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Ophthalmology

2012
119巻

正常眼圧緑内障におけるくも膜下腔の大きさ

Ophthalmology 119巻 (10号) 2012

Orbital cerebrospinal fluid space in glaucoma: The Beijing intracranial and intraocular pressure (iCOP) Study.
Wang N et al(China)
Ophthalmology 119(10): 2065-2073, 2012
・脳脊髄圧(CSF-P)が低いことは緑内障の病態に関与していると考えられている。
・眼窩内のCSF-Pを測定する代わりに視神経のくも膜下腔の幅(ONSASW)を眼圧の低いNTG(IOP≦21)21名、眼圧の高いPOAG(IOP>21)18例、正常者21例で測定した。
・脂肪抑制T2強調MRI画像で、眼球後方3,9,15mmの部位でONSASWを測定した。
・この全ての場所で、ONSASWは、NTGではPOAGや正常者と優位差がみられた(p<0.001, p<0.001, P=0.003)。
・3箇所の平均値では、ONSASWはNTG:0.61±0.10mmで、正常者:0.72±0.08、POAG:0.75±0.13であり、視神経鞘直径はNTG:3.94±0.42、正常者:4.38±0.22、POAG:4.13±0.48、視神経直径はNTG:2.71±0.29、正常者:2.94±0.20、POAG:2.63±0.31であった。
・NTGでの眼窩視神経くも膜下腔が狭いことから、NTGでは眼窩内のCSF-Pが低いことが示唆された。

2012
119巻

白内障術後野PVD発生

Ophthalmology 119巻 (10号) 2012

Time course of development of posterior vitreous detachments after phacoemulsification surgery.
Hikichi T(札幌市)
Ophthalmology 119(10): 2102-2107, 2012
・合併症のないPEA+foldable IOL挿入手術後のPVDの発生率を術前にPVDのない575眼で3年間調査した。
・PVD累積発生率は1.0%(1W)、3.1%(1M)、5.4%(3M)、7.8%(6M)、11.0%(12M)、15.3%(18M)、18.4%(24M)、23.1%(30M)、30.0%(36M)であった。
・PVDが発生したうちの11/172(6.4%)が網膜裂孔を発症、格子様変性のあった52眼中8眼(15.4%)では、なかった120眼中3眼(2.5%)の約6.2倍で、PVDに伴った網膜裂孔が発生した(P=0.003)。
・白内障手術後にPVDの発症は加速されるので注意が必要。

2012
119巻

黄斑円孔術後の黄斑部の非対称性の網膜拡張

Ophthalmology 119巻 (10号) 2012

Asymmetric elongation of foveal tissure after macular hole surgery and its impact on metamorphopsia.
Kim JH et al(Korea)
Ophthalmology 119(10): 2133-2140, 2012
・直径400μm以下の黄斑円孔MHの手術を受けた31例31眼について、傍中心窩の外網状層間の距離の変化を水平と垂直断で、6ヶ月間調査し、非対称性の拡張と視力や変視症スコア(M-score)と比較した。
・水平方向距離は361.6±99.6μm(術直後)、558.8±93.3(2M)、575.4±94.8(6M)であり、水平法光距離は324.2±93.8μm(術直後)、481.2±104.6(2M)、494.6±85.0(6M)であり、いずれも有意に増加しており(p<0.001)、水平方向が有意に長かった(p<0.001)。
・水平断では鼻側が90.3%で長くなっており、垂直断では61.3%で上方に長くなっていた。
・この非対称性の延長は6ヶ月後のM-score地と有意に相関していた(p=0.044)。

