Does prior endoscopic cyclophotocoagulation (ECP) affect subsequent trabeculectomy outcomes?
Abhijit Anand Mohite, et al. Graefe’s Archive for Clinical and Wxperimental Ophthalmology 7(260): 1975-1982, 2022
・Retrospective case-controlled comparative study
・ECP後にTLEを行なったGroup1
・初回手術としてTLEを行なったGroup2
・ECPもしくはPhaco -ECPを行なった62眼のうち12眼(19.4%)が追加手術を行ない、9眼がGroup1に組み入れられた。(2眼は観察期間が2年以内、1眼はバルベルトインプラントを実施)
・ECPから追加手術までの平均期間:22.7(3.2-76.8) month、 66.7%は6ヶ月以降
・Group2は同時期に実施し、緑内障の病期、人種、年齢、執刀医、眼圧下降薬、過去のレーザー手術についてGroup1にマッチした9眼を対象とした。
・最低2年間術後フォロー 4年以上経過観察したのは 55.6% (5/9) vs 66.7% (6/9)
・ベースライン
・眼圧 23.7±7.7 mmHg vs 26.0±6.7 mmHg (p=0.452)
・点眼 3.4±0.9 vs 2.8±1.4 (p=0.274)
・2年後の結果
・眼圧 10.6±5.2 mmHg vs 12.9±4.0 mmHg (p=0.285)
・点眼 0.1±0.3 vs 0.1±0.4 (p=0.931)
・Complete success (IOP<16mmHg w/o med.) rate 77.8 % vs 88.9 % (p=0.527)
・Qualified success (IOP<16mmHg w/ med.)は両群とも11.1%
・Combined success rate (IOP<16mmHg) 88.9%(8/9) vs 100%(9/9) (p=0.318)
・両群とも内服は無い
・Failure (追加濾過手術、光覚喪失) 11.1% vs 0% (p=0.318)
・Group1 で光覚喪失 Group2では36ヶ月後にBGI実施している
・低眼圧、ニードリング、CME、遷延性のぶどう膜炎、再手術の割合に有意差なし
・結論
・ECP既往があってもレクトミーの手術成績に影響はないが、ECPは初回手術として安全でその後のレクトミーの必要を減らす可能性がある。(MM)
Impact of smoking on visual field progression in a log-term clinical follow-up.
Mahmoudinezhad G et al(CA USA)
Ophthalmology 129(11): 1235-1244, 2022
・最低3年以上の経過があり(中間値12.5年)、5回以上の視野測定のある354名(年齢の中間値64.8才)のPOAGを対象として、喫煙が24-2のMDに影響しているかについて検討した。
・対象者の35%(124/354名)が黒人で、42.1%(149名)が喫煙歴があり、59.8%(168名)が飲酒者である。
・多変量解析では喫煙強度が高いほど、視野障害の進展が早かった(-0.05dB/年/10pack-years、95%CI=-0.08~-0.01/dB/年/10 pack-years p=0.010)。
・視野の進行は少なくとも3か所で-1.0dB/年の感度低下があった場合とした。
・pack-years(たばこの箱年)とは、たばこ消費量の尺度で、1日1箱(20本)、1年間吸い続けた消費量を1単位としている。
・大量喫煙者(20 pack-years以上)では視野の進行は非喫煙者の2.2倍の進行度であった(OR=2.21 95%CI= 1.02~-4.76 p=0.044)。(TY)
Time outdoors in reducing myopia. A school-based cluster randomized trial with objective monitoring of outdoor time and light intensity.
