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Ophthalmology

2019
126巻

Ranibizumabの新型強膜埋込システム

Ophthalmology 126巻 (8号) 2019

The port delivery system with ranibizumab for neovascular age-related macular degeneration.
Campochiaro PA et al(MD USA)
Ophthalmology 126(8): 1141-1154, 2019
・新生血管AMDに対してranibizumabの港型埋込システム(Port Delivery System:PDS)の安全性と効果を検討したPhase 2の多施設調査である。
・発生後9カ月以内で、2回以上の抗VEGF治療で効果がみられた症例を対象とした。
・220名をPDS ranibizumabの10mg/ml(58名)、40mg/ml(62名)、100mg/ml(59名)と0.5mgを毎月硝子体注射群(41名)に分けて検討した。
・PDSの詰替をした時期の中間値は10,40,100mg/mlのPDSで、8.7、13.0、15.0カ月目であった。
・PDSの詰替えは、結膜上から2層構造の詰替え針を用いて旧薬を吸引しつつ詰替え薬を0.1ml、隔壁内に注入した。
・毎月0.5mgの硝子体注射群と同等の効果があったものは100mg/mlのPDSであった。(TY)

2019
126巻

運動は緑内障性の視野欠損進行を予防できるか?

Ophthalmology 126巻 (7号) 2019

Greater physical activity is associated with slower visual field loss in glaucoma.
Lee MJ et al(MD USA)
Ophthalmology 126(7): 958-964, 2019
・身体運動レベルと緑内障の視野欠損進行との関連を調べた。
・対象者は141名(64.9±5.8歳 除外者17名含む)で1週間、風呂と水泳時以外は腕に加速計を付け、1日の平均歩数、中等度から活発な運動時間、非座位の活動時間を調べた。
・運動測定の13.2年前から、測定後6.7年までの視野をHumphrey視野計の24-2の測定で調査した。
・運動開始前のmean deviation(MD)は-6.6±8.4dBで、1日平均歩数は5613±3158歩であり、平均視野欠損スピードは0.36dB/年(95%CI=-0.37~-0.35)であった。
・多変量解析では視野欠損が遅いことは歩数が多い事(+0.07dB/年/1日1000歩 p<0.001)、中等度から活発運動が多い事(+0.003dB/年/1日10分以上 p<0.001)、非座位活動が多い事(+0.007dB/年/1日30分以上 p=0.005)であった。
・視野欠損スピードが早いことに関連する因子は、高齢、非白人、緑内障手術、白内障手術、最初の視野欠損が軽度(MD>-6dB)よりも中等度視野欠損(-6dB≧MD>-12dB)であった。
・活発な身体活動が視野進行を抑え、1日5000歩あるいは非座位の2.6時間の活動は視野欠損スピードを約10%減らす事ができた。(TY)

2019
126巻

夜間拡張期血圧はNTGの進行に影響するか?

Ophthalmology 126巻 (7号) 2019

Baseline systolic versus diastolic blood pressure dip and subsequent visual field progression in normal-tension glaucoma.
Kwon J et al(Korea)
Ophthalmology 126(7): 967-979, 2019
・新規に正常眼圧緑内障NTGと診断された119例119眼を最低2年間(40.4±16.9月)経過観察し、収縮期血圧と拡張期血圧DBPの落ち込みdipが視野進行に影響を与えるかどうかを調査した。
・全員に24時間血圧(30分間隔で自動測定)と眼圧測定(8,10,12,14,16,18,20,22時は座位で、0,3,6時は仰臥位でTonopenで測定)をおこなった。
・血圧の落ち込みは日中と夜間で率を求めた。
・日中は(平均BP-最低BP)/平均BP、夜間は(平均日中BP-最低夜間BP)/平均日中BPとした。
・経過観察中に41眼(34%)で視野欠損が進行しており、多変量Cox回帰モデルで視野欠損の進行を予測する因子は、夜間DBPの最低値が低いこと(HR:hazard ratio=0.953 p=0.023)、夜間DBP最低値の時間が長い事(HR=1.017 p=0.003)であった。
・夜間のDBPの落ち込みは、SBPの落ち込みよりも視野欠損の進行により大きな相関があった。
・NTGでは夜間のDBPの最低値とDBPの落ち込み時間の長さが視野欠損と強い関連があった(TY)