2012
119巻

パーキンソン病での網膜神経線維層萎縮の検出

Ophthalmology 119巻 (10号) 2012

Ability and reproducibility of Fourier-Domain optical coheernce tomography to detect retinal nerve fiber layer atrophy in Parkinson’s disease.
Garcia-Martin E et al(Spain)
Ophthalmology 119(10): 2161-2167, 2012
・Parkinson病者(PD)75名と正常者75名とで、網膜厚や網膜神経線維層RNFL厚をCirrusとSpectralisの2種類のOCTで測定した。
・Cirrusでの乳頭周囲RNFL測定、Spectralisでの乳頭周囲RNFL測定、Spectralisでの新しいNsite Axonal Analyticsの3種類の測定を行った所、全てでPDのRNFL萎縮が検出されたが(p=0.025, p=0.042, p<0.001)、Nsite測定がsubclinicalな障害までも検出するのには一番感度が高かった。

2012
119巻

甲状腺眼窩症を有する患者における圧縮性視神経症のCTでの徴候

Ophthalmology 119巻 (10号) 2012

Quantitative computed tomographic predictors of compressive optic neuropathy in patients with thyroid orbitopathy
Ezekiel Weis et al (Alberta, Canada)
Ophthalmology 2012; 119: 2174-2178
・甲状腺機能異常による圧縮性視神経症(DON)において眼窩骨の幾何学と眼窩内容積との関係を評価する。
・甲状腺起因性眼窩症99人198眼全員に臨床検査と眼窩部CT、内容積の分析を実施。
・圧縮性視神経症が内直筋の体積(P=0.005)、外直筋の体積(P=0.011)、上方筋群の体積(P=0.04)、全直筋の体積(P=0.015)と関連があった。下直筋の体積(P=0.725)と眼窩容積(P=0.494)、骨の眼窩尖端部の角度(P=0.895)、眼球径、骨内壁の輪部(P=0.414)は関連無かった。内直筋の体積が唯一の独立した徴候と思われた(P=0.005)。
・内直筋の直径(P=0.003)、内直筋と外直筋の直径の組み合わせ(P=0.006)、全直筋の直径(P=0.016)が視神経症と関連があったが、外直筋(P=0.117)、上直筋(P=0.092)、下直筋(P=0.725)の直径は関係無かった。
・DONとは視神経自体の圧縮又は眼窩尖端部の軟組織の体積の増加による血流の圧縮、眼窩後方の圧の増加、又はまれに視神経の伸展が原因である。診断が困難で悪化してから発見されることもまれでない。臨床症状では、外眼筋の動きの極度の悪化、眼瞼下垂、神経周囲脂肪の消滅はDONが強く疑われる。今回、CT上AXIALスキャンで内直筋の体積と直径を測定することがDONの発見に重要であるとわかった。
・これは解剖学的に眼窩尖端部で視神経が眼窩内に入る時に内直筋のみと非常に接近することによると説明される。(YM)

2012
119巻

DSEK:緑内障眼における長期間の移植組織の残存と移植が成功しなかった事に対する危険因子

Ophthalmology 119巻 2012

Descemet’s stripping endothelial keratoplasty: Long-term graft survival and risk factors for failure in eyes with preexisting glaucoma
Arundhati Anshu et al (Indiana, USA)
Ophthalmology 2012; 119: 1982-1987
・DSEK453例のうち、緑内障は無い(C群)、緑内障があり薬物療法を行なっていた(G群)、以前に緑内障手術を受けた(GS群)と分類した。レーザーのみの治療はG群とした。
・移植片の残存率は、1,2,3,4,5年後で、
              C群(342例)――99%,99%,97%,97%,96%
              G群(65例)――100%,98%,98%,96%,90%
              GS群(46例)――96%,91%,84%,69%,48%
GS群のうち、トラベクレクトミーのみ(26例)では5年後59%
GS群のうち、ドレナージを使用した(20例)では5年後25%
・薬物療法のみの緑内障眼は、手術を行なった緑内障眼よりも5年後の移植片残存率は明らかに良好であった。DSEKにおいて緑内障が存在している症例での長期間の移植片残存率は、これまでの緑内障に受けていた治療方法と移植後の拒絶反応の発生に影響されるとわかった。
・チューブシャントによるドレナージ手術を行なった緑内障眼では、チューブの内皮への接触又は血液房水関門の途絶で起こる炎症産物の流入が内皮障害の原因となりうると推測する。(YM)

