Macular pigment changes in pseudophakic eyes quantified with Resonance Raman Spectroscopy.
Obana et al(聖隷浜松)
Ophthalmology 118(9): 1852-8, 2011
・日本人259例259眼で、clear IOLを使用した121眼と、黄着色IOLを使用した138眼とで、黄斑色素光学濃度MPODに違いがあるかどうかを検討した。
・全例視力は0.8以上、眼底疾患のない眼である。
・MPODは術1日目、1,3,6ヶ月目、1,2年目に測定した。
・6ヶ月目までは両群間に差はなかったが、1年目からは着色IOL群では有意にMPOD値が高くなった。
・多変量解析を行うと、MPODが低いことは、術1日目の値、高齢、糖尿病に関連していたが、術1年目以降では、MPODの低さはclear IOLを使用したことと関連しており、clear IOLの使用は長期経過ではMPOD濃度を下げる事が分かった。
・これは青色光への暴露がMPOD濃度を下げるという所見に合致する。
Central and hemicentral retinal vein occlusion. Role of anti-platelet aggregation agents and anticoagulants.
Hayreh SS et al(IA USA)
Ophthalmology 118(8): 1603-11, 2011
・CRVO(567例585眼:非虚血性481眼、虚血性86眼)、非虚血性hemi-CRVO(119例122眼)の、連続する合計686名を調査し、視力、ゴールドマン視野、出血の程度を調べた。
・この3種のCRVOいずれにおいても、初診時にアスピリンを内服していた者では非内服者よりも網膜出血の程度が強かった(p<0.001)。
・最初の視力、視野はアスピリン内服者では、非虚血性CRVO、hemi-CRVOでは有意に悪かったが、虚血性CRVOでは差がなかった。
・視力が20/60以上の非虚血性CRVOでは、アスピリンの使用と視力低下とは有意な関連があった。
・年齢、糖尿病、虚血性心疾患、高血圧などを補正しても、視力低下のオッズ比はアスピリン使用者では非使用者に比較して2.24倍(95%CI=1.14-4.41 p=0.02)であった。
・視力が20/70以下の非虚血性CRVOでは、黄斑浮腫が引いた後の視力改善はアスピリン使用者で非使用者より悪かった(OR=0.18 95%CI=0.04-0.72 p=0.016)。
・これらの事から、CRVOやhemi-CRVOでは、アスピリン、他の抗血小板剤、抗凝固剤を使用していると、視力低下が強いことが分かった。
Choroidal thickness measured by spectral domain optical coherence tomography. Factors affecting thickness in glaucoma patients.
Maul EA et al(MD USA)
Ophthalmology 118(8): 1571-9, 2011
・緑内障あるいは緑内障疑い(両眼とも視野正常)74名でOCTを用いて、脈絡膜厚を測定した。
・脈絡膜と強膜との境界は、黄斑部では86%で、乳頭周囲では96%で検出できた。
・黄斑部の脈絡膜は、眼軸が長いほど薄く(-22μm/mm 95%CI=-33~-11)、年齢が高いほど薄く(-31μm/10歳 95%CI=-44~-17)、拡張期眼浸透圧が低いほど薄く(-26μm/10mmHg 95%CI=-8~-44)、中心角膜厚が厚いほど薄かった(-6μm/10μm厚 95%CI=-54~+26 p=0.5)。
・視神経乳頭周囲の脈絡膜厚には差は見られなかった。
・黄斑部脈絡膜厚は視野のMDや神経線維厚等から想定される緑内障の程度とは相関がなかった。
The relationship between components of metabolic syndrome and open-angle glaucoma.
Newman-Casey PA et al(MI USA)
Ophthalmology 118(7): 1318-26, 2011
・メタボリック症候群の要因(糖尿病DM、高血圧症HTN、高脂血症、肥満)と開放隅角緑内障とに関連があるかどうかを検討した。
・2,182,315名の中でOAGは55,090名(2.5%)であった。
・OAGの発症のしやすさは、DMを持っている人では、hazard ratio(HR)=1.35 (95%CI=1.21-1.50)、HTNの人では HR=1.17 (95%CI=1.13-1.22)、DM+HTNの人では HR=1.48 (95%CI=1.39-1.58)であった。
・反対に、高脂血症のひとでは、OAGのHRは低下しており、HR=0.95 (95%CI=0.91-0.98)であった。
・また、高脂血症が合併した場合は、OAGの発症し易さが、HTNでは HR=1.09 (95%CI=1.05-1.12)、DMでは HR=1.13 (94%CI=1.05-1.21)と低下していた。
Clinical evaluation and treatment accuracy in diabetic macular edema using navigated laser photocoagulator NAVILAS.