2019
126巻

AMD治療において少々の網膜下液は看過できるか

Ophthalmology 126巻 (5号) 2019

Tolerating Subretinal Fluid in Neovascular Age-Related Macular Degeneration Treated with Ranibizumab Using a Treat-and-Extend Regimen: FLUID Study 24-Month Results
Robyn H. Guymer, et al. (Australia)
Ophthalmology. 2019;126(5)723-734
・nAMD初回治療患者349眼を前向きランダムに2群に割付け;
・どちらの群もルセンティスを3回導入、その後2w調節・最大12w間隔のTreat and Extend(T&E)法へ
・Intensive群(174眼):網膜下液(SRF)が完全に消失するのを目指す
・Relaxed群(175眼):中心窩200μ以下のSRFは看過(→2w延長して投与)
・279眼(79.9%)が24Mのフォローアップ完遂
・24M後の視力改善:Intensive群で3文字(SD:16.3)、Relaxed群で2.6文字(SD:16.3)(P=0.99)
・視力20/40以上の割合:Intensive群で53.5%、Relaxed群で56.6%(P=0.92)
・視力20/200以上の割合:Intensive群で8.7%、Relaxed群で8.1%(P=0.52)
・注射回数:Intensive群で17±6.5回、Relaxed群で15.8±5.9回(P=0.001)
・注射間隔を4週より広げられなかった割合:Intensive群で13.5%、Relaxed群で2.8%(P=0.003)
・注射間隔を12週まで広げられた割合:Intensive群で15.0%、Relaxed群で29.6%(P=0.005)
・ルセンティスのT&E法では、少々のSRF(≦200μm)を残しても、厳重にSRF消失を目指した方法と視力経過は同等であり、注射回数が少なくてすむ(MK)

2019
126巻

アルツハイマ-病診断におけるOCT

Ophthalmology 126巻 (4号) 2019

Spectral-domain OCT measurements in Alzheimer’s disease.
Chan VTT et al(China)
Ophthalmology 126(4): 497-510, 2019
・アルツハイマ-病ADのOCTと軽度の認知障害(mild cognitive impairment:MCI)につき過去の30文献の調査。
・対象はADが1257名、MCIが305名、Ctrlが1460名である。
・SMD比率(standard mean difference)を求めると、ADではOCTでのGC-IPL厚が-0.46(95%CI=-0.8~-0.11)[絶対値では平均-3.66μm]、GCC厚が-0.84(95%CI=-1.10~-0.57) [絶対値では平均-7.04μm]、黄斑容積が-0.58(95%CI=-1.03~-0.14) [絶対値では平均-0.23mm3]、全黄斑網膜厚が-0.52~-0.74[絶対値では平均-9.71~-14.56μm]、視神経乳頭周囲のRNFL厚は-0.67(95%CI=-0.95~-0.38) [絶対値では平均-5.99μm]、1.5mm内の脈絡膜厚は-0.57~-1.03[絶対値では平均-28.75~-64.60μm]、Ctrlに比較して薄かった。
・SD-OCT測定はADの生体指標になりうると考えた(TY)