He X et al(China)
Ophthalmology 129(11): 1245-1254, 2022
・上海の24校で、6歳から9歳の-0.5D以下の生徒6295名の右眼を対象として戸外活動が近視進行に与える影響について検討した。
・戸外活動時間は、1群2329名ではCtrl群より+40分、2群1929名では+80分として2年間調査した。
・戸外時間と戸外の光量は腕に付けた器具で測定した。
・2年間の-0.5D以上の近視化はCtrlでは24.9%、1群では20.6%、2群では23.8%に起こったが、Ctrl群で補正すると、1群では16%、2群では11%に発生していた。
・1群では-0.84Dの近視化と0.55mm眼軸長延長、2群では-0.91D、0.57mm、Ctrl群では-1.04D、0.65mmであった。
・戸外活動時間と光量は1群では127±30分/日と3557±970lux/分、2群では127±26分/日と3662±803lux/分、Ctrl群では106±27分/日と2984±806lux/分であり、1群、2群間には差はなかったが、Ctrl群より有意に多かった。
・5000 luxでの120-150分の戸外活動あるいは、蓄積光量が60万-75万luxでは、近視化の発生リスク比(IRR)を15%~24%減らす事ができた。(TY)
Rapid macular thinning is an early indicator of hydroxychloroquine retinal toxicity.
Melles RB et al(CA USA)
Ophthalmology 129(9): 1004-1013, 2022
・黄斑部厚がクロロキン網膜症の早期で客観的な指標になるかどうかを検討した。
・301名のクロロキンの長期服用者を対象として、最低4年間、最低4回のETDRSリング内のOCT検査を行い、通常のOCTやHPの10-2プログラムでのデータと比較した。
・219名のほぼ安定した長期服用者の網膜菲薄化は0.62±0.45μm/年であったが、82名では比較的急速に網膜菲薄化の時期があり、3.75±1.34μm/年であった。
・この中の38名では通常のOCTや10-2プログラムでも異常が認められ、総菲薄化量は25.1±6.2であり、通常の方法では異常がみられなかった患者での15.7±4.0μmとは有意差があった(p<0.01)。
・クロロキンによる網膜菲薄化はある時期に急速に起こる。
・ETDRSリング内の内層、外層の黄斑厚測定は通常の方法での異常がみつかる数年前に検出することができた。(TY)
Habitual Coffee Consumption Increases Risk of Primary Open-Angle Glaucoma
A Mendelian Randomization Study
Xi Li et al. Ophthalmology 129(9):1014-1021, 2022
・カフェイン摂取は糖尿病、いくつかの癌、パーキンソン病、アルツハイマー病と逆相関の報告があるが、眼圧に関してはさまざまな報告がある。
・既報では、コーヒー摂取者の方が眼圧が高く、緑内障のリスクが高くなるという報告が多いが、
・Blue Mountains Eye Study: 健常被険者を対象として習慣的なコーヒー摂取と眼圧には関係性がない
・日本のスタディ:コーヒー摂取者の方が眼圧が低い
・というものもある。
・UK Biobankのスタディでは遺伝的素因が強い場合、コーヒー摂取量が多いほど眼圧上昇、緑内障の頻度が高いと報告されているが、人口レベルでは相関は見られなかった。(昨年11月の勉強会で紹介 Ophthalmology 128(6),2021)・メンデルランダム化を用いて、ヨーロッパ人を対象として、コーヒー摂取と関連する遺伝子を同定 POAGのリスクを評価
・結果
・独立した遺伝子多型とPOAGとの関係
・コーヒー摂取(カップ/日)と関連する遺伝子多型 6 OR 1.241
・コーヒー摂取(多いvs 少ない/なしと関連する遺伝子多型 3 OR 1.155
・UK Biobankのコーヒー摂取量と関連する遺伝子多型 35 OR 1.727
・いずれにおいてもコーヒー摂取とPOAGが関連していた(MM)
Alcohol, Intraocular Pressure, and Open-Angle Glaucoma
A Systematic Review and Meta-analysis
Kelsey V. Stuart et al. Ophthalmology 129(9): 637-452, 2022
・アルコールの眼に対する急性の効果としては、一過性で一見容量依存的な眼圧低下があり、視神経乳頭血流の増加があり、理論的には緑内障に対する保護的な作用がある。しかし慢性的なアルコール摂取は神経変性疾患、新血管障害、内分泌疾患、全身の生化学および生理学的障害と関係し、これらの緑内障に対する長期的あるいは間接的な影響は不明である。・PubMed, Embase, Scopus 3つのデータベースから2人のレビューワーが調査
・34件のスタディ(アウトカム:眼圧 8件、OAG 24件、眼圧とOAG 2件)があり、10のスタディで絶対的な習慣的なeffect sizeは小さいもののアルコール摂取と21mmHg以上の高眼圧との関連を示唆していた。
・173058名の参加者を含む26件のスタディのうち11件がOAGとの関連を調査しており、meta-analysisの基準を満たしていた。
・アルコールと眼圧:わずかな正の関連あるいは全く関連性がなかった。
・アルコールとOAG:それぞれの研究のほとんどで関連性がないとの結果だが、メタアナライシスを行った場合には正の相関が示唆された(1.18;95%CI 1.02-1.36;P=0.03)
・OAGの有病率と発生率において同様の推定が示された。
・ただし各研究の方法論的な不均一、バイアスリスクなどから全体的なエビデンスの確実性は非常に低かった。
・アルコールの直接的なOAGリスクのメカニズムは不明だが、慢性的なアルコール摂取は末梢神経障害を引き起こす可能性があり、フリーラジカルによる酸化ストレス、交感神経系や視床下部-下垂体-副腎系への影響、直接的な毒性や炎症誘発物質が影響している可能性があるので、アルコール消費は緑内障発症に関する潜在的な修正可能な危険因子と考えるべきである。(MM)
Vertical internal limiting membrane stalk after macular hole surgery.
