Iatrogenic occlusion of the ophthalmic artery after cosmetic facial filler injections. A national survey by the Korean Retina Society.
Park KH et al(Korea)
JAMA Ophthalmol 132(6): 714-723, 2014
・美容的な顔面への充填注射後の眼動脈、あるいは眼動脈枝の医原性閉塞について、44例の臨床例を検討した。
・眼動脈閉塞は6つのタイプに分けられる。
・28例は瀰漫性網膜脈絡膜動脈閉塞(眼動脈閉塞、後毛様動脈閉塞、中心動脈閉塞)、16例は局所的な閉塞(局所的後毛様動脈閉塞、網膜動脈枝閉塞、後部虚血性視神経症)であった。
・自己脂肪注射を受けた22例は瀰漫性眼動脈閉塞で、脳動脈閉塞の率はヒアルロンサン注入を受けた12例よりも、高かった。
・注射内容は自己脂肪22例、ヒアルロンサン13例、コラーゲン4例、その他5例であった(図)(TY)
Early addition of topical corticosteroids in the treatment of bacterial keratitis.
Ray KJ et al(CA USA)
JAMA Ophthalmol 132(6): 737-741, 2014
・The Steroids for Corenal Ulcers trial(SCUT)で、角膜潰瘍に対する抗菌剤点眼開始後、2-3日、あるいは4日後以降にステロイド点眼を開始して、経過をみた。
・2-3日後に開始した群ではplacebo群に比して、3か月後の視力は約1行、良かったが(-0.11 logMAR 95%CI=-0.20~-0.02 logMAR p=0.01)、4日目以降群では有意差はなく、placebo群よりも悪かった(0.10 logMAR 95%CI=-0.02~0.23 logMAR p=0.14)。(TY)
Comparison of contact lens and intraocular lens correction of monocular aphakia duringinfancy
A randomized clinical trial of HOTV optotype acuity at age 4.5 years and clinical findings at age 5 years
The Infant Aphakia Treatment Study Group (Atlanta)
JAMA Ophthalmol 132(6): 676-682, 2014
・生後1-6か月の片眼性先天白内障に対して水晶体的手術を行い、57眼IOL、57眼CLで術後屈折矯正を行った。IOLは+6-+8Dを狙いとした
・結果としては4.5歳の時の視力については両群で有意差はなかった。50%ほどは20/200と低視力であったが、CL群の方が20/32の視力が出た症例数が多かった(23%vs11%)
・5歳の時の眼合併症は多くで斜視が見られたが、両群で差はなかった
・一つ以上の有害事象が生じた割合はCL56% vs IOL81%とIOL群で多かった 最も多いものは水晶体細胞が瞳孔領まで増殖してしまうことであった。それにより手術を行うものが多かった。これはAphakiaでは前嚢と後嚢が癒着して、水晶体細胞がパックされるが、IOLがあることによって、カプセル内に水晶体細胞がパックされないことによると考えられる。
・3眼はCLができずIOLを挿入した
・IOLの術後屈折異常は平均は-2.25Dであったが、+5.0D-19.0Dと幅があり、誤差が大きいものは入れ替えを行った。1D以内のずれは41%であった。緑内障(高眼圧症)の患者ほど近視化した。
・小児の無水晶体眼の矯正はCLでもIOLでも視力に差がないが、IOLの方が有害事象が多かった(MM)
Effectiveness of intraocular pressure-lowering medication determined by washout.
Jampel HD et al(MD USA)
JAMA Ophthalmol 132(4): 390-395, 2014
・603例603眼のPOAGで3種までの点眼薬を使用してる患者を対象として、点眼中とすべての点眼を2週間から3週間中止した時の眼圧を比較した。
・点眼薬0種(n=102,24.2±3.2mmHg)、1種(n=272,17.5±3.2)、2種(n=147,17.2±3.1)、3種(n=82,17.2±3.1)。
・中止後の眼圧は、0種(ー0.2±2.8)、1種(+5.4±3.0)、2種(+6.9±3.3)、3種(+9.0±3.8)。
・眼圧が25%未満の上昇であった比率は、1種38%、2種21%、3種13%の患者であった。
・2番目、3番目の点眼薬中止による眼圧上昇率は1種の点眼薬中止効果よりも少なかった。
・このことは点眼薬使用方法が適切でないか、点眼薬自体が効果がなかった可能性がある。(TY)
Acute panretinal structural and functional abnormalities after intravitreous ocriplasmin injection.