2019
126巻

IFISによる重篤な合併症のDatabase調査

Ophthalmology 126巻 (4号) 2019

Evalution in the risk of cataract surgical complicaions among patients exposed to tamsulosin.
Campbell RJ et al(Canada)
Ophthalmology 126(4): 490-496, 2019
・2003/1から2013/12にカナダのOntarioで行われた66歳以上の男性を対象として、Healthcare Databaseを用いてタムスロシン服用の有無で調査した。タムスロシン内服者(39,144名)、タムスロシン非内服者(378,611名)
・The Ontario Health Insurance Plan database、The Ontario Drug Benefit database、The Canadian Institute for Health Information discharge database、The National Ambulatory Care Reporting System Database
・合併症は、後嚢破損、水晶体破片落下、網膜剥離、術後眼内炎疑いとしたが、いずれも、他の手技を同日あるいは術後2週間以内に行う必要があった重篤な合併症である。
・タムスロシン内服者(39,144眼)での白内障手術での合併症は397眼(1.0%)で発生していたが、年々減少OR=0.95/年(95%CI=-0.91-0.99/年 p=0.006)。
・術前1年以内にタムスロシン非内服者(378,611眼)でも合併症は3906眼(0.77%)で発生していたが、年々減少OR=0.96/年(95%CI=-0.95-0.98/年 p<0.0001)していた。
・後嚢破損(同日に前部硝子体切除が行われた)297眼(0.76%):2184眼(0.58%)、統計量=4.459, p<0.0001**
・水晶体破片落下(術後2週間以内に硝子体手術あるいは脱臼IOL摘出が行なわれた)。54眼(0.14%):325眼(0.08%)、統計量=3.260, p<0.002**
・網膜剥離(術後2週間以内に網膜剥離手術が行われた)。7眼(0.02%):81眼(0.02%)、統計量=0.456,p=0.65
・術後眼内炎疑い(術後2週間以内に、2、3以外の硝子体手術あるいは硝子体注射が行われた)。39眼(0.10%):316眼(0.08%)、統計量=1.045,p=0.3。(TY)

2019
126巻

増殖性糖尿病網膜症患者に対する初回治療と患者再診

Ophthalmology 126巻 (3号) 2019

Outcomes of eyes lost to follow-up with proliferative diabetic retinopathy that received panretinal photocoagulation versus intravitreal anti-vascular endothelial growth factor.
Obeid A et al(PA USA)
Ophthalmology 126(3): 407-413, 2019
・増殖性糖尿病網膜症PDR患者で治療後に6か月以上の間、経過観察ができなくなったLTFU(lost to follow-up)率を抗VEGFの硝子体内注射群と汎網膜光凝固群とで比較した。
・2013/9から2016/9の間に728名の患者がLTFUとなった。
・このうち295名(40.5%)は抗VEGF治療、433名(59.5%)はPRPである。
・この6か月間のLTFU後に戻った患者が59名(20名30眼は抗VEGF治療、39名46眼はPRP)おり、この59名76眼について検討した。
・抗VEGF群では平均視力はlogMAR 0.43±0.38(小数点0.37)からLTFU後に0.97±0.80(小数点0.11)と有意に低下しており(p=0.001)、最終視力も0.92±0.94(小数点0.12)と悪かった(p=0.01)。
・PRP群では0.42±0.34(小数点0.38)からLTFU後に0.62±0.64(小数点0.24)と低下していたが(p=0.03)、最終視力は0.46±0.47(小数点0.35)と有意差はなかった(p=0.38)。
・牽引性網膜剥離の発生は抗VEGF群では10眼、PRP群では1眼と有意に抗VEGF群で多かった(p=0.005)。
・虹彩新生血管の発生も4眼と0眼で、抗VEGF群で多かった(p=0.02)。
・LTFUの事を考慮してPDRの治療の選択が必要である(TY)

