度に相関があるかどうかを調査した。191例364眼の緑内障疑いあるいは緑内障で6か月毎に24-2視野と30度毎の周視神経乳頭のRNFL厚測定を行ない、Passing-Bablok回帰を求めた:PB回帰は原因結果の関係のない2測定法の結果を比較解析するもの。セクターに分けたRNFL厚の変化速度は全ての網膜部位で感度変化を有意に予測し得た。セクターの1μm/年以上の速度の厚みの減少は、上方視野の0.3dB/年以上の感度低下と相関していたが、下方視野では相関がなかった。(TY)

2016
170巻

硝子体内注射時にPIを使用しなかった場合の眼内炎発症率

American Journal of Ophthalmology 170巻 2016

Endophthalmitis after intravitreal injections in patients with self-reportede iodine allergy.
Modjtahedi BS et al(OK USA)
Amer J Ophthalmol 170: 68-74, 2016
・硝子体内注入を2つの施設で、2008/6-2014/11と2010/1-2015/1の間に行った患者でそれぞれ、6眼/30,046注射、6眼/33,699注射で眼内炎を発症した。
・発症率は0.019%である。2つの施設に紹介された患者も合わせて42例の眼内炎患者のうち、5例(11.9%)はPI消毒をしていないものであった。
・この5例は眼内炎発症前に平均10.6回、合計53回の注射をうけており、発症率は5/53=9.4%である。
・PIを使用しなかった理由は、PIアレルギーがあるとの申告があったためであった。(TY)

2016
170巻

TLE同一創でのRevisionの結果と不成功の危険因子

American Journal of Ophthalmology 170巻 (10号) 2016

Same-site Trabeculectomy Revision for Failed Trabeculectomy: Outcomes and Risk Factors for Failure
Hirunpatravong P. et al (UCLA, USA)
Am J Ophthalmol 170(10) :110-118, 2016
・初回レクトミー後の眼圧再上昇に対して同一部位をはがしてMMC併用レクトミー(再建術)を行った結果
・連続した40歳以上の145例178眼の開放隅角緑内障に対して実施
・3か月以上経過観察できなかったもの(22眼)、低眼圧の修正や異物感のために行ったもの(11眼)、MMCを使用しなかったもの(6眼)、過去の白内障手術で問題があったもの(3眼)、ゴニオトミー・エクスプレスが行われていたもの(各1眼)を除外した117例130眼を対象
・POAG 108眼, PE 17眼, 色素緑内障 5眼 平均観察期間5.2(0.25-14)年 60眼は5年以上経過観察
初回手術から手術までの期間は平均4.32年
Fornix-base: 115眼、Limus-base: 15眼 結膜とテノンを強膜からはがし、フラップの上にMMC: 0.2-0.4mg/mlで1-5分 その後強膜フラップを起こしてWindowをあけてフラップを2針縫合
LSL: 73眼で実施 うち44眼(60.3%)は2週間以内に66眼(90.4%)は1か月以内
・術後眼圧:16.9±4.4→ 13.1±5.0mmHg (1Y), 11.8±4.4mmHg (3Y), 12.3±4.9mmHg (5Y)
・術後点眼:2.82±0.99→ 1.3±1.4mmHg (1Y), 1.28±1.4mmHg (3Y), 1.45±1.4mmHg (5Y)
・危険因子を検討: 年齢、性別、人種、緑内障病型、左右眼、術前眼圧、術前点眼数、術前MD値・PSD値、レンズの状態、CCT、過去の手術やレーザー、全身疾患、初回手術からの期間、MMCの濃度と作用時間、LSLのタイミング、結膜切開部位、術後初回診察時の眼圧、Revision後の白内障手術の有無とその時期
・成功基準;(A)IOP≦18mmHg かつ20%下降、(B)≦15mmHg, 25% (C)≦12mmHg, 30%
・結果:成功率 1年、3年、5年後                (A) 69.7%, 58.2%, 51.1%
                                                                      (B) 60.9%, 47.8%, 44.0%
                                                                      (C) 44.6%, 29.7%, 25.8%
・危険因子:3年以内のRevisionと脂質異常症が危険因子となった
結論:レクトミー後の再手術はあまり成績が良くないという報告が多い、TVT Studyではレクトミー後の再手術では再度別部位でのTLEやチューブが選択肢とされているが、同一部位での再手術も悪くはない
ただし、非常に低い眼圧を望むのであれば、成功率は高くない(MM)