Fahim AT et al(MI USA)
JAMA Ophthalmol 132(4): 484-486, 2014
・Ocriplasmin(OPM)はfibronectinとlaminin(基底膜を構成する蛋白質)や硝子体ゲルを分ける作用があり、硝子体黄斑牽引に対する薬剤治療として用いられている。
・Lamininは網膜全層に見られるものであり、OPMの硝子体注入は時には全網膜の急性機能不全を引き起こす可能性があるがその毒性は十分に分っていない。
・今回、63歳の女性で硝子体黄斑癒着による小さな黄斑円孔にたいしてOPM(0.125mg/0.1ml)を硝子体注入し、全網膜機能不全をきたした症例を報告する。
・視力低下20/40→視力低下は4日後に改善し→20/125、色覚正常、視野狭窄、縮瞳(1mm径)、網膜動脈が全網膜で狭細化、OCTで外網膜層の消失、9日後にERG反応の低下(B波10%に低下、潜時延長、OP波が強く障害)、32Hz-photopic ERG反応が半分に減少、暗順応閾値が半分に上昇し、視細胞以降ならびに視細胞の機能低下が発現した。
・976例の臨床例では、9例が24時間以内の視力低下があり、そのうち中間値2週間で、8例は回復したが1年かかった例もあった。(TY)
Visual loss after intravitreal ocriplasmin. Correlation of spectral-domain optical coherence tomography and electroretinography.
Tibbetts MD et al(MA USA)
JAMA Ophthalmol 132(4): 487-490, 2014
・Ocriplasmin(OPM)硝子体注射後の視機能障害のメカニズムはまだ不明である。
・今回、硝子体黄斑癒着のある71歳の女性にOPMを注射し、その後4か月にわたって暗さを訴えた症例を報告する。
・視力低下は癒着は改善していたが、OCTでIS/OSの破綻があり、ERG振幅が低下していた。
・ERGでは錐体機能よりも杆体機能が強く障害されていた。
・OPMは光受容体やRPEに影響を与え、杆体が錐体よりも障害を受けやすいことが分った。(TY)
Acute Panretinal Structural and Functional Abnormalities After Intravitreous Ocriplasmin Injection
Abigail T. Fahim, Naheed W. Khan, Mark W. Johnson. (US-MI)
JAMA Ophthalmol 132(4): 484-486, 2014
63歳女性、右眼の硝子体-黄斑癒着と小さな黄斑円孔に対しOcriplasmin(0.125mg/0.1mL)を硝子体に注入
注入数時間後に光視症を自覚。4日目にはいくぶん回復していたが夜盲症と視界に黄色いものが見える症状を自覚。9日目に注射眼の視力低下を訴う
視力:20/50→20/125に低下。瞳孔不同(注射眼が1mm縮瞳)あり。ゴールドマン視野は患眼がすべてのイソプターで狭窄
眼底はWeiss ring出現、黄斑部はfluid cuffを伴った全層円孔になっていた。右眼の網膜動脈はびまん性に狭細化していた。OCT所見では円孔周囲のELM・ellipsoid layer・COSTラインが減弱していた【Fig.2】
Full-field ERGでは桿体B波が正常の10%以下に減弱、暗順応下の桿体―錐体反応も僚眼の約半分に減弱、殊にB波が減弱していた。Photopic ERGとフリッカーERGより、錐体機能は正常の40-50%に減弱していることが判明。OP波も患眼で著しく減弱していた。僚眼のERGは桿体反応の中等度減弱以外はすべて正常範囲だった【Fig.3】
ERG所見(B波がA波より減弱している)より視細胞より中枢側の機能異常および視細胞の活性の低下が疑われた
【結論】Ocriplasmin硝子体注入に関連する網膜機能異常は黄斑部に限らず網膜全体に及ぶ。酵素によって網膜内のlamininが離開されることがこの毒性のメカニズムとして生物学的に疑わしい(MK)
Vision Loss After Intravitreal Ocriplasmin
Correlation of Spectral-Domain Optical Coherence Tomography and Electroretinography
Michael D. Tibbetts, Elias Reichel, Andre J. Witkin. (US-MA)