2019
126巻

小児期のLensectomyはシュレム管のサイズ低下に関連する

Ophthalmology 126巻 (2号) 2019

Childhood Lensectomy Is Associated with Static and Dynamic Reduction in Schlemm Canal Size
A Biomechanical Hypothesis of Glaucoma after Lensectomy
Moritz C. Dnaiel et al (UK)
Ophthalmology 126(2): 233-241, 2019
4際から16歳の健康な小児(50名)と過去にLensectomyを行ったもの(48名)を対象
24名は片眼のみLensectomyを行い僚眼は健常眼として解析し、健常眼124眼(右59眼、左65眼)とLensectomy眼72眼(右39眼、左33眼)を調査
72眼中34眼は緑内障と診断され、18がんで手術あるいはレーザーを行っている
前眼部OCTを用いてSC,TM, Iridocorneal angle(ICA)を2.5D(40cm)と15D(6.5cm)の調節負荷をかけて調べた
結果
調節負荷をかけると水平SC距離が長くなるが、Lensectomyを行った患者では調節負荷ありなしともに健常眼と比べて短くなっていた
SC Cross-sectional area(CSA)は調節時に増加するが、最大調節負荷時のLensectomy群は減少していた
サブグループ解析で、緑内障となった群と健常群を比較すると、
緑内障群で水平SC距離は-0.081mm、CS CSAは0.395mm2小さかったが、緑内障でないLensectomy群と健常群では差がなかった
IOL眼と無水晶体眼での比較では、水平SC距離、垂直SC距離、SC CSAの調節負荷時は差がなく、安静時では垂直SC距離、SC CSAでIOL眼の方が大きかった
調節負荷時の毛様体厚の変化には有意差はなかった
Lensectomy後、調節負荷によるSCの伸展が減少することが緑内障と繋がると考えられる(MM)

2019
126巻

異なる眼圧計と視野変化の関係

Ophthalmology 126巻 (1号) 2019

Association between Rates of Visual Field Progression and Intraocular Pressure Measurements Obtained by Different Tonometers
Bianca N. Susanna et al (Duke, USA)
Opthalmology 126(1):49-54, 2019
125名213眼の緑内障患者でゴールドマン眼圧計(GAT)、Ocular Response Analyzer(ORA)、アイケア眼圧計(RBT)それぞれで測定した眼圧値とHFA SITA standard 24-2 のMDの変化との関係を調査
平均観察期間 2.4±0.6年(1.3-3.7年)
観察期間中の平均眼圧:GAT, ORA IOPcc, RBTそれぞれ
14.4±3.3,15.2±4.2, 13.4±4.2mmHg
CCT 536.3±43.1μm CH 9.5±1.8mmHg
どの眼圧計も眼圧が高いほどMDの進行が早い
MD値との関係はGATよりもORA IOPccの方がよい相関があった
OfficeTimeのみであること、GATとことなり、ORAIOPccは3回の平均であること、治療前の眼圧や治療による影響が含まれないというLimitationsがあり(MM)

2018
125巻

線維柱帯切除後の篩板の形状変化

Ophthalmology 125巻 (11号) 2018

Long-term shape, curvature, and depth changes of the lamina cribrosa after trabeculectomy.
Kadziauskiene A et al(Lithuania)
Ophthalmology 125(11): 1729-1740, 2018
・112例118眼の線維柱帯切除を行ったPOAGを対象として、篩板の形態(grobal shape index:GSI)、水平(N-T)と垂直(S-I)曲率半径、篩板深度(LCD)を調べた。
・LCのGSIの値は後方凸の-1、対照的な鞍馬型の0、前方凸の+1まで値づけされた。
・平均のLS GSIは術後12ヶ月までの早期は有意(p=0.02)に+に偏位しており、LC曲線も水平、垂直共に有意(p<0.003)にフラット化していた。
・LC深度は術後6ヶ月まで急速に低下し、全経過にわたり有意に浅くなった(p<0.001)が、28例では最低1回、深くなることがあった。
・LC深度がより浅くなった例の方が深くなった例よりも有意に眼圧下降が得られていた(p=0.002)。
・GSIの+偏位は、IOP低下が大きく(p=0.007)、NFLの厚み減少が少なかった(p=0.003)。
・若さとIOP低下は、LCが浅くなること、N-T曲線がフラット化することに相関していた。(TY)