2016
169巻

合併症のない白内障手術後でもIOLにバイオフィルム

American Journal of Ophthalmology 169巻 (9号) 2016

Analysis of Intraocular Lens Biofilms and Fluids After Long-Term Uncomplicated Cataract Surgery.
Mazoteras P, Quiles MG, Martins Bispo PJ, Höfling-Lima AL, Pignatari AC, Casaroli-Marano RP. (Spain)
Am J Ophthalmol. 2016 ;169:46-57. 
【目的】
・長期間合併症がみられなかったIOL眼の眼内環境および水晶体嚢・IOL表面を調査
【対象と方法】
・角膜移植のドナー眼、後房IOL挿入後に炎症を含む合併症の記録のない69眼
・前房水・硝子体液を従来の細菌培養および分子生物学的検査で菌の存在を調査
・走査電子顕微鏡でIOL表面のバイオフィルム形成を、透過型電子顕微鏡でcapsule残存物質中のバイオフィルム形成を検索
【結果】
・従来の細菌培養検査では眼内液中に細菌は検出されず
・13眼(18.8%)でIOL光学面にバイオフィルム形成がみられた
・うち3眼の眼内液PCRで16S rDNA陽性
【結論】
・合併症のない正常眼でも、眼内液や臨床所見が陰性にかかわらずIOL表面にバイオフィルムが形成されている可能性がある(MK)

2016
168巻

高解像度OCTによる硝子体観察

American Journal of Ophthalmology 168巻 (8号) 2016

Microarchitecture of the vitreous body: a high-resolution optical coherence tomography study.
Uji A & Yoshimura N(京大)
Amer J Ophthalmol 168(8): 24-30, 2016
・若年者17名17眼で高解像度HR-SD-OCTの硝子体強調画像を使用して硝子体を観察した。
・網膜と後部硝子体皮質の間の物質を90%で検出できた。
・1)高反射の小点と多層の高反射線が剥離した硝子体皮質の周囲にみられた。
・2)上方のarcade以外の部位では層状構造が70-80%の高比率でみられた。
・3)低反射の管状物が80%以上でみられ、これは網膜血管部にある様だった。(図)(TY)

2016
162巻

線維柱帯切除術、EX-PRESS、アーメドインプラントの角膜内皮細胞に対する短期の影響(letter)

American Journal of Ophthalmology 162巻 (2号) 2016

Trabeculectomy Versus EX-PRESS Shunt Versus Ahmed Valve Implant: Short-term Effects on Corneal Endothelial Cells
HALIL ATES, et al. (Turkey)
Am J Ophthalmol 2016;162(2):201-202.
目的:PKP後に緑内障点眼治療に反応しない15眼にEX-PRESSを施行し評価した。
対象と方法:PKP後15眼(先天緑内障+水疱性角膜症 6眼、眼内レンズ眼の水疱性角膜症 2眼、デスメ膜破裂 3眼、再移植 2眼、ヘルペス性角膜炎 1眼、円錐角膜 1眼)
EX-PRESSの前に8眼が線維柱帯切除術、2眼がインプラント手術を受けていた。
結果:EX-PRESS後、93.3%の症例で30%またはそれ以上の眼圧下降が得られた。
術後12.2ヶ月の間、グラフトの透明性は維持していた。
結論:チューブシャント手術によって引き起こされる内皮細胞障害は、手術中の物理的な力、手術時の接触、術後の小さな動きによるものと思われる。
EX-PRESSのようなステンレススチール素材はアーメドなどのシリコン素材より安定している。眼球運動の影響も少ない。EX-PRESSは他のインプラントと比べ、前房に入っている部分が短いので内皮に影響が少ないのではないか。
EX-PRESSは内皮細胞の少ない患者だけでなく、角膜移植後の緑内障にも良い適応である。(CH)