2012
119巻

小児のための新しい視力検査;The Handy Eye Chart

Ophthalmology 119巻 (10号) 2012

The Handy Eye Chart: A New Visual Acuity Test for Use in Children
Cromelin CH, Hutchinson AK,et al.(USA-GA)
Ophthalmology 119(10):2009–2013, 2012
・なじみのあるシンボル・文字を使ったハンドジェスチャーをもとにしたシンプルな視力検査“Handy Eye Chart”を考案
・Handy Eye Chart:『thumbs-up』『circle』『palm』『C』の四つのシンボルを使用、ETDRSチャートと同様に(対数線形関係に)配列【Fig.1】
・小児60名(6-16歳)にHandy Eye Chart:とETDRSチャートの両方で視力検査
・視力結果は強い線形関連(r=0.95)を示し、視力結果の差の平均は-0.03(95%信頼区間-0.05~-0.01)であった
・Handy Eye Chartの方が過小評価する傾向
【結論】今回の調査では新しい視力検査表が6-18歳の小児の20/16(logMAR -0.1)から20/200(logMAR 1.0)の視力測定にとって信用のある結果を示すことがわかった(MK)

2012
119巻

高度近視は糖尿病網膜症になりにくいか

Ophthalmology 119巻 (9号) 2012

Longer axial length is protective of diabetic retinopathy and macular edema.
Man RK et al(Australia)
 Ophthalmology 119(9): 1754-1759, 2012
・DRあるいはDMEを持っている人の球面等価屈折度SE、眼軸長ALを調べ、網膜症との関連を調べた。
・SEをオートレフで測定し、AL、角膜曲率半径CC、前房深度ACDをIOLMasterで測定した。
・DRはmodified Airlie House分類を用いて2枚の眼底写真で判定し、DMEは眼底写真とOCTで判定した。
・DRの重症度はDRなし(ETDRS level=10-15)、軽症非増殖性NPDR(level=20)、中等度NPDR(level=31-43)、重症NPDR(level=53-60+増殖性DR level=61-80)。DME重症度は軽度、中等度、重症とした。
・630眼中208眼(33.0%)がDRがあった。
・多変量解析では、眼軸が長いほど、軽症NPDRは少なく(OR=0.58 95%CI=0.41-0.83 眼軸長1mm増加との相関はp=0.006)、中等度NPDRも少なく(OR=0.73 95%CI=0.60-0.88, p=0.002)、重症DRも少なかった(OR=0.67 95%CI=0.53-0.85, p=0.001)。
・ただ、DMEに関しては、軽症DMEく(OR=0.75 95%CI=0.56-0.86, p<0.001)、中等度DMEも少なかったが(OR=0.72 95%CI=0.56-0.93, p=0.002)、重症DMEでは関連がなかった。
・SE,ACD,CCとDRとの間に関連は見られなかった

2012
119巻

角膜クロスリンキングでの角膜掻把法の検討

Ophthalmology 119巻 (9号) 2012

Combined transepithelial phototherapeutic keratectomy and corneal collagen cross-linking for progressive keratoconus.
Kymionis GD et al(Greece)
Ophthalmology 119(9): 1777-1784, 2012
・進行性の円錐角膜の治療としての角膜collagen cross-linking(CXL)を行う際、角膜上皮を剥離する方法として、17例19眼の経上皮治療的角膜上皮切除(t-PTK)を行った群と、18例19眼の回転ブラシを用いて機械的な角膜上皮剥離を行った群の、どちらの成績が良いか検討した。
・両群とも術中、術後の合併症はなかった。
・t-PTK群の非矯正遠方視力UDVAと矯正遠方視力CDVAのlogMARは、12ヶ月後に、それぞれ0.99<小数点0.10>±0.71→0.63<0.23>±0.42(p=0.02)、0.30<0.50>±0.26→0.19<0.65>±0.18(p=0.008)に上昇した。
・一方、ブラシ群ではUDVAもCDVAも12ヶ月後に有意な変化はなかった(p>0.05)。
・角膜乱視度は、t-PTK群では -5.84±3.80D→ -4.31±2.90(p=0.015)に上昇したが、ブラシ群では有意な改善はみられなかった(p>0.05)。
・角膜内皮密度は両群とも有意な変化はなかった(p>0.05)。