2018
125巻

視神経乳頭ピット黄斑症の経過報告

Ophthalmology 125巻 (11号) 2018

Optic disc pit maculopathy. A two-year national prospective population-based study.
Steel DHW et al(UK)
Ophthalmology 125(11): 1757-1764, 2018
・新規に発生した視神経乳頭ピット黄斑症ODPMについて、英国の毎月の監視システムを利用して調査した。
・年間74例の確実な新規症例があった。
・これは200万人に対して年間1人発生の頻度である。
・このうち、このうち70例を調査し、1年後の経過が追えた症例は68例である。
・男女比は丁度35:35例(50%)で、平均年齢は35歳(3-82才)、Baseline視力は1.2からHMである。
・43例(61%)で網膜下液SRFがあったが、網膜内液のみは27例(39%)であった。
・SRF例は視力が悪かった。
・OCTを1年間追えた53眼では、10例(19%)は悪化、9例(16%)は改善した。
・直後に手術を行ったのは15/70(21%)で、その後の1年以内に更に10例が手術を受けた。
・手術例の19/25(76%)で1年後に解剖学的に成功し、15例(60%)で0.8以上の視力が得られた。
・SRF例では視力に関して手術を受けた優位性は少なかったが、直後に手術を行った場合は経過を見た後の手術よりも有意に視力は改善していた。
・手術例は全例PVDを起こしているが、ILM剥離、視神経乳頭縁のLK、ガスの使用は優位性がみられなかった。(TY)

2018
125巻

DMEKとDSEKの5年移植片生存率とドナーの性別の影響

Ophthalmology 125巻 (10号) 2018

Five-Year Graft Survival of Descemet Membrane Endothelial Keratoplasty (EK) versus Descemet Stripping EK and the Effect of Donor Sex Matching
David A. Price, BS et al. (IN USA)
Ophthalmology 2018(10);125:1508-1514
目的: Fuchs角膜内皮変性症(FECD)対してDSEKおよびDMEKを行い、5年移植片生存率、角膜内皮細胞密度(ECD)損失率および拒絶反応率を比較する。また、ドナーとレシピエントの性別が拒絶反応や生存率に影響を与えるかどうかを調べる。
対象と方法:2003年から2012年の間にFECDに対し手術を行った2017例(DSEK 1312例(65%)、DMEK 705例(35%))。
ドナーの性別に関する情報は、1920例(95%)で入手可能であった。
術後、1%プレドニゾロン点眼は、1日4回3〜4ヶ月間、その後1ヶ月に1回ずつ減らし、1日1回無期限に続けた。
DMEKの内、115例 (16%)は術後1ヶ月で0.1%フルオロメトロン点眼に切り替え、106例 (15%)は術後1年でステロイド点眼を中止した。
結果:術後 5年間での拒絶反応率は、DMEK 2.6%、DSEK 7.9%で、DMEKの方がより低かった。(P<0.0001)(図1)。
DSEKと同じステロイド点眼回数で治療したDMEK症例では、5年間での拒絶反応率は2.0%であったのに対し、早期にステロイド減らしたDMEK症例では3.9%(P=0.29)だった。
また、アフリカ系アメリカ人は他の人種よりも拒絶反応率が有意に高かった。(P=0.0006)
DSEKとDMEKの両方で、5年生存率は93%であった(P=0.85)。
DMEK 44例とDSEK 69例で移植片不全になったか、5年以内に再移植を要した。拒絶反応はECD損失を増やしたが(P=0.004)、5年以内の移植片不全の重要なリスク要因ではなかった。(P=0.09)
術後5年のECD損失率は、DSEK 47%、DMEK 48%であった。(P = 0.22)
ドナーとレシピエントの性別の影響は認められなかった。
(拒絶反応率:女性レシピエントP=0.07、男性レシピエントP=0.33;移植片生存率:女性レシピエントP=0.67、男性レシピエントP=0.17)
結論: DMEKはDSEKより拒絶反応率が有意に低いリスクにもかかわらず、5年移植片生存率、および角膜内皮細胞喪失は同等であった。
ドナーとレシピエントの性別の拒絶反応率、移植片生存率への影響は認められなかった。(CH)