Stopa M et al(Poland)
Ophthalmology 129(7): 751-751, 2022
・62歳黄斑円孔の女性の症例報告。
・ILMフラップ移植を行った黄斑円孔女性で、6か月後には視力は20/80に上昇したが、視野中央部に暗い影が出てきたと訴えた。
・OCTで中心窩から1.19mm長のILMの柄のようなものがみられた。
・ILMの再編成であったが、再手術は行なわれなかった。
参照:臨眼 72(1): 14-23, 2018 Müller cell cone(TY)
The Association of Female Reproductive Factors with Glaucoma and Related Traits
A Systematic Review
Kian M.M. et al, Ophthalmology glaucoma 5,628-647: 2022
・女性の生殖因子 (初経年齢、出産回数、経口避妊薬 (OC) 使用、閉経時年齢、および閉経後ホルモン (PMH) 使用) と眼圧 (IOP) または開放隅角緑内障 (OAG) との関連をまとめた。
既報
・エストロゲンは緑内障において神経保護的な役割を果たしている可能性があり、エストロゲン欠乏は機械的、血管メカニズム両方を介して緑内障ダメージに寄与すると考えられている。
・房水産生・流出経路に影響・調節、高眼圧の動物モデルでエストロゲン補充によりRGCロスの予防、一酸化窒素活性を上げ血管の緊張を介して視神経の血液還流を増加させる。
結論
・含まれる研究のバイアスリスクは高いものの、
・・OCの使用期間が長いほどOAGのリスクが高くなる可能性あり
・・自然閉経の年齢が若いほど、OAGのリスクが高くなる可能性あり
・・PMHの使用はIOPの低下と関連している可能性あり。とくにエストロゲンのみのタイプのPMHはOAGリスクの低下と関連している可能性あり。(MM)
Effect of Photochromic Contact Lens Wear on Indoor Visual Performance and Patient Satisfaction
Kazutaka Kamiya, et al. (北里大学)
Ophthalmol Ther. 2022 Oct;11(5):1847-1855.
・目的:屋内での調光コンタクトレンズ(CL)装用時の視機能と患者の満足度を評価する。
・対象と方法:41 人82眼の健康な被験者 (平均年齢21.7 ± 0.7 歳) に調光CLと非調光CLをそれぞれ1〜2週間毎日装用させ屋内環境の明所条件 (600 lx)での視力や動体視力(KVA)、実用視力計(AS-28、興和)を使用して時間平均視力(FVA)、視力維持率(VMR)、応答時間を測定した。
・さらにコントラスト感度(CS)、高次収差(HOAs)、見え方の満足度(0;不満から5;満足)を調査した。
・データ分析のために、各被験者の片眼をランダムに測定した。
・結果:調光CL群と非調光CL群で通常視力では有意差を認めなかった。
・調光CL群での30km/hおよび60km/hでの動体視力は非調光CL群と比較して有意に向上していた。
・また、時間平均視力は有意に良好、応答時間も有意に短縮され、見え方の満足度も良好であった。
・視力維持率、コントラスト感度、高次収差には有意差を認めなかった。
・結論:調光CL装用で室内環境でも動体視力、時間平均視力、応答時間は有意に向上することが明らかになった。
・日常生活やインドアスポーツ時での良好な視力獲得に役立つ可能性がある。(CH)
Endophthalmitis rates among Medicare beneficiaries undergoing cataract surgery between 2011 and 2019.