2012
119巻

高眼圧症での白内障手術後の眼圧下降

Ophthalmology 119巻 (9号) 2012

Reduction in intraocular pressure after cataract extraction: The ocular hypertension treatment study.
Mansberger SL et al(OR USA)
Ophthalmology 119(9): 1826-1831, 2012
・42例63眼の高眼圧症で白内障手術を行った例と、743例743眼の手術を行わなかったコントロール眼で、契機日split date前後の眼圧変動を調べた。
・対象とした高眼圧症は、40-80歳で、1眼眼圧が24-32、他眼眼圧が21-32mmHgで、眼圧点眼治療や手術を行った症例は除外した。
・眼圧はsplit date前の最低3回測定した平均とし、split date以降の眼圧は術日、6、12ヶ月目を含めた最低3回の平均とした。
・白内障群では術後眼圧は有意に低下(23.9±3.2→19.8±3.2 p<0.001)しており、少なくとも36ヶ月後も低下していた。
・術後の平均眼圧低下量は16.5%で、15.9%の症例で術後30%以上低下、23.8%の症例で術後20%以上低下していた。
・眼圧低下が大きかった症例では術前の眼圧が高かった。
・コントロール群ではsplit date前後の変化はなかった。

2012
119巻

眼軸が長い事は糖尿病性網膜症と糖尿病性黄斑浮腫を起こしにくくする

Ophthalmology 119巻 (9号) 2012

Longer Axial Length Is Protective of Diabetic Retinopathy and Macular Edema
Ryan Eyn Kidd Man et al (Victoria ,Australia)
Ophthalmology 2012 ;119 :1754-1759
・18才以上のDM患者に、眼軸、角膜曲率半径、前房深度をIOLマスターで測定。DMRは2象限の眼底写真をもとに分類し、DMEの存在は眼底写真とOCTを用いて判断した。
・367人630眼中306眼遠視、188眼正視、104眼軽度近視、32眼中~重度近視
              DMR 軽症24 中等度96 重症88例
              DME 軽症57 中等度36 重症55例
DMRは若い、男性、長期DM、HbA1C高値、短い眼軸、黄斑中心の厚みがより厚い者に多くみられた。
・前房深度は眼軸の一部であるが、それとDMRに関連はみられなかったことにより、DMR抑制に働くのは硝子体深度であると思われる。網膜の組織が薄ければ血流が低下し、DMRの危険にさらされづらくなる。網膜毛細血管圧の上昇が、毛細血管壁の進展をきたし、漏出(浮腫)や破たん(出血)といったDMRの原因となりうる。眼球が長くなれば血管が進展し、薄くなる。このため血流が低下し、血管壁への圧が減少し、DMR発症抑制に働くと推測されている。(YM)