2018
125巻

トーリックIOLの軸ずれ:AcrysofとTecnis

Ophthalmology 125巻 (9号) 2018

Comparison of the rotational stability of two toric intraocular lenses in 1273 consecutive eyes.
Lee BS & Chang DF(CA USA)
Ophthalmology 125(9): 1325-1331, 2018
・Acrysof toric ReSTOR(n=626)とTecnis toric Symfony(n=647)で、角膜輪部の血管でのdigital marking systemを用いて行った手術後の軸ずれを検討した。
・術日の遅くか、翌朝に散瞳検査を行って軸ずれの測定を行った。
・5度以内の軸ずれはAcrysofでは91.9%、Tecnisでは81.8%で有意差があり(p<0.0001)、10度以内ではAcrysof:97.8%、Tecnis:93.2%(p=0.0002)、15度以内はAcrysof:98.6%、Tecnis:96.4%(p=0.02)であった。
・平均軸ずれ度はAcrysofは2.72度(95%CI=2.35-3.08)、Tecnisは3.79度(95%CI=3.36-4.22)で有意差があった(p<0.05)。
・Tecnisでは反時計回りのずれが多かった。
・再手術による軸補正はAcrysof:1.6%、Tecnis:3.1%であったが、有意差はでなかった。
・Tecnis TIOLが回転しやすい理由は不明だが、術中のOVD除去時などでも反時計回りに回りやすく、アクリル素材そのものの問題やハプティクスの幅や角度、デザインも関与している可能性がある。
・光学系とハプティクスとの接合部はTecnisではAcrysofよりもかなり固く、この影響もあるだろう(TY)

2018
125巻

正常眼における後部硝子体剥離の発生

Ophthalmology 125巻 (9号) 2018

Posterior vitreous detachment as observed by wide-angle OCT imaging.
Tsukahara M et al(埼玉医大)
Ophthalmology 125(9) : 1372-1383, 2018
・正常者での合成OCT像を用い、98例144眼の正常者(21~95歳:51.4±22.0歳)で、PVDの発生後の硝子体網膜接着部を広角で検査した。
・PVDを5段階評価した。Stage-0:PVDがない(21歳の2眼)、St-1:傍黄斑部から周辺部のPVD(88眼:38.9±16.2歳)、St-2:傍中心窩から周辺部のPVD(12眼:67.9±8.4歳)、St-3:傍乳頭PVDで硝子体乳頭癒着があるもの(7眼:70.9±11.9歳)、St-4:完全なPVD(35眼:75.1±10.1歳)である。
・PVDはかなり若年で発生すること、眼底疾患のない眼の40%以上で、PVDは硝子体分離症から進展すること、PVDは最初に傍黄斑部から周辺部で発生し、その後、中心窩に及ぶことがわかった(TY)

2018
125巻

完全失明者のメラトニン分泌抑制について

Ophthalmology 125巻 (8号) 2018

Suppression of melatonin secretion in totally visually blind people by ocular exposure to white light – Clinical characteristics.
Hull JT et al(MA USA)
Ophthalmology 125(8): 1160-1171, 2018
・多くの完全失明者は日内変動のペースメーカとなる光を見ることができないため、日内変動に同調できないが、小数の完全失明者は光の日内変動に同調し、メラトニンを抑制し、光に対して反応することができる。
・これらの光に対する反応は、メラトニンを含む本質的な光感受性を持つ網膜神経節細胞(ipRGC)、これは、日内変動のペースメーカに投影し、視覚をつかさどる杆体や錐体とは機能的に異なっているが、このipRGCが生き残っているためと考えられる。
・ここでは様々な眼疾患で完全失明した18名(49.8±11.0歳)における光受容について検討した。
・このうち3名は両眼の眼球摘出者のCtrlである。
・メラトニン濃度を7000 lux未満の白色光源下に6.5時間暴露後に測定し、その丁度24時間前に4 luxの薄暗い環境で測定したものと比較した。
・メラトニン濃度は18人中5名(症例#1~5)で明所視では33%以上の抑制がみられた。
・この5名は網膜色素変性2名、未熟児網膜症2名、両眼の網膜剥離1名である。
・18名中13名(症例#6-18)では抑制がみられなかった。
・この13名は未熟児網膜症3名、視神経症2名、不明の網膜症2名、先天緑内障1名、先天風疹症候群1名、麻疹網膜症1名と両眼眼摘者3名である。
・眼球摘出や眼球癆では光反応過程は残っていないが、失明疾患の種類とは無関係に光に反応する過程が残っている場合がある(図2)(TY)

