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American Journal of Ophthalmology

2013
155巻

ドライアイ治療のための2種類のシリコン涙点プラグの維持率と合併症の比較

American Journal of Ophthalmology 155巻 (4号) 2013

Comparison of Retention Rates and Complications of 2 Different Types of Silicon Lacrimal Punctal Plugs in the Treatment of Dry Eye Disease
Minako Kaido, et al. (慶応大)
Am J Ophthalmol 155(4): 155:648-653, 2013
・Punctal Plug FとSuper flex plugの維持率と合併症と涙点の大きさの関係について調べた。
中〜高年のドライアイ、シルマー試験5mm以下、BUT 5 sec以下、人工涙液を使っても症状改善しないもの
・グループA:Punctal Plug F:30人(男性4人、女性26人)平均年齢58.2±13.7歳
 グループB:Super flex plug:44人(男性10人、女性34人)平均年齢64.4±18.3歳
脱落は来院時自然に取れていた時、流涙または不快のためプラグをとった時とした。
重症ドライアイには上下涙点に、中等度ドライアイには上涙点のみにプラグを挿入した。
表1のようにAもBも110個ずつプラグを挿入した。涙点の大きさはAB間で相違なし。
プラグの維持率は6ヶ月後でA 57個(70.4%)、B 25個(30.1%)(表2)
6ヶ月での自然脱落率A 25.9%、B 63.9%
涙点の大きさでの比較:Aは涙点のサイズが大きくなると脱落が多い。Bでは差はなかった。(表3)
両グループとも涙点の上下では脱落率の相違はなかった。
A:プラグ維持した人の年齢 66.0±16.6歳、脱落した人の年齢 58.2±22.3歳
B:プラグ維持した人の年齢 53.1±14.8歳、脱落した人の年齢 62.8±11.1歳
年齢とプラグの脱落に関して、Bでは維持した患者より脱落した患者の年齢が際立って高かった。(P<0.05)
プラグ脱落後、再挿入時の涙点のサイズ 0.59±1.3mm→0.73±1.2mmときわだって拡大していた。
Super flex plugに比べ、Punctal Plug Fのほうが維持率がよかった。
短い維持期間の原因は自然脱落で、自然脱落はPunctal Plug Fでは大きい涙点で多い。しかし、Super flex plugでは涙点の大きさは関係なかった。
Punctal Plug Fは涙点の大きさが0.8より大きいと自然脱落レートは63.2%、0.8より小さいと11.3%だった。
・この結果から、Punctal Plug Fは0.8より小さい涙点に使用するのが良いと思われる。Punctal Plug Fはサイズが1つなので、よりいろいろなサイズがあると、一層維持率が上がるかもしれない。
自然脱落率と年齢の関係は、年齢が高くなるほど脱落率は高くなった。
これは、瞼のたるみや眼周囲の構造の変化が関係していると考えられた。
適切なプラグを選ぶためには、涙点のサイズと年齢は重要な要因である。(CH)

2013
155巻

高度近視眼での白内障手術後のIOL-後嚢接着

American Journal of Ophthalmology 155巻 (3号) 2013

Capsular adhesino to intraocular lens in highly myopic eyes evaluated in vivo using ultralong-scan-depth optical coherence tomography.
Zhao Y et al(China)
Amer J Ophthalmol 155(3): 484-491, 2013
・Ultralong-scan depth OCTで眼内レンズと嚢との接着を調べた。
・20眼は眼軸長26mmを越える高度近視で、20眼は眼軸長>22mm, <24.5mmの正視である。
・測定は術4時間後、1,7,14,28日後である。
・OCTは垂直解像度が7.5μm、空中で7.3mmまでの深度が測定でき、測定幅は8mmである。
・IOLと後嚢との完全な接着は、高度近視:正視眼で、4時間後0眼(0%):3眼(15%) p=0.23、1日目0(0%):6(30%) p=0.02、7日目1(5%):15(75%) <0.001、28日目4(20%):16(80%) p<0.001であり、高度近視眼では有意に遅れていた。
・IOLと後嚢との接着は眼軸長と逆相関していた(r=-0.494 p<0.001)。
・28日後の後発白内障の発症率は、高度近視眼で5/20眼、正視眼で1/20眼であった。