JAMA Ophthalmol 132(4): 487-490, 2014
71歳女性、症候性硝子体-黄斑牽引(VMT)に対しOcriplasmin(0.125mg/0.1mL)を硝子体注入
視力改善およびVMT解除が得られたにも関わらず、暗黒感が経過観察期間(4か月)中持続
SD-OCTにてellipsoid layerの破綻、ERGにて振幅の減少がみられ、患者の症状と関連づけられた
ERGでは錐体機能に比べて桿体機能の減弱が強くみられた
【結論】Ocriplasminは硝子体-黄斑の癒着部位のみに限らず、視細胞または網膜色素上皮に対してびまん性に酵素の効果を与えているようだ。Ocriplasminは錐体視細胞に比べて桿体視細胞に多く作用しているかもしれない。(MK)
Markers of Inflammation, Oxidative Stress, and Endothelial Dysfunction and the 20-Year Cumulative Incidence of Early Age-Related Macular Degeneration
The Beaver Dam Eye Study
Ronald Klein, et al. (US-WI)
JAMA Ophthalmol 132(4): 446-455, 2014
【目的】炎症マーカー、酸化ストレス、内皮機能異常と早期AMD20年間累積発症率との関係を調査
【対象と方法】Beaver Dam Eye Studyの参加者のうち、ベースライン検査(1988-1900、参加時にAMDなし)その後4回のフォローアップ検査(1993-1995, 1998-2000, 2003-2005, 2008-2010)すべてに参加した975名。
炎症マーカー(高感度CRP、TNF-αR2、IL-6、WBC)、酸化ストレスマーカー(8-ISO、TCC)、内皮機能異常マーカー(sVCAM-1、sICAM-1)を測定。相互作用として考えられるCFH、ARMS2、C2/CFB、C3の各遺伝子多型を調査し多変量解析に組み込み。
眼底写真にて早期AMD (黄斑部の色素上皮異常または125μm以上のドルーゼン)の有無を検索
【結果】早期AMDの20年間の累積発症率は23.0%。年齢・性別・リスク因子で調整した多変量解析では、高感度CRP (第1 vs第4四分位でOR 2.18, p=0.005)、TNF-αR2 (OR 1.78, p=0.04)、IL-6 (OR1.78, p=0.03)、sVCAM-1(OR 1.21, p=0.04)が早期AMDの発症と有意に関連していた。
【結論】上記の炎症マーカーとひとつの内皮機能異常マーカーが年齢・喫煙・他のリスク因子と独立して早期AMDの20年間累積発症率と中等度に関連していた。これらの知見は早期AMDの病因に炎症が関与していることを支持するものである。(MK)
Effect of bifocal and prismatic bifocal spectacles on myopia progression in children. Three-year results of a randomized clinical trial.
Cheng D et al(Australia)
JAMA Ophthalmol 132(3): 258-264, 2014
・近見用プリズム入りの2重焦点眼鏡が小児の近視進行を遅くするかどうかを検討した。
・中国系カナダ人135名(終了時128名)で8-13才(10.29±0.15)、屈折度-3.08±0.10D、前年度の近視進行度が0.5D以上を3群に分けて検討。
・単焦点S群41名、+1.5D加入2重焦点B群48名、+1.5Dに近見3プリズム加入P群46名である。
・屈折度はサイプレジン散瞳下の自動屈折計を使用して6か月間隔で3年間経過観察した。
・3年間の近視進行度はS群ー2.06±0.13、B群ー1.25±0.10、P群ー1.01±0.13で、眼軸長はS群0.82±0.05、B群0.57±0.07、P群0.54±0.06mmであった。
・B群P群はいずれも、p<0.01で有意であった。
・調節lagが1.0Dより大きい小児では、B群とP群間に有意差はなかったが、調節lagが1.0以下の小児では、B群は0.99D、P群は0.50Dと有意差があった(p=0.03)。(TY)
Nd:YAG laser goniopuncture for late bleb failure after trabeculectomy with adjunctive mytomycin C.