Zafar S et al(MD USA)
Ophthalmology 129(3): 250-257, 2022
・2011-2019に米国の65歳以上のMedicare受給者で、白内障手術を受けた14,396,438眼で90日以内に眼内炎を発症した人を調査した。
・結果、1.36眼/1000眼で発症しており、白内障単独手術では1.30眼/1000眼であったが、この9年間で減少傾向にあった。
・眼内炎発症のリスクは、75歳以上(OR=1.14 95%CI=1.11-1.18)、黒人(OR=1.13 95%CI=1.07-1.20)、アメリカ先住民(OR=1.43 95%CI=1.13-1.73)、緑内障手術既往眼(OR=1.40 95%CI=1.18-1.65)、網膜同時手術(OR=2.60 95%CI=2.15-3.16)であったが、女性では少なかった(OR=0.89 95%CI=0.86-0.92)。(TY)
Efficacy and safety of 8 atropine concentrations for myopia control in children. A entwork meta-analysis.
Ha A et al(Korea): Ophthalmology 129(3): 322-333, 2022
・PubMed、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trialsなどのデータベースから、最低1年以上アトロピン治療を行った報告を調査した。
・アトロピン濃度は0.01%-1.0%までの8種類で、最高の治療の予測スコアをPスコアとして計算した。
・主要転帰は屈折度(Diopter/年)と眼軸長(mm/年)であり、安全性の指標として、瞳孔径、調節力、遠見と近見視力も求めた。
・アトロピン濃度を3種類1%、0.5%、0.05%で求めると、1%アトロピンでは屈折度はCtrlと比較して0.81 (95%CI=0.58-1.04)、眼軸は-0.35(-0.46~-0.25)、0.5%アトロピンでは屈折度は0.70(0.40-1.0)、眼軸は-0.23(-0.38~-0.07)、0.05%アトロピンでは屈折は0.62(0.17-1.07)、眼軸は-0.25(-0.44~-0.06)であり、0.05%アトロピンが最良であった。
・安全性は視力以外では濃度依存性であった。(TY)
Blood pressure and glaucomatous progression in a large clinical population.
Jammal AA et al(NC USA)
Ophthalmology 129(2): 161-170, 2022
・緑内障による進行性の構造変化に対する平均動脈血圧MAP、収縮期動脈圧SAP、拡張期動脈圧DAPの影響を、3976例7501眼の緑内障あるいは緑内障疑い者について検討した。
・網膜神経線維層RNFL欠損のスピードをSD-OCTで測定した。
・RNFL変化の平均スピードはー0.70μm/年(95%CI=-0.72~-0.67)であった。
・単変量モデルでは、MAP、SAP、DAPはいずれもRNFL欠損スピードと関連はなかったが、観察期間中の平均眼圧で調整すると、10mmHgの平均MAPの低下(-0.06μm/年 p=0.007)、平均DAPの低下(-0.08μm/年 p<0.001)はRNFL厚の減少スピードが早くなっていること有意に相関していたが、平均SAPの低下は関連がなかった(-0.01μm/年 p=0.355)。
・このことから、全身血圧のレベルは緑内障進行に有意に影響していることが分かった(TY)
Interventions for the Management of Computer Vision Syndrome
A Systematic Review and Meta-analysis
Sumeer S. et al,Ophthalmology May ,2022 Online ahead of print.