2013
155巻

コンタクトレンズ装用による重篤な輪部幹細胞欠損:臨床的特徴

American Journal of Ophthalmology 155巻 (3号) 2013

Severe limbal stem cell deficiency from contact lens wear: patient clinical features
Clara C. Chan et al (University of Cincinnati, Ohio, USA)
Am J Ophthalmol 155(3): 544-549, 2013
・12名18眼(平均年齢42才)8名(67%)は女性。平均装用期間は14.1年。6名(50%)は両眼。全例S.CLを使用。視力は平均20/78まで低下していた。15眼(83%)が羞明、痛み又はその両者を自覚。全眼で保存療法は奏功せず、14眼(78%)で免疫抑制剤使用のもと輪部幹細胞移植を施行した。(生体組織片4眼、死体組織片10眼)移植後平均26.4ヶ月で、86%(12/14眼)で症状が消退し、視力は20/30以上と改善し、炎症も無く角膜上皮も回復した。
・角膜輪部幹細胞は角膜上皮の維持のために必要で、結膜上皮が角膜表層に侵入するのを防ぐ。欠損した場合の症状としては、継続する上皮欠損、角膜瘢痕、慢性炎症、視力障害、慢性的な疼痛、羞明、角膜移植の不成功など。
・CL装用により、重篤な輪部幹細胞欠損がおこりうる。女性、ソフトコンタクトレンズ、10時間以上の長時間装用が危険因子。保存療法では改善せず、若く健康な患者であれば、免疫抑制剤を使用のもと輪部幹細胞移植が可能である。(YM)

2013
155巻

Dual-Blade Deviceを用いたMIGS

American Journal of Ophthalmology 155巻 (3号) 2013

Preclinical Investigation of Ab Interno Trabeculectomy Using a Novel Dual-Blade Device
MY Kahook et al (USA, CO)
Am J Ophthalmol 155(3) :524-529, 2013
Trabectomeのablationの代わりにknifeをつけたもの
MVR vs Trabectome vs Dual-Blade deviceで組織障害と切開後の還流圧をチェック
MVR:     170.0±14.1°/               18.5±1.9mmHg →12.8±2.2mmHg
Trabectome:               117.5±12.6°  /  18.8±1.7mmHg →11.3±1.0mmHg
Dual-Blade:               157.5±26.3°  /  18.3±3.0mmHg →11.1±2.2mmHg(MM)

2013
155巻

POAGにおける側臥位と仰臥位での眼圧変動

American Journal of Ophthalmology 155巻 (2号) 2013

The effect of lateral decubitus position on intraocular pressure in patients with untreated open-angle glaucoma.
Lee JY et al(Korea)
Amer J Ophthalmol 155(2): 329-335, 2013
・22例44眼の新規に診断された開放隅角緑内障眼で、仰臥位から側臥位に体位変換を行った場合の眼圧変動について検討した。
・測定はTono-Pen XLを用いて、座位→仰臥位→右側臥位→仰臥位→左側臥位→仰臥位に体位変換を行った10分後の眼圧を測定した。
・ハンフリー視野のMD値で、左右眼をMDが悪い方の眼とMDが良い方の眼として検討した。
・仰臥位から右側臥位になった時、右眼の眼圧は19.1±2.6→21.0±2.7(p=0.019)、左仰臥位になった時、左眼の眼圧は18.6±2.9→20.6±3.1(p=0.002)であり、下になった方の眼の眼圧は上の眼の眼圧と比較して、右側臥位では+1.2 SE±0.5(p=0.023)、左側臥位では+1.6 SE±0.5(p=0.004)と有意差があった。
・仰臥位から側臥位になった時の眼圧上昇はMDが良い眼(1.5±2.1)と比較してMDの悪い眼では、2.3±2.2mmHgと高い傾向があった(p=0.065)。(TY)