Susanna R Jr et al(Brazil)
JAMA Ophthalmol 132(3): 286-290, 2014
・線維柱帯切除術(MMC使用)後、眼圧コントロールに失敗した19例19眼について、Nd:YAG LGP+5FU注入を行った。
・隅角鏡で内孔が明らかで、無血管性の機能していない濾過胞を持った症例を対象とした。
・術後35.7±32.3か月。Nd:YAGは内孔の一番奥を狙って7~8mJで10~20発照射した。
・半数では内孔の拡大が観察された。
・同一日に5FU 5mg(50mg/ml)を下結膜嚢に注入し、眼圧が8mmHg以上ある人については、1日3回10秒の眼球マッサージを3日間、指示し、1%プレドニゾロン点眼を術当日は1時間おき、翌日は2時間おき、その後20日間は8時間おきに点眼した。
・術前眼圧20.9±4.5(15.5-29.0mmHg)が11.9±4.1(5.0-21.0)に低下した(p<0.001)。
・合併症は2例で低眼圧があったが自然緩解した。
・2眼で濾過胞が高くなり、10眼で濾過胞が伸展した。
・点眼薬数は0.7±1.1から0.3±0.7に減少。
・最終検査6.0±1.1か月(4.4-8.4)では15眼79%が眼圧15mmHg以下で、点眼なしで20%以上の眼圧下降効果が得られた。(TY)
Botulinum Toxin Type A Injection for Lateral Canthal Rhytids Effect on Tear Film Stability and Tear Production
Min-Chieh Ho, et al. (Taiwan)
JAMA Ophthalmal. 132(3): 332-337, 2014
・目尻のしわの治療のためのボツリヌス毒素A型が、涙液膜の安定性と涙液産生にどのように影響しているか。
・目尻のしわのある30〜60歳の女性58人 平均年齢46.3歳
30〜40歳 20人、 40〜50歳 17人、 50〜60歳 21人
doseA 2U 0.05ml 3ショット 眼輪筋内
doseB 4U 0.05ml 3ショット 眼輪筋内
片眼doseA、もう片眼doseB
治療後1週後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、TBUT、麻酔なしシルマー試験、麻酔ありシルマー試験を施行した。
・TBUTは注射1週後に際立って減少し、1〜3ヶ月間続いた。6ヶ月後に部分的に回復した。シルマー試験は麻酔あり、なしでも注射1ヶ月間減少し、6ヶ月後完全に回復した。
年代別では、
30〜40歳 TBUTは注射後1週後減少し、6ヶ月後完全に回復した。
40〜50歳 TBUTは注射後3ヶ月間減少し、6ヶ月後部分的に回復した。
50〜60歳 TBUTは注射後6ヶ月間減少したままだった。
シルマー試験ではどの年代でも、麻酔あり、なしとも注射後1ヶ月で最も減少し、その後徐々に回復した。
・若い人ほどより速くTBUTが回復する傾向にあった。
TBUTとシルマー試験結果両方がdoseAよりdoseBで減少していたが、統計学的に有意差はなかった。
・ボツリヌスの量が増えるほど、より大きい影響あるように思われた。
ボツリヌスによるリオラン筋麻痺がマイボーム腺からの脂質分泌を減少させるだろう。そのために、涙液層の脂質不十分をもたらすかもしれない。
麻酔あり、なしの両方のシルマー試験が減少したことに気付いた。これは、ボツリヌスが交感神経でなく副交感神経系ファイバーだけを阻害するから、基礎分泌と刺激性分泌の両方が、少なくとも部分的に副交感神経によって支配されることを意味する。
ボツリヌス菌注射の深さは目尻の眼輪筋の層に制限された。そのため、ボツリヌスが眼輪筋と眼窩隔膜を通って涙腺に到達したと思われる。
TBUTで注射後短期間での減少、シルマー試験結果で緩やかな減少という結果は、マイボーム腺の方が注射部位から近く、涙腺までが遠かったからと考えられた。
ボツリヌス治療を受けようとしている患者にドライアイの危険性を知らせる必要がある。(CH)