Kozak I et al(CA USA)
Ophthalmology 118(6): 1119-24, 2011
・新しく開発した網膜をナビゲートしながら光凝固治療を行う治療について検討した。
・532nmレーザー光を用いてた走査型眼底カメラシステム(NAVILAS:OD-OS GmbH, Teltow, Germany)で、蛍光眼底、カラー、無赤色、赤外像が得られる。
・61例86眼のDMR、DMEの結果について検討した。
・眼底写真とFA像から、治療部を決める。
・単発治療を行う毛細血管瘤と、グリッド治療を行う瀰漫性漏出部をきめると、NAVILASは、この部位を自動的に凝固するようプログラムされている。
・患者の眼球運動を補正するようにaiming beamはコントロールされている。
・400発のスポットを解析すると、NAVILASは92%の精度で毛細血管瘤を焼灼していた。
Effect of dual-focus soft contact lens wear on axial myopia progerssion in children.
Anstice NS et al(New Zealand)
Ophthalmology 118(6): 1152-61, 2011
・小児の近視進行を2重焦点SCLで遅らせる事ができるかを検討した。
・屈折度が-2.71±1.10Dの、11歳から14歳の40名で、他眼をコントロールとした。
・このDual-Focus SCLは、同心円の屈折度を持ち、中心を含む3ゾーンが遠方、2ゾーンが2.0Dの近焦点の治療帯となっている。
・コントロールは遠方ゾーンだけの単焦点SCL(SVD-SCL)である。
・小児は10ヶ月間、片眼にDF-SCL、他眼にSVD-SCLをはめ(period 1)、目を交換して10ヶ月間装着した(period 2)。
・調節麻痺下の自動屈折検査での屈折度の変化と、眼軸長の変化を調べた。
・Period 1では、屈折度変化は、DF-SCL:-0.44±0.33D、SVD-SCL:-0.69±0.38Dで、有意にDF-SCLで小さかった(p<0.001)。
・眼軸長は、DF-SCL:0.11±0.09mm、SVD-SCL:0.22±0.10mmで、DF-SCLで有意に小さかった(p<0.001)。
・70%の小児で、DF-SCL装着眼で30%以上近視進行が少なかった。
・Period 2でも、同様の近視進行と眼軸長の伸びの減少がDF-SCL装着眼でみられた。
・Period 2では、屈折度変化は、DF-SCL:-0.17、SVD-SCL:-0.38D(p=0.003)、眼軸長は、DF-SCL:0.03mm、SVD-SCL:0.14mm(p<0.001)。
・近視進行と眼軸長延長は、DF-SCL装着眼で減少することが分かり、継続的なmyopic defocusが近視進行を遅らせるものと考えられた。
Choroidal thickness in polypoidal choroidal vasculopathy and exudative age-related macular degeneration.
Chang SE et al(Korea)
Ophthalmology 118(5): 840-5, 2011
・25眼のPCV、14眼のPCVの健眼、30眼の滲出性AMD、17眼の初期AMD、20眼の年齢一致の健常者でEDI-OCTで、脈絡膜厚を測定した。
・中心窩下の脈絡膜厚は、Bruch’s膜から強膜内面迄とした。
・中心窩から上下耳鼻側に1500μm離れた部位も同時に測定した。
・中心窩下の脈絡膜厚は、PCVは438.3±87.8μm、PCV健眼は372.9±112.0で、正常者224.8±52.9よりも有意に大きかった(p<0.001, p=0.003)。
・滲出性AMD 171.2±38.5、初期AMD 177.4±49.7では、正常者よりも有意に薄かった(p=0.004, p=0.078)。
・傍中心窩でも同様の傾向であった。
・この結果はPCVと滲出性AMDとは違ったメカニズムで発生することを示唆している
Intravitreal triamcinolone prior to laser treatment of diabetic macular edema. 24-month results of a randomized controlled trial.