2013
155巻

硝子体-黄斑牽引症候群に対するC3F8硝子体注入による治療

American Journal of Ophthalmology 155巻 (2号) 2013

Intravitreal Injection of Expansile Perfluoropropane (C3F8) for the Treatment of Vitreomacular Traction
Rodrigues IA, Jackson TL, et al.(UK)
Am J Ophthalmol 155 (2):270–276, 2013
・硝子体-黄斑牽引(VMT)に対してC3F8の硝子体注入のみでの治療の効果を調査
・VMTが3か月以上持続した14例15眼、100%のC3F8を0.3mL硝子体注入、体位制限なし、398.7±174.4日追跡
・1か月後に6眼(40%)でVMTが解除、さらに3眼(20%)が6か月以内にVMT解除。4眼(27%)で解除されず硝子体手術を施行、残り2眼(13%)は手術を希望されず
・中心窩の形状は7眼(47%)で維持
・最終視力は0.03 logMAR unit 改善(p=0.536)、最大中心窩厚(MFT)は1か月後から有意に減少(p=0.041)【Tab.2】
・1か月後に解除される症例は、VMTの範囲が狭い(p=0.536)、硝子体界面の反射が低い、MFTが500μm未満、であった
【結論】持続する症候性VMTに対して、C3F8の硝子体注入は硝子体手術の代わりに侵襲が少ない治療として提案できる。SD-OCTにてVMTの範囲が狭い症例、硝子体界面の反射が狭い症例に限って効果があるようだが、更なる調査を要する。(MK)

2013
155巻

ポリープ状脈絡膜血管症に対する低照射エネルギー光線力学療法の2年の成績

American Journal of Ophthalmology 155巻 (1号) 2013

Two-Year Results of Reduced-Fluence Photodynamic Therapy for Polypoidal Choroidal Vasculopathy
Ayana Yamashita, at al (香川大)
Am J Ophthalmol 155(1): 96-102, 2013
・PCVに対するRF-PDTの有効性の長さを調査した。
・2007.7.1.~2009.6.30.の間に集められた、無治療のPCV患者38人38眼(男性34人、女性4人)、
平均年齢71.0歳(47~83歳)。
眼底検査とICGAで PCVと判定された。
すべての患者はRF-PDT前、RF-PDT後3ヶ月毎に経過観察をした。
RF-PDT終了は、FAで完全にleakが止まり、OCTで滲出性変化がなくなった時とした。
・視力RF-PDT前 0.43±0.28 、RF-PDT後3ヶ月0.32±0.32、6ヶ月0.30±0.31、12ヶ月0.28±0.32、
24ヶ月0.29±0.34
有意な変化は無かった。
さらに、RF-PDT前視力が20/40より良かった13眼はRF-PDT前0.18±0.07からRF-PDT後12ヶ月視力0.05±0.20に改善し、24ヶ月後まで維持した。
平均治療回数1.9回(1~4回)、38眼中19眼(50%)が24か月で1回だった。
RF-PDT後5眼(13%)でRF-PDT後3ヶ月以内で網膜下出血を認めたが、ひどいものではなかった。6ヶ月以内には完全に吸収し、3段階以上の視力低下はなかった。
全例でOCT でRF-PDTで治療した範囲のRPEに変化はなかった。
全身的な副作用はなかった。
・治療回数は抗VEGF治療に比べ、とても少なかった。
さらに、PCVに対するRF-PDTと抗VEGF治療の併用療法についての追加研究が必要である。(CH)

2012
154巻

角膜新生血管に対するbevacizumab点眼治療

American Journal of Ophthalmology 154巻 (6号) 2012

Short-term topical bevacizumab in the treatment of stable corneal neovascularization.
Cheng SF et al(MA USA)
Amer J Ophthalmol 154(6): 940-948, 2012
・安定した角膜新生血管に対するbevacizumab点眼の効果を20例20眼で検討した。
・1.0%bevacizumab点眼を1日2回(n=5)、4回(n=15)、3週間点眼し、24週間経過観察した。
・点眼中は涙点プラグを挿入しておいた。
・新生血管の改善は6週間でみられ(p=0.007)、血管径の縮小が12週目でみられた(p=0.006)。
・24週目では新生血管面積は47.5%減少(p<0.001)、血管径は36.2%減少(p=0.003)、血管侵入面積は20%減少(P=0.06)した。
・副作用はみられなかった