・コンピューターによる眼精疲労(CVS)への治療介入について有効性と安全性を比較した。
・CVSの確立したリスクファクター
・一日4時間以上のコンピューターの使用、コンピューター画面の反射やグレア、40%未満の湿度、使用中の不適切な姿勢
・その他、瞬目の減少、屈折矯正不良、調節障害などの関与が示唆
・結果
・Ovid Medline, Embase, Cochrane Central Register of Controlled Trials, and trial registriesから4497名の被険者を含む45のRCTを抽出
・多焦点眼鏡は単焦点眼鏡と比較して眼精疲労の改善は有意差なし(3 RCTs, P=0.38)
・ルーライトカット眼鏡は眼精疲労の改善に効果なし(3 RCTs)
・プラセボと比較してベリー抽出物サプリメントの内服は眼精疲労改善効果なし(7 RCTs, p=0.22)、ドライアイ症状の改善無し(4 RCTs, p=0.65)、CFFや調節力についても効果無し
・45日から3ヶ月間のオメガ3脂肪酸のサプリメントはドライアイ症状に伴う眼精疲労の改善効果あり(2 RCCTs, p<0.00001)(MM)
Effect of corneal cross-linking versus standard care on keratoconus progression in young patients. the KERALINK randomized controlled trial.
Larkin DFP(UK)
Ophthalmology 128(11): 1516-1526, 2021
・若年者の円錐角膜を角膜クロスリンキング(CXL)で進行が止められるかどうかを10歳から16歳の60例で検討した。
・30例にCXLを行ない、28例に通常の眼鏡あるいはCLなどの治療を行ない、18か月後の凸度の強い方のK2値で比較した。
・18か月後のCXL群のK2値は49.7±3.8Dで、Ctrl群のK2値は53.4±5.8Dで、調整後の差は-3.0D (95%CI=-4.9~-1.1D p=0.02)で、CXL群で進行度が少なかった。
・進行した症例はCXL群では2例(7%)、Ctrl群では12例(43%)であった。
・若い円錐角膜患者ではCXLが有効であり、積極的に行なうべきである。(TY)
Intraocular pressure, Glaucoma, and Dietary Caffeine Consumption
A Gene-Diet Interaction Study from the UK Biobank
Jihye Kim et al. (UK) Ophthalmology 128(6):866-876, 2021
・目的:カフェイン摂取習慣と眼圧の関係、および遺伝子的な素因を調べる。
・多くのスタディではカフェイン摂取後1-4時間後に0-4mmHg急性の眼圧上昇を報告されているが、カフェイン摂取習慣については様々である。眼圧は多因子遺伝特性であることが示唆されており、POAGと眼圧の多因子遺伝リスクスコア(PRS)は相関する。
・珈琲もしくは紅茶(緑茶やハーブティなどを含む)、チョコレート摂取状況と、眼圧、IOP PRSとの関係を調査
・全体としてはカフェイン摂取と眼圧下降が弱く相関するが、緑内障とは関係なかった。
カフェインの摂取はIOP PRSによって修飾され、カフェイン摂取量の増加はIOPおよび緑内障有病率両方にポジティブに関連していたが、IOP上昇に対する遺伝的感受性が最も高い人の間でのみ関連していた。(MM)
Five-Year Follow-up of First 11 Patients Undergoing Injection of Cultured Corneal Endothelial Cells for Corneal Endothelial Failure
Kohsaku Numa et al, (京都府立医科大学)
Ophthalmology 2021(4);128:504-514
・ドナー由来の角膜内皮細胞を生体外で培養後、注入液に懸濁させた機能的な培養ヒト角膜内皮細胞(hCEC)を水疱性角膜症患者の前房内に注入する新規再生医療技術を開発した。
・角膜内皮不全状態に対する培養ヒト角膜内皮細胞を使用した新規細胞注射療法の安全性と有効性の報告。
・2013年12月から2014年12月の間にhCEC注射療法を受けた角膜内皮不全の11人11眼。
・すべて偽水晶体で、手術前は全体的な角膜浮腫を示した。以前に緑内障ドレナージ手術を受けた症例はなかった。
・すべての患者は角膜中央部の直径8 mmの内皮細胞とデスメ膜を取り除いた後、シリコンカニューレ針を使用して注射器に吸引された300μlに懸濁された培養hCECが前房内に注入された。患者は、注入された細胞の接着と生着を強化するために、3時間face-down positionをとった。培養角膜の角膜内皮細胞密度(ECD)は1835から2530 cells / mm2だった。