Gillies MC et al(Australia)
Ophthalmology 118(5): 866-72, 2011
・IVTA+光凝固(併施群)と光凝固だけとで24か月後の治療効果を検討した。
・54例84眼で、42眼づつをランダムに2群に割り振った。
・24ヵ月後まで71眼(84.5%)が調査でき、できなかった13眼は最終視力で判断した。
・24ヵ月後にlogMARチャートで10文字以上の改善のあったものは、併施群では15/42(36%)で、光凝固群の7/42(17%)より有意によかった(p=0.047 OR=2.79 95%CI=1.01-7.67)。
・ただ、平均CMTあるいは平均logMARでは両群間に有意差はなかった。
・有水晶体眼で、白内障手術が必要であったのは、併施群では17/28(61%)であったが、光凝固群では0/27(0%)で有意差あり(p<0.001)。
・高眼圧治療が必要になったのは併施群では27/42(64%)、光凝固群では10/42(24%)で有意差あり(p<0.001)。
・併施治療は2年間で10文字以上の改善するものを倍以上にするが、白内障進行、眼圧上昇の危険がある。
High-resolution imaging of the photoreceptor layer in epiretinal membrane using adaptive optics scanning laser ophthalmoscopy.
Ooto S et al(京大)
Ophthalmology 118(5): 873-81, 2011
・Adaptive optics SLO(AO-SLO)を用いて、特発性黄斑上膜24例25眼の視細胞構造の異常と変視症の程度をMチャートを用いて定量して検討した。
・コントロールには20例20眼を用いた。
・正常眼では視細胞層は規則正しいモザイク構造をしているが、ERMでは24/25(96%)で、正常眼ではみられない微細foldがみられた。
・個々のfoldは5-20μm幅であり、通常の眼底写真(>50μm)では見ることができない大きさであった。
・AO-SLOで中心窩に微細foldのある12/13眼ではAmslerチャートで固視点付近に変視症があったが、微細foldのない5眼では変視症がなかった(p<0.001)。
・微細foldのない群に比較して、ある群ではMチャートの変視症が縦も横も強く(p<0.001)、OCTでの中心窩厚も大きかった(p=0.01)。
・モザイクの規則性をみるVoronoi解析では、正常眼に比較して不規則であった(p<0.001)。
・ERM眼では平均中心窩厚は視力(p=0.001)、変視症スコア(横p=0.02、縦p<0.001)と相関していたが、視力、変視スコア、中心窩厚は、OCTでのIS/OSラインの断裂とは相関していなかった。
・このことから、中心窩の微細foldが変視症の原因となっていると考えた。
Retinopathy signs in people without diabetes. The multi-ethnic study of atherosclerosis.
Ojaimi E et al(Australia)
Ophthalmology 118(4): 656-62, 2011
・糖尿病のない4種の人種(白人、黒人、Hispanic、中国人)6176名(45-84歳)で、網膜症の有病率と心血管のリスクファクタについて検討した。
・ETDRSに則って、毛細血管瘤、出血、軟性白斑、網膜内血管異常ARMA、硬性白斑、静脈怒脹、新生血管を調査し、網膜症を分類した。
・糖尿病のない網膜症者は全体では12.5%にみられた。
・白人11.9%、黒人13.9%、Hispanic 12.6%、中国人17.2%で、高血圧が網膜症と強く関連していた(OR=1.47 95%CI=1.09-2.06)。
・年齢性人種などを調整すると、喫煙(OR=1.50 95%CI=1.09-2.06)と、内頚動脈狭窄(OR=1.22 95%CI=1.05-1.41)が網膜症と関連していた。
Retinal nerve fiber layer thickness is decreased in the fellow eyes of patients with unilateral retinal vein occlusion.
Kim MJ et al(Korea)
Ophthalmology 118(4): 706-10, 2011
・片眼性の網膜静脈閉塞症79例と年齢をマッチさせた正常者71例で網膜神経線維層厚を調べた。
・RVOの健眼の眼圧は13.7±2.5(Ctrl眼は13.4±2.8)mmHgであり、RNFL厚は殊に10-11時で薄くなっていた。
・健眼:CtrlのRNFL厚は、平均99.1±13.5:103.4±10.2μm(p=0.028)、上象限、鼻象限では有意差はなく、下象限では125.5±18.5:132.2±15.0(p=0.018)、耳象限では72.7±14.2:76.7±9.9(p=0.047)であった。
・RNFL厚と相関した緑内障性の視野欠損は、RVO健眼では15眼(19.0%)、Ctrl眼では2眼(2.8%)にみられた(p=0.004)。
・このことから、RVOと緑内障は同じ様な全身的なリスクファクターを共有しているものと考えた。
Risk factors for intraoperative floppy iris syndrome: a meta-analysis.