2012
154巻

症状の固定している角膜新生血管に対するベバシズマブ点眼治療

American Journal of Ophthalmology 154巻 (6号) 2012

Short-Term Topical Bevacizumab in the Treatment of Stable Corneal Neovascularization
CHENG SF et al (USA)
Am J Ophthalmol  154:940-948,2012
・ベバシズマブ点眼で治療された症状の固定しているCNVの20例に関する臨床試験の結果を報告する。さらに、治療に対する反応と病因との相互関係を調査した。
・20人20眼(平均年齢52.5±3.3歳、男性12人、女性8人)
ヘルペス性角膜炎8人、角膜移植後5人、角膜stem cell 欠損4人、ドライアイ1人、翼状片1人、角膜外傷1人
・0.1%ベバシズマブ点眼1日2回(n=5)または4回(n=15)点眼を3週間続けた。
・CNVの3つの測定基準が調査された。(1) 新生血管領域 (2)血管径 (3)侵襲エリア
・18人(90%)が24週間の経過観察期間を完了した。2人(10%)が6週で脱落。
・治療前と比較して、新生血管エリア患者が6週後に(P= 0.007)、血管径は12週後に(P=0.006)の統計学的に有意な改良を示した。
・最終診察時、新生血管領域47.5%、血管径36.2%、侵襲エリア20%減少した。疾患との関連はなかった。視力、角膜中央の厚さに変化はなかった。
副作用は認められなかった。
・短期のベバシズマブ点眼治療が症状の固定したCNVの程度を減らすことができることを示唆する。さらに、治療効果は治療中止の後に持続した。(CH)

2012
154巻

強膜バックル後の黄斑下脈絡膜厚

American Journal of Ophthalmology 154巻 (5号) 2012

Subfoveal choroidal thickness change following segmental scleral buckling for rhegmatogenous retinal detachment.
Kimura M et al(金沢大)
Amer J Ophthalmol 154(5): 893-900, 2012             
・網膜剥離に対して局所バックルを行った20例21眼について、術前、術後1週間、1,3ヶ月後の中心窩下脈絡膜厚を測定し、他眼と比較した。
・中心窩から4mm部の両眼の脈絡膜厚についても、術前、術後1週間目を両眼で調査した。
・術前の中心窩下の脈絡膜厚は239.2±91μmで、術後1W=267.6±96.8(p<0.01)、術後1M=250.6±95.8(p<0.045)までは術前より有意に厚く、術後1M=239.4±95.6(p>0.99)であったが、健眼との比較では、術前(221.7±81.8)も、術後1W(224.6±81.6 p=0.45)も有意差はなかった。
・術後の一過性の脈絡膜厚の肥厚は脈絡膜のsubclinicalな微小循環の障害であろうと考えた。

2012
154巻

LASIK後の近視戻りに対するチモロールの効果

American Journal of Ophthalmology 154巻 (5号) 2012

Effect of Timolol on Refractive Outcomes in Eyes With Myopic Regression After Laser In Situ Keratomileusis: A Prospective Randomized Clinical Trial
Shojaei A, Eslani M, et al.(Iran)
Am J Ophthalmol 154(5):790–798, 2012
・LASIK後に近視側に後戻りした124眼を前向き無作為に2群に割付け(最終解析各45眼);【グループ1】0.5%チモロールを1日2回・6か月間点眼、【グループ2】人工涙液を1日2回・6か月間点眼
・等価球面度数の変化(ベースライン → 治療開始6か月後 → 点眼中止6ヵ月後);【グループ1】-1.48±0.99D → -0.88±0.91D → -0.86±0.93D、【グループ2】-1.57±0.67D → -1.83±0.76D → -1.91±0.70D(P<0.001)【Tab.3】
・点眼開始6か月後および点眼終了6か月後において、グループ1の等価球面度数はグループ2のそれと比べて有意に良好であった(P<0.001)
・グループ1ではLASIK後4か月経つごとに等価球面度数の改善度が0.26D減少した
【結論】 チモロール点眼はコントロールに比べてLASIK後の近視側戻りに対して有効である。この効果は治療中断後最低でも6か月は持続する。(MK)

2012
154巻

Ranibizumabの眼内動態

American Journal of Ophthalmology 154巻 (4号) 2012

Intraocular pharmacokinetics of ranibizumab following a single intravitreal injection in humans.
Krohne TU et al(Germany)
Amer J Ophthalmol 154(4): 682-686, 2012
・ヒトでranibizumabを1回硝子体内注入した後の硝子体内動態を調査した。
・18例18眼の非硝子体術眼(61-85歳)で、白内障が強く、AMDあるいはDMEやRVOよる黄斑浮腫がある者を対象として、0.5mg ranibizumabを硝子体内注射した。
・注射1-37日後に白内障手術を行い、前房水を採取し、ranibizumab濃度を測定した。
・注射1日後の濃度は36.9-66.1μg/mLで、その後、指数関数的に減少していた。
・非直線回帰分析で、初期濃度は56.1μg/mLで、半減期は7.19日であった。bevacizumabの半減期は9.82日であり、これよりはやや短かった。