Smoking Cessation and the Risk of Cataract
A Prospective Cohort Study of Cataract Extraction Among Men
Birgitta Ejdervik Lindblad, et al. (Sweden)
JAMA Ophthalmol. 132(3): 253-257, 2014
・男性で、白内障に対する禁煙の効果を調べた。
・45歳から79歳のスウェーデン人男性44,371人にアンケート調査した。
喫煙24.9%(1日平均13.9本)、過去に喫煙38.8%(1日平均13.6本)、非喫煙36.3%
・1日平均15本以上喫煙する男性は、喫煙した事がない男性に比べ、白内障手術を受けるリスクが42%高かった。
さらに、禁煙後20年経っても喫煙した事がない男性に比べ、白内障手術を受けるリスクが20%高かった。
喫煙本数の少なかった男性は、禁煙後リスクは低下したが、喫煙した事がない男性のレベルに達することはなかった。
・危険が何十年間も持続するけれども、禁煙が白内障になる危険を減少させるように思われた。
これらの調査結果は早い禁煙と、なるべく喫煙しないことの重要性を強調する。
喫煙は他の眼疾患とも関係があるので、医師は禁煙を勧めるべきである。
女性の場合、1日6本から10本の人は禁煙期間とともに白内障手術のリスクが減少し、禁煙後10年で非喫煙女性と同等になった。しかし、喫煙量の多いと非喫煙女性と同等になるのに20年かかった。(CH)
Differences in Vision Between Clinic and Home and the Effect of Lighting in Older Adults With and Without Glaucoma
Bhorade AM,et al.(US-CA)
JAMA Ophthalmol. 131(12):1554-1562 , 2013
【目的】クリニックと家庭とで測定した視力を比較、照明を含む環境の違いを評価
【対象と方法】55-90歳、126名の緑内障患者および49名の緑内障なしの患者、うち166名が導入基準に合致。クリニックおよび患者の家庭(測定順はランダムに割付け)で、両眼遠方視力(DVA)・近見視力(NVA)、コントラスト感度(CS)、グレア下CSを測定。測定場所の照度を計測。
【結果】緑内障のあるなしに関わらず、全ての視覚テストがクリニックでの測定値の方が有意に良好【Tab.2】。
DVAでは緑内障患者の29%でクリニックの測定値の方が2段階以上良好【Fig.1】、更に進行した緑内障患者の39%もが3段階以上良好であった。
全体の21%もの患者でNVAがクリニック測定値で二段階以上良好、49%もの患者でグレア下CSがクリニック測定値で三段階以上良好であった【Fig.2】。
多変量解析にて、DVA・NVA・CSのクリニック・家庭の視力差に対するもっとも有意な関連因子は照度であった(P<0.05)
家庭での照度は、クリニックのそれと比較してDVAの条件下では4.3倍、NVAの条件下では2.8倍暗かった。【Tab.3】
85%以上の患者で家庭での照度が推奨値以下であった【Fig.4】。
【結論】クリニックで測定した視機能は家庭で測定した結果よりも概して良好であり、主に家庭での照度が暗いことに由来する。この知見は高齢者の家庭での視機能を改善させるために家庭の照度を調節するといった患者-医師間の議論のきっかけとなるかもしれない。(MK)
Relationship Between Dry Eye Symptoms and Pain Sensitivity
Jelle Vehof et al. (England)
JAMA OPhthalmoi 131(10): 1304-1308, 2013
・ドライアイと疼痛感度の関連と、健康なボランティアグループでの疼痛耐性を調査した。
・白人女性ボランティア1635人、平均年齢60歳(20~83歳)
3つの質問をして(1) ドライアイと診断されたことがあるか? (2) 現在人工涙液点眼を使用しているか? (3) 過去3ヶ月かそれ以前から、ドライアイ症状を感じたか?