Chatziralli IP & Sergentanis TN(Greece)
Ophthalmology 118(4): 730-5, 2011
・IFISとリスクファクターを検討した17論文(17,588眼)のメタ分析 (meta-analysis:独立な研究結果の統計的な統合)である。
・Tamsulosin内服後のIFISのORは alfuzosin内服者の約40倍(あるいは約16.5倍)。
・Alfuzosin、terazosin、doxazosinも多少関連。
・IFISは高血圧と関連(OR=2.2 95%CI=1.2-4.2)していたが、糖尿病とは関連がなかった(OR=1.3 95%CI=0.7-2.2)。
Interim clinical outcomes in the collaborative bleb-related infection incidence and treatment study.
Yamamoto T et al(岐大)
Ophthalmology 118(3): 453-8, 2011
・予防に関しての2.5年の短期間の34医療機関での協同研究である。
・マイトマイシンCを使用した線維柱帯切除を受けた908名908眼のうち、9眼で濾泡感染症を発症した。
・Kaplan-Meier生命表分析では、濾泡感染症の発症確率は1.5±0.6%(瀘過手術単独)、1.4±1.0%(白内障同時)であった。
・輪部ベースとfornixベースでは差はなかったが、瀘過泡からの漏出があった例(45眼)となかった例(863眼)とでは、5.8±4.1%と1.2±0.5%で、有意差があった(p=0.037)。
Accuracy of intraocular lens calculations using the IOLMaster in eyes with long axial length and a comparison of various formulas.
Bang S et al(MD USA)
Ophthalmology 118(3): 503-6, 2011
・36例53眼の眼軸長が27mm以上の高度近視眼で、IOLMasterでの眼軸長計測を用いた術後屈折誤差について、各種のIOL計算式の正確性を検討した。
・Holladay1、Holladay2、SRK/T、Hoffer Q、Haigis式を用いた計算で、誤差度数(術後球面等価値-予測球面等価値)を求めた。
・長眼軸長ではHaigis式が最良、SRK/T式が2番、次にHolladay2、Holladay1、Hoffer Q式の順であった。
・全式ともに、予測した値の方がより近視寄りであったことから、より強い近視を目指した方が良いと考えられる。
・誤差度数は、Haigis式で 0.52±0.63(95%CI=0.34~0.70、最小最大値=-0.51~2.12)、SRK/T式で 0.62±0.77(95%CI=0.40±0.84、最小最大値=-0.52~2.22)。
Foveal cystoid spaces are associatd with enlarged foveal avascular zone and microaneurysms in diabetic macular edema.
Murakami T et al(京大)
Ophthalmology 118(2): 359-67, 2011
・72例86眼のDM黄斑浮腫で中心窩のOCT所見、FAでの中心窩の血管所見を検討した。
・傍中心窩の毛細管網内の毛細血管瘤MAと中心窩の無血管野を検討。
・中心窩のOCT所見では44眼はCMEがあり、25眼は重篤な網膜剥離、17眼は嚢胞や網膜剥離のない中心窩の肥厚があった。虚血性黄斑症のあった3眼は除外した。
・中心窩毛細血管網内の毛細血管瘤の数は、CMEのある眼では3.20±1.76個であり、網膜剥離のある眼 0.40±1.04や、網膜肥厚のある眼 0.47±0.72より有意に多かった(p<0.01)。
・中心窩の無血管野の大きさは、CME群では0.553±0.323mm2で、網膜剥離のある眼0.302±0.245や、網膜肥厚のある眼0.268±0.142よりも有意に大きかった(p<0.001)。
Role of confocal microscopy in the diagnosis of fungal and acanthamoeba keratitis.
Vaddavalli PK et al(India)
Ophthalmology 118(1): 29-35, 2011
・微生物による角膜炎の診断方法としてのconfocal microscopyの役割について、臨床的に微生物角膜炎と診断された146例について検討した。
・微生物学的に真菌性あるいはアカントアメーバ角膜炎と診断された103例のうち、真菌の線維あるいはアカントアメーバのチストをconfocal microscopyで検出できた症例は91例で、その感度は88.3%(95%CI=82.2-94.5)で、特異度は91.1%(95%CI=82.8-99.4)であった。
Short-term repeatability of diurnal intraocular pressure patterns in glaucomatous individuals.
Realini T et al(WV USA)
Ophthalmology 118(1): 47-51, 2011
・治療中のPOAG 47例で、眼圧の日内変動パターンの再現性について検討した。
・1週間の間隔をおいて、朝8時から夜8時までの2時間ごとの眼圧日内変動を測定した。
・同時間の2回の眼圧と、眼圧変化量の相関をInterclass correlation coefficients(ICCs)として求めた。
・同時間の2回の眼圧の一致は、まずまずで、ICCsは右眼では0.45~0.71、左眼では0.51~0.71であったが、眼圧変化量に相関はなく、ICCsは右眼では-0.08~0.38、左眼では-0.11~0.36であった。
・1回の眼圧日内変動の測定はあてにならないものであった。
Laminar and prelaminar tissue displacement during intraocular pressure elevation in glaucoma patients and healthy controls.