2012
154巻

近視性牽引性黄斑剥離に対する手術方法の検討

American Journal of Ophthalmology 154巻 (4号) 2012

Fovea-sparing internal limiting membrane peeling for myopic traction maculopathy.
Shimada N et al(東京医科歯科大)
Amer J Ophthalmol 154(4): 693-701, 2012
・近視性牽引性黄斑剥離の治療に対して、中心窩を除外したILM剥離の方法を紹介する。
・45例45眼を完全に黄斑部ILM剥離を行った30眼と、中心窩を除外して行った15眼に分けて検討した。
・ILM剥離中に剥離が中心窩に近づいたら、別の場所から再度剥離を開始し、最後は硝子体カッターでトリミングした。
・中心窩全例、ガス注入を行い、術後6ヶ月以上の経過観察を行った。
・全層黄斑円孔の発生は全剥離の5/30(16.7%)、除外剥離では発生はなかった。
・除外剥離群では術後OCTで中心窩の残存ILMの収縮と外層部の層状円孔の縮小がみられた。
・術後視力は術前と比較して、除外剥離群では有意に上昇したが(p=0.04)、全剥離群では有意な上昇はなかった。
・この方法は近視性牽引性黄斑症に由来した黄斑剥離の治療として、視力的にも解剖学的にも良好で、全層黄斑円孔になる可能性を減らせると考えた。

2012
154巻

AMDに対するルテイン、ゼアキサンチンの効果

American Journal of Ophthalmology 154巻 (4号) 2012

Improvement of retinal function in early age-related macular degeneration after lutein and zeaxanthin supplementation: A randomized, double-masked, placebo-controlled trial.
Ma L et al(China)
Amer J Ophthalmol 154(4): 625-634, 2012
・初期のAMDに対し、多局所ERG(MfERG)を用いてルテイン[L]、ゼアキサンチン[Z]の効果について検討した。
・108名の初期AMD患者を10mg/d[L]:n=27、20mg/d[L]:n=27、10mg/d[L]+10mg/d[Z]:n=27、プラセボー:n=27の4群に分け、48週間内服した。
・36名の年齢をマッチさせた正常者を基礎データとした。
・MfERG反応と黄斑色素濃度(MPOS)をbaseline、24,48週で測定した。
・初期AMD者では正常者と比較して、MfERGではring-1~3ではN1P1反応が減弱していたが(p<0.05)、ring-4~6ではN1P1反応もP1潜時も有意差はなかった。
・48週内服後では、20mg[L]群と[L]+[Z]群でring-1のN1P1反応は有意に増加し、20mg[L]群でring-2のN1P1反応が有意に増加していた。
・ほぼ全ての治療群で、MPODの増加は、ring-1,2のN1P1反応の増加に相関していたが、ring-3~6のN1P1反応や全てのringでのP1潜時には有意な変化はみられなかった。
・N1P1反応の増加とMPODの増加との相関は、ring-1では、10mg[L]:r=0.54,p=0.05、20mg[L]:r=0.51, p=0.008、[L]+[Z]:r=0.56 p=0.03、ring-2では、10mg[L]:r=0.30,p=0.13、20mg[L]:r=0.51, p=0.008、[L]+[Z]:r=0.53 p=0.06。
・初期のAMD患者の初期の機能変化は、ルテインやゼアキサンチン内服で回復することが可能で、この回復は黄斑色素濃度の上昇に起因しているだろう。