・すべての患者は、術後1週間、4週間、12週間、24週間、および1年、2年、3年、4年、5年後に追跡検査を受けた。ECD、変動係数(CV)、六角形細胞出現率(6A)、中心角膜厚、最高矯正視力(BCVA)、および眼圧(IOP)を測定した。
・手術後5年で、11眼中10眼で正常な角膜内皮機能が回復し、平均中心角膜ECDは1257±467 cells / mm2(601〜2067 cells / mm2)、CVは0.46±0.076から0.37±0.088に、6Aのパーセンテージも47±8.7%から54±6.2%に改善した。
・BCVAは10眼で有意に改善した。平均視力は、手術前の0.87 logMARから手術後0.046 logMARと改善した。
・hCEC注射療法に直接関連する主要な合併症はなかった。
・手術後5年での角膜中心の角膜の厚さは、11眼中10眼で正常範囲内(<630μm)だった。治療された11眼中眼では、術後5年間の追跡期間中にIOP上昇は認めなかった。1眼でステロイド外用薬への反応によりIOPが一時上昇した。
・虹彩に重度のPEXが蓄積したPEX関連内皮不全眼は、おそらく前房の異常な微小環境が原因で不全になった。
・手術後最大5年間の培養hCEC注射療法の安全性と有効性を確認した。
世界中でドナー角膜が毎年不足し続けているので、これらの問題を排除する新しい外科的処置は非常に有益であろう。(CH)
Comparison of Clinical Outcomes with Open Versus Closed Conjunctiva Implantation of the XEN45 Gel StentA Systematic Review and Meta-analysis
Anna Do. et al, Ophthalmology Glaucoma 4,343-349: 2021
・XEN45を結膜切開の有無で比較 ab internoとab externoで比較
手技:
・最初にMMC 0.4mg/ml XEN45挿入前に20-80μgを結膜下注射
・Closed Conjunctive Technique
Ab interno:
ヒアルロン酸で満たした前房内からインサーターを用いて結膜下にリリース
前房内を洗浄
Ab externo:
輪部から7mmの部位からインサーターを挿入
輪部から2mmで方向を変えて前房内に挿入しリリース
・Open Conjunctiva Technique
Ab interno:
鼻上側の結膜をfornix-baseで3-4時間開き強膜を露出
ヒアルロン酸で満たした前房内からインサーターを用いて強膜上にリリース
結膜縫合し、前房内を洗浄
Ab externo:
同様の方法で強膜を露出
輪部から2-3mmから前房内に挿入してリリース
結膜縫合
術後点眼
・4-12週 ステロイド 漸減 (術者によって異なる)
・7-10日 フルオロキノロン抗生剤
不成功の定義:IOP>21mmHg、術後1か月以降の2回連続したフォローでPre IOPから20%未満の眼圧下降、インプラント露出などの合併症での再手術、レクトミーやチューブシャント、毛様体破壊などの緑内障再手術(ニードリングは含まず)、光覚喪失
・Complete success(CS): 眼圧下降薬なしで上記満たさない
・Qualified success(QS):眼圧下降薬ありで上記満たさない
結果
・137名137眼
・Closed conjunctiva 61眼、 Open conjunctiva 76眼、男性55%、POAG 58.4%
・術前眼圧:Closed群 23.0mmHg、Open群 26.4mmHg
・Open群で過去の緑内障手術の割合が高かった(5% vs 20%)
・白内障同時手術は影響なかった
・両群で術後眼圧に差は認めなかったが、術後12か月でOpen群の方が眼圧下降率が高かった(24.8% vs 43.1%)
・CS: 31% vs 53% P=0.01
・QS: 56% vs 71% P=0.06
・不成功までの期間:6.1±4.0M vs 6.3±5.4M
・眼圧と点眼、合併症:図参照
・Open群では術前眼圧が高く、過去に緑内障手術を受けたことのある難治例が多かったにもかかわらず、Closed群よりも成功率が高かったため、結膜を開く方法を推奨する。
・結膜とテノン嚢を開くことでデバイス遠位端の閉塞リスクが少ないこと、テノンを広く開き後部ポケットを作成したことがその要因ではないかと考えられる
・Closed群でステントの露出が見られたのは、遠位端が正しい位置に配置できなかった可能性、虹彩による閉塞が見られたのは、挿入時にOVDを使用するため虹彩が押し下げられ、より虹彩側に挿入された可能性がある。(MM)
Cardiovascular disease predicts structural and functional progression in early glaucoma.