2012
119巻

単純ヘルペス角膜炎における角膜上皮と細胞膜の変化:生体内での共焦点顕微鏡(IVCM)による調査

Ophthalmology 119巻 (9号) 2012

Cellular Changes of the Corneal Epithelium and Stroma in Herpes Simplex Keratitis :An In Vivo Confocal Microscopy Study
Pedram Hamrah et al (Harvard Medical School)
Ophthalmology 2012 ;119 :1791-1797
・単純ヘルペス角膜炎の患者を角膜神経支配も含め、生体内共焦点顕微鏡検査にて角膜上皮細胞と角膜細胞の形態学的特徴を分析する。
・31名の単純ヘルペス角膜炎患者の所見の無い片眼も含め、15名の正常眼と比較した。
・重症の感覚欠損の患者では1㎟あたり852個と、HSKでの表層上皮細胞の密度は、対照群の2,435個と比し、明らかに減少した(P=0.008)。上皮細胞の面積は、HSK眼ではその反対側又は対照群の407.4μ㎡と比し、835.3μ㎡と、2.5倍に拡大していた(P=0.003)。落屑し、高反射の角膜上皮細胞が、明らかにHSK眼の角膜上皮にみられたが、対照群にはみられなかった。基底上皮細胞などには両者で差がみられず、表層上皮細胞密度と形態的な特徴が、神経の長さ、数、角膜知覚に強く関連していた。
・感覚神経は角膜上皮の保存に重要な役割をはたす。生体内で神経ペプタイドは角膜細胞の増殖に影響する。一部又は完全な角膜知覚の欠損は角膜上皮の恒常性に障害をもたらし、原因はサブスタンスP、神経成長因子、グルカゴン様ペプタイドなどの神経ペプタイドの欠損である。神経の欠損は角膜上皮細胞の消滅に有害で、細胞分裂の減少をひきおこす。神経欠損後は炎症反応が原因で上皮の恒常性が欠如する結果となる。(YM)

2012
119巻

成人における斜視手術の結果を基準をもとに評価する

Ophthalmology 119巻 (9号) 2012

Comparing Outcome Criteria Perfomance in Adult Strabismus Surgery
Sarah R. Hatt et al (Minnesota, USA)
Ophthalmology 2012; 119: 1930-1936
・成人の斜視手術の第1の目的は、複視を減らしてHRQOL(健康に関する生活の質)を向上することである。その他の目的としては、両眼視の改善、両眼視野の拡大、頭位の改善、見かけ上の問題など。しかしこれまで評価の基準が無かった。
・171例の斜視手術を受けた成人159人(平均50才)に、術前と術後6週で「成人斜視20のQOL質問表」に返答。術前斜視の分類は、複視あり(117)、複視なし(38)、非典型的複視(病歴上複視があるがfusion能力がない、抑制の無い小児期斜視など)(16)。成功度の判定のため、術後の動き、複視、HRQOLの基準を定義し、これら単独と組み合わせで評価した。条件として①動きの基準は、カバーテストで10プリズム以下となること ②複視の基準は、無いか又はprimary distanceと読書時にごくたまに自覚する ③HRQOL基準は95点以上(全くない100、まれ75、ときどき50、しばしば25、いつも0点)。
              成功率は「動き」単独で成功(90%)、一部成功(8%)、失敗(2%)
                〃  「複視」単独で 〃 (74%)、  〃  (13%)、 〃 (14%)
                〃 「HRQOL」単独で 〃 (60%)、  〃  (26%)、 〃 (15%)
基準の組み合わせで最も高かったのは、動きと複視(67%)、低かったのは動き、複視、QOLの組み合わせで(50%)
・成人の斜視手術の結果を評価すると、動き単独での成功率が最も高かったが、動きだけでは術後の評価として不十分である。複視も加えて評価することが臨床的に標準的である。HRQOLを加えると成功率が下がるのは、6週経過しても患者自身に不快や赤みが残ることによるが、斜視の患者自身にうつやネガティブ思考もあると思われた。(YM)