2012
154巻

顔面への美容的な詰め物注射によって引き起こされた医原性網膜動脈閉塞

American Journal of Ophthalmology 154巻 (4号) 2012

Iatrogenic Retinal Artery Occlusion Caused by Cosmetic Facial Filler Injections
Park SW, Woo SJ, et al.(Korea)
Am J Ophthalmol 154(10):653–662, 2012
・2003年1月~2012年1月、顔面への美容的な詰め物注射の後に発症した網膜動脈閉塞12例、全ての症例で注射直後に急激な視力低下を自覚・
・眼動脈閉塞(7例)、網膜中心動脈閉塞(2例)、網膜動脈分枝閉塞(3例)
・詰め物:脂肪の自家移植(7例)、ヒアルロン酸(4例)、コラーゲン(1例)。自家脂肪が最も視力予後不良
・注射部位:眉間(7例)、鼻唇溝(4例)、両方(1例)
・眼動脈閉塞:すべての症例で眼痛を自覚、すべて光覚喪失、SD-OCT(enhance depth image)にて脈絡膜の菲薄化【Fig.2】
・眼動脈閉塞およびCRAOの1例ずつで脳梗塞を合併、眼動脈閉塞の1例で眼球癆に
【結論】顔面への美容的な詰め物注射にて網膜動脈の閉塞が起こりうる。眼痛とSD-OCTによる脈絡膜血管の狭細化は(悲惨な視機能障害につながる)医原性の眼動脈閉塞の良い指標となる。眉間と鼻唇溝はハイリスクの場所であり、医原性網膜動脈閉塞や関連する眼徴候のみならず脳梗塞や眼球癆などの重篤な合併症を引き起こす。したがってこれらの治療を受ける患者にはこのような危険性の情報を伝える必要があり、注射も注意深く行う必要がある。さらにはこれらの治療を受けた患者が眼痛を訴えた場合は、眼科的検査と全身的なMRI検査を行うことが必要である。(MK)

2012
154巻

円錐角膜に対する角膜クロスリンキング

American Journal of Ophthalmology 154巻 (3号) 2012

Corneal collagen cross-linking (Editorials)
Stulting RD(GA USA)
Amer J Ophthalmol 154(3): 423-424, 2012
・円錐角膜は多因子で、遺伝性、眼を擦ったなどの環境因子もある。
・20代から40代にかけて発現、進展し、老年期には進行しなくなる。これは、加齢による角膜の硬化が影響していると考えられている。
・2003年にWollensakらが進行した23眼の円錐角膜に対してriboflavin-ultraviolet A(UVA) corneal collagen cross-linking(CXL)を始めて発表した。
・合併症は稀だが、角膜感染、角膜浸潤、角膜瘢痕、角膜上皮障害、角膜内皮障害による角膜浮腫等がある。
・UVA照射やriboflavin暴露による角膜上皮幹細胞障害も角膜障害を引き起こす可能性がある。
・一般的にCXLによる視力障害の発生は稀で、1-3%位であるが、角膜厚が400μm以上の人に限定し、術後の感染予防に抗生剤を使用し、術後密に経過観察すれば、もっと、視力障害例を少なくできるだろう。
・18歳未満の小児に対する適応も考えるべきだろう(AJO 154:520-526,2012)。
・CXLは角膜の保持する水分を減らすことができるので、角膜内皮障害に対する角膜移植も減らせる可能性もあり、LASIK後の角膜突出も治療できると考えられ、現在、アメリカで行われている角膜移植の50%は避けることができる可能性もある。

2012
154巻

国内の緑内障患者の中でのうつ病の流行と予測

American Journal of Ophthalmology 154巻 (3号) 2012

Prevalence and Predictors of Depression Among Participants With Glaucoma in a Nationally Representative Population Sample
SOPHIA Y. Wang et al (California ,SanFrancisco)
Am J Ophthalmol 2012 ;154 :436-444
・緑内障患者の中でのうつ病の流行と危険因子、うつ病に対する緑内障の意味を予測する。
・40才以上の6,760名。視力、眼底写真、視野で視機能を計測し、うつ病の有無は面談で決定。緑内障のあるうつ病は10.9%、無しでのうつ病は6.9%。人口統計学に則して、緑内障の存在は、明らかにうつ病の要因となっていた。
・自己回答では見づらさとうつ病は関係があったが、実際測定する視力、垂直断のCD比、視野欠損は、うつ病と無関係であった。緑内障患者の中で、視機能と緑内障の重症度はうつ病の予測にはならないが、一方、見づらいという自覚がうつ病につながる。ゆえに、患者自身の主体的な病気の捉え方こそが客観的な緑内障の重症度の測定よりもうつ病につながると結論づけられる。(YM)