2016
168巻

緑内障のOCTA所見

American Journal of Ophthalmology 168巻 (8号) 2016

Microvascular Density in Glaucomatous Eyes With Hemifield Visual Field Defects: An Optical Coherence Tomography Angiography Study.
Akagi T, Iida Y, Nakanishi H, Terada N, Morooka S, Yamada H, Hasegawa T, Yokota S, Yoshikawa M, Yoshimura N.(京都大)
Am J Ophthalmol. 2016 ;168:237-49.
【目的】
・半側視野異常がある緑内障患者の視神経乳頭とその周囲の微小循環を評価
【対象と方法】
・POAG患者60眼(上方視野欠損41眼、下方視野欠損19眼)
・OCT angiography(RTVue-XR, 3×3mm cube)で視神経乳頭周囲の血管密度を測定
・SD-OCT (Spectoralis)にて乳頭周囲RNFLを測定
【結果】
・傍乳頭の網膜血管密度は、非高度近視眼・高度近視眼ともに、視野欠損に対応する領域で有意に減少
・視神経乳頭の網膜血管密度は、非高度近視眼の下方視野欠損群のみ、視野欠損に関連する部位に有意な減少
・傍乳頭の網膜血管密度は対応する部位の視野検査のtotal deviationと有意に関連
・傍乳頭の脈絡膜血管の密度の減少は、β-PPA領域のみならずα-PPA領域にも広がっていた
【結論】
・視野障害の領域に一致して、傍乳頭および一部の視神経乳頭領域の微小血管の減少がみられた
・OCTAでの調査で、微小血管の消失はβ-PPA領域のみならずγ領域やα領域にわたっていることがわかった
・OCTAのこれらの知見が、緑内障の病態を理解する新たな発見につながるかもしれない
*NFLDは視野障害に対応した領域以上に広がっているが、血管密度の減少は視野欠損に対応する領域のみ
→傍乳頭の微小血管減少はNFL菲薄化に続いて起こり、血管密度が視機能と関係している可能性(MK)

2016
166巻

高度近視眼にみられるブルッフ膜孔

American Journal of Ophthalmology 166巻 (6号) 2016

Macular bruch membrane holes in highly myopic patchy chorioretinal atrophy.
Ohno-Matsui K et al(東京医歯大)
Amer J Ophthalmol 166(6): 22-28, 2016
・近視網膜症眼の中心窩外に網脈絡膜の班状萎縮があるタイプがある。
・ブルッフ膜孔は脈絡膜新生血管CNVに伴った中心窩脈絡膜萎縮を伴ったものに発生するとされていた。
・このブルッフ膜孔が網脈絡膜お斑状萎縮にみられた症例を検査した。
・全例眼軸長26.5mm以上の軸性近視である。
・斑状萎縮のある17例22眼のうち、21眼(96%)にブルッフ膜孔がみられた。
・特徴はブルッフ膜欠損、RPE欠損、視細胞欠損、脈絡膜毛細血管欠損である。
・ブルッフ膜孔縁ではブルッフ膜は翻転し、RPEも翻転しており、その上の内層網膜は極端に薄くなっていた。(図)(TY)

2016
166巻

単発又は多発ポリープを持つポリープ状脈絡膜血管症でのラニビズマブ硝子体内注射の治療効果の違い

American Journal of Ophthalmology 166巻 (6号) 2016

 Distinct Responsiveness to Intravitreal Ranibizumab Therapy in Polypoidal Choroidal Vasculopathy With Single or Multiple Polyps
Misa Suzuki, et al. (慶応大学)
Am J Ophthalmol 2016(6);166:52–59.
目的:PCVを単発例と多発例に分けてラニビズマブ硝子体内注射(IVR)単独治療を施行し治療効果の違いを検討した。
対象と方法:12ヶ月以上経過観察できた単発例29眼(男性22眼、女性7眼)、多発例19眼(男性12眼、女性7眼)。
ICGAとOCTでポリープが単発か多発かを判断した。
IVRは最初の3ヶ月は月1回。その後、OCTでME、SRF、PEDの増加を認めたら繰り返しIVRを施行した。(pro re nata)
多発例 2個4例、3個4例、4個3例、5個1例、6個3例、7個1例、12個1例。
経過中5例脱落した。(単発2例 通院なくなった、治療法変更、多発3例 治療法変更、硝子体出血)
IVR施行し2年以上経過してもBCVAが0.2 logMAR以上改善しなかった症例、眼底所見で悪化するか、新しい滲出性変化出現、CRT100μm以上増加した症例を反応不良例とした。
治療前、多発例の方がBCVA低く、GLD大きく、線維血管性色素上皮剝離を持つ症例が多かった。
結果:視力 1年以上視力維持または改善 単発 28/29例(96.6%)、多発 14/19例(73.7%)
      2年以上視力維持または改善 単発 25/27例(92.6%)、多発 13/16例(81.3%)
CRT 両グループとも治療後3ヶ月で減少し、その後維持していた。
  1年後単発 226.66±114.4μm(平均168.0±178.6μm減少)、多発 297.56±127.4μm(平均101.26±116.1μm減少)。
注射回数 単発 1年目 4.4±2.1回、2年目 1.7±2.0回  多発 1年目 6.0±2.5回、2年目 2.3±2.4回。
黄斑部がdryになるまでの注射回数 単発 3.3±1.4回、多発 4.9±3.3回。
反応不良例 視力で判定 単発 1例(3.4%)、多発 6例(31.6%)、眼底所見で判定 単発 0例(0%)、多発 5例(28.3%)。
結論: 単発例に比べ、多発例の方がIVRに対する反応不良例が多く、視力予後が悪かった。
PCVの症例でポリープの数が予後予測に役立つと思われる。(CH)