Marshall H et al(Australia)
Ophthalmology 128(1): 58-69, 2021
・1314例2628眼の前視野緑内障と初期緑内障についてSD-OCTでの網膜厚とハンフリー視野HVFで評価して、心血管障害との関連を検討した。
・患者は最初に、障害部位によって次の3組に分けて検討した。
・黄斑部の神経節内網状層障害(mGCIPL)優位、視神経乳頭周囲の網膜神経線維障害(pRNFL)優位、mGCIPLとpRNFLの両者障害の3組に分け、心血管障害群と非障害群に分けて検討した。
・mGCIPL障害が有意な群では高血圧の有病率が高く(OR=2.70 95%CI=1.66-4.41 p<0.001)、降圧剤の使用率が高く(OR=2.03 95%DI=1.20-3.46 p=0.008)、スタチンの使用率が高かった(OR=1.98 95%CI=1.07-3.66 p=0.029)。
・pRNFL障害が有意な群では心血管障害やそのための内服者が多かった。
・OCTとHVFでの経過(5.34±1.29年)をみると、この障害には高血圧が関連しており、OCTではOR=1.79 (95%CI=1.17-2.75 p=0.006)、HVF進行はOR=1.92(95%CI=1.18-3.15 p=0.013)であった。
・収縮期血圧の1SD(約21mmHG)上昇はOCTの進行(OR=1.27 95%DI=1.01-1.63 p=0.041)とHVF進行(OR=1.32 95%CI=1.01-1.73 p=0.043)に関連していた(TY)
Cataract surgery volumes and complications per surgeon and clinical unit. Data from the Swedish National Cataract Register 2007 to 2016.
Zetterberg M et al(Sweden)
Ophthalmology 127(3): 305-314, 2020
・2007ー2016年のSwedenの眼科施設での白内障手術数と合併症数を術者毎あるいは施設毎に調査した。
・白内障手術件数は2007年が71,369眼、2016年が118,534眼で66%増加していた。
・年間500眼以上の術者は15.0%→34.0%に、年間1000眼以上の術者は2.1%→10.9%にそれぞれ増加していた(いずれもp<0.001)。
・術者毎の手術数は、500眼以上の術者によるものは36.9%→68.1%に増加していた。
・年間の破嚢の合併症率は手術数が増えるにつれて減少しており、10-99眼の少術者では2.15±3.17%、100-499眼の中術者では1.32±1.28、500眼以上の多術者では0.59±0.49であった(p=0.016)。
・術前視力は500眼以上の多術者では小数点0.5であったが、499眼以下の少中術者では0.4であった(p<0.001)。
・破嚢の合併症は1.5%→0.8%に低下し、術前視力はlogMARで0.46±0.10(小数点0.35)→ 0.40±0.05(小数点0.40)に上昇していた(p=0.030)。(TY)
Intrastrolmal bevacizumab in the management of corneal neovascularization: a retrospetive review.
Gupta AA et al(MN USA)
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 258(1): 167-173, 2020
・角膜移植の際、リスクの高い角膜深層の新生血管に実質内へbevacizumabを注入した14例14眼の長期成績について検討した。
・実質内へ0.05-0.1mlの2.5mg/0.1mlのbevacizumabを4~8週おきに1~3回注入した後に8例に角膜移植(全層6例あるいは深層表層移植2例)を行った。
・この8例の内、注射後に3例は新生血管は消失し、5例は中等度に緩解した症例である。
・全体の64.2%がヘルペス後のものであり、視軸にかかっていた例は50%で、傍中心が42.8%であった。
・注射後14.2%は完全緩解し、角膜移植は不要となった。
・21.4%では新生血管の変化はなかった。
・注射の副作用は3眼/14眼(21%)で発生した。
・2例は注射後の上皮剥離で自然緩解、1例は実質内出血で5週間で緩解。