2012
154巻

緑内障での視野のステージ分類システムと日常生活の活動性

American Journal of Ophthalmology 154巻 (3号) 2012

Visual Field Staging Systems in Glaucoma and the Activities of Daily Living
KAUSHAL M. KULKARN et al (Philadelphia ,Pennsylvania)
Am J Ophthalmol 2012 ;154 :445-451
・緑内障での視野の欠損を8つの臨床に関連する方法で分類し、日常生活の活動性と、患者自身の測る日常生活の質と比較する。
・様々なタイプの緑内障患者192名を標準の単眼・両眼視野検査で評価。行動に伴う視機能と主観的な生活の質も評価した。
・これまで片眼視野が緑内障の発見と経過観察に用いられてきたが、見るということとQOLにょり関与しているのは、良い方の目である。良い方の目で測定したハンフリー視野計Ⅱのmean defectが有用であると思われる。パターン標準偏差は、視機能の評価にはあまり価値がない。(YM)

2012
154巻

自律神経機能不全と末梢の微少循環の異常を伴うNTG患者の視野の特性

American Journal of Ophthalmology 154巻 (3号) 2012

Visual Field Characteristics in Normal-Tension Glaucoma Patients With Autonomic Dysfunction and Abnormal Peripheral Microcirculation
HAE-YOUNG LOPILLY PARK et al (Seoul ,Korea)
Am J Ophthalmol 2012 ;154 :466-475
・60人60眼のNTG患者(視神経乳頭の異常、緑内障性視野変化、開放隅角、眼圧は21㎜Hg以下、2年以上通院中)に眼科的検査を行ない、その後リウマチ部門にて心拍数の変化と爪の毛細血管撮影で末梢の微少循環を調べた。
・自律神経機能不全又は異常な末梢微少循環があると、中心10度、特に上方の中心10度に近い深い視野欠損に至る。
・黄斑中心繊維には酸素が多く必要で、虚血の際に黄斑ガングリオンセルと中心繊維の選択的欠損がおこり、最初にダメージを受ける。
・仮説として、自律神経機能不全と異常末梢微少循環を有するNTG患者には視神経乳頭の虚血をもたらすのではないか。ゆえに中心10度の欠損は、乳頭出血と血管の危険因子(高血圧、偏頭痛、レイノー現象、睡眠時無呼吸)を伴う可能性がある。(YM)

2012
154巻

眼球に化学熱傷を受けた患者の緑内障

American Journal of Ophthalmology 154巻 (3号) 2012

Glaucoma in Patients With Ocular Chemical Burns
MICHELLE P. LIN et al (Seattle ,Washington)
Am J Ophthalmol 2012 ;154 :481-485
・ワシントン大学眼科での18名29眼。
・化学熱傷で角膜が不透明になり精査困難なため、眼圧21㎜Hg以上を緑内障とした。
・化学熱傷は、Roper-Hall分類を使用。
              グレードⅠ:輪部虚血の無い、角膜上皮の損傷
                  Ⅱ:虹彩の詳細は透見できる角膜混濁で、輪部1/3以下の虚血
                  Ⅲ:全上皮の欠損。虹彩は透見できない。1/3~1/2の輪部虚血
                  Ⅳ:角膜混濁が強い。虹彩も瞳孔も透見できない。1/2周以上の輪部虚血
・男性(83%)、白人(83%)、アルカリ外傷(83%)平均pH9.38。アルカリの中で68%は視力0.1以下。R-H分類でⅠ(17.2%)、Ⅱ(13.8%)、Ⅲ(31.0%)、Ⅳ(37.9%)。1眼は眼球破裂のため10日後に摘出。
・眼表面に化学薬品を受けると、初期の直接的なケガというのは、繊維柱帯と流出路の組織の収縮と破壊をおこす。その後、慢性的な炎症により、癒着と隅角の閉塞に移行する。それ以外、長期ステロイド投与を続ければ遅れて眼圧の上昇につながる。
・眼球化学熱傷でRoper-Hall分類ⅢかⅣの眼は、眼圧が上昇しやすく(35.9vs16.4㎜Hg; P=.001)、長期の緑内障薬の投与(P=.003)と手術(P=.016)が必要となりうる。最終的な視力は、一般的に眼圧コントロールが良好となっても、角膜混濁のため、不良となりやすい。(YM)

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