2016
165巻

バックリング手術後どのくらいで眼軸長などが安定するか

American Journal of Ophthalmology 165巻 (5号) 2016

A Prospective Study of Biometric Stability After Scleral Buckling Surgery
Wong CW, Shu Yen Lee SY, et al. (Singapore)
Am J Ophthalmol 2016;165(5):10 47-53
・バックリング手術を受けた17名の眼軸長(AL)・前房深度(ACD)・角膜屈折力(K値)を前向き調査
術前および術後1w、1,3,6,9,12Mに測定、術後12Mと有意差がない最初の地点を安定時期と定義
【結果】術後12Mにおいて【Tab.2】
AL:26.09±1.46mm→26.51±1.96mmと有意に増加(P=0.01)
ACD:3.84±0.47mm→3.32±0.57mmと有意に減少(P<0.01)
平均1.04Dの近視化(95%CI:0.03-2.05, P=0.04)
・K値は前面・後面とも有意な変化なし
・ALは術後3Mで安定、ACDと等価球面度数は術後1wで安定【Tab.3】
・クライオの実施と長いバックルはALおよび近視化に有意に関連【Tab.4】
【結論】バックリング術後3M以上あけて白内障手術の生体検査をすべき。IOLパワー計算は第4世代計算式が望ましい。(MK)

2016
165巻

交代制勤務:中心性漿液性網脈絡膜症のリスク要因

American Journal of Ophthalmology 165巻 (5号) 2016

Shift Work: A Risk Factor for Central Serous Chorioreti nopathy
ELODIE BOUSQUET, et al. (France)
Am J Ophthalmol 2016(5);165:23-28.
目的:シフトの仕事あるいは睡眠障害が中心性漿液性網脈絡膜症(CSCR)のリスク要因であるかどうか調査する。
対象と方法:CSCグループ40人(44.1±8.6歳)、男性34人、女性6人
コントロールグループ40人(43±10.1歳)、男性34人、女性6人
CSCグループ40人中、急性期26人、慢性期14人
睡眠障害の評価は不眠症重度指数(ISI)で評価した。(点数が高いほど重症)
結果:平均ISIスコア CSCグループ 9.6±6.2、コントロールグループ 4.1±4.5 (p<0.001)
平均ISIスコア10以上 CSCグループ 57.5% (急性期78.6%、慢性期46.1%)、コントロールグループ 15% (p<0.001)
シフト勤務 CSCグループ17人(42.5%)、コントロールグループ6人(15%)(p=0.007)
シフト勤務の人のISIスコア CSCグループ 10.9±5.5、コントロールグループ 5.2±5.5 (p<0.001)
高血圧、うつ、アレルギー、タバコ、アルコールはグループ間で相違なかった。
結論:交代制勤務がCSCRの独自のリスク要因であることを示唆する。
就労時間の変更が長期または再発性のCSCR患者の治療の一つとして考えられる。(CH)

2016
164巻

OCT angiographyの開発

American Journal of Ophthalmology 164巻 (4号) 2016

Choroidal neovascularizatoin analyzed on ultrahigh-speed swept-source optical coherence tomography angiography compared to spectral-domain optical coherence tomography angiography.
Novais EA et al(MA USA)
Amer J Ophthalmol 164(4): 80-88, 2016
・Ultrahigh-speed swept-source(SS) OCT angiographを開発し、spectral-domain(SD) OCT angiographと比較した。
・SD-OCTは波長が840nm、70,000A-scans/秒で、SS-OCTは波長が1050nm、400,000A-scans/秒である。
・SS-OCTAは、SD-OCTAよりも有意にCNVを確認できた(TY)

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