すべて「はい」と答えた人をドライアイ群438人(27%)とした。この中で元々医師からドライアイと診断を受けていたのは218人(13.2%)。
・疼痛症状を詳しく調べるためにサブグループ689人を選び、眼表面疾患インデックス(OSDI)を行った。15ポイント以上をドライアイ群217人(31.6%)とした。その内、痛みを伴うドライアイ118人(17.1%)。
熱痛覚閾値(HPT:これが低いと疼痛感受性が高い)
プローブを被検者の上前腕に取り付け、「熱い」から「痛い」と感じる状態になるまでの温度変化を
32度から1秒間に0.5度ずつ上げて測定した。
疼痛耐性(HPST:これが低いと疼痛耐性が低い)
プローブを被検者の上前腕に取り付け、「苦痛」から「耐えられない」と感じる状態になるまでの温度
変化を32度から1秒間に1度ずつ上げて測定した。
・平均HPT:45.4度、平均 HPST:47.1度だった。
HPTの中央値は46.0度だった。それよりも低い値の人が痛みに敏感とみなした。
・年齢が高いほど疼痛感度と強く関連していた。(P<0.001)
ドライアイと診断された人とドライアイではなかった人、人工涙液の使用者と非使用者でHPTとHPSTに有意差はなかった。しかし、過去3ヶ月にドライアイ症状があった人は症状がなかった人よりHPSTが有意に低かった。(P=0.01)
ドライアイと診断された人はドライアイでは無い人に比べHPTとHPSTが有意に低かった。
サブグループでHPTとHPSTが低いことはドライアイと関連していたが、有意差はなかった。
疼痛症状の存在とHPTとHPSTが低いことに強い関連があった。(P = .008 for the HPT and P = .003 for the HPST)
・この研究は、涙液不足、細胞損傷と心理的な要因などに加え、高い疼痛感度と低い疼痛耐性がDEDの痛み症状と結び付けられることを示唆した。
ドライアイ症状の管理は複雑なので、医師は眼の治療だけではなく、全身像を考慮する必要がある。ドライアイ検査で明らかには認められない軽い眼表面の異常でも疼痛感度の高い患者では自覚症状として現れることが考えられる。(CH)
Evolution of Vitreomacular Detachment in Healthy Subjects
Hirotaka Itakura, et al. (群馬大学)
JAMA Ophthalmol 131(10):1348-1352, 2013
・SD -OCTを使い健全な眼のPVDの発達における硝子体ポケット(PPVP)の役割を評価する。
・健康なボランティア368人(男性188人、女性180人)の右眼を対象とした。
平均年齢57.1歳(12~89歳)、すべて有水晶体眼、平均屈折値 -1.1D (+4.0D~-4.5D)
OCT検査の前に、診察でPVDの有無を調べた。
ワイスリングの確認で完全なPVDと定義した。
検眼鏡検査とSD-OCTイメージを使って硝子体ポケットの後壁の状態を5段階にわけた。(表2)
・完全なPVDのない227眼すべてで、SD-OCTで硝子体ポケットを認めた。
38歳以下ではPVDは認めなかった。
完全なPVDは70代〜80で増えた。
・SD – OCTはPVD発生の早い段階で硝子体ポケットをうつした。
硝子体ポケット後壁は、初めに傍中心窩エリアで外れ、周中心窩エリアに及ぶ。硝子体と中心窩の強い癒着と合わさって、トランポリン様の周中心窩PVDを形成する。周中心窩PVDは黄斑円孔や硝子体黄斑牽引症候群の原因になる。そして視神経から硝子体が剝離したら、完全なPVDとなる。
硝子体ポケットの解剖学的特徴が周中心窩PVDの発達に影響していると思われる。(CH)
Spectral-domain optical coherence tomography masures of outer segment layer progression in patients with x-linked retinitis pigmentosa.
Birch DG et al(TX USA)
JAMA Ophthalmol 131(9): 1143-1150, 2013
・視細胞内節の楕円帯(EZ:ellipsoid zone:内節外節縁)の中心部の幅の年変化がX-linked網膜色素変性症の特性を現せるかを検討した。
・劣性遺伝あるいは孤発例のRPの20例(8歳から65歳,平均40.5歳)で日内変動を検討し、XL-RPの28例(8-27歳、平均15.2歳)で、ドコサヘキサエン酸とplacebo内服の効果を3年の経過で調査した。
・test-retestのEZ幅の差は0.08±0.22度(-0.30~0.6)であり、95%誤差は0.43度(124μm)内に収まるが、コントロール眼のXL-RPのEZ幅の平均年変化(減少)は0.86度(248μm, 7%)であり、28例の内27例で2年間で有意なEZ幅の減少を来した。
・この年平均7%のEZ幅の減少は機能している網膜面積の13%の変化と等価であり、この値は視野あるいは全視野ERGで報告された値と一致している。
・このことから、EZ幅測定の有効性が期待できる。(TY)
Is the use of topical antibiotics for intravitreal injections the standard of care or are we better off without antibiotics?