2018
125巻

眼軸長延長と篩板の変化

Ophthalmology 125巻 (8号) 2018

Positional change of optic nerve head vasculature during axial elongation as evidence of lamina cribrosa shifting: Boramae myopia cohort study report 2.
Lee KM et al(Korea)
Ophthalmology 125(8): 1224-1233, 2018
・眼軸長の延長による篩板の変化を網膜中心血管の位置変化で調べた。
・対象は23例46眼の13歳以下小児(9.6±1.7歳 6.7-12.5歳)であり、半年ごとに2年間調査した。
・屈折度は-4.26±2.34D、眼軸長は24.80±1.28mm。
・網膜中心動脈幹と直径5度の円と網膜動脈の交わる点とが作る角度は眼軸長の延長に比例して減少し(p=0.004)、中心動脈幹の鼻側移動と関連していた(p<0.001)。
・眼軸長の延長しても後極部の網膜血管構造は変わらないが、網膜中心血管の位置は鼻側に移動する。
・網膜中心血管は篩板に存在するため、篩板の鼻側移動でもあり、緑内障での近視眼の脆弱性を説明するだろう。(図4)(TY)

2018
125巻

抗VEGF注射と眼内炎

Ophthalmology 125巻 (8号) 2018

Endophthalmitis after intravitreal injection of vascular endothelial growth factor inhibitors.
Xu K et al(NY USA)
Ophthalmology 125(8): 1279-1286, 2018
・2006年から2016年までに抗VEGF注射を受けた258,357眼のうち、眼内炎を発症した40眼(0.016%)を調査した。
・全例、注射後3週間以内に発症しており、発症時に34眼(85%)は疼痛があり、25眼(62.5%)は前房蓄膿があった。
・24眼で菌が検出され、66.7%はコアグラーゼ陰性のぶどう球菌、10.0%が連鎖球菌であった。
・6か月後のlogMARは、連鎖球菌が検出された人では4.0±0.8(小数点0.0001ほぼ光覚)と悪く、ブドウ球菌では0.4±0.3(小数点0.4)で、有意差があった(p<0.0001)。
・眼内液採取と硝子体内抗生剤注入群TAIでは菌検出が48.3%であったが、硝子体手術群PPVでは90.9%と有意に高かった(p=0.03)。
・両群間で6か月後の視力には有意差はなかった。
・85歳未満の群(p=0.04)、眼圧が25mmHG以下の群(p=0.01)では6か月後の視力が20/400以上である可能性が高かった。
・初期治療の方法(TAIかPPVか)、症状の継続期間(2日以内に限る)、疼痛の有無、前房蓄膿の有無、視力状態、菌検出状況などは6か月後の視力に関連がなかった。(TY)

2018
125巻

バルベルトインプラントと線維柱帯切除術の比較

Ophthalmology 125巻 (5号) 2018

Treatment outcomes in the primary tube versus trabeculectomy study after 1 year of follow-up.
Gedde SJ et al(FL USA)
Ophthalmology 125(5): 650-663, 2018
・Primary Tube Versus Trabeculectomy(PTVT) Studyの結果を報告する。
・緑内障手術を受けたことのない16施設のコントロ-ル不良例242例242眼にPrimary Baerveldt(350mm2)使用した125眼と線維柱帯切除(MMC 0.4mg/ml-2分)の117例の1年後の術後経過を比較した。
・不成功の基準は、眼圧が21mmHg以上、baselineからの眼圧低下が20%未満、眼圧が5mmHg以下、緑内障再手術を施行、視力が光覚である症例とした。
・1年後に不成功例はチュ-ブ群は17.3%、レクトミ-群では7.9% (p=0.01 HR=2.59; 95%CI=1.20-5.60)
・術後眼圧はチュ-ブ群では13.8±4.1、レクトミ-群では12.4±4.4 (p=0.01)
・点眼薬数はチュ-ブ群は2.1±1.4、レクトミ-群は0.9±1.4 (p<0.001)。
・術後合併症はチュ-ブ群は36例(29%)、レクトミ-群は48例(41%) (p=0.06)。
・再手術あるいはSnellenで2ライン以上視力低下を来した重大な合併症はチュ-ブ群は1例(1%)、レクトミ-群は8例(7%) (p=0.03)であった
The primary tube versus trabeculectomy study; Methodology.Ophthalmology 125:774-781,2018参照。(TY)