Agoumi Y et al(Canada)
Ophthalmology 118(1): 52-9, 2011
・前部篩状板と篩状板前の組織をOCTで描出し、緑内障眼と正常者での眼圧の急激な上昇による変化を調べた。
・12例のPOAG(年齢66.8±6.0歳)、12例の年齢を合わせた正常者(67.1±6.2歳)、12例の若年正常者(36.1±11.7歳)で比較した。
・視神経乳頭の中央部の12枚の垂直切断面を、下眼瞼の上から眼球に垂直に眼底血圧計を押しつけて眼圧を約10mmHg上昇させる前後で測定した。
・眼圧はトノペンで測定した。
・視神経乳頭陥凹両端のBruch膜の開口部を結んだ線を基線として、前部篩状板と篩状板前の組織までの垂直距離を求めた。
・眼球圧迫前後の直線距離の差を篩板移動距離(laminar displacement:LD)、篩板前組織移動距離(prelaminar tissue displacemet:PTD)とした。
・3群での眼圧上昇量は12.4±2.3mmHgでほぼ同じであった。
・全群の平均LDは0.5±3.3μmで0からの有意な差がなく、POAG:-0.5±3.7、高齢者:0.2±2.0、若年者:2.0±3.6μm(p=0.366)。
・平均PTDは15.7±15.5μmで、全例でLDよりもPTDが大きかった。
・PTD値は、POAG:6.8±13.7、若年者20.8±17.5、若年者:19.6±11.8μmで有意差があった(p=0.045)。
・多変量解析では、LDは乳頭径に負の相関があり(p=0.007)、PTDはIOP上昇程度と相関があった(p=0.013)。
・緑内障者でも正常者でも前部篩板は急性眼圧上昇で動かなかった。
・急性の乳頭表面の変化は篩板前組織の圧縮であり、篩板の移動ではないことが分かった
Reversal of retinal ganglion cell dysfunction after surgical reduction of intraocular pressure.
Sehi M et al(FL USA)
Ophthalmology 117(12): 2329-36, 2010
・網膜神経節細胞(RGC)機能をみる非侵襲的な方法として、緑内障スクリーニングに最適化したパターンERG(PERGLA)がある。
・この方法で47例47眼(年齢は69.6±11.3歳)の緑内障手術を行う前後の機能検査を行った。
・線維柱帯切除+MMCが34眼(72%)、瀘過装置移植が13眼(28%)。
・全例、視力は20/30以下で、角膜、網膜は正常で、視野測定に信頼性のない者は除外した。
・動脈圧、視野測定、PERGLAを術前2回と術3ヶ月目で測定し、平均眼灌流圧(MOPP)も計算した。
・眼圧は術前19.7±8.6→術後10.4±4.6と有意に減少(p<0.001)、PERGLAの振幅は術前0.37±0.18μV→術後0.46±0.22と有意に増加(p=0.001)、PERGLAの位相は術前 1.81±0.22π-radian→術後 1.72±0.20と有意に減少(p=0.01)。
・MOPPは術前45.8±10.1mmHg→53.1±6.4と有意に増加(p<0.001)しており、手術による眼圧低下により、RGC機能不全が改善したことがPERGLAを用いて定量化できたと考えた。
Intraocular and systemic pharmacokinetics of triamcinoklone acetonide after a single 40-mg posterior subtenon application.
Shen L et al(China)
Ophthalmology 117(12): 2365-71, 2010
・トリアムシノロン40mg/0.4mlを後部テノン嚢下に注入した36例36眼で検討した。
・前房水、硝子体、血液を1時間後、1,3,5,10,14,21,28日後に採取(ただし、各時間毎には3~6眼が配置された)。
・TAの濃度は、前房水では24時で急速に減少し、その後、徐々に減少。
・一方、硝子体内濃度は、最初の24時間で急激に増加し、その後、徐々に減少した。
・血清中のTAは、単純な指数関数的に減少。
・TAの最高濃度は、前房と血清は1時間、硝子体では24時間であった。
・時間経過全体におけるTA暴露量は、硝子体は前房より46%多く、硝子体内のTA濃度は血清より70~98倍多かった。