Chen RWS et al(FL USA)
JAMA Ophthalmol 131(7): 840-842, 2013
・モキシフロキサシンは3mlで約$80、5%ポビドンヨードPIは30mlで約$6であり、仮に約80%の網膜専門医が硝子体注射後に第4世代フルオロキノロン点眼を使用したとすると、年間$6400万が必要となる。
・米国での通常の注射時のprotocolは5%PI点眼、麻酔薬点眼を結膜内点眼し、眼瞼と睫毛を10%PI綿棒で消毒し、滅菌開瞼器を掛ける。
・麻酔薬を染ませた綿棒で注射部を押し、点眼麻酔、5%PI点眼を下結膜嚢に点眼。
・マスクはしない場合もあるが、手袋をして注射し、時に抗生剤点眼を注射前あるいは後で行っている。
・米国での2つの大きな問題は、耐性菌の増加と費用の増加である。
・PIで十分と考えられるので、抗生剤点眼の使用は辞めた方がいいと考えている。(TY)
Oral Glucosamine Supplements as a Possible Ocular Hypertensive Agent
Ryan K.Murphy, DO, MA
JAMA Ophthalmology 131(7): 955, 2013
・グルコサミンと緑内障の関連を調べる。
対象は、すでにグルコサミンサプリメントを内服していて眼圧21mmHg以上又はPOAGと確定している17人で、自分の意志で選択的にグルコサミン内服を止めて、2年で最低3回以上眼圧測定した。
11眼:グルコサミンサプリメント内服開始前に1~3回ベースラインを測定
内服前、内服中、内服中止後に眼圧測定
6眼:グルコサミンサプリメント内服開始前にベースラインを測定しない
内服中、内服中止後に眼圧測定
A. 内服中は内服前より有意に眼圧上昇した。(P=0.001)
内服中より内服中止後に有意に眼圧下降した。(P=0.002)
内服中より内服中止後に有意に眼圧下降した。(P=0.008)
・A.B.合わせると、内服中RT=19.5±3.4mmHg →中止後16.7±3.0 mmHg
LT=20.3±2.9mmHg →中止後17.3±2.4 mmHg
左右差はなかった。
・類似の効果を示すコルチコステロイド治療を中止すると眼圧が下がるメカニズムに類似して、グルコサミン内服の中止がIOPを下げると仮定する。
今後、グルコサミンの用量、期間、ブランドなどの検討が必要。(CH)
Effect of low concentrations of benzalkonnium chloride on acanthamoebal survival and its potential impact on empirical therapy of infectious keratitis.
Tu EY et al(IL USA)
JAMA Ophthalmol 131(5): 595-600, 2013
・3種のアカントアメーバの栄養体trophozoiteを各種の液に0.5h, 2h, 3h. 5h, 6.5hours暴露した。
・液はBAK(0.001%, 0.002%, 0.003%)、モキシフロキサシン(0.5%)、BAK(0.001%, 0.003%)+モキシフロキサシン(0.5%)、過酸化水素(3%)、生食であり、アカントアメーバの死滅数logで表示した。
・BAKの効果は時間依存性で(2h-3.5h迄)、同時に濃度依存性であったが、モキシフロキサシンMFLXはそれ自体では効果がなかった。
・0.003%BAKは過酸化水素水と同等に著明な抗アカントアメーバ効果があった。
・市販のBAKの配合濃度(0.005~0.01%)で、十分な効果がある。
・MFLX0.5%単身、MFLX+BAK0.001%、MFLX+BAK0.003%のアカントアメーバ死滅数logは、0.5hでは(0.01±0.22、0.62±0.48、2.72±0.83), 2.0hでは(0.04±0.30、1.04±0.82、3.70±0.53), 3.5hでは(-0.05±0.19、1.23±1.06、3.35±1.05)であり、BAK効果は約3.5時間までは濃度依存性であった