2018
125巻

VMTSの自然経過

Ophthalmology 125巻 (5号) 2018

A Study of the Natural History of Vitreomacular Traction Syndrome by OCT.
Errera MH, Liyanage SE, Petrou P, Keane PA, Moya R, Ezra E, Charteris DG, Wickham L.(UK)
Ophthalmology. 2018 May;125(5):701-707. 
・単一施設、OCTにて硝子体黄斑牽引症候群の徴候が6か月以上みられた159例183眼
・経過観察期間 17.4±12.1か月
・平均視力(LogMAR)0.3±0.3
・ERM並存20%
・60%は不変、20%で所見改善(改善までの平均:15か月)
・12%で黄斑円孔に発展、8%は症状悪化のため手術施行
・VMTSが続く間、視力と中心窩網膜厚は不変
・改善した例(多変量解析):初診時視力良好例、網膜厚み薄い例と有意に関連(ERMとの関連なし)
【結論】VMTSは多くの例で持続するが、黄斑円孔や手術介入を要する症状悪化がなければ概して視力は低下しない。20%で自発的に解除され、視機能も向上した。(MK)

2018
125巻

近視および乱視矯正のための有水晶体眼内レンズを有する患者における長期角膜内皮細胞損失

Ophthalmology 125巻 (4号) 2018

Long-Term Endothelial Cell Loss in Patients with Artisan Myopia and Artisan Toric Phakic Intraocular Lenses
Soraya M.R. lonker,et al.( Netherlands)
Ophthalmology 2018(4);125:486-494
・目的:近視と乱視の治療のための2種類の硬質虹彩支持型有水晶体眼内レンズの移植後の角膜内皮細胞密度(ECD)の長期変化を評価する。
・対象と方法:術後5または10年経過観察出来た近視群5年193眼、10年127眼、乱視群5年40眼、10年20眼。
・18歳以上、2年以上屈折値が安定している、前房深度2.8mm以上の症例。
・術前ECDは、21〜25歳が2800 cells/mm2以上、26〜30歳が2650 cells/mm2以上、31〜35歳2400 cells/mm2以上、36〜45歳2200 cells/mm2以上、 45歳以上の患者では2000 cells/mm2以上とした。
・ECD損失率、ECOが約25%減少した割合、ECOが1500細胞/ mm2未満の割合を調べた。
・結果:術後6カ月から10年時までに直線的かつ慢性的なECD低下が見られた。近視群 年間48 cells/mm2、乱視群年間61 cells/mm2減少した。(ともにP<0.001)
・10年間でECDは近視群16.6%、乱視群21.5%減少した。
・25%以上減少したのは近視群7.9%、乱視群6.3%
・1500 cells/mm2以下に減少したのは近視群3.9%、乱視群4.0%
・内皮細胞密度減少または角膜機能不全のため眼内レンズを摘出したのは近視群6.0%、乱視群4.8%だった。
・リスク要因は前房が浅い(P < 0.001)、眼内レンズのエッジと内皮との距離が狭いことだった。(P = 0.013)
・結論:近視またはトーリック虹彩支持型有水晶体眼内レンズ移植後、直線的かつ慢性的なECD損失が認められた。
・より浅い前房深度および眼内レンズのエッジと内皮との距離が狭いことが危険因子であった。(CH)

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