2012
119巻

未熟児網膜症の病歴を有する患者における視力、眼球構成要素、黄斑部異常

Ophthalmology 119巻 (9号) 2012

Visual Acuity, Optical Components, and Macular Abnormalities in Patients with a History of Retinopathy of Prematurity
Wei-Chi wu et al
Ophthalmology 2012; 119: 1907-1916
・ROPの病歴を持つ子供に眼球構成要素とSD-OCT検査をし、視力との関係をみる。
・6才から14才の133名を4グループにわける。全患者で後極は正常と思われた。
              グループ1 LKかクライオで治療の既往あり
              グループ2 何も治療せずにROPが減退した
              グループ3 未熟児に生まれても網膜症なし
              グループ4 満期で分娩
・ROP治療した患者は他と比し、明らかに角膜曲率が強く、前房が浅く、水晶体が厚く、黄斑部が厚い。しかし、硝子体深度と眼軸は正常であった。SD-OCTで網膜内層の停滞を認めた。周辺に治療したROP患者が視力が悪いことは、明らかに在胎週数に関係していたが、黄斑部の厚さや眼球構造には無関係だった。これらの結果が示すのは、これらの患者でみられる視力不良は、完全に異常な中心窩の発達によるわけではなく、未熟が原因の異常な視神経の機能や、大脳皮質視覚野の不規則性もまた視機能の発達に関与しているかもしれない、ということであった。(YM)

2012
119巻

白内障手術後の眼内圧の減少:高眼圧治療の研究

Ophthalmology 119巻 (9号) 2012

Reduction in Intraocular Pressure after Cataract Extraction: The Ocular Hypertension Treatment Study
Steven L. Mansberger et al (Oregon, USA)
Ophthalmology 2012; 119: 1826-1831
・高眼圧治療中で少なくとも片眼白内障手術を受けた42名(63眼)と、受けていない743名(743眼)を比較
・白内障群は術前(23.9±3.2㎜Hg)と術後(19.8±3.2㎜Hg)と明らかに減少し(P<0.001)、少なくとも36ヶ月間は続いた。術前から術後へは平均16.5%の減少となった。対照群では白内障群手術日より前で23.8±3.6㎜Hg、後で23.4±3.9㎜Hg。
・白内障手術は、高眼圧の患者の眼圧を長期減少させる。仮説として①前房の形態が眼圧に影響する。浅前房では開放隅角よりも術後眼圧が下降する ②IOL移植する白内障手術では、機械的な緊張で線維柱帯が広がり、房水流出抵抗が低下する。(YM)

2012
119巻

網膜上膜の動きを定量化する

Ophthalmology 119巻 (9号) 2012

Quantification of Retinal Tangential Movement in Epiretinal Membranes
Mads Kofod et al (Copenhagen, Denmark)
Ophthalmology 2012; 119: 1886-1891
・ERMのある眼で網膜血管の動きを定量化する技術を述べる。また、網膜血管の動きを、矯正視力、中心黄斑部の厚さ(CMT)、患者の主観的な特徴と関連づける。
・113名206眼、ERMのある142眼と異常の無い他眼64眼。全員ハイデルベルグOCTを2回以上施行。黄斑部を9分割し、網膜血管の動きを計算した。9つのベクトルの長さを計算して、網膜の動き(RTM)とした。
・ERM眼ではRTMが正常眼より明らかに大きかった(P<0.001)。ERMの中でも症状の悪化する患者は不変の患者よりも明らかに大きかった。RTMが増加すれば視力は低下し(P=0.024)、CMTは増加した(P<0.001)。
・今回の研究で明らかなのは、ERMは静止せず動きがあること。たとえ視力とCMTが変わらなくても、網膜血管が動くといずれ視力は悪化し、CMTは増加し、自覚症状が悪化する。仮説として、これらの患者には網膜に継続して動きがあり、中心錐体がわずかに移動する。これが定着しづらく、ゆがみをひき起こすのであろう。(YM)

2012
119巻

上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤の全身投与による眼の有害事象

Ophthalmology 119巻 (9号) 2012

Ocular Adverse Events of Systemic Inhibitors of the Epidermal Growth Factor Receptor: Report of 5 Cases
Saint-Jean A, Molina-Prat N, et al.(Spain)
Ophthalmology 119:1798–1802, 2012
・上皮成長因子受容体(Epidermal growth factor receptor;EGFR)阻害剤の全身投与を受けていた患者5例10眼、眼の有害事象の報告
・4例は末期肺癌に対しerlotinib(タルセバ®、Tarceva®)投与、1例は末期大腸癌に対しpanitumumab(ベクチビックス®、Vectibix®)投与
・10眼すべてで多発性の角膜上皮欠損がみられ、2例3眼で角膜の融解と菲薄化がみられた。1例2眼で下眼瞼の外反がみられた。2例2眼で角膜穿孔を来たし全層角膜移植を要した。
【結論】EGFR阻害剤であるpanitumumabとerlotonibの投与と関連して、角膜穿孔を含む重篤な眼合併症がみられた。(MK)

2012
119巻

硝子体内薬液注入後の抗生剤点眼薬

Ophthalmology 119巻 (8号) 2012

Incidence of endophthalmitis and use of antibiotic prophylaxis after intravitreal injections.
Cheung CSY et al(Canada)
Ophthalmology 119(8): 1609-1614, 2012
・2005年から2010年にかけて、2465名に対して、15,895回の硝子体内注射(ranibizumab:9453、bevacizumab:5386、TA:935、pegaptanib:121)を行った。
・注射後の抗生剤の使用法は、Group(1)注射後5日間使用、G(2)注射後のみ使用、G(3)使用せずの3通りである。9眼で眼内炎が疑われ、3眼で培養陽性であった。
・グループ毎にみると、G(1)では5/8259眼、G(2)では2/2370眼、G(3)では2/5266眼であった。
・ただし、培養陽性の3例だけでみると、G(1)が1眼、G(2)が0眼、G(3)が2眼、培養陰性の6眼では、G(1)が4眼、G(2)が2眼、G(3)が0眼であり、抗生剤使用群で少なかった。
・注射薬剤では、TAの率が2/935眼で、ranibizumabが3/9453眼、bevacizumabが4/5386に比較して、多かった。
・結果だけからみると、抗生剤使用群で、非使用群より眼内炎の率は高く、使用する必要はないようにも思われる。

2012
119巻

炎症性眼疾患の患者の中で治療を必要としたコルチコステロイド起因性高血糖の危険

Ophthalmology 119巻 (8号) 2012

Risk of Corticosteroid-Induced Hyperglycemia Requiring Medical Therapy among Patients with Inflammatory Eye Diseases
Joshua D. Udoetuk et al (USA)
Ophthalmology 2012; 119: 1569-1574
・ステロイド内服治療を受けた非糖尿病患者2073人中25人(1.21%)は降血糖治療を開始し、ステロイド内服治療を受けない2666人中5人(0.19%)と比較した。
・眼炎症性疾患のために投与されたコルチコステロイド起因性の高血糖で、血糖降下治療をする危険は低いが、ステロイドを使用していない患者よりも危険性は4.4倍になる。高齢者とアフリカ系アメリカ人も危険因子である。眼炎症疾患にステロイド全身投与する医師は、この危険を把握すべきである。高危険度の患者には注意を要するが、低危険度ということより、定期的な検査までは必要ないかもしれない。(YM)

2012
119巻

翼状片の流行と人種間の相違(アジアの多民族での研究)

Ophthalmology 119巻 (8号) 2012

Prevalence of and Racial Differences in Pterygium :A Multiethnic Population Study in Asians
Marcus Ang et al (Singapore)
Ophthalmology 2012 ;119 :1509 -1515
・同じ気候・環境に暮らすシンガポールのマレー系、インド系、中華系の40才以上でアジアの多民族の翼状片の流行と危険因子を調べ、人種間の相違を検討する。
・翼状片の原因としては、加齢、男性、マレー系(P<0.001)、低教育(P<0.001)、喫煙、収縮期高血圧。重症度の原因としては、人種よりも、屋外労働(P=0.02)であり、飲酒、DM、高脂血症、眼外傷などはあまり関係なかった。